歪のアマルガム

歪のアマルガム

謎の組織によって、人間を化け物に変貌させる妖細胞を移植されてしまった少年・久佐場六道が、人間の体を取り戻すために、数々の妖力を持った者と戦う姿を描いたダークバトルファンタジー。「週刊少年ジャンプ」2016年45号から2017年12号にかけて掲載された。

正式名称
歪のアマルガム
ふりがな
いびつのあまるがむ
作者
ジャンル
ダークファンタジー
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概要・あらすじ

平凡かつ平穏な日常を送っていたお人好しな高校生・久佐場六道は、幼なじみの少女・火野繭生とデートの約束を取り交わしたその日、踏み切りに入った幼児を助けようとして電車にはねられてしまう。致命傷を負い、と名乗る謎の組織に囚われの身となった六道は、科学者のサラ・ヴェーレンによって体内に妖細胞を移植され、巨大な骨の怪物・がしゃ髑髏にされてしまうのだった。

しかし、繭生に対する強い想いによって妖細胞の制御を逃れた六道は、強靭な精神力を発揮して自我を取り戻し、妖と人間の融合体・混ざり者へと変貌を遂げる。平凡な日常を失ってしまった六道は、牛頭次郎に導かれて賽壊滅を目的とした警視庁の秘密部署・零課に入り、妖力を行使する者と戦いながら、人間に戻る手段を探ることになるのだった。

登場人物・キャラクター

久佐場 六道 (くさば ろくみち)

お人好しの男子高校生。弱い者を放ってはおけない優しい性格をしている。血液型はA型。母親はすでに亡くなっており、父親によって男手ひとつで育てられた。幼なじみの火野繭生に密かに想いを寄せる、平穏な高校生活を営んでいた。踏み切りで幼児を助けようとして電車に轢かれ、下半身と左腕を失う重傷を負う。そこで死の商社・賽の研究施設に連行されてしまう。 そこで科学者のサラ・ヴェーレンの実験台となり、体内に妖細胞を埋め込まれ、骨の怪物であるがしゃ髑髏にされてしまった。しかし、繭生に対する強い想いによって自我を取り戻して怪物の力を制御下に置き、妖と人間の融合体である混ざり者となる。その後は、賽の撲滅を目的とする警視庁の秘密部署である零課に入り、妖力を持つ者と戦いながら、人間に戻る道を探ることになった。 混ざり者となっても、人格は六道そのもので、例え敵であっても目の前で人が死ぬことを嫌う。失った下半身と左腕が無限に創成される骨に入れ替わっており、骨を自在に変形させて、相手を攻撃できる。父親が海外に赴任しているため、長らく一人暮らしをしており、家事全般が得意。

火野 繭生 (ひの まい)

文武両道の女子高生。久佐場六道の幼なじみ。とても可愛い少女で、学年でも注目の的になっている。六道も密かに彼女のことを想っている。明るくはつらつとした性格の人気者だが、六道だけには、ことあるごとに得意の空手で暴力を振るうというバイオレンスぶりを見せる。しかし、本心では六道を憎からず想っており、六道からデートに誘われただけで、顔を真っ赤にしてドギマギしてしまうほどのツンデレぶりを発揮する。 混ざり者となり、変わり果てた六道の姿を見ても、「どう見たって私の幼なじみ」と断言するほど、六道に対する想いと信頼は厚い。

牛頭 次郎 (ごとう じろう)

賽壊滅を目的とする警視庁の零課の次長を務めている男性。端正な顔立ちをしているが、右目から頬にかけて細い傷が入っており、いつも右目を閉じているのが特徴。一見すると明るく饒舌で、面倒見が良さそうな好青年。混ざり者となった久佐場六道に対しても優しく接していた。彼に「人間に戻る方法はない」ことを告げて、今までの生活を捨てて別人として生きることを淡々と強要するなど、実はかなりドライな性格をしている。 人間に戻りたいという強い意思を持ち、怪物の力を完全に我が物とした六道の能力を買い、彼を零課に入れて賽壊滅の一員として扱うことになった。「運命は自ら決めて進むもの」というのが持論。頭脳は明晰で、戦闘能力もかなり高い。

