NOBELU -演-

NOBELU -演-

吉田譲の初連載作品。空前のブームに沸く子役の世界における闘争を、解離性同一性障害を患う波田ノベルの視点から描く。「週刊少年サンデー」2013年16号から2014年50号まで連載された。原作は野島伸司。

正式名称
NOBELU -演-
ふりがな
のべる
原作者
野島 伸司
作画
ジャンル
演劇
関連商品
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概要・あらすじ

母親によってキララタレント事務所に入所させられた波田ノベルは、ある日先輩メンバーにサインを求めたことをきっかけに、実力者である雫石ミコ斑鳩トーリに興味を抱かれる。しかしそれに強い嫉妬心を抱く星名ヒバリと、彼女の手下である堤健太の手により、陰湿ないじめを受けることとなる。いじめと、母親の現実が見えていないような素振りによって、家にも学校にも居場所がないと絶望するノベル。

しかしその時、彼の中に眠る最初の子「フィリップ・マーロウ」が目を覚まし、いじめていた健太を撃退する。これが絶望に打ちひしがれていたノベルの、頂点を目指す物語の幕開けとなる。

登場人物・キャラクター

波田 ノベル (なみた のべる)

平凡な家庭に生まれた小学生の少年で、10歳。両親が離婚し食べることにも困ったところで、母によって芸能事務所キララタレント事務所に入所させられる。解離性同一性障害を患っており、身体の中に複数の人格を「飼って」いる。心優しく臆病な性格で、それが原因で手ひどいいじめを受けることも少なくないが、そのたびに最初の子である「フィリップ・マーロウ」が現れ、窮地を救われている。

波田 イズミ (なみた いずみ)

波田ノベルの母親。自己中心的な思考と、周りを欺くだけの演技力を併せ持つ女性。息子のノベルに対しては道具のように扱うこともあれば愛情深く接することもある。狂信的なまでにノベルの演劇における才能を信頼しきっており、その才能を伸ばすためにはあらゆる手段を用いることを辞さない。浪費をして借金を抱えたり、ノベルを残して行方をくらませたりと常軌を逸した行動をとることも多いが、その行動のことごとくがノベルの成長につながっている。

斑鳩 トーリ (いかるが とーり)

キララタレント事務所のゴールドクラスに所属する子役少年。女性受けしそうな整った容貌と危うげな雰囲気により、絶大な人気を得ている。穏やかな様子を見せたり冷酷な顔を表したりと、つかみどころのない性格。身体の内に複数の人格を飼っており、頻繁に最初の子である「ビョルン・アンドレセン」が顔を出している。ゴールドクラスに昇格したノベルとの交流を経て、彼に対して友情と執着心を抱くようになり、それがのちの行動理念を決定づけることとなる。

雫石 ミコ (しずくいし みこ)

キララタレント事務所のゴールドクラスに所属する子役少女。堂々とした芝居によって勇気と感動を与えることで多くのファンを獲得しており、国民の一人娘と称されている。しかし実際は波田ノベル同様控えめかつ臆病な性格で、彼女もまた身体の内に別の人格を飼っている。卓越した演技力は最初の子である「スカーレット・オハラ」の賜物である。 自分と同じ解離性同一性障害のノベルと斑鳩トーリに仲間意識を持っているが、同時に警戒もしている。

碑文谷 タケル (ひもんや たける)

キララタレント事務所のゴールドクラスに所属する子役少年。スポーツ万能で、特に剣道に精通しており、子役ながら殺陣もこなす。役者という仕事に誇りを持っており、同業者に対する気配りも欠かさない好人物だが、雫石ミコにこだわりを抱いており、彼女が絡むと途端に視野が狭くなってしまう。なお、役者としての道を選んだのは、妹である碑文谷サユミが難病に侵されており、高額の手術費を少しでも捻出したいという理由も含まれている。

蛇崩 ナツコ (じゃくずれ なつこ)

キララタレント事務所のゴールドクラスに所属する子役少女。生まれる前に父親を失っているが、女優である母親を見て育ち、それを誇りに思っていた。しかし後に波田ノベルに対し、母親は自分を見ておらず、今でも死んだ父親のことしか想っていないと薄々思うようになり、現時点におけるコンプレックスになってしまっていることを打ち明けている。

星名 ヒバリ (ほしな ひばり)

