DOUBLE DECKER! ダグ&キリル

DOUBLE DECKER! ダグ&キリル

テレビアニメ『DOUBLE DECKER! ダグ&キリル』のコミカライズ作品。新米警察官のキリル・ヴルーベリとベテラン刑事のダグラス・ビリンガムが、特殊な麻薬「アンセム」の絡む事件に挑む姿を描く、バディ刑事アクション。刑事もののお約束を抑えつつ、コメディ要素も盛り込まれている。「となりのヤングジャンプ」で2018年10月1日より2020年3月30日にかけて配信された作品。

正式名称
DOUBLE DECKER! ダグ&キリル
ふりがな
だぶる でっかー だぐあんどきりる
原作者
サンライズ
作者
ジャンル
警察官・刑事・検察官
 
アクション
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

二つの太陽にほえろ

ヒーロー願望を持つ新米警察官のキリル・ヴルーベリだったが、その意気込みに反して、やることなすことうまくいかず、職場ではお荷物扱いされていた。そんな中、キリルは大家に猫捜しを頼まれるものの、その最中に凶悪犯のサイラス・マルチネスの立てこもり事件に遭遇する。ヒーローになるチャンスが巡ってきたと興奮するキリルだったが、本物の凶悪犯を前にして何をしたらいいかわからず、一人戸惑ってしまう。だが、そこにSEVEN-Oに所属するベテラン捜査官のダグラス・ビリンガムが現れる。SEVEN-Oは特殊な麻薬「アンセム」の捜査を専門としており、サイラスはアンセム使用の疑惑が濃厚だった。しかし、証拠がないために捜査権が制限され、ダグラスは手が出せずにいた。そのため、ダグラスはお調子者のキリルを言いくるめ、半ばおとりのような形でサイラスと対峙させることによって、アンセム使用の証拠をつかむ。そしてダグラスの手によってサイラスは無力化され、無事に事件は解決する。キリルは事件に勝手に乱入したことをこっぴどく叱られたものの、ダグラスの推薦もあり、SEVEN-Oに異動することが決まる。そしてキリルはダグラスを相棒にして、SEVEN-Oの刑事として新たな一歩を歩み始める。

密着リスヴァレッタ警察24時!

キリル・ヴルーベリダグラス・ビリンガムSEVEN-Oの一員として、アンセムの捜査を行っていた。そんな中、ダグラスはアンセムの売買を行う裏組織「エスペランサ」の幹部であり、逮捕されていた囚人であるザベル・フランケンが、死刑間近に新たな犯罪を自供し出した知らせを受け取る。ザベルは卑屈な小悪党で、エスペランサでは「Z」と呼ばれる幹部だった。ザベルはアルファベット順が、そのまま序列となるエスペランサで最も序列が下だったが、「B」の派閥に属しており、Bを組織のトップにすべく、組織のトップだった「A」を自分の手で殺したと自供を始めていた。ザベルは犯罪の証拠と組織の情報を洗いざらいしゃべるのを条件に、ダグラスに刑を減刑するように司法取引を申し出る。ダグラスはアンセム絡みの事件で暗躍する「B」ことバンブーマンの情報を欲しており、司法取引を受け入れ、ザベルを連れて彼が殺したAの遺体を捜しに向かう。ダグラスたちは廃校となった小学校で遺体を見つけるが、そこにザベルを口封じすべくバンブーマンが襲撃。現場は万全な警備体制を整えていたにもかかわらず、超人的な力を持つバンブーマンに警備員は次々倒されていく。ダグラスとキリルは協力してバンブーマンと戦うものの、その力を前に倒れ、去っていくバンブーマンを見送るだけだった。一方、ザベルは騒動の中、どさくさにまぎれて脱出する。実はエスペランサの序列は逆で、真のボスだったザベルは今までの小悪党然とした態度を一変させる。そして組織に舞い戻ったザベルはバンブーマンたちを従え、新たに暗躍を開始するのだった。

SEVEN-Oは二度死ぬ!

キリル・ヴルーベリダグラス・ビリンガムたちはいつもどおりの日常を送っていたところ、市長候補であるウィリアム・ドーマンの娘が誘拐されたという話が届く。通常であればSEVEN-Oアンセム以外の事件に関して捜査権を持たないが、誘拐犯がエスペランサであるため、捜査権がリスヴァレッタ軍部に移譲され、SEVEN-Oは軍部と協同して事件の捜査を行うこととなる。軍部の長官であるブライアン・クーパーの指揮のもと、ダグラスは身代金の受け渡し現場に赴くが、そこでダグラスはエスペランサに捕まってしまう。実は誘拐事件は、ウィリアムが次の市長選に勝つために仕組んだ自作自演の事件で、ウィリアムはエスペランサと裏でつながっていた。ウィリアムは事件に協力する見返りとしてSEVEN-Oに失態を起こさせて、エスペランサに有利な状況をつくり出すことを約束していたが、エスペランサはこの約束を反故にし、独自に動き出す。ザベル・フランケン対AMS弾の情報を欲しており、自作自演の誘拐事件を隠れ蓑にダグラスを誘拐し、情報を手に入れようとする。一方、キリルたちは用済みとなって放逐されていたウィリアムと娘を回収。彼らの口から事件の真相を知り、ダグラス救出に動き出す。絶望的な状況だったが奇しくもアップル・ビーバーが直前に開発していた「視界ジャック」のおかげで、SEVEN-Oはダグラスの居場所をつかみ、彼を助け出すことに成功する。事件は無事に終息したが、事態を重く見た軍部は、エスペランサ根絶に本腰を出し始めるのだった。

そして誰もいなくならなかった!