黒水 影舟 (くろみず えいしゅう)

警視庁の零課に所属している、長髪をお下げにした美男子。表向きは久佐場六道の通う学校に転入して来た一介の転校生だったが、裏では賽を壊滅させるための捜査活動に従事している。クールな雰囲気をした剣の達人で、国家の汚れ仕事を一手に引き受ける黒水家の生まれ。母親の厳しい指導のもと、幼い頃から妖細胞の実験失敗者を闇に葬る修行を積んできた。 そのため、正義のために戦っているという自覚が強く、妖や実験失敗者に対しては一切の容赦をしない。賽への潜入捜査中に混ざり者となった六道と居合わせた時も、彼に「平和の為に死ね」と言い放ち、六道が自我を失った暁には「真っ先にブチ殺す」と宣言していた。零課に配属された六道を、甘い性格の愚図と見下していたが、彼の真っ直ぐな生き方を見ていくうちに、自身の信念にわずかだが揺らぎが生じていく。

サラ・ヴェーレン (さらゔぇーれん)

賽に所属する女性科学者。人を人とも思わない非道なマッドサイエンティストで、人間の苦痛に満ちた悲鳴にエクスタシーを感じる異常者。街で実験体となる人間を集めては、研究施設内で妖細胞を移植し、妖を生み出す実験を行っていた。ほとんどの実験は失敗に終わっているが、ごく稀に成功することがあり、完成体に番号を付けて賽の支配下に置いていた。 賽の科学力をハネ上げた張本人だが、実は生きた人魚の肉を喰らい、800年前から生きながらえている不老不死の生命体。妖細胞のもととなる「木乃伊」の母親。欲望のままに生きた末に、数百年の間死ぬ方法を探していたが、その望みがかなわないと知り、世界中の人間を不老不死にするために活動していた。混ざり者となった久佐場六道に、人類の進化の可能性を感じ取る。

尾崎 京 (おかざき けい)

頭に包帯を巻いた混ざり者の男性。8歳の頃、関東地方にある離島で大量殺人を犯した過去を持ち、今は都内で日雇いのアルバイトをしながら、廃墟となった元病院に住んでいる変人。都内で発生した妖力を使った猟奇殺人の容疑者として、賽の捜査対象となる。サラ・ヴェーレンによって妖細胞のTYPE「九尾の狐」を移植されており、「万象変化」という物質の分子構造を強制的に組み換える妖力を使いこなせる。 その力で人間の顔の皮膚を強制的に結合して口や鼻を覆い、犠牲者を窒息死に追い込んでいた。幼少の頃の記憶から、他人の「ビビッている顔」と「激怒している顔」を嫌悪している。怪獣映画が好き。

宇治橋 美姫

賽の実働部隊隊長を務めている少女。サラ・ヴェーレンによって体に武器を埋め込まれた「内蔵者」と呼ばれる賽の兵隊で、移植部位は体の90%以上。あらゆる場所から銃が飛び出し、相手を射撃することができる。長期捜査に出向いていた牛頭次郎の部下を拷問の末に殺害し、次郎らが拠点にしていた寄宿舎を襲撃する。落ち着きのない攻撃的な性格をしており、大人と大人が作った世界が嫌い。

森 不動 (もり ふどう)

賽の実働部隊副隊長を務めている男性。行動中も常にガスの元栓や、借りたDVDの返却日を気にしている神経症気味なタイプ。おどおどした態度からは想像もつかない賽最強の実力者で、帝国陸軍が開発を進めていた超音波兵器「く号兵器」を、サラ・ヴェーレンによって左腕に仕込まれている。その圧倒的な力は妖の「五号」ですらひれ伏させるほど。 宇治橋美姫と一緒に牛頭次郎の拠点である寄宿舎を長期にわたって襲撃し、黒水影舟と死闘を繰り広げる。

空祐 (くう)

