メビウス同盟

メビウス同盟

校則が厳しいことで有名な私立高ノ瀬学園に通う女子高生の高ノ瀬茉利は、フォトグラファーを夢見ていることと、歌手のMUTUKIの大ファンであることを、厳格な母親に隠していた。一方、茉利のクラスメイトの安藤武将と渡貫神夜は、自分達が歌手のMUTUKIであるということを、世間に隠していた。偶然知った互いの秘密を守るため「同盟」を結んだ三人の、夢と友情と恋を描いたドタバタ青春ストーリー。「花とゆめ」2002年23・24号から2004年19号で連載された作品。

正式名称
メビウス同盟
ふりがな
めびうすどうめい
作者
ジャンル
学園
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あらすじ

第1巻

私立高ノ瀬学園に通う女子高生の高ノ瀬茉利は、歌手のMUTUKIの大ファンであることと、フォトグラファーになりたいという夢を、理事長である母親に隠している。ある日、茉利が公園で写真撮影をしていると、クラスでは親しいように見えない同級生の安藤武将渡貫神夜が、仲よく話をしているところを目撃する。しかも神夜はMUTUKI本人とまったく同じ格好をし、武将はMUTUKIと同じ歌声をしていた。茉利はつい写真を撮ってしまい、追いかけて来てた二人に捕まり、フォトグラファーになりたいという夢がばれてしまう。しかし武将と神夜も、自分達がMUTUKIを演じているのだと告白。三人は、お互いの秘密を守るために同盟を結ぶことになる。

しかし学校では、三人共に親しいことは隠していた。そんな中、茉利が二人を撮った写真が、母親に見つかってしまう。噓をついて必死に同盟を守ろうとする茉利。それはこれまで学内で孤立していたため、三人の関係性を守りたい一心の行動だった。

その後のホワイトデーの日。神夜と武将が、母親不在の茉利の家に遊びにやって来る。賑やかに楽しい時を過ごすが、茉利が部屋を出たスキに二人が悪戯で隠れると、茉利は友を失う不安から泣きだしてしまう。

第2巻

4月。2年生になった高ノ瀬茉利は、球技大会で渡貫神夜をかばって頭にボールが当たり、大会に参加できなくなってしまう。代わりに写真係を任されるが、昔から友達がおらず、愛想笑いを向けられることが多かった茉利は、それがトラウマとなり、写真を撮ることができないでいた。しかし、安藤武将と神夜が励ましてくれたおかげで、茉利の望む写真を撮ることに成功する。

その後茉利は、新入生の中にMUTUKI の彼女がいるという噂を聞く。しかし、MUTUKIのビジュアル担当である神夜は、それを否定。茉利は偽MUTUKIを捕まえるため自ら囮になるが、MUTUKIの事務所のスタッフであるとばれ、逆に誘拐されてしまう。そこに武将と神夜が乱入し、茉利を救出する。

夏休み。茉利は武将と神夜に、ロケ旅行に誘われる。人目を気にしつつも変装してロケ先に向かうと、偶然同級生の鈴木太郎山田一郎に出会う。茉利は二人に連れまわされ、武将や神夜と過ごす時間がとれない。しかし、山を散策している時に変装用のウィッグがとれると、太郎と一郎は「理事長Jr.の生霊が出た」と逃げ出してしまう。その後、一人で迷子になっている茉利を武将と神夜が迎えに来てくれ、三人は楽しく旅行を満喫する。

第3巻

高ノ瀬茉利はアイドルの御伽洸にナンパされる。テレビの中の愛らしいイメージとかけ離れた態度に驚かされるが、そのギャップには、洸自身も悩んでいるのだった。本心を出せないなら、仕事を辞めると言い出した洸を茉利が励まし、彼は職場復帰する。その後、茉利は、洸にデートに誘われる。茉利に好意を抱く安藤武将渡貫神夜は二人を尾行し、茉利が洸に告白される場面を目撃する。しかし、茉利はMUTUKIが好きだからと、洸の告白を断ってしまう。

年が明けて1月。神夜と武将は、同じ誕生日を茉利と過ごすべく、誕生日会に誘う。ところが事情を知らない洸が先に、茉利を新年会に誘ってしまう。武将と神夜は誕生日のことを伏せて共に参加するが、帰り道に茉利は偶然、今日が武将と神夜の誕生日だと知る。当然プレゼントは何も用意していない。茉利と過ごせただけで幸せだったと言う二人に、茉利は、自分がしていた手袋を片方ずつ贈るのだった。

