注意:ネタバレ有ります。
それぞれの恋に様々なものを残して文化祭編の幕は閉じる。その後しばらくはコメディ中心のストーリーが続き (生け花お稽古・競技会とお家で女子会)、山登り編でゆったりムードから再びシリアスのピークへと至ります。
前巻に続きロミオとジュリエットになぞらえてヒロインが(現時点で?)タロウにとってどういう存在かを示すようなシーンもあり。
けれどもやはり今回のメインは指宿くん。タロウの初恋の想いが眠るのを見てしまった彼女の恋の行方がポイントになります。
江火野とイヴがジュリエットを演じる中でタロウと想いを交わしたのに対し、未だ正体も気持ちも明かせられない状況のままの指宿くん。
そんな彼女に再びタロウに近づく機会をもたらすのは、相変わらず指宿くんを男の子と思い狙うみさお先輩と、誰よりも慕う朱々子。
2人が原因で生じたトラブルによって指宿くんはタロウと二人きりになり、その中でタロウが指宿くんの女の子としての表情や素顔に気づいたりすることで距離を縮めて行きます。
好きな気持ちが好きな人と他の人もつなぐという展開がいかにもラブコメらしくて良いです。特に、辛い気持ちを抑えがちな指宿くんの心情を察して何とかしようとする朱々子の行動が、失う寸前の恋を結果的に繋げることになるという展開にハラハラしつつもホッとしました。
今回は最後の最後にタロウと指宿くんが二人の間の壁を無くしていくのも見所。
タロウの方は(あえて言うなら)、指宿くんにまだ嫌われているという意識が心の中にあり、
指宿くんの方は、自分はイヴ(=タロウの理想)じゃない、見た目も性格も変わってしまった今の自分を好きになってくれるわけがない、という気持ちがあります。
けれど、その今の素顔を(本人が全く意識しない形で)見せていくことで、タロウとの壁が溶け、どんどん本音を言い合えるようになり、最後に指宿くんが見せた、抑えきれない哀しみがこぼれ出たような表情を見てタロウの中にある想いが目覚めるというラストの流れに衝撃を受けました。
なお、2人の間の最大の壁(壁という表現が適切かはともかく)は、本来一人だけで抱えるものではないはずのものなのでここでは2人の内心の壁だけに留めます。
余談: 前巻と今回で題材となった「ロミオとジュリエット」。ここでは本編でのヒロインとのシーンがどういう意味があるのか、何が起こっているのか、主にシェイクスピアの原作を参照しながら考えてみたいと思います(あくまでも個人の見解です)。
まずタロウと江火野について。
原作を見て最初に気付くのは、実はロミオにとってジュリエットは初恋の人ではないという事。
物語の冒頭、ロミオはロザラインという女性に想いを寄せていて彼女を口説こうと色々アタックをするけれど全く相手にされず苦しんでいます。それを見かねたロミオのいとこが、その人より美しい人を見たらそんな苦しさは忘れる事が出来るはず、と思いつきジュリエットの父が開いたパーティーにロミオを連れていき、そこでロミオはジュリエットを初めて見て一目惚れします。そして2人はその日の内に恋人の誓いを交わします。
つまり、原作でもロミオはジュリエットに「初恋を上回る恋」をしていて、この事がまさに本編のこのタイミングでバルコニーの場面を江火野が演じた理由だと思います。更に原作では「初恋の想いは眠りにつき・・・」とイヴが眠る場面にピッタリの表現まであります(第2幕第1場プロローグ)。
原作では(本編の劇でもあった通り)2人はバルコニーのシーンの後、翌日に別の場所で結婚式を挙げます。ところが本編では指宿くんの正体を知った江火野が動揺してしまいタロウと気まずくなり、更にその後、江火野はタロウにある質問をします。
そしてタロウは家に帰った後、ジュリエット姿になったイヴと公園に行き、そこでバルコニーのシーンから演じ始めたイヴに対してタロウが返した言葉は、江火野の時とは違い、結婚の誓いに近いものでした。さらにイヴはある事を試みますがこれは失敗します。
では指宿くんは誰を演じたことになるのでしょうか。これは少し強引ですが、服装の通りロミオだと思います。それも物語冒頭の、初恋の人に想いが届かず涙を流すロミオとして(原作では第1幕第1場、第2幕第3場にロミオが泣いていたという記述がある)。
つまり、女の子だと気づいてもらえないために男の姿をしたままでいる内にタロウの初恋の想いが眠る瞬間を見てしまった、そんな指宿くんの今の状態をロミオの形で表している、そう言えると思います。
このままロミオ(男)のままだと指宿くんはタロウに女の子として近づけません。
そのためか、92話「花の乱!」で印象的なイベントがあります。大きな花器の中に2人して入れられた後、水没しかけて目が覚めたタロウはロミオ役の時と同じ髪型になっています。目の前には男物の羽織を身につけたまま顔まで水に浸かった指宿くんが眠っている。文化祭の時、ロミオの役のまま涙を流していた時の姿と重なります(強引)。この状態の指宿くんをタロウは救い出し、動き易くするため羽織をとります。そして目覚めた指宿くんがあるトラブルが原因で女の子としての表情をするのを見たタロウは反射的にある行動をします。
ここでのタロウは指宿くんに強く惹かれ、また生身であることを強く意識しています( なお、卵型の陶器みたいな入れ物の中に男女がいて水が途中まで入っているという図は、ヒエロニムス・ボスのある絵画作品の一部分と似ていますが、表現が結構際どいので詳細は省きます)。そしてこの時は途中で江火野が助けに入ってきたことで2人は離れます。
この出来事によって、タロウにとって指宿くんは単なる男友達(ロミオ)ではなく,気になる女の子に対するような感情を持つ存在に再びなる、そして山登り編に進む事が出来る。そういう流れになっていると思います (特に山登り編から2人の体格の違いがよりはっきり描かれていますが92話の後だから説得力があります)。
これで文化祭編から続く、タロウのヒロイン3人に対する反応が一通り揃ったと言えないでしょうか?