ブライアン・クーパーは、一連の事件でキリル・ヴルーベリに興味を覚え、彼をリスヴァレッタ軍部にスカウトする。ヒーローにあこがれるキリルは特別な存在になれるというクーパーの言葉に心揺れ、自分の将来に思いを馳せる。一方、エスペランサは軍部による締め付けが厳しくなり、次々と摘発されていた。SEVEN-Oも捜査に駆り出され、その日もエスペランサのアジトを制圧して、犯人たちを検挙していた。しかし、それはザベル・フランケンによる陽動作戦で、がら空きとなったSEVEN-O本部がエスペランサに強襲される。ザベルはアップル・ビーバーを詰問して対AMS弾の情報を手に入れるものの、エスペランサ内部の不審な動きを察して退却。そしてザベルはバンブーマンが自分を裏切っていることに気づき、彼を粛清しようとする。だがバンブーマンはその恐るべき正体を現し、逆にザベルを撃退する。九死に一生を得たザベルは、その情報をSEVEN-Oに流すことでバンブーマンに一矢報いる。そして真実を知ったSEVEN-Oは、バンブーマンの野望をくじくべく、巨悪との決戦に挑む。

関連作品

テレビアニメ

本作『DOUBLE DECKER! ダグ&キリル』は、テレビアニメ『DOUBLE DECKER! ダグ&キリル』を原作としている。原作アニメ版は、2018年9月から12月にかけて、TOKYO MX、BS-11、毎日放送、インターネット配信ほかで放送された。制作はサンライズとDD PARTNERSが担当している。キャストは、キリル・ヴルーベリを天﨑滉平、ダグラス・ビリンガムを三上哲が演じている。

登場人物・キャラクター

キリル・ヴルーベリ

ヒーロー願望を持つ警察官の青年。紫がかった髪に、女性と見まごうばかりの整った容姿の持ち主。しかし、やる気だけが空回りする言動が多いため、その雰囲気は三枚目感が非常に強い。座右の銘は「Don't think, feel so good(考えるな気持ちがいい)」。思い込みが激しく、後先考えずに行動してしまうお調子者で、ヒーローを目指して警察官になったものの、まともに仕事ができずに上司に怒られてばかりいた。立てこもり事件で、ダグラス・ビリンガムと共闘した件をきっかけにSEVEN-Oに異動し、ダグラスとコンビを組むようになる。当初、トラヴィス・マーフィーからは「ルーキー」とあだ名を付けられたが、キャサリン・ロシュフォールがSEVEN-Oに着任したため、わずか1日でルーキーのあだ名は終了。その後、新たに「パーマ」「オカッパ」と名付けられたがどれも定着せず、最終的に「カリアゲ」で落ち着いた。バカ丸出しだがよくも悪くも真っすぐな性格で、そのひたむきさで事件を解決したり、仲間をフォローしたりしている。思い込みが激しいためにバカ扱いされているが、頭自体は悪くなく、アンセムの事件にかかわるようになって以降、遺伝子工学を勉強しており、その知識量は専門家のアップル・ビーバーに賞賛されるほど。また学生時代は、読んでいた漫画の影響で論文を執筆したところ、学会で絶賛されるなど、意外と地頭はいい。両親は死別しており、血のつながっていない祖父に姉・ミラと共に育てられた。しかし唯一の肉親のミラは、突如行方不明となる。また、ミラが男性だと知らず、ミラが再会して正体を明かすまでずっと「姉」と思っていた。実はキリル・ヴルーベリ自身すら知らなかったが「ニカイ」の出身者で、先天的にアンセムの抗体を持つ特異体質者。ニカイは検体としてキリルの存在を求めており、両親はそれを拒否してキリルを逃がした。ニカイにとってその身の価値は計り知れず、ブライアン・クーパーがそれに気づいたあと、あらゆる手段を使ってキリルを確保しようとしている。

ダグラス・ビリンガム

SEVEN-Oに所属する捜査官の男性で、階級は巡査部長。ダークブラウンヘアで、鋭い目つきをしている。愛称は「ダグ」。トラヴィス・マーフィーから付けられたあだ名は「ベテラン」。シニカルな理論派で、仕事に私情を持ち込まないドライなところがあるが、仲間に対してはおちゃめな一面を見せたりする。偶然、事件に居合わせたキリル・ヴルーベリと協力して事件を解決に導き、それをきっかけにしてキリルをSEVEN-Oに推薦。その後はキリルとコンビを組んで行動するようになる。「貧困」と「格差」を嫌い、それを根絶することを信念としている。新米警察官だった頃、初めて相棒となったのは情報屋のパット・モリーノ。彼女が死んだことを深く後悔しており、のちのダグラス・ビリンガム自身の信念にも深い影響を与えている。パットを殺したグッドルッキング・ジョーを憎んでおり、ジョーのかかわる事件ではふだんの冷静さをかなぐり捨て、怒りをあらわにする。

ディーナ・デル・リオ

SEVEN-Oに所属する捜査官の女性で、階級は警部補。ショッキングピンクのツインテールの髪型で、ピアスをつけ、ギャル風ファッションに身を包んでいる。トラヴィス・マーフィーから付けられたあだ名は「ピンク」。過激な言動と男勝りな口調で、見た目も相まって刑事っぽくない。一方で洞察力や胆力はかなりのもので、刑事としては優秀な人物。ふだんの派手な服装も、うまく裏社会に溶け込むことが目的で、効率よく情報収集するための側面もあり、刑事としてのプロ意識は非常に高い。また仲間意識が強く、仲間のピンチにはすぐさま駆け付ける。新米のキャサリン・ロシュフォールとコンビを組んで行動している。銃の腕もかなりのもので、特に狙撃に関してはSEVEN-O内でも随一の能力を発揮する。