その誕生日会のリベンジを、マネージャーの荻村友紀と茉利がサプライズで計画する。パーティーの最中、神夜は間違えてお酒を一気飲みして酔っ払い、茉利にキスを迫る。

第4巻

風邪をひいた安藤武将を見舞うため、彼の自宅へ行った高ノ瀬茉利は、武将にそっくりの兄、安藤都之に温かく迎えられる。しかし武将は茉利に対し、何でもできる兄の存在がコンプレックスだったと打ち明ける。武将は茉利に、兄にはすべて敵わないと思っていたが、自分には歌があると、渡貫神夜が気づかせてくれたと話す。茉利は自分も武将のファンだと、彼を励ますのだった。

その後、3年生に進学した茉利は、進路に悩んでいた。そんなある日、憧れのフォトグラファー、袴田木陽が審査員を務めるフォトコンテストが開催されると知る。武将と神夜から参加を勧められるが、実力不足だからとその誘いを断る茉利。二人はチャレンジしない茉利を見損なったと突き放し、距離を置くことにする。後日、茉利は木陽の個展に行き、そこでもコンテスト参加を勧められる。武将と神夜に再び励まされてチャレンジするが、結果は散々なものだった。しかし茉利は、コンテストに参加して自分が写真が好きなことを改めて実感し、写真の専門学校に進学しようと決意する。しかし母親は、自らがリストアップした大学リストを茉利に渡すのだった。

第5巻

高ノ瀬茉利は、進路について安藤武将渡貫神夜に相談しようとしていた。しかし話ができないまま、二人は揃って学校に来なくなってしまう。秘密を共有する同盟を結んだが、この関係はずっと続くものではないと知り、茉利は取り残されたような気持ちになる。2か月以上が経った頃、御伽洸が突然訪ねて来る。彼とデートをしている最中に、茉利は、今までテレビに顔を出したことがないMUTUKIが、フィルムコンサートを開催するという事実を知る。二人が元気にしていることを嬉しく思うが、武将と神夜がどんどん自分から離れていくような孤独を感じ、茉利は泣き出してしまう。それを見た洸は、一人で神夜の家を訪れ、茉利が落ち込んでいると伝える。居合わせた武将は、茉利に渡してほしいと、MUTUKIのコンサートチケットを洸に手渡すのだった。

登場人物・キャラクター

高ノ瀬 茉利 (たかのせ まつり)

私立高ノ瀬学園に通う女子高生。理事長の娘で、クラスメイトには理事長Jr.と呼ばれている。幼い頃から母親に、「いずれは学園の理事長として、人の上に立つ身なのだから、名に恥じぬような人間でいるように」と言われている。厳しい理事長のイメージを重ねられ、学園内の全生徒から距離を置かれているのを寂しいと思いつつも、高ノ瀬茉利自身、理事長の娘らしく冷静でいるように努めている。 しかし実際は、喜怒哀楽がはっきりしたミーハーな性格で、高校1年の春にテレビで初めて歌手のMUTUKIを見て以来、大ファンになった。また写真が好きで、将来はフォトグラファーになりたいと思っており、自ら購入したカメラを大切にしている。ただ厳格な母親には、MUTUKIが好きなことも将来の夢も話していない。 だがその両方の秘密が、ひょんなことから安藤武将と渡貫神夜にばれてしまう。しかし同時に、二人がMUTUKIを演じているという秘密を打ち明けられ、三人はお互いの秘密を守るための同盟を結ぶ。親しい関係を隠すため、武将や神夜と行動する時は、ウィッグをかぶって変装している。

安藤 武将 (あんどう たけまさ)

私立高ノ瀬学園に通う男子高生。高ノ瀬茉利のクラスメイト。経歴不詳の人気歌手、MUTUKIの声と、作曲を担当している。ストレートロングの髪型で、学校内では無口で無表情かつクールな性格を装っている。しかし実際は優しく理性的で、女性の扱いにも慣れている。しかし一方では、好きな子に意地悪をしてしまう子供のようなところもあり、茉利に恋愛感情を抱くようになっても、なかなか告白できずにいた。 幼い頃から勉強も運動もできたが、優秀な兄、安藤都之と比較され続けてきたため、自分に自信が持てない幼少期を過ごしていた。しかし小学3年の時、兄の友人だった渡貫神夜といっしょにカラオケに行って、歌がうまいと褒められ、前向きな性格になる。 以来、神夜とは親友であり、現在は共にMUTUKIを演じている。ちなみに誕生日は、神夜と同じ1月8日である。

