ちいさこべえ

ちいさこべえ

火事によって焼失してしまった老舗大工店を継ぎ、若棟梁となった主人公の茂次が、人情と意地を守りながら店の再建を目指していく物語。第17回「文化庁メディア芸術祭」マンガ部門で優秀賞を受賞。山本周五郎作の時代小説『ちいさこべ』を現代風に翻案した作品。

正式名称
ちいさこべえ
ふりがな
ちいさこべえ
原作者
山本 周五郎
作画
ジャンル
ヒューマンドラマ
レーベル
ビッグ コミックス(小学館)
巻数
既刊3巻
関連商品
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概要・あらすじ

現代では数少なくなった徒弟制を残す大工の大留工務店が大火事により焼失。火事で亡くなった父・留造の跡を継ぎ、26歳の若さにして棟梁となった茂次が、「人情」と「意地」を大事に守りながら店の再興のために奮闘する。さらに幼なじみの女性りつらと共に、新たな家族関係を構築していく。

登場人物・キャラクター

茂次 (しげじ)

老舗の大工・大留工務店の跡取り息子で、大火事で大留工務店が焼失し、父の留造が亡くなったのを機に棟梁となる。26歳だが、頭髪やひげをぼうぼうに伸ばしているため表情が分かりづらく、口数も少ない。有名大学の建築学科を卒業。子供のころから大工として仕込まれており、若いが腕は一人前で、古い職人たちも彼のことを認めている。 父親の言葉に従い、人情と意地を重んじており、その意地っ張りぶりで大や横浜ら周囲を心配させている。大工の息子だが本が好きで、部屋に大量の蔵書がある。生まれたころからいずれ家業を継ぐと思われていたが、本人は幼少時から外の世界を見て回りたいという欲求を持っており、放浪の旅に出ていたこともある。

留造 (とめぞう)

茂次の父親。長らく「大留工務店」の棟梁をしていたが、数ヶ月前に体調を崩して寝たり起きたりの状態となっており、現場は茂次に任せるようになっていた。大留工務店を襲った火災により妻と共に死去。人情と意地を何より重んずる昔気質の職人。

りつ

大留工務店の火災後、茂次らの住む自宅に収容されることになった徒弟たちの世話をするため、下働きとして雇われた20歳の女性。茂次とは子供のころからの付き合い。母子家庭で病弱な母親のため隣町のキャバクラで働いていたが、母親が1ヶ月半前に死去して、地元に戻り大留工務店に雇われる。 そのさいに家事で焼け出された町内の福祉施設の子供5人を大留工務店に引き連れてきた。大人しそうだが強情で、一度言い出したことは曲げない性格の持ち主。子供たちを施設に預けると言い出した茂次に反発し、結局は茂次が折れることとなった。茂次に淡い想いを寄せているが、彼が福田ゆうこのことを好きだと思い込んでいる。

福田 ゆうこ (ふくだ ゆうこ)

美人女子大生。大留工務店のある町の「一の町信用金庫」の一の町支店長・福田の娘。茂次とも旧知の仲。保育士や幼稚園教諭の資格を持っており、りつの連れてきた5人の子供を養うこととなった大留工務店の手伝いを申し出る。包容力のある女性で、子供たちからも信頼されている。

福田 (ふくだ)

大留工務店のある町の「一の町信用金庫」の一の町支店長。娘である福田ゆうこをたいへん可愛がっているが、少々変わり者で、娘からは気持ち悪いと思われている。茂次のことは気に入っているようで、なぜか娘である福田ゆうこを隠し撮りした写真を茂次に押しつけてくる。

(まさる)

大留工務店で働く職人で、腕の立つ大工。茂次の後見役的存在。大留工務店の火災の際は茂次と共に鎌倉の現場にいたが、棟梁として現場を離れようとしない茂次の名代として東京に戻り、大留工務店の状況を連絡するなど、大留工務店の用事を何くれとなくこなしている。茂次の腕前は認めているが、子供たちを養いつつも大留工務店を再建しようとする、意地っ張りな茂次のことを心配している。 よその工務店から親方として引き抜きの話が来るほどの腕前だが、恩義のある大留工務店に留まる。

横浜 (よこはま)

大留工務店でかつて留造の弟子だった大工。大留工務店の弟子筋では一番の古株で、現在は横浜で工務店を営んでいる。大留工務店の留造や茂次とは親類同様の間柄。大留工務店の再建や葬式のための協力、資金提供を申し出るが茂次はこれを固辞した。

キク

りつによって大留工務店に連れてこられ、養われるようになった5人の子供の一人。眼鏡をかけており常時フード付きの服を着ている。5人の中では一番大きい。学校には行っていないが、りつは彼のことを中学校1年生くらいではないかと考えている。りつの着替えや下着、荷物などを見つめるなど、何かとりつにつきまとう。 りつは彼の視線を性的なものだと受け取っていたが、後に誤解であったことが判明する。

又吉 (またきち)

りつによって大留工務店に連れてこられ、養われるようになった5人の子供の一人。天然パーマで眼鏡をかけた男子。茂次の幼なじみである一徳が経営するスーパーで、お菓子を万引きする事件を犯した。この件で又吉の境遇を配慮した茂次は、又吉をかばい、警察沙汰にはしないよう一徳を説得する。

サクラ

りつによって大留工務店に連れてこられ、養われるようになった5人の子供の一人。三つ編みで目の下にくまがあるのが特徴の少女。子供ながら冷静で、大人びた口調でさまざまなことを分析している。茂次が福田ゆうこを好きだと思い込んでいるりつを焚きつけるなど、ちょっと意地悪な性格の持ち主。

ウメ

りつによって大留工務店に連れてこられ、養われるようになった5人の子供の一人。顔が瓜のような下ぶくれであるため「うり顔」と呼ばれることがある。外見やおしゃれをとても気にする少女で、周囲の気にくわないものに対し、やたらと「ダサい」というのが口癖。とくに美人である福田ゆうこにはなついている。

あっちゃん

りつによって大留工務店に連れてこられ、養われるようになった5人の子供の一人で、何かと泣いてばかりいる女の子。自分とは関係ない遠くの出来事などを考えただけで、怖くなったり悲しくなったりして泣き出す。

クロ

大留工務店で働く若き職人。軽薄な性格で、なかなか一人前扱いをしてもらえないことで不満を溜め込んでいた。後にウソをついて現場を休み、雀荘に出入りするなどスネた態度を見せるようになる。さらに大留工務店の名前を出して他の現場で勝手に仕事をしていたところを、大に見つかり諫められる。

集団・組織

大留工務店 (だいとめこうむてん)

『ちいさこべえ』に登場する工務店。東京の「一の町」にある大工店。老舗だったが、近くのふとん屋付近から出火し広がった大火事により、工務店、工房、作業員のアパートも焼けてしまう。徒弟制度が残っている現代では珍しい工務店。茂次らの自宅は少し離れた場所にあったため、火事を逃れ、そのまま若い作業員らを収容する。

クレジット

書誌情報

ちいさこべえ 3巻 小学館〈ビッグ コミックス〉

第1巻

(2013-03-29発行、 978-4091851093)

第2巻

(2013-09-30発行、 978-4091855077)

第3巻

(2014-03-28発行、 978-4091861375)

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