勢いで余談の方が長くなってしまい申し訳ありません。指宿くんパートからの説明は特に強引ですが、こういう見方や楽しみ方もあり得ると受けとめて頂ければ幸いです。

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初恋ゾンビ (10) (少年サンデーコミックス) コミック – 2018/1/18
峰浪 りょう
(著)
このページの読み込み中に問題が発生しました。もう一度試してください。
衝撃的な人物への女バレ…どうする指宿!?
「タロウのロミオとこのシーンがしたかった」――
文化祭の劇本番中、江火野の直な気持ちを聞いたタロウは、体調を崩した人吉に代わり、ロミオ役を買ってでる。
思わぬサプライズに喜ぶ江火野。
だが劇の最中にもかかわらず、人気のない場所へ走る指宿を追いかけた先で、彼女は指宿が衣装を脱いだところを目撃してしまい…!?
「タロウのロミオとこのシーンがしたかった」――
文化祭の劇本番中、江火野の直な気持ちを聞いたタロウは、体調を崩した人吉に代わり、ロミオ役を買ってでる。
思わぬサプライズに喜ぶ江火野。
だが劇の最中にもかかわらず、人気のない場所へ走る指宿を追いかけた先で、彼女は指宿が衣装を脱いだところを目撃してしまい…!?
- 本の長さ191ページ
- 言語日本語
- 出版社小学館
- 発売日2018/1/18
- 寸法11.2 x 1.4 x 17.4 cm
- ISBN-10409128079X
- ISBN-13978-4091280794
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登録情報
- 出版社 : 小学館 (2018/1/18)
- 発売日 : 2018/1/18
- 言語 : 日本語
- コミック : 191ページ
- ISBN-10 : 409128079X
- ISBN-13 : 978-4091280794
- 寸法 : 11.2 x 1.4 x 17.4 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 164,542位コミック
- カスタマーレビュー:
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上位レビュー、対象国: 日本
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- 2018年2月1日に日本でレビュー済みAmazonで購入
- 2018年2月5日に日本でレビュー済みAmazonで購入もう指宿くんがかわいすぎてヤバいw
隠れてジャンプしてよろこんでるの最高すぎた
すごい気になるところで終わるしはよつづき読みたいよ
- 2018年2月17日に日本でレビュー済みAmazonで購入最高です!…が、そこで終わるの!?
早く…次を…お願いします…
- 2018年1月25日に日本でレビュー済み演劇舞台裏での衝撃! 期せずして暴かれてしまった正体。
今回初めて江火野が自分の想いを露にし、正直な気持ちと向き合う独白
のシーンが出てきます。丁寧なすばらしい描写でとても気に入ってます。
その後、生け花競技会、女子会ケーキ作り、そして登山・・・エピソード
が盛り沢山の中、指宿・江火野2大ヒロインの心が揺れ動いていく様が
繊細に描かれています。
朱々子も大活躍してます!
タロウも以前から抱いていた疑惑を確かめようと・・・。
おまけマンガ、「ヒロイン'Sに3サイズを-」が楽しい!
- 2018年2月26日に日本でレビュー済み江火野さんに正体を隠す必要がなくなった為に、
指宿くん本来の女の子らしい一面が沢山見られる巻となっています。
台所でのエプロン姿、生け花大会でのハロウィンコスチューム姿、登山編で人知れず喜ぶ姿・・・
どれもグっとくる可愛さです・・・!
今まで隠していた魅力が溢れ出て本領を発揮し始めた感じでしょうか。
また、文化祭後にロミオとジュリエットをするタロウとイヴがとても印象的で切なく美しいです。
朱々子の出番も多く、可愛く展開を転がしてくれるのも見どころです。