渡貫 神夜 (わたぬき かぐや)

私立高ノ瀬学園に通う男子高生。高ノ瀬茉利のクラスメイト。経歴不詳の人気歌手、MUTUKIのビジュアルを担当している。容姿端麗ながら、歌は誰もが顔をしかめるほどの音痴である。明るく活発なムードメーカー的な存在として、クラスでは人気者ながら、羽目を外し過ぎて教師に怒られることもある。反面、被写体としての自分の魅力をよく理解しており、MUTUKIを演じる時は、雰囲気が一変。 黒髪を青く染め、大人っぽく落ち着いた言動をするようになる。一方恋愛に対しては、初心で不器用な一面を見せる。自分の本音を隠しておくのも、恋の駆け引きをするのも苦手で、茉利への想いを自覚したあとは、ストレートに告白した。いっしょにMUTUKIを演じている安藤武将の、紳士的で冷静な対応を尊敬している。 ちなみに誕生日は、武将と同じ1月8日である。

MUTUKI (むつき)

CDジャケットかプロモーションビデオにしか顔を出さない人気歌手。青く染めた鮮やかな短髪をしている。よく伸びる歌声と爽やかな笑顔で人気だが、素性は一切公開されていない。実際は高校生の渡貫神夜がビジュアルを、安藤武将が声を担当し、二人で覆面歌手、MUTUKIというキャラクターを演じている。MUTUKIが誕生したのは、同じ小学校に通っていた武将と神夜が、神夜の転校のために、別れ別れになったことに端を発する。 悪戯好きの二人は「いつか日本中の奴らを騙してやろう」と約束。中学3年で再会した時に約束を実行に移し、MUTUKIという架空のキャラクターを作り上げた。遊びから始まった芸能活動だが、今は芸能界のトップになることを目標としている。

御伽 洸 (おとぎ こう)

中学3年生の人気俳優。標準語で話し、甘いものやハンバーグ、オムライスなど子供っぽいものが好きな泣き虫、というキャラクター設定で、主に年上女性からの人気が高い。しかし実際はかなり気が強く、うどんと盆栽、ゴルフが好きで、関西弁を話す少年。子供の頃から演技をするのが好きだったため、東京の中学に入学すると同時に芸能事務所に所属した。 幼く見える容姿のために、与えられたキャラクターは、本来の洸とはかけ離れたものだった。最初はそれを演じるのも楽しかったが、人気が出るにつれて本当の自分でいられる時間が減り、息苦しさを感じている。俳優を辞めたいと思っていたところ、偶然出会った高ノ瀬茉利に励まされて仕事を再開する。自分の背中を押してくれた茉利に恋愛感情を抱くようになる。

袴田 木陽 (はかまだ こはる)

人物を専門に撮っているプロカメラマンの女性。モデルの魅力を引き出し、一枚一枚違った雰囲気の写真を撮ることができるため、人気が高い。長髪をポニーテールの髪型にしている。明るく気さくな性格だが、写真の話になると一気に情熱的になる。茉利が参加を迷っていたフォトコンテストの審査員も務めており、個展に訪れた茉利をコンテストに誘った。 しかし茉利が断ると、はなから負ける気の人間が出す結果は見えていると言い放ち、引き止めはしなかった。だが茉利がフォトコンテストにチャレンジして落選したあとは、茉利が応募した写真を見て、知識や技術はないけど着眼点は好きだと褒める。

荻村友紀 (おぎむら ともき)

MUTUKIの専属マネージャーをしている男性。年齢は25歳。黒ぶち眼鏡をかけ、ふんわりとした髪型をしている。穏やかな性格で仕事もできるが、つまずいて転んでは眼鏡を落とすなど、天然でどんくさいところもある。そのぼんやりした一面ゆえに、7歳年下の恋人、黒岩和に、「本来しっかりした人が務めるマネージャーをしているなんて、噓じゃないか」と疑われているが、自分から多くを話せばやぶ蛇になると思い、黙っていた。 結局行き違いが生じ、和に愛情を信じてもらえなくなるが、高ノ瀬茉利と安藤武将、渡貫神夜が仲を取り持ってくれたおかげで、和に想いを告白して、無事に仲直りできた。