キャサリン・ロシュフォール

SEVEN-Oに所属する捜査官の女性で、階級は巡査。茶髪のボブヘアで、生真面目な性格をしている。優等生然とした見た目で、スーツを着た新人警察官。愛称は「ケイ」。キリル・ヴルーベリの一日遅れで着任したため、SEVEN-O内では一番の新入りで、トラヴィス・マーフィーから付けられたあだ名は「ルーキー」。ディーナ・デル・リオとコンビを組んで捜査を行っているが、型破りなディーナの言動に振り回されることが多い。当初はディーナと衝突することが多かったが、次第に先輩として尊敬するようになり、息の合った名コンビとなっていく。新人ながら優秀な能力を持つが、ルールに縛られすぎて、臨機応変な判断ができないなど経験的に未熟なところがある。ふだんは品行方正な優等生として振る舞っているが、実は大食漢で、ドーナツセットをあっという間に平らげるほどの早食いを見せる。

マキシーン・シルヴァーストーン

SEVEN-Oに所属する捜査官の女性で、階級は巡査長。パンキッシュのファッションに身を包み、金髪をソフトモヒカンにセットしている。愛称は「マックス」。トラヴィス・マーフィーから付けられたあだ名は「ボクサー」。見た目は威圧感があるが、仲間思いの面倒見のよい性格の持ち主で、相棒のユリ・フジシロからも慕われている。乗り物の運転が得意で、ユリとバイクにタンデムして駆け付けることが多い。SEVEN-O本部襲撃事件の際に、ユリを失った際には強いショックを受けたが、責任感の強さからすぐに仕事に注力し、キリル・ヴルーベリ救出をサポートした。表向きは平常心を保つ心の強さを見せたが、内心では強いショックを引きずっており、ユリが実は生きているのを知った際には涙を流して再会を喜んだ。

ユリ・フジシロ

SEVEN-Oに所属する捜査官の女性で、階級は警部補。白い肌に白い髪、白い服と全身白ずくめで、瞳だけが真紅に輝いている。トラヴィス・マーフィーから付けられたあだ名は「ロボット」。優しい性格で物腰が柔らかく、マキシーン・シルヴァーストーンとコンビを組んでいる。その正体は正真正銘のロボット(アンドロイド)で、SEVEN-O内では周知の存在として扱われている。しかしキリル・ヴルーベリは、SEVEN-Oに入ったあともしばらく気づかなかった。キリルはユリ・フジシロがロボットであることに気づいたあとも、ダグラス・ビリンガムにからかわれたせいで重要な秘密と思っており、ユリがロボットであることを隠そうと勝手に行動している。見た目は人間とそっくりだが、人間をはるかに超える怪力を発揮し、その特性を生かしてわざと犯人に捕まって内部に潜入する捜査を得意としている。ロボットだが感情豊かで仲間思いであるため、仲間たちからもかけがえのない存在として認められている。SEVEN-O襲撃事件で、キリルをかばって敵が放った発射型の爆弾が体に付着。仲間の命を救うため、本部ビルから自ら身を投げ出し、爆発で木っ端みじんに吹き飛んだ。コア部分に記憶が蓄積されているため、コアさえ無事なら再生可能だったが、コアも大部分が粉々になって再生不可能状態となる。しかし実はトラヴィス・マーフィーが、本部襲撃前に行われたユリのメンテナンスで、コーヒーをこぼしてユリのメンテナンスを台無しにしており、トラヴィスはその不祥事を隠すべく、勝手にコアを複製し、コピーのユリを作ってミスをもみ消していた。爆発したのはコピーのユリで、本物のユリは事件解決後に合流し、仲間たちを喜ばせた。なお、コアのコピーは本来は重大な禁止事項に当たるらしく、発覚したあとトラヴィスは土下座して謝罪している。

アップル・ビーバー

SEVEN-Oの装備開発を担当する少年。年齢は17歳。褐色の肌で、金髪ロングへアにしている。若くして数々の装備を開発した天才科学者ながら、ノリが若干キリル・ヴルーベリに近く、周囲にはアップル・ビーバー自身を「博士」や「ドクター」と呼ばせようとする。しかし仲間たちからは「アップル」としか呼ばれないため、不満に思っている。自らの天才性を自負し、少し自意識過剰気味な言動が多いが、素直に好意を向けられると照れるなど年相応な反応も見せる。アイシステムの開発にもかかわっており、のちにシステムを改良して「視界ジャック」機能を追加している。SEVEN-O本部襲撃事件では、ソフィー・ゲンズブールと共にザベル・フランケンに捕まり、人質になったソフィーを助けるため、アイシステムの仕組みをザベルに漏らしてしまう。

ソフィー・ゲンズブール

SEVEN-Oの通信士を務める女性。童顔で舌足らずの独特なしゃべり方をするため、一見すると幼い印象を与える。しかし性格は意外とシビアなリアリストで、ソフィー・ゲンズブール自身の外見などをうまく利用して立ち回っている。無線で捜査員たちに情報を伝えるのを主な役割としているが、トラヴィス・マーフィーの秘書的な役割も担っている。SEVEN-Oに採用されたのもトラヴィスの好みだったことが大きく、トラヴィスからは自分の下心を隠そうともせず、よく言い寄られている。しかし毎回、適当にトラヴィスをあしらっており、強かな一面を見せる。SEVEN-O本部襲撃事件では、アップル・ビーバーと共にザベル・フランケンに捕まる。