キララタレント事務所のシルバークラスに所属する子役少女。斑鳩トーリに恋い焦がれており、彼にサインをねだろうとしたが、すげなくあしらわれてしまう。さらには彼の興味が波田ノベルに向かったことに逆上。堤健太と共に陰湿ないじめを行うが、ノベルには先にゴールドクラスに昇格されて、挙句に健太からも見限られてしまう。 のちにノベルと共にサンタの誘拐計画に巻き込まれ、2人で乗り越えるうちに、嫌悪感をライバル心へと切り替えた。役者としての素質はゴールドクラスに劣っておらず、誘拐事件を利用することで、雫石ミコに引けを取らない知名度を得た。

市川 清五郎 (いちかわ せいごろう)

キララタレント事務所のブロンズクラスに所属する太り気味の子役少年。波田ノベルにとってはキララタレント事務所でできた最初の友達で、のちに彼が解離性同一性障害にかかっていることを知る。雑学に精通しており、知識を要求される場面で目立ちたがる傾向にあるが、その影響で本当の天才である真行寺マモリとは馬が合う様子を見せている。

堤 健太 (つつみ けんた)

キララタレント事務所のブロンズクラスに所属する子役少年。強い劣等感に常に苛まれており、星名ヒバリに逆らえない立場でもあるため、彼女の命令、およびコンプレックスの発散のはけ口として波田ノベルをいじめていた。しかし、彼を追い込んでしまったために、ノベルの最初の子であるマーロウを呼び起こしてしまい、彼に対して恐怖心と興味を抱く。 のちにマーロウより諭され、改めて役者への道を志し、ノベルとの関係も好転した。

安西 圭一郎 (あんざい けいいちろう)

キララタレント事務所のゴールドクラスの専属トレーナー。過去に何らかの事故によって足を負傷し、現在は車椅子の生活を余儀なくされている。冷徹なリアリストで、子役を「子焼く」と揶揄し、才能がなければ身も心も焼かれる地獄のような世界であると語っている。一方、子供たちに眠る才能には敏感で、波田ノベルが他人格を飼っていることも即座に見抜いた。

平泉 カンナ (ひらいずみ かんな)

キララタレント事務所のマネージャーに就任した22歳の女性。子供が大好きだと公言しているが、無駄にテンションが高く、子供たちには苦手意識を抱かれている。のちに波田ノベルが住むアパートの隣部屋に引っ越してきており、彼を取り巻く環境を知ることとなる。

ペーソス

闇社会の住人。所属する組織が経営するスロット屋で多額の借金を作った波田イズミから、波田ノベルが億以上稼ぐ名優になれるという話を聞き、真偽を確かめるべくノベルのアパートへと上がり込む。イズミのノベルに対する態度からもともとノベルに強い興味を持っていたが、のちにノベルの真ん中の子による演技を目の当たりにし、才能が本物であることを確信する。

真行寺 トモエ (しんぎょうじ ともえ)

児童心理学を専攻している女医。解離性同一性障害に詳しく、波田ノベルの表層に現れた最初の子を偶然目の当たりにし、堤健太や市川清五郎を交えて対話。人格が戻った状態のノベルに対し、改めてその危険性を警告する。

栗オネ (くりおね)

天才劇作家を自称する、オネエ系の青年。キララタレント事務所のゴールドクラスと、キララタレント事務所をライバル視する各プロダクションにより争われた芸能バトルの進行と舞台装置を担当した。安西圭一郎とは旧知の中で、のちに彼が企画した映画「15」の監督を任される。

碑文谷 サユミ (ひもんや さゆみ)

碑文谷タケルの妹。心臓に病気を抱えており、難しい手術を控えていた。兄であるタケルを誇りに思っており、役者としての技量は斑鳩トーリに引けを取らないと認識している。一方で、家族に迷惑をかけていることを幼いながらに自覚しており、強い負い目とコンプレックスを抱いている。

南雲 コウイチ (なぐも こういち)

キララタレント事務所のライバル事務所であるタイヨウ児童劇団に所属する子役少年。斑鳩トーリにも引けを取らない容貌が女性人気を高めているが、自意識過剰な演技が災いし、同性受けしないという欠点がある。しかし、キララタレント事務所との演技バトルにおいて蛇崩ナツコと対決した際には、死に瀕する男性という役割を熱演し、彼女を敗北寸前まで追い込んだ。

田所 セイジ (たどころ せいじ)

キララタレント事務所のライバル事務所であるタレントアカデミー山水に所属する子役少年。自分の容姿に強いコンプレックスを抱いており、きらびやかな男性を嫌っている。しかしその容貌と性格は悪役を演じるにはうってつけといわれており、その資質は正統派の役者といえる碑文谷タケルとの演技バトルにおいて大いに発揮された。

夏目 モモ (なつめ もも)

