女王の花

女王の花

第二王妃土妃の策略により国を追われた亜国の姫・亜姫。境遇の違いを超え、胡人の従者・薄星と強い絆で結ばれながら、戦乱の世を生き抜く歴史ロマン。和泉かねよしの作品、『二の姫物語』から100年後の設定になっている。第60回小学館漫画賞少女向け部門を受賞。

正式名称
女王の花
ふりがな
じょおうのはな
作者
ジャンル
ファンタジー
 
その他歴史・時代
レーベル
フラワーコミックス(小学館)
巻数
既刊15巻
関連商品
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あらすじ

第1巻

ある日、亜国の姫・亜姫は、宮殿の中で金の髪と天の色の眼を持つ異民族の少年・薄星と出会う。その様子を見ていた第二王妃の土妃から心ない嫌味を言われるが、亜姫は持ち前の明るさで跳ね返してしまう。てっきり言葉が通じないと思った薄星だったが、亜姫と同じ言語を話し、二人は子供ながらに主従関係を結ぶ。ある日、薄星と共に宮殿を抜け出した亜姫は、彼女の母親である黄妃の病気を治すための薬を探そうと歩き回る。物の価値がわからない亜姫はうっかり物売りに騙されそうになるが、ふと通りかかった青徹の助言によってその場をあとにする。

第2巻

青徹と共に黄軍の兵士として戦場へ行った薄星のもとを訪れた亜姫に対して、薄星はいい顔をしなかった。さらに亜姫はほかの兵士達からも、女は戦場にいるべきではないと邪魔者扱いされてしまう。戦の現実を目の当たりにし、自分の甘さを知る亜姫だったが、そんな彼女にずっと兵法を教えて来たのは、ほかならぬ青徹だった。青徹は中軍大将を務める陳騰の前に亜姫を連れ出し、未経験ながらも自由な発想を生かした策をその場で考えさせるよう仕向ける。持ち前の明るさを活かし、亜姫は先陣を切って援軍と共に薄星達と合流する。亜姫の策は見事に活かされ、辺りには黄軍の旗ばかりが翻った。

第3巻

ある晩、書を読みながら眠りにつこうとしていた亜姫の無防備さにあきれ果てた薄星は、力まかせに亜姫を抱こうとするが、全力で拒絶されてしまう。そして亜姫は、半裸状態で青徹の部屋を訪れる。青徹は多くを語らなかったが、確実に亜姫の味方をしてくれるのだった。亜姫の様子を心配してやって来た薄星に対して青徹は身のほどを知るよう厳しく説教をするが、使用人の通達によって亜国の宮殿に潜入させていた彼の手下が土妃に捕らえられてしまった事を知る。青徹は責任を追及され、亜姫はなんとしても青徹の立場が悪くならないよう配慮するが、それは却って青徹の立場を悪くしてしまうだけだった。

第4巻

青徹から自分の母親である黄妃との関係を聞かされ、亜姫黄妃が主従関係を超えて青徹を愛していた事を悟る。そして自分と黄妃がずっと青徹に守られて来た事を知り、いつの間にか青徹を愛していると気づく。そんな亜姫を絶えず心配し、気遣ってくれるのは薄星だった。薄星は、宮中で拘束される事になった青徹をなんとかして救いたいと訴え続ける亜姫の、青徹への気持ちに気づき始める。亜姫薄星をまだ許したわけではなかったが、自分に向かうまっすぐな忠誠心を拒否できなかった。

第5巻

間者の容疑をかけられ捕らえられてしまった青徹を、なんとかして助けたいと思う亜姫だったが、時はすでに遅かった。青徹のもとへと潜り込んだ薄星は、青徹がすでに死を覚悟している事を知ってしまう。薄星亜姫の思いを必死に告げるが、青徹はそれを受け入れない。そして亜姫を守れと薄星に告げ、彼らはお互いに今生の別れをする事となる。罪人として連行されていく青徹と道中すれ違った亜姫は、なんとしても彼を救いたいと心から願うばかりだったが、青徹の思いを汲み、青徹が望む公人として最後まで気丈に振る舞うのだった。

第6巻

謀反を起こした土妃により、命を危険に晒された亜国亜王は、玉璽(ぎょくじ)の片割れを亜姫に送った。亜姫はその真意を知りたいと思い、今の状況を探るためにも王宮へ向かおうとする。人知れず生き延びて亜王のもとにいた青徹の気配をわずかに感じ取った亜姫だったが、青徹亜王を守ろうとして土妃の片目を奪い、そのままこと切れてしまう。同じくして亜王土妃から受けた傷が致命傷となり、青徹と共に命を落としてしまう。亜王の死後、涙ひとつ流さなかった亜姫に対して宮中の誰もが陰口を叩いたが、青徹の兄である青逸だけは亜姫の胸の内を悟っていた。