トラヴィス・マーフィー

SEVEN-Oを統括する男性で、階級は警部。見た目はダンディズムあふれる中年紳士だが、中身は割と適当で小物っぽい言動が多い。そのバカっぽさはキリル・ヴルーベリと同レベル。刑事ドラマ風の設定が好みで、部下に勝手にあだ名を付け、自分を「ボス」と呼ばせようとする。ただしトラヴィス・マーフィー以外は、まともにあだ名で呼んでいる者はいない。悪人ではないが、職権乱用して自分好みのソフィー・ゲンズブールを採用したり、自分のミスをもみ消そうとしたりするなど、器の小ささを随所に見せる。えらそうにしているが中身がないため、部下たちからは尊敬されていない一方で、組織的に難しい立ち位置にあるSEVEN-Oをうまく機能させており、まったくの無能というわけではない。トラヴィスの提唱する「ダブルデッカーシステム」も、捜査員同士がお互いを監視することで、捜査員がトカゲの尻尾切りをされる危険を防ぐ意味合いもあり、それらは一定の成果を収めている。SEVEN-O本部襲撃事件の際には、トラヴィスのミスが思わぬ功を奏し、ユリ・フジシロの命を救っている。

デリック・ロス

ダグラス・ビリンガムの元相棒で、バーテンダーの男性。褐色肌で、眼鏡をかけている。キリル・ヴルーベリの着任前に、内偵中に負傷して入院した。その後、警察官を辞めて、長年の夢だったバーテンダーとなる。また、ダグラスたちの説明がまぎらわしかったため、キリルからはずっと、ダグラスの前の相棒は死んだと思われていた。退職金で大型バスを買って改装し、そこでバーを営んでいる。バーは名前を付けていないため、「ノーネーム」「デリックズバー」と呼ばれている。警察官に戻るつもりはないが、彼らとは今も交流を続けており、時折相談にも乗ったりしている。頼れる兄貴分としてキリルたちに接しているが、経営者としての手腕は微妙で、アルバイトに給料を払うどころか、逆にお金を借りている状態。また料理の腕もいまいち。ミラが男性だと気づいておらず、ずっと女性だと思い込んでいる。キリル救出作戦の際には、バスを使って軍部研究施設を襲撃。バスを身代わりにしてSEVEN-Oの面々の脱出を助けた。

ミラ

キリル・ヴルーベリの9歳年上の姉。長く伸ばしたスミレ色の髪をポニーテールにまとめており、美しい顔立ちをしている。両親とは死別したため、血のつながっていない祖父と共に幼いキリルの面倒を見ていた。しかし10年前、キリルの前から姿を消し、現在は行方不明となっている。デリック・ロスのバーでアルバイトをしていたところ、キリルと再会する。実は男性で、本名は「ヴァレリー・ヴルーベリ」。キリルですら再会するまで男性であることに気づいておらず、ずっと姉と思い込んでいた。再会後はキリルに正体を明かし、「兄」として接するようになる。秘密にしているわけではないが女装が趣味で、女性姿でいることが多い。正体を明かした際にSEVEN-Oの面々も知ることとなるが、デリックのみはディーナ・デル・リオによる「おもしろそうだから」という理由で教えられておらず、ミラを女性だと思い込んでいる。実はニカイからの逃亡者。当時、物心ついていなかったキリルと違い、事情をある程度知っていたため、アンセムの抗体を持つ弟を守るために行動していた。リスヴァレッタで出会った老人に、事情を打ち明けたうえで受け入れてもらい、老人を祖父として慕って暮らしていた。女装もニカイの捜査から逃れるために始めた苦肉の策で、キリルを守るために一人旅立ったのが家出の真相だった。

大家 (おおや)

キリル・ヴルーベリの住む戸建ての大家を務める老婆。高齢の割にファンキーな恰好をしており、言動もやや荒っぽい。キリルの弱みを握っており、時折彼を便利に使っている。キリルに愛猫のポチの捜索を頼んだことが、キリルがSEVEN-Oに入るきっかけとなった。意外と謎が多い人物で、キリルがブライアン・クーパーにさらわれた際には、キリル救出のためにサブマシンガン片手にデリック・ロスのバスに乗り込み、敵を相手に大立ち回りを演じた。

ポチ

大家の飼っている猫。黒と白の毛並みが特徴で、どこかふてぶてしい顔立ちをしている。性別はメスで、子猫を育てている。自由気ままな性格で、よく大家のもとを脱走している。そのため、キリル・ヴルーベリは大家にポチを捜すのを頼まれ、これがキリルの運命を大きく変える出来事となる。事件後はキリルに懐いているようで、子猫たちと共によく彼の部屋に乱入している。

モーガン

情報屋を営む中年男性。でっぷりとした体型で、ヒゲを生やしている。姉・ミラの行方を捜しているキリル・ヴルーベリが情報を求めたことで知り合った。キリルが警察官になったあとも付き合いがあり、時折情報を渡している。意外と義理堅い人物で、キリルを小僧扱いしながらもかわいがっており、彼がリスヴァレッタ軍部に捕まった際には、ダグラス・ビリンガムに裏から武器を流して、キリルの救出を助けた。