黒岩 和 (くろいわ やまと)

荻村友紀の彼女。年齢は18歳で、友紀と付き合って1年以上になる。友紀が仕事で忙しい時は、会えなくても文句を言わずにいたが、実際は高ノ瀬茉利と友紀がいっしょに歩いているのを見て浮気と勘違いし、友紀に荷物を投げつけるほど気が強い。だが一方では、7歳も年下の自分を、友紀が本当に恋愛対象として見てくれているのか不安を感じている。 友紀の職業にこだわり、噓をついているのではないかと責めたのも、友紀に真実を打ち明けてもらい、愛されていると実感したかったからである。

広川 メイ (ひろかわ めい)

私立高ノ瀬学園に通う女子高生。高ノ瀬茉利より1学年下で、ショートカットの髪型をした、明るく元気な性格の持ち主。自分の恋人であり、偽のMUTUKIを演じた周防伸に協力して、MUTUKIのスクープをねつ造しようとした。しかしこれは、MUTUKIという人気歌手がいなくなれば、同じ歌手である伸の人気がもっと出るのではないかと考えてのことであり、伸への一途な思いの表れである。

周防 伸 (すおう しん)

MUTUKIと同時期にデビューした男性歌手。広川メイの彼氏。所属事務所に「次の新曲がMUTUKIより順位が低かったらクビ」と言われたため、偽のMUTUKIを装って、女性と付き合うというスクープをねつ造し、MUTUKIの人気を落とそうとする。しかしMUTUKIの関係者と知らずに高ノ瀬茉利に声をかけ、世間に偽MUTUKIの正体だとばらされそうになった。 それを阻止するために末莉を誘拐するが、最終的には、安藤武将と渡貫神夜に懲らしめられている。

理事長 (りじちょう)

高ノ瀬茉利の母親。私立高ノ瀬学園の理事長。娘である茉利も会話に緊張するほど、厳しい性格をしているうえに、芸能嫌いである。つねに茉利には、次期理事長として恥じない行動をするようにと言い聞かせてきた。多忙で、家にはほとんど帰って来ないないため、茉利が自宅で母親に会うことはほとんどなく、会話は理事長室でされることが多い。 ちなみに夫は、外国の姉妹校の理事をしており、やはり家にあまり帰って来ない。自分達の代わりに茉利の世話をするようにと、家にはお手伝いを雇っている。

山田 一郎 (やまだ いちろう)

私立高ノ瀬学園に通う男子高生。渡貫神夜の友達。1年の時は高ノ瀬茉利とクラスメイトだったが、厳しい理事長の娘である茉利を恐れていた。前髪をセンターで分けた肩上のボブヘアをしており、友人の鈴木太郎といっしょにいることが多い。2年の夏休みの時はゲームを買うために、太郎と超特大カブトムシ採取したりしていた。 3年になってからは、大工である父親の仕事を継ぐために資格試験を受けたりと、将来を見据えた毎日を過ごしている。

鈴木 太郎 (すずき たろう)

私立高ノ瀬学園に通う男子高生。渡貫神夜の友達。1年の時は高ノ瀬茉利とクラスメイトだったが、厳しい理事長の娘である茉利を恐れていた。跳ねた短髪をしており、友人の山田一郎といっしょにいる事が多い。2年の夏休みの時はゲームを買うために、一郎と超特大カブトムシ採取したりしていた。3年になってからは、左官である父親の仕事を継ぐために資格試験を受けたりと、将来を見据えた毎日を過ごしている。

安藤 都之 (あんどう ひろゆき)

安藤武将の兄で、既婚者。顔は武将とよく似ているが、髪型は武将と違って短髪で、両耳にピアスも付けている。勉強も運動もできるうえに明るく賑やかな性格で、子供の頃はよく知らない人とすぐに友達になっては、自宅に連れて来ていた。ゲームセンターで知り合った渡貫神夜を武将に紹介したのも、都之である。気さくで付き合いやすく、自由気ままに振る舞っているが、妻には頭が上がらない。

場所

私立高ノ瀬学園 (しりつたかのせがくえん)

高ノ瀬茉利と安藤武将、渡貫神夜らが通っている高等学校。バイト禁止や芸能活動禁止など、校則が厳しいことで知られている。4月には球技大会が行われ、成績が悪ければ補修がある。3年生に進学すると、就職と進学の希望別によってクラスが分れるなど、ごく一般的な高校である。

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