キララタレント事務所のライバル事務所であるミラカンパニーに所属する子役少女。声楽を本格的に習っており、ミュージカルスターを思わせる歌唱力を大きな武器としている。演劇バトルで雫石ミコと対決。彼女の最初の子であるスカーレットすら飲みこむ演技を見せるが、ミコが真ん中の子を発現させると戦況は一変。恐怖に飲みこまれてしまう。

四ツ谷 テトラ (よつや てとら)

キララタレント事務所のライバル事務所であるサイレントピープルに所属する子役少年。ボクシングのキッズチャンピオンでもある。かつて日仏共同映画におけるオーディションで斑鳩トーリと碑文谷タケルを差し置いて主役の座を射止めた経験を持つ。演劇バトルに彼の出演が決まるや否や、安西圭一郎すら敗北を覚悟するほどの怪物だが、母親に関するトラウマを抱えているという致命的な弱点を持っている。

真行寺 マモリ (しんぎょうじ まもり)

真行寺トモエの娘。ただし父親はおらず、精子バンクから高名な科学者の種を買い取ることで生まれた、IQ170の天才児である。解離性同一性障害を患っており、最後の子の影響による自殺願望に支配され、実行できないように体の自由を奪われていた。しかし、波田ノベル、斑鳩トーリ、雫石ミコそれぞれの最初の子の干渉により最後の子の呪縛から解放され、正気と自由を取り戻す。

サンタ

ペーソスの所属する組織の親玉。小柄で童顔の男性で、子供と間違えられることがあるが、当然本人はそれを快く思っていない。多額の借金を抱える波田イズミの返済のアテがないことにしびれを切らし、彼女や波田ノベルに、星名ヒバリを人質とした身代金誘拐計画を強要。3人を危地に追い詰めるが、真意は別のところにあった。 さらにその時見せられたノベルの最初の子、及び真ん中の子の演技に魅了され、芸能界への参入を決意。ノベルの事実上のスポンサーとなる。

御手洗 四葉 (みたらい よつば)

児童施設「コガモの家」にて生活をしている少女。かつて東日本大震災で両親を失っている。積極的に人の面倒を見たり、世話を焼いたりすることを好んでおり、傷ついた人から必要とされるのが幸せであると波田ノベルに対して明かしている。その奥底には、両親を犠牲にして助かってしまったという思い込みによる罪悪感が根付いている。

集団・組織

キララタレント事務所 (きららたれんとじむしょ)

子役の育成と仕事の斡旋を引き受けている大手タレント会社。斑鳩トーリ、雫石ミコのような国民的アイドルを輩出している。トレーナーの1人である安西圭一郎の方針により、ゴールド、シルバー、ブロンズのランク分けがなされており、ゴールドクラスに所属する生徒に対しては、他のクラスの生徒は声をかけることすら禁じられているという暗黙のルールが存在している。

その他キーワード

解離性同一性障害 (かいりせいどういつせいしょうがい)

自らの中に潜む、抑圧された感情が1つの人格となって表面に現れる疾患。明らかな病気ではあるのだが、演劇という分野においては皮肉にも大きな武器となっている。異なる人格を内部に「飼っている」と表現されている。内部に眠る副人格は複数存在し、本作ではそれぞれ最初の子、真ん中の子、最後の子に分類されている。波田ノベル、斑鳩トーリ、雫石ミコ、真行寺マモリなどが発症している。

最初の子 (さいしょのこ)

解離性同一性障害を患う少年少女に眠る人格の1つ。主人格を守るために存在しているとされ、主人格が憧れている人格が具現化している。それ故に強いスター性を秘めており、波田ノベル、斑鳩トーリ、雫石ミコの演技力と名声は、この最初の子によるところが大きい。

真ん中の子 (まんなかのこ)

解離性同一性障害を患う少年少女に眠る人格の1つ。主人格が望む「自由」を象徴しており、守護を司る最初の子とは対照的に、野生の獣のような凶暴性を持っている。そのため、この人格で行動できる時間には限りがあり、タイムリミットを迎えると意識を失ってしまう。このリスクを軽減し恒常的に繋がるには、最初の子を排除する必要がある。

最後の子 (さいごのこ)

解離性同一性障害を患う少年少女に眠る人格の1つ。主人格の母親の意識を投影しているとされており、母体への回帰、すなわち自分の意識を赤子以前まで戻す願望に苛まれてしまう。基本的に自らの命を断つことでそれを達成させようとするため、自殺願望があるとみなされることが多い。

クレジット

原作

野島 伸司

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