パット・モリーノ

情報を売って暮らす身寄りのない少年。年齢は12歳。靴を磨きながら情報を集め、それを売っていた。8年前、グッドルッキング・ジョーの靴磨きをしていた際に、塗る靴墨を間違え、それに激昂したジョーに13発の銃弾を撃ち込まれて死亡した。本名は「パトリシア・モリーノ」で、少年の振りをしていたが、本当は女の子。情報屋ながら、実は情報の対価にお金をもらったことはなく、犯罪者の情報を当時、新米警官だったダグラス・ビリンガムに教えていた。ダグラスは対価のお金を渡して、危険な情報屋稼業から足を洗わせようとしていたが、パットは頑なにお金を受け取らず、情報屋稼業を続けていた。その結果、ジョーに殺されたため、ダグラスはそのことを未だに後悔している。またパットの件がきっかけで、ダグラスが「貧困」と「格差」をなくしたいと強く思うようになった。ダグラスから生前、護身用に小型銃「レディ・ジョーカー」を渡されていたが、使われることなくパットの墓に納められている。

ウィリアム・ジェファソン

L.V.P.D.第六分署の一課に所属する青年。爽やかな性格で、妻と子供もいる、絵に描いたようなエリート刑事。後輩のキリル・ヴルーベリをかわいがっており、いつも署長に怒られている彼をからかいつつもフォローしている。キリルがお守りとして持っていた札束を、借金の肩代わりに持っていくが、その直後にサイラス・マルチネスの立てこもり事件を担当することとなる。サイラスと交渉するため、立てこもった廃工場に赴き、サイラスに襲われて重傷を負ったが、キリルとダグラス・ビリンガムの活躍で助かった。実はSEVEN-Oへの栄転が決まっていたが、重傷を負ったために辞退。ウィリアム・ジェファソンの代わりにキリルがSEVEN-Oに異動するのを知ると、キリルに餞別としてお守りの札束を返している。

サム・パーセル

L.V.P.D.に所属するベテランの刑事。ヒゲを生やしている。若い頃から数々の難事件を解決してきた実績を持つ。ただしアンセムの事件は相性が悪く、オーバードライブしたアンセム使用者との戦いでは負傷し、応援に駆け付けたダグラス・ビリンガムたちに現場を預けている。

署長 (しょちょう)

L.V.P.D.第六分署の署長を務める男性。厳つい顔立ちをしている。頭が禿げ上がり、ヒゲを生やしている。キリル・ヴルーベリの上司で、勝手な行動ばかりするキリルに苦言を呈している。あと3年で定年になるため、それまでにキリルに引導を渡すと豪語しているが、一方で彼を気に掛けてもおり、キリルのSEVEN-Oへの異動が決まった際には、口調こそ辛らつだったが実質的な栄転を笑顔で祝福した。

ブライアン・クーパー

リスヴァレッタ軍部で長官を務める男性。ヒゲを生やしている。実直な性格で、ウィリアム・ドーマンの娘が誘拐された際に事件を軍部直轄とし、SEVEN-Oと協力した。事件中、キリル・ヴルーベリのつぶやいた口癖を聞き、彼に興味を覚える。事件解決後もキリルに接触し、彼を軍部に勧誘した。表向きは質実剛健な軍人だが、その正体は「ニカイ」から送られたGMS。本性は力に取りつかれた野心家で、アンセムの実験をすべく、裏ではエスペランサとつながっていた。バンブーマンと同一人物で、ブライアン・クーパーの裏の顔。バンブーマンの超人的な身体能力はGMSの実験によって培われたもので、その力を使って肉体を直接操作して変装し、クーパーとバンブーマンの顔を使い分けていた。アンセムの抗体を持つキリルに執着しており、表と裏で手を回して彼を追い詰める。キリルを手に入れるためなら文明一つ滅ぼしても惜しくないと豪語し、周囲を人質に取ってまでキリルの心を折ろうとする。しかし、ザベル・フランケンを裏切った際にザベルに裏をかかれ、その正体がSEVEN-Oに流出。キリルを救出すべく現れたダグラス・ビリンガムを撃ち殺すものの、実はその流れはすべてダグラスの作戦で、彼らに騙されてアンセムをオーバードライブさせられる。オーバードライブ時は、筋肉が異様に肥大化し、顔がクーパーとバンブーマンで半々となった異形の姿となった。その後は死んだフリをしていたダグラスによって対AMS弾を撃ち込まれ、すべての力を失う。すべての罪が明るみになったうえで現行犯逮捕されたが、往生際が悪く、基地を自爆させて逃亡する。しかし逃げた先でザベルと遭遇し、彼の手によって葬られた。

ウィリアム・ドーマン

次期市長選の有力候補の高齢男性。市長選を前にして娘のサラがエスペランサに誘拐され、軍部の長官で友人でもあるブライアン・クーパーに捜査を依頼する。実はエスペランサと裏取引を行っており、SEVEN-Oに誘拐事件で失態を犯させ、自分が負傷しつつも娘を取り返す英雄となる筋書きを描いていた。エスペランサにとっても薬物の取り締まりに力を入れる現市長を引きずり下ろすチャンスであるため、ウィリアム・ドーマンは計画の成功を信じていたが、結果はエスペランサに裏切られて失敗。その浅はかな計画をザベル・フランケンに利用されたうえに、用済みとなったあとは娘ともども捨て置かれる。その後、真実が明るみになったあとは改心したようで、薬物根絶を掲げて再び一から市長選に臨み、少しずつ支持者も戻ってきている。