第7巻

ひょんな事から亜姫と主従関係を結んだ胡人の蛇波流は、曾国の第一王子・が遣わした刺客だった。彼は突然、背後から毒の剣で薄星に襲いかかる。亜姫を守るため、傷つきながらも薄星蛇波流に反撃するが、ふと気がつくと彼の仲間に囲まれてしまっていた。薄星は間一髪のところを亜姫に助けられる。亜姫蛇波流の剣で自らを傷つけ、いかなる時も自分は薄星と共にいる事を誓う。蛇波流から命がけで毒消しを奪い、事なきを得た亜姫は毒が抜けきらない薄星の看病を買って出る。亜姫の強い思いを知った薄星は、初めて亜姫と口づけを交わすのだった。

第8巻

亜姫の事をすっかり気に入ってしまった曾国の第一王子・は、亜姫との婚姻を望んでいたが、話はなかなかまとまらずにいた。焦れたは、あろう事か黄宮に忍び込んで来た亜姫を手籠めにしようとするが、失敗に終わる。その後、亜姫を伴い黄王に謁見。その中で、亜姫黄国亜国の同盟を新たに結びなおしてほしいと提言する。それを聞いたは証左もない女子の口約束で、国を動かすわけにはいかないと強い反対の姿勢を見せるが、亜姫亜王から受け継いだ玉璽の片割れを示し、自分は正当な次期亜王であると自ら宣言する。

第9巻

曾国の山中で、第一王子に瓜二つの男と鉢合わせになっていた薄星は、男の正体が曾国の第一王子・の兄であるだと知らされる。を守る美しい胡人の女性従者・翠蝉と激しい攻防戦を繰り返した果てに、さすがの薄星も彼女の命を取る事まではしなかった。の正体を知った薄星は、亜姫のために協力を要請する。一方、黄国の民が食糧に飢えていると知った亜姫は、自分になにかできないかと考え、王者としての片鱗を青逸に見せる。

第10巻

曾国の第一王子・によって黄国から無理やり連れ出された亜姫が目覚めると、そこは馬車の中だった。馬車の中から薄星を見たような気がしたが、こんなところにいるわけがないとやり過ごしてしまう。だが、すれ違ったのは薄星本人だった。曾国に到着し、美しく着飾った亜姫は寝所に案内されるが、突然見知らぬ男に犯されそうになる。まさにその者こそ、曾国を統治する曾王だった。腕ずくで我がものにしようとする曾王を払いのけた亜姫は、曾王に殺されかける。しかし、ほかの女とまるで反応が違う亜姫に少しだけ興味を示した曾王は、それ以上の行為は求めてこなかった。その事実を知っても無反応な旦に、亜姫は裏切られたような気持ちになり、ただ愕然とするのだった。

第11巻

土妃曾王が裏で手を結ぶかも知れないという事実を知った亜姫が選んだ選択肢は、曾王と婚姻関係を結ぶ事だった。しかし婚礼の議が進む途中で、亜姫と共に曾王を討つ作戦を実行する。幼い頃から王座に就くためにはの命を狙うように曾王から教え込まれて来たは、ずっと苦しんでいた。と同じ思いを抱え、自分が存在する意義はなにかとずっと苦しんで来たのだった。やっとの思いで亜姫のもとに参上した薄星は、青徹が女中に託した玉璽の片割れを亜姫に届ける事に成功。そしてついに亜国の王としての証左を持った亜姫が、新曾王はであると証明する。

第12巻

曾王として即位したは、再び自分のそばにいてくれるようになったと共に策を巡らす日々を送る。久々に束の間の休息を薄星と過ごしていた亜姫だったが、今一つ相容れない薄星の態度が気になっていた。ある日、薄星青逸に呼び出され、即位を控えた亜姫の足手まといにならないためにも、彼女の前から姿を消すようにうながされる。そんな薄星から少しずつ距離を置かれるようになった亜姫は自分の覚悟を示そうと、薄星を花祭りに誘う。だが、薄星の口から出たのは拒絶の言葉だった。

第13巻

土妃との戦に備え、曾国で着々と準備を進めていた亜姫のもとでしばらく仕えていた蛇波流は、西を目指すため亜姫に別れを告げる。黄王亡きあと、黄国で喪に服していた青逸亜姫のために援軍を伴って参戦してくれる事になり、亜姫は心強い味方を得る。黄軍が亜姫率いる曾軍についた事を知った土妃が狙うのは亜姫の首そのものだったが、曾軍の裏をかいて黄軍を徹底的に攻めるよう命令を下す。そんな中、軍の中に薄星の姿を見つけた亜姫は、曾軍大将として冷酷無比な態度で彼に接する。それは、すぐにでも戦を抜けて生き延びてほしいという切実な思いの裏返しだった。

