物語の主題に近づいてきた印象のある巻です。
確かに二人のセックスシーンに頁を割いているのですが、描写がなんとも文学的。
ばかばかしいような戯れというかやり取りの直後に濃密なセックスをするという、外側から見るととっちらかったような行動も二人の間では地続きの感覚で、つまりそれくらい自分の素を出した関係になったということだと思っています。
しかしながら、素に近づけば近づくほど肉体的な繋がりが途切れなくなるというのは、単に盛り上がった新婚さんだから、ではないでしょう。
つまるところ、この二者は生まれ育った環境も背景も文化も民族も異なり、戦争という局面において(奇しくも戦場においても)殺し合った敵同士であり、相容れない存在だというのを「お互いにすでに気付いている」からこそ、遠くない未来に訪れる決別(死別かもしれない)を予感し、その寂寥と不安と喪失への恐怖を埋めるのに、ひたすらに体を重ねているのだと感じました。
何が読んでいて辛いかというと、トホマの心情や背景を読者は知ることができるのですが、その切ないほどのウルナへの憧憬から始まる愛情を、ウルナは未だ知ることもなく、そして想像もしていないということです。
トホマの回想シーンでは我知らず落涙しました…。なんという切なさ。なんという届かなさ。
失われたものの美しさと喪失感と絶望と、虚しさと怒りと、あらゆるものを内包したトホマは実に複雑で生々しいキャラです。
肉体の繋がりはあっても心の肝心なところがかみ合わないまますれ違っていて、本当に辛い…。
のどかな湖畔の田舎町や雪山の背景が、逆に二人の中の焦燥や、絶望に近い不安をあぶり出し、
じわじわと迫る「戦場(戦争ではなく)」の気配の言いようのない怖さも引き立てていて、
この先の展開の不穏さも予感させてくれます。
こういう欧州映画のような重たるい空気のあるマンガってほとほとすごいですね。
ハピエン…になったら奇跡だよなあ、この話…。でも救いは欲しいです、伊図先生…。

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銃座のウルナ 5 (ビームコミックス) コミック – 2018/3/28
伊図透
(著)
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第21回文化庁メディア芸術祭【優秀賞】受賞!
ウルナ・トロップ・ヨンク…狙撃手として、戦場で生きると決めた彼女。過酷な戦争の時代を生きる女たちの、胸引き裂かれる悲劇をえぐり出す、圧倒的SF巨篇、復員したウルナを襲う衝撃的運命を描き出す、第5巻。
ウルナ・トロップ・ヨンク…狙撃手として、戦場で生きると決めた彼女。過酷な戦争の時代を生きる女たちの、胸引き裂かれる悲劇をえぐり出す、圧倒的SF巨篇、復員したウルナを襲う衝撃的運命を描き出す、第5巻。
- 本の長さ232ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA
- 発売日2018/3/28
- 寸法12.8 x 2 x 18.2 cm
- ISBN-104047350702
- ISBN-13978-4047350700
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登録情報
- 出版社 : KADOKAWA (2018/3/28)
- 発売日 : 2018/3/28
- 言語 : 日本語
- コミック : 232ページ
- ISBN-10 : 4047350702
- ISBN-13 : 978-4047350700
- 寸法 : 12.8 x 2 x 18.2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 64,645位コミック
- カスタマーレビュー:
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上位レビュー、対象国: 日本
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- 2018年4月30日に日本でレビュー済みAmazonで購入ウルナの行く末が気がかりです。
戦火がせまる故郷、彼女はどうするか。
次巻が待ちきれません。
- 2018年3月28日に日本でレビュー済みAmazonで購入なんというか性交メインです・・・。
話の内容は見方によっては濃いかもしれませんが私個人としては話が全然進んでいない印象を受けました。ここまで性交ネタ連打する必要があったのか正直疑問です。深く読めば違ったモノが見えてくるかもしれませんが1冊でこれまでの1,5話分くらいしか進んだ感じがしません。
1~4のテンポが良かっただけに置き去りにされた感じが否めません。
ただ、この先の流れには期待が持てる気がするので一応★3にします。
どちらかというと割引になるまでやはり買うべきではなかったかもと思えてなりません・・・
- 2018年3月31日に日本でレビュー済みカバーをはずして、とても感動しました。
最初表紙を見たときはギョっとしたのですが、カバーをはずしてみて、その仕掛け含めてとても美しい装丁だと思いました。
表紙通りトホマとウルナの心身の繋がりメインの話です。私もほかの方のレビューで言われてるほど性交のシーンが多すぎるとは感じませんでした。むしろもっと見たかった。もっと幸せな2人が見たかったです。
トホマ視点での過去のシーンがせつなさを引き立てます。この巻を読んでまた一巻から読みたくなったので、改めて再読してるところです。
続きがとても気になります。
どの巻をとっても必ずなんともいえない余韻を残す名作だと思います。切ないようなさわやかなような、なんともいえない余韻です。