ヘンリー・グレン

終身刑で服役中の男性。冴えない顔をしており、刑務所では無気力に過ごしているが、裏でつながっていた看守の一人からアンセムを仕入れ、その力で脱獄した。その後、オーバードライブが起きたが、偶然にも異形化せず、別人のようなハンサムな顔立ちとなる。別人に成りすまして護送車を奪って脱獄するが、ダグラス・ビリンガムに正体を見抜かれて逃走。車を爆走させて逃げ回るが、オーバードライブが再び起きた際に異形化してしまう。異形化に苦しむ中、助けを求めてダグラスの前に姿を現し、対AMS弾で治療されて再び捕まる。

ハリー・ボトムズ

工業地区の労働組合の組合長を務める中年の男性。よれよれのスーツに無精ひげを生やした労働者。肺が弱いため、工場の排ガスで消耗し、いつも顔色が悪い。しかし、薄給でこき使われている労働者の地位向上のため、からだを酷使して工場側と交渉を進めている。自己犠牲精神が強いため、労働者たちからも慕われ、その姿を見たキリル・ヴルーベリも「ヒーロー」として尊敬している。実は「GGオイル」の工場長と裏でつながっており、工場の設備を利用してアンセムを大量に出荷し、売りさばいていた。狡猾な性格で、たびたび警察の目をあざむき、尻尾をつかませずにいた。しかしからだが弱いのは本当で、体を壊した恨みつらみが募り、金に執着する欲望に取りつかれている。アンセムで私腹を肥やし、ひそかに贅沢をしていたが、持っていた詩集がプレミアム品なのをダグラス・ビリンガムに見抜かれ、証拠をつかまれる。すぐに逃亡しようとするものの、証拠隠滅に現れたバンブーマンが工場長をオーバードライブし、暴走した工場長の攻撃に巻き込まれて負傷する。

サイラス・マルチネス

エスペランサの幹部の男性。モヒカン刈りに筋骨隆々とした大柄な体格で、右腕に大型の機関銃を装着している。凶悪な性格をしており、SEVEN-Oは以前から目を付けていたが、アンセムの証拠をつかませないように巧妙に立ち回り、逆に内偵中のデリック・ロスをワナにはめて負傷させている。服役中のザベル・フランケンの釈放を求め、タクシー運転手を人質にして廃工場で立てこもり事件を引き起こす。交渉に訪れたウィリアム・ジェファソンにも襲い掛かり、重傷を負わせた。ダグラス・ビリンガムたちSEVEN-Oは証拠がなかったために手を出せずにいたが、キリル・ヴルーベリの乱入でオーバードライブの確認がなされたため、ダグラスによって対AMS弾を撃ち込まれて無力化された。

グッドルッキング・ジョー

エスペランサに所属する麻薬密売人の男性。顔の左側に大きな傷跡があり、獰猛な顔つきをしている。8年前、エスペランサが一枚岩じゃなかった頃から所属している古株で、エスペランサが内部抗争を起こしている最中に、ダグラス・ビリンガムの最初の相棒であるパット・モリーノを殺し、そのまま行方をくらましていた。ザベル・フランケンの復帰に伴って、再びリスヴァレッタに姿を現す。ダグラスにとって因縁の相手で、ふだんは冷静なダグラスもグッドルッキング・ジョーに対しては強い憎しみの感情をあらわにする。凶暴なうえに狡猾な性格をしており、麻薬漬けにした客を利用して、他者をうまくコントロールする。ダグラスが自分を嗅ぎ回っていると知り、ダグラスとつながりのある客の一人、デニムを麻薬をエサにあやつって、ダグラスをワナにはめている。ダグラスを身動きできない状況に追い込み、ダグラスの持っていたパットの形見の銃であるレディ・ジョーカーで彼を殺そうとする。しかし、その狡猾さは臆病さの裏返しでもあり、その本性を見抜いていたダグラスは、レディ・ジョーカーにワナを仕込んでいたために形勢は逆転。逆にダグラスに追い込まれ、レディ・ジョーカーで弾丸を撃ち込まれた。レディ・ジョーカーは長年放置されていたために整備不良で、その場で暴発したため、弾は当たることなく生存している。ダグラスはそのことを、パットが仇討ちを望んでいないと解釈し、過去を振り切った。また、皮肉にもグッドルッキング・ジョーの見せた「悪党はすぐ敵の獲物に飛びつく」という習癖が、のちのちダグラスを助けている。

ザベル・フランケン

エスペランサの幹部の一人で、瘦身の高齢男性。スキンヘッドで、ヒゲを生やしている。与えられたコードネームは「Z」。五人を殺害したあと、軽犯罪で捕まったため、現在はデスペラティオ刑務所に投獄されている。卑屈な小悪党で、いつも他人の目をうかがいながら、自分の主張を展開する。死刑の判決が出ていたが、執行間近に実はもう一人殺していたことを告白。エスペランサのトップである「A」を殺したことをダグラス・ビリンガムに自供し、エスペランサの情報の見返りに司法取引をして死刑を回避しようとする。Aの死体検分中に現れたバンブーマンを見て、口封じに現れたと察して錯乱。そのまま警察官に護送されるが、騒動の最中に逃亡する。実は卑屈な小悪党然とした姿はすべて演技で、「Z」こそがエスペランサの真のトップの座にある。看守をひそかに買収してバンブーマンと示し合わせ、脱獄を計画していた。脱獄後は威風堂々とした立ち居振る舞いで悪の親玉として君臨し、暗躍している。食べ物を粗末にすることを嫌悪し、食べ物を粗末にする者は協力者だろうがあっさり殺害する。対AMS弾の情報を欲しており、ウィリアム・ドーマンの自作自演誘拐事件を利用してダグラスを誘拐する。しかしこの事件がきっかけで、軍部がエスペランサ壊滅に本腰で動き出したため、軍部の苛烈な摘発で一気に窮地に立たされることとなる。SEVEN-Oの本部に対AMS弾の情報を求めて潜入した際に、味方のはずの構成員に襲われる。そこで自分がバンブーマンに利用されていることに気づき、彼をつるし上げるが、反撃を食らって幹部もろとも全滅する。しかし実は、対AMS弾の使い方を知ったことで、アイシステムの機能をオンにしており、一矢報いるべくひそかにバンブーマンの正体をSEVEN-Oに流していた。また、大ケガを負いつつも襲撃から生き延び、ダグラス・ビリンガムに情報を渡している。