第14巻

薄星亜姫と二人になれる機会を見つける事ができたのは、亜姫が多くの兵士達の命を奪った戦場で、弔いの意味をこめて小さな箱に入れた花を埋めている時だった。やっと会話をかわせた亜姫から告げられたのは、もういっしょにいる事はできないという事実だった。今の亜姫にとって、薄星の存在はもはや重荷でしかないと言う。自分から離れようとする亜姫を憎いと思った薄星は、このまま亜姫の命を奪ってしまおうと考える。だが、亜姫がどんな思いで自分の気持ちを薄星に告げたか、薄星は身を持って知る。亜姫は一人の女の子として生きる人生を捨て、すでに女王として戦乱の中に身を置く覚悟を決めていたのである。

第15巻

全身全霊をかけて土妃率いる土軍と戦った亜姫は、援護に駆けつけてくれた中軍と下軍のおかげでついに勝利を収める。喜ぶのも束の間、残党に狙われ崖から落ちてしまうが、決死の思いで亜姫を救ったのは薄星だった。二人は奇跡的に軽傷で済み、なんとか生き長らえる。亜姫はやはり自分が愛しているのは薄星だと改めて思うのだが、共に生きる事はできないとしか言えなかった。それを受け入れない薄星と離れる事ができず、二人はついに結ばれる。亜姫が目を覚ますと、薄星の姿はなかった。薄星亜姫を守るために、再び残党と戦いを繰り広げていたのだ。だが、薄星の身体からは、かつて蛇波流から受けた毒が未だに抜けきっていなかった。

登場人物・キャラクター

亜姫 (あき)

亜国の亜王と最初の正室・黄妃との間に生まれた亜国の姫。才色兼備な美女。幼い頃は貧しさ故に姫とは思えない粗末な服を着ていた。胡人の奴隷、薄星と強い絆で結ばれており、窮地に立たされたり、困ったときは彼から教えてもらった千年の花というおまじないを口にする。第二王妃・土妃の策により母を殺され、14歳の時、母の母国・黃国に人質として送られる。 黄国では、変奇姫(とんでもひめ)とよばれることも。15歳で戦場に立ち、これに勝利し、各国に名を知られるようになる。

薄星 (はくせい)

亜姫から「蒼天の蒼の目」「稲穂の金、天の色の髪」と例えられた金髪碧眼の胡人奴隷。容姿のせいで幼少より差別されて育ってきた。偏見を持たない亜姫と出会い、彼女に忠誠を誓う。願いが叶うという千年の花というおまじないを亜姫に教える。

土妃 (どひ)

土国出身の亜国の第二王妃。亜王との間に王子・亜王子を持つ。華やかにして傲慢。正室・黄妃を毒殺し、一時は正室におさまるが、後に亜王を殺害して、亜国にクーデターをもたらした。クーデターの際、青徹の攻撃により左目を負傷し、眼帯をしている。

黄妃 (こうひ)

黄国出身の亜国の正妃で、亜姫の母。15歳で亜王に嫁いだ。体調を崩し、狭く日当たりの悪い室に追いやられてから、ますますやせ細っていく。最期は、亜姫を生き延びさせるために、自ら毒を仰いだ。

青徹 (せいてつ)

元は黄国の貴族の息子で、青逸の弟青蓋。黄妃が亜国にくる前から仕えていたが、王妃の愛人と噂され、黄国に帰国。その後、亜国を再訪問した際、黄妃親子を脱走させようとして失敗。片目を失い、元の身分を隠して亜国で商人青徹として働きながら、黄国のスパイとしても活動していた。 子どもの亜姫・薄星と出会い、武芸や学問をたたき込む。

亜王 (あおう)

亜国の王で亜姫の父親。冷徹で王らしい一面を持ちつつも、宮廷内の池で釣りをすることも。生まれよりも能力を重視し、亜姫に玉璽の片方を託す。土妃のクーデターで死亡する。

青逸 (せいいつ)

黄国の大夫で、国境を守っていた亡き将軍青英の息子。青徹の実の兄。背が小さい妻、桐を愛している。飄々とした性格だが、武芸の腕は立つ。

宮女 (きゅうじょ)

亜国の宮廷に仕えながら、青徹の手下として黄国の細作(スパイ)をしていた。土妃に捕まり、舌と手の筋を切られながらも、クーデターの際、青徹に玉璽の片方を託されて逃走する。

高風 (こうふう)

亜国の宰相。土妃と共に国のためと思い、クーデターを起こす。

(たん)

