ヴォイニッチホテル

ヴォイニッチホテル

かつて盛り上がっていた観光地に建った「ホテルヴォイニッチ」に、やってきたクズキ・タイゾウ。従業員の少女エレナに、自分が日本のヤクザであることなどを告げていくうちに、お互い惹かれ合う仲になる。このホテルでは多くの麻薬密売や殺人が行われており、地域全体でも連続殺人の話題で持ちきりだった。話ごとに視点が切り替わり、次々にキャラクターが出てくるグランドホテル形式(群像劇)形式が取られている。作者初の長編。

正式名称
ヴォイニッチホテル
ふりがな
ゔぉいにっちほてる
作者
ジャンル
怪談・伝奇
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概要・あらすじ

かつて盛り上がっていた観光地に建った「ホテルヴォイニッチ」にやってきたクズキ・タイゾウ。そこは二人の従業員と一人のコックと支配人で経営している、ひなびたホテルだった。従業員の少女エレナに、自分が日本のヤクザであることなどを告げていくうちに、お互い惹かれ合う仲になる。しかしこのホテルでは多くの麻薬密売や殺人が行われており、地域中でも謎の連続殺人の話題で持ちきりだった。

話によると「三人の母」と呼ばれる魔女がかつており、スペイン人に殺されたらしい。そのうちの一人がエレナで、この島に起きる不穏な事件を見守ることになる。

登場人物・キャラクター

クズキ・タイゾウ

日本からやってきて「ホテルヴォイニッチ」の805号室に宿泊している若いヤクザ。今は足を洗っている。背中にはコカトリスの刺青がある。本来は慕っているアニキと一緒にやってくるはずだったが、アニキが殺されたため一人で滞在している。皇竜会という組で会計などをやっていたインテリヤクザで、銃やドスは持ったことがない。 誰にでも優しく接する温和な性格。従業員のエレナと接するうちに惹かれていき、恋人関係になる。その後は一切浮気をせず、一途に彼女を思うようになっる。大金を持って逃げてきたため命を狙われることがあるが、エレナが彼を守護していたため生き延びてきた。

エレナ

色黒で子供体型の少女。「ホテルヴォイニッチ」で働いているメイド服の従業員。仕事が非常に丁寧で、ホテルの一連の仕事をベルナと二人で回している。ただしベルナと同じ自室の101号室は汚い。趣味は日本のマンガとオンラインゲーム。両腕両足首、背中、首に刺青がある。 右目は義眼。新しい義眼をクズキにプレゼントされ、自分がクズキを好きだったことに気づく。以降、クズキとデートや肉体関係を重ねて、恋人のような関係になった。実際は島に昔いた魔女「三人の母」の一人「ラクリマルム」。一瞬で人も悪魔も殺す魔力をもっているが、人間を殺すことはなるべく避けている。 とはいえ、いいことがあると「自分へのご褒美」として間宮姉妹の姉を残虐な方法で殺害するなど、殺すこと自体には躊躇がない。人の体に手を差し込んで、心霊手術を行うこともできる。ドクロや骨が好き。

ベルナ

体中に縫い合わせた跡がある巨乳の女性。「ホテルヴォイニッチ」で働いているメイド服の従業員。エレナと同じ101号室に住んでいる。大抵のことを一人でこなせる実力を持っており、エレナと二人でホテルの仕事を回している。無表情で敬語を使わず、淡々と話し、黙々と作業をする。 性格は優しく、相手のことを考えて行動する。かつて処刑された「三人の母」の一人「サスピリオルム」の残された心臓を、エレナがその他の素材と組み合わせて作った。そのためバラバラに刻まれても、心臓さえ無事なら元に戻ることができる。スナークに切り刻まれた間宮姉妹の妹を縫合して助けたことがある。リーダーによって、地元の少年たちの探偵団に誘われた。