バンブーマン

エスペランサの幹部の一人で、道化のような化粧をした男性。歯に黒い宝石を埋め込んでおり、笑うと口元が赤く輝く。与えられたコードネームは「B」。圧倒的な力を持つ謎多き人物で、銃弾すら通用しない超人的な身体能力を持つが、アンセムによるオーバードライブ反応がないという不思議な特性を持つ。ザベル・フランケンの口封じのため、Aの死体が埋められた小学校に現れるが、実はザベルとは通じ合っており、バンブーマンが暴れ回ったスキをついてザベルは逃げ出している。その後はザベルをボスに仰ぎ、彼の命令に従って行動している。ザベルの腹心のような存在と思われたが、実は独自の思惑で動いており、軍部の動きに呼応してその正体を現す。

酔っぱらいの男 (よっぱらいのおとこ)

泥酔したヒゲ面の中年男性で、本名は不明。SEVEN-Oにテレビ取材が来た際に、キリル・ヴルーベリとダグラス・ビリンガムが対応した酔っぱらいで、その一部始終がテレビで放送された。「ずーっと上に別世界がある」「二階からきた」「この世界は上の連中の実験場」と意味不明な言葉を繰り返す典型的な酔っぱらいで、キリルたちは適当に対応したあと、迎えに来た奥さんと共に見送った。当初は単なる酔っぱらいの戯言と思われていたが、実は言っていることはほとんど真実だった。のちにキリルはブライアン・クーパーから世界の真実を聞いた際に、酔っぱらいの男の顔を思い出して驚愕する。

集団・組織

SEVEN-O (せぶんおー)

「アンセム」専門の取締機関。SEVEN-Oは職務内容と組織的には警察機関だが、対AMS弾を含めたアンセム絡みの知識は軍事機密が多いため、所属はリスヴァレッタ軍部の統括下となっている。そのため、アンセム以外の犯罪に関する捜査権はかなり限定的となっており、基本的にほかの犯罪の捜査には手が出せない。アンセムに関する案件はすべてフェイズ分けされ、フェイズ1はアンセムを使った疑いがある、フェイズ2はアンセムの使用確定、そしてフェイズ3はアンセムのオーバードライブの確認となっている。SEVEN-Oが捜査権を振るえるのは、このフェイズ2以降で、フェイズ1やほかの犯罪では振るえる権限がかなり制限されるが、その分、アンセム案件が確定した場合はかなりの裁量を独自に振るうことができ、アンセム絡みの事件に限り司法取引をすることもできる。

L.V.P.D. (える ぶい ぴー でぃー)

リスヴァレッタの警察機関。正式名称は「LISVALETTA POLICE DEPARTMENT」で、「L.V.P.D.」の略称で呼ばれることが多い。アンセム以外の通常の犯罪の場合は、L.V.P.D.の方が捜査権が優先されるため、SEVEN-Oは手を出すことはできない。ただ捜査協力は行っており、事件によってはお互いに協力し合って捜査に当たることがある。リスヴァレッタ軍部がエスペランサの取り締まりを強化した際には、軍部、SEVEN-O、L.V.P.D.が協力体制を敷いて、エスペランサの摘発を行った。

エスペランサ

リスヴァレッタで暗躍する犯罪組織。アンセムの密造や密売をはじめ、数々の犯罪にかかわっている組織で、幹部が26名いるとされている。幹部には「A」から「Z」までのアルファベットがコードネームとして与えられ、Aを頂点としたアルファベット順を序列とする。しかしこれは実はブラフで、本来の序列は逆で「Z」のコードネームを持つザベル・フランケンこそが真のトップの座にある。ザベルが投獄されたために組織として弱体化していたが、バンブーマンが主導した脱獄作戦でザベルが舞い戻り、再び組織として暗躍し始める。ザベルはアンセムをさらに利用するため、対AMS弾の情報を欲しており、ダグラス・ビリンガム誘拐事件やSEVEN-O本部襲撃事件を引き起こす。しかしリスヴァレッタ軍部がエスペランサの取り締まりに本腰を入れたため、組織として壊滅。さらにバンブーマンの裏切りによって残った幹部もほぼ全滅している。

リスヴァレッタ軍部 (りすゔぁれったぐんぶ)

リスヴァレッタにおける最高機関の一つ。安全保障を扱う軍事組織で、SEVEN-Oは軍部の統括となる。軍部はSEVEN-Oよりも何倍も待遇がいいらしく、給料は3倍で福利厚生もかなり手厚い。対AMS弾をはじめ、アンセムに関する技術は軍事機密とされ、SEVEN-Oの面々ですら知らされているのは極わずか。またアンセムの実験をする際には、軍部に届け出を出す必要がある。

場所

リスヴァレッタ

周囲を海洋に囲まれた都市国家。二つの太陽が昇る地で、多様な人々が暮らしている。富裕層が主に暮らす「マリナウルベン地区」、工業地帯である「イグニスカスト地区」など、特色のある地区分けがされている。活気がある都市だが、裏には貧困と格差が根付いているため、身寄りのない子供や貧しい家庭の者は苦労して暮らしている。また、一部ではアンセムをはじめとした違法薬物が蔓延しており、都市に住む人々を蝕んでいる。