曾国の第一王子。曾国の宰相・姜家(きょうけ)から嫁いだ后の子ども。背が小さいが、それ以外は人望も実力もあり、非の打ちどころがない。兄の元第一王子光を暗殺して、第一王子になった。亜姫を見るため、身分を隠し、隗旦として黄国に入り込むも、亜姫に本当の身分を見破られる。

(こう)

曾国の前第一王子。旦にそっくりな顔をしており、武芸・勉学とも優れているが、性格はどこかずれており、ときどき周りをイライラさせている。土国から輿入れした妃を母に持つが、母は粗雑に扱われて亡くなってしまった。

(しろ)

白髪金色の目をした美女。曾国の元細作(スパイ)で光殺害を命令されるが、失敗。記憶をなくしたときに光に翠蝉と名付けられる。やがて記憶を取り戻し、光を刺すが、殺すことができず、傷ついた光をつれて山野中へ逃げ隠れる。

陳騰 (ちんとう)

黄国の宰相。最初は亜姫をあまり好ましく思っていなかったが、彼女が天災の混乱を見事おさめたことで次第に態度が軟化する。

黄王 (こうおう)

黄国の王で亜姫の祖父。冷徹に見えるが黄妃が嫁入りの時は、無事を祈ってかんざしを贈った。死に際に「最初で最後の王者としての教育」と称して、亜姫を特別職・御史大夫(副宰相)につけさせ、天災の混乱を収束させるように命じる。

(とう)

黄国の大夫青逸の妻。背が小さく、髪型がたまねぎと言われることも。お金がなにより大事。

亜王子 (あおうじ)

亜国の第一王子で亜姫の腹違いの弟。母親は土妃。詩文は得意だが、まるまると太っており、14歳になってもひとりで馬に乗れず、亜王に「将来が知れる」とあきれられる。

曾王 (そうおう)

曾国の王で旦や光の父親。子どもが多く、10人もの王子がいる。誰も信用せず、高圧的な王だが、友人のクーデターを体験するまでは、民衆のために働く、人望のある王だった。

蛇波流 (じゃはる)

褐色の肌をした胡人の商人で細作(スパイ)。旦により薄星を殺すための刺客として亜姫の身辺に潜むが、任務に失敗し、薄星に従うことに。

高荀 (こうじゅん)

黄国の大夫で郡尉。最初は亜姫の来訪を迷惑に思っているが、その手腕を認めるようになる。

段謹 (だんきん)

曾国の第一王子・旦と常に行動をともにしている士大夫。もとは曾王に仕えていた。旦とは、「糞王子」「糞じじい」と呼び合う仲。

場所

亜国 (あこく)

亜国・黃国・土国・曾国の4国の中で西部に位置している。西域との交易が頻繁に行われ、珍しい品物が手に入りやすい。学問が盛んな豊かな国である。

土国 (どこく)

亜国・黃国・土国・曾国の4国の中で南部に位置している大きな国。隙あらば、まわりの国に戦争をしかけている。

黄国 (あこく)

亜国・黃国・土国・曾国の4国の中で東部に位置している。古くからある文化的な国だが、周りから領土を削り取られて、いまや小国になっている。美人が多いと言われている。

曾国 (あこく)

亜国・黃国・土国・曾国の4国の中で北部に位置している。途中まで、各国の小競り合いに参加せず、沈黙を保っていた。

その他キーワード

大夫 (たいふ)

『女王の花』の中に出てくる身分。貴族階級を指す。士大夫はその中でも高い官職にある人を指す。

千年の花 (せんねんのはな)

『女王の花』の中に出てくる、願いを叶えるおまじないの言葉。千年に一度しか咲かないという千年の花があり、どんな願いも叶えてくれるという。誰も手に入れたことがないので、この言葉はおまじないの言葉だと薄星が亜姫に教える。

書誌情報

女王の花 15巻 小学館〈フラワーコミックス〉

第1巻

(2008-08-26発行、 978-4091320094)

第2巻

(2010-07-26発行、 978-4091333834)

第3巻

(2011-01-26発行、 978-4091336545)

第4巻

(2011-07-26発行、 978-4091336903)

第5巻

(2012-01-26発行、 978-4091343086)

第6巻

(2012-08-24発行、 978-4091345004)

第7巻

(2013-02-26発行、 978-4091350855)

第8巻

(2013-08-26発行、 978-4091354495)

第9巻

(2014-02-26発行、 978-4091357649)

第10巻

(2014-08-26発行、 978-4091363121)

第11巻

(2015-02-26発行、 978-4091368201)

第12巻

(2015-08-26発行、 978-4091376497)

第13巻

(2016-02-26発行、 978-4091382894)

第14巻

(2016-08-26発行、 978-4091384799)

第15巻

(2017-03-24発行、 978-4091391247)

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