マスクをした長髪の男性。サラ・ヴェーレンによって妖細胞を移植された「二号」と呼ばれる妖。重力場を操り、物体を浮かせたり、思いの方向へと操作する妖力「神通力」を持ち、触れたあらゆるものを吸い込む極小のブラックホール「凶星」を作り出すことができる。自分を救ってくれたサラに対する愛情を糧として活動しているが、それらの記憶はすべてサラが植え付けた偽りのものだった。

しゃもじ

おチャラけた雰囲気の男子高校生。髪型をオールバックにしている。久佐場六道の親友でもある。火野繭生が好きな六道の心底を見抜き、六道の携帯電話で繭生に待ち合わせのメッセージを送ることにより、2人がデートの約束を取り付けるきっかけを作っていた。本名は「社文治」だが、あだ名の「しゃもじ」が馴染みすぎて、本名を知らない友人もいる。

がしゃ髑髏 (がしゃどくろ)

サラ・ヴェーレンによって妖細胞を移植された久佐場六道が変貌を遂げた姿。全身が骨で覆われた巨大な化け物で、サラからは「六号」と呼ばれていた。骨を無限に創成する妖力を備えており、外郭をいくら破壊しても、倒すことができない。妖細胞に取り込まれた六道の強靭な意志によって、内部から骨を破壊され、バラバラに砕け散る。

五号 (ごごう)

巨大な猿のような姿をした妖。好戦的でプライドが高く、自分より弱い生き物は食の対象でしかないが、強い者には従順。森不動に屈服させられていたが、不動がいなくなった後は空祐の支配下に置かれ、以前よりも従順になる。電気信号を操り、人間の記憶を操作できる妖力の持ち主。

集団・組織

零課 (れいか)

警視庁刑事部の部署。賽壊滅を目的として活動している特殊な組織で、刑事部内でも存在を知る者はわずかしかいない。違法操作も容認されている少数精鋭の特務課。妖や妖力を持つ者との戦いを強いられるため、メンバーには高い戦闘能力が要求される。混ざり者となった久佐場六道は、日常へ帰る道を探るために零課に入る。

(さい)

科学兵器を製造・販売して資金を得ている犯罪グループ。死の商社。もともとは日本帝國陸軍の研究機関であり、「木乃伊」から取れる妖細胞の研究を進めていた組織だった。現在はサラ・ヴェーレンを招き入れて、優れた生体兵器となる妖の製造に注力していた。しかし、当のサラは賽と敵対する零課に内部情報を流して組織の弱体化を図っており、世界の人間をすべて不老不死者にするために、組織を利用されていたことがのちに判明する。

その他キーワード

(あやかし)

「木乃伊」から取り出した妖細胞を移植された人間が変異した姿の総称。移植が成功すれば、異形と能力を持つ恐るべき怪物となる。しかし、ほとんどの場合は失敗し、被験者は中途半端な姿になったまま、数日のうちに死んでしまう。サラ・ヴェーレンから妖細胞を移植された久佐場六道は、妖のがしゃ髑髏へと変貌を遂げていた。

混ざり者 (あまるがむ)

妖細胞を移植された人間が、細胞の力を意思の力で押さえ込んで融合し、人間としての人格を保った姿。姿形は人間に似ており自我もあるが、強大な妖力を行使できる。混ざり者となってしまった久佐場六道は、それまでの平穏な暮らしを捨て、零課に入ることになった。

妖細胞 (あやかしさいぼう)

6体の異形の赤ん坊の「木乃伊」から採取された細胞のこと。「木乃伊」は昭和17(1942)年に山間の村で発見された。日本帝國陸軍の研究機関である賽によって、生体兵器としての可能性を見出され、終戦後も研究が進められていた。移植された人間は恐るべき能力を持つ異形の妖に変貌するか、不完全な失敗作となって脳が壊死し、死を待つのみとなる。

妖力 (すぺっく)

妖や混ざり者が備えている、人知を超えた強大な特殊能力。個体によって妖力は大きく異なり、骨を無限に再生できたり、対象となる人間の記憶を操るといった、さまざまな能力が存在している。

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