その他キーワード

アンセム

麻薬の一種。摂取することで多幸感や万能感が得られる麻薬だが、何よりの特色は稀に起きる「オーバードライブ」と呼ばれる副作用で、このオーバードライブを引き起こしたものは人間離れした力を得ることができる。オーバードライブは遺伝子に作用し、進化を急速にうながすため、強大な力を得られるが同時に異形な姿となることが多い。ただし、ある程度安定化させれば、オーバードライブを起こしても人間の姿を保つことができ、中にはその作用を利用して整形して別人に成りすます者もいる。また、肉体に急激な変化をもたらす作用を利用し、医療に転用するための研究が一部ではされている。現在は首筋に貼って使う「パッチ式」が主流となっており、アンセム使用者の首筋には特徴的な痣が残る。エスペランサを中心とした売人や闇取引によって流通しているが、その大本はニカイがGMS計画によって生み出した薬。その名の由来は、戦地に赴く兵士たちの勝利と祝福を約束する「讃美歌」で、低コストで超人的な能力を持つ兵士を量産するのを目的とした薬だった。ただし、アンセム自体は未だに未完成で、その完成のために地上にばら撒き、臨床実験をしているのが真相だった。

対AMS弾 (たいえーえむえすだん)

オーバードライブしたアンセム使用者を無力化する弾丸。見た目は五種類の薬剤が入った色とりどりのカプセルで、それを専用の装置に入れて使う。アイシステムと連携したシステムで、アイシステムで対象をスキャン。その後、装置の中で対象に応じて五種類の薬品を配合し、その薬品を込めた弾丸を即席で作り出す。弾丸は「APシリーズ」と呼ばれる専用の銃に装塡して放つことができる。この薬品の配合に関するプログラムはリスヴァレッタ軍部の軍事機密で、装置のメンテナンスを行っているアップル・ビーバーも詳細は知らされていない。実は、対AMS弾をもたらしたのはニカイの手によるもので、エスペランサにはアンセムを渡し、リスヴァレッタ軍部にその治療法を渡すことで、大規模な実験を行っている。

アイシステム

コンタクトレンズ型の特殊ガジェット「アイガジェット」を利用したシステム。装着者の視覚情報をコンピューターが解析するスキャンシステムを搭載しており、アンセム使用者のフェイズを分析することができる。解析対象がフェイズ3のオーバードライブ状態であれば、即座に対AMS弾の調合を決定し、対象を無力化することができる。ただし、アイシステムのスキャンにはおよそ4.5秒掛かるのが運用上の注意点となっている。アイシステムはのちにアップル・ビーバーによってアップデートされ、装着者と視界を共有する「視界ジャック」機能が追加された。使い方によっては非常に有益なものの、盗撮などにも使えるとして女性からの評判は散々だった。

ダブルデッカーシステム

SEVEN-Oで採用されている捜査体制。捜査を二人一組で行うことで、捜査員同士がお互いを監視およびサポートし、さまざまな危険が伴うアンセムの捜査を円滑に行うのを目的としている。「ダブルデッカーシステム」の命名者はトラヴィス・マーフィーだが、トラヴィス以外は誰もこの呼び名を使わず、ふつうに「相棒」「コンビ」と呼んでいる。SEVEN-Oは組織的には警察機関でありながら、所属は軍部であるため、組織的に複雑で、職務的に軍事機密に触れることも多い。そのため、捜査員がトカゲの尻尾切りに遭う危険性が高く、ただでさえ危険なアンセム捜査に加え、捜査員のリスクを大きなものとしている。ダブルデッカーシステムはお互いに監視し合うことで、そのような状況から捜査員を守る側面もある。

ニカイ

リスヴァレッタから見える二つの太陽のうち、小さいがひと際輝く方の太陽を指す言葉。その正体ははるか昔、荒廃した地上を捨て、宇宙に移り住んだ人々が暮らすスペースコロニー。この事実をリスヴァレッタに住む人々はほとんど知らず、「ニカイ」という呼び名を知る者も少ない。地上より優れた文明を持つが、人口の絶対数は少ない。またニカイの内部でも争いがあり、そのためにGMS計画などを進めている。キリル・ヴルーベリは実はニカイ出身者で、彼の口癖の「Don't think, feel so good」は、本来は「ニカイの祈り」と呼ばれる文節の一部を誤って覚えたもの。キリルが間違って覚えたのは、ニカイに住んでいたのは物心つく前だったことと、一部分でも意味が通じてしまうからだった。

GMS (じーえむえす)

ニカイが進める計画。正式名称は「Genetically Modified Soldier」で、投薬による人体改造で、超人的な身体能力を持つ「強化兵」を作るのを目的とする。ニカイは人口の絶対数が少ないため、少数の兵士を効率よく強化しようと実験を繰り返し、強化兵は一定の成功を収める。しかし、一人の強化兵を作るのに時間もコストもかかり過ぎたため、新たにコストを抑え、簡単に強化兵を作るのを目的として「アンセム」が作られた。だが、アンセムの完成には莫大な臨床実験が必要となったため、ニカイはリスヴァレッタにアンセムを麻薬としてばら撒き、大規模な実験場としている。

クレジット

原作

サンライズ

企画

サンライズ

シリーズ構成

鈴木 智尋

脚本

鈴木 智尋

キャラクターデザイン

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