まず一巻、二巻の表紙を見た際に、主人公「三日月まお」の姿に何が飛び込んでくるかといえば……。
作中で男女の切り替えの記号としても際立つ「胸の大きさ」に注目したキャラデザかもしれません。
男心の悲しさよ、作中でも視線をそっちに向けてしまうからなのか。ここを隠すだけで短時間なら女性に切り替わったとしても誤魔化せることに納得です。絵的に説得力が働きます。実に面白いと思います。
とは言ってもまつげや肩幅、手などで男女の描き分けをしていただいているので同ジャンルに理解のある作者の方であること、基礎的な画力の高さがうかがえます。
今回は女装というシチュエーションも発生しますが、女体と描き分けていることからもわかります。
つまりはふんわりとした印象から同一人物であるという連続性を残しつつ、男子としても女子としても絵的な魅力を放っている「三日月まお」はとても素敵な主人公だと私は思ってます。
さて、紹介が遅れました。キスをきっかけに性別が変わってしまう現状をそっくりそのまま言い表しましたこのタイトル『三日月まおは♂♀をえらべない』二巻の幕開けです。
選びたいのに周囲に振り回され、一方では振り回していたりもする彼か彼女の学園生活はどう転ぶのか?
と。そういったわけで、彼か彼女か、三人称に悩んでしまう主人公「まお」が現状では忌避している自身の女の身体を受け入れるか、それともあえて背を向けるか?
本作の見どころが早くも浮上したと思います。もっとも相手ありきの性転換なのか、それとも自分がそうしたいからそうするのか、主人公が本当の決意には至るまでにはまだまだ至ってはいないと思いますが。
まぁ、物語はまだ始まったばかりです。急ぎ過ぎるのもコトというわけですね。
基本的にまおは男性の立場から動いているので、不意の性転換は秘密がバレるバレないピンチの演出だったり、秘密の共有からの共犯者意識をもたらすものとして働いています。
また、王道の筋立ても見えてきた気がします。
一巻のレビューで触れさせていただきましたし実際そうですが、本来なら女子から男子に性転換する漫画にもかかわらず、常道の作劇に落とし込んでいます。読みやすさという意味では見逃せません。
常道とは何かといえば男子から女子に転じる落差と二重生活で話を作っているということです。
ただし、主人公に乗っかっているメンタルと良識は女子として培ってきたものです。
そこが明確な主人公の強みであり、作品の特長や特色として際立つのでしょう。
ふたつの性別を知るからこそ、知ってか知らずかひとつの性別をもっと魅力的にみせることができる。
さらに言えば、そこを軸に男の子の立場から、自分は男か、女か、誰を好きになったんだ? と。
まおに惹かれる男子ふたりが疑問と葛藤を抱えながら煩悶するさまがなんともいとおしいと思います。
この漫画って女子は元より男子も初心で可愛いですね。
それを引き出せたのも作者の優れた腕前だと思っていたりもします。
というわけで一巻から登場した男子ふたり、女子ひとりの三人が主人公を巡り合う構図が継続します。
男子の間には秘密を知った知られたの特別感と、同じ寮で生活を共にする距離感の近さ。女子は女子で異性同士での劇的なイベントがあったりで、短い時間でも双方で距離を詰める濃密さが光るでしょうか。
よって、これら三者がどう主人公に関わっていくかは見逃せないポイントかと。
その上で三者三様のため、先の展開を読み切れなくさせるポイントとして働いているかもしれません。
たとえば逆張りが好きな私としても、素直に本命っぽい流星とくっつくのも面白くないなぁ。
だけど立ち位置としては、主人公が男の時にときめいてしまった流星相手だとハードルが高いし、だったら対抗馬の聖が? でも第三極の夕映さんも強いしなぁ……などと、野次馬根性を出してしまいます。
ただし、ここ二巻は主人公が恋愛レースの一番手「真中流星」といっしょに体育館倉庫に閉じ込められるハプニングの発生で幕を引かれます。ここで躍り出たかな……?
「三日月まお」の性別の秘密が知られている、知られていないの認識に齟齬がある中、両名は至近距離≒急接近を余儀なくされるのか!? さっそく王道のシチュエーションを投げ込むのは嫌いじゃないです。
それでは最後にこの作品について一言。
コメディの空気が流れてもギャグ補正に逃げずに、問題行動を起こしたらちゃんと禊として怒られること、誤解を解くことが保証されているのがこの作品を楽しむうえで大きいと私は思っています。
ここをなぁなぁにすると、男の身勝手さからはじまったこの漫画を否定することになりかねませんから。
その上で、負の感情を引きずり過ぎずに先に進んでいく気持ちの良さを備えている。
だからこそ「男の身勝手さ」という十字架が最初からかかっているこの作品に、照れ顔が似合う青春のページを挟み込める、なんだったらいくらめくっても見つけられるのだと。私はそう考えるのです。