テネブラルム

「三人の母」の一人。魔女を殺す毒の矢を受けてしまい、死亡。埋葬されるものの死にきれず、ゾンビになってボイラー室の隠し部屋の中を、正気を失ってうろついている。腐臭と糞尿を垂れ流しにし、朦朧としていたが、ハカセの愛の告白で心を取り戻す。ハカセと行動を共にするようになってからは魔力が漏れてしまい、足が動かなかったハカセが歩けるようになる反面、自らの身体が崩れてしまうようになる。 記憶を定期的になくすようになってからは一旦距離を置くようになり、ハカセが必ず月1で彼女に会いに来ている。

カンドレイ=ウメダ

「ホテルヴォイニッチ」の支配人。覆面をかぶった、がたいのいい男性で、日系人。即興のエキシビジョンマッチで、チャック=ノリスの前歯を折ったという噂がある。彼のかつてのプロレスラーとしての活動を見ていたエミリアに、惚れられている。ホテル経営のお金の中から、戦災孤児のための募金を続ける慈善家で、わけありで放浪していた魔女のエレナとベルナのことも、深く詮索せず雇い続けている。

エミリア

ヴォイニッチホテルで働く女性コック。両親と弟を地雷事故で亡くしてから拒食症になっていたが、カンドレイ=ウメダの活躍に励まされ、今の職に就いた。オーナーになったカンドレイ=ウメダへ強い好意を寄せており、料理に自分のよだれを混ぜて渡すことも多い。行き過ぎたネガティブ思考の持ち主で、すぐ自殺しようとするも、臆病すぎて実行できず、殺鼠剤を料理にまぜて道連れをつくろうとすることがある。 料理は「ギシュランガイド」に三ツ星で紹介されている。自分のことを「面倒くさくない処女」と言い続けている。

ハラキ

「ホテルヴォイニッチ」の402号室に宿泊している青年漫画家。メガネをかけており、日本ではかなり売れっ子。同人誌即売会の時期以外は島に戻ってきて執筆をしている。エレナと、麻薬密売の潜入捜査官カリエに恋をしていたが、実らなかった。「爆裂魔法少女メルティちゃん」で大当たりするも、麻薬「メルチェロ」の中毒になって、原稿を落とし続けてしまい、打ち切りになる。 限界を感じていた時に、ハーメルンの方程式を解きかけだった学者のメルチェロの幽霊に出会い、共に行動するようになる。

リーダー

島に住む少年で、子どもたちで組んだ探偵団のリーダー。地雷を踏んでしまい、その際の傷が半身に残っており、彼を救った五歳上のメンバー・ピースは死亡。内紛に対して様々な感情を抱いており、特にこの島で荒稼ぎしていた日本が内紛発生のすぐあとに去ってしまったことに怒りを感じ、日本人を嫌っている。 オイロケにずっと思いを寄せられているが、本人は気づいていない様子。しかしオイロケが誤って地雷を踏んだ時、身を挺して彼女を救う。島の警察本部長の孫。

ハカセ

島に住むメガネの少年で、子どもたちで組んだ探偵団のメンバー。足が動かず車いすに乗っている。「三人の母」の一人、テネブラルムのゾンビに出会ってから、彼女に愛を告白し、付き合い始める。一見うまくいきそうな関係だったが、テネブラルムの魔力が漏れてしまうことで、ハカセの足が動くようになり、彼女の身体と記憶が崩れるという事態が生じる。 これを危惧した彼は、一度距離を置くようにし、月に一度必ず、記憶を亡くした彼女の元に訪れるようになる。

アリサ

島に住む少女で、子どもたちで組んだ探偵団のメンバー。常にうさぎのかぶりものをしており、これがないと話すことが出来ない自閉症持ち。スナークの妹で、探偵団のメンツもアリサに会いにいくついでに、スナークの店でよく食事をしている。魔女のテネブラルムに出会ってから、悪魔に自分の姉を巻き込ませるわけにいかない、とベルナに相談したことがある。 巨乳の姉に教わって牛乳を飲んでいる。

スナーク

島の喫茶店でウェイトレスをしている、長髪長身の美人。アリサの姉。虚弱体質。外にでるときは黒を基調とした服かゴスロリ衣装で身を固めており、目はあまり出さないようにしている。腕は義手で、この島で連続して起きている殺人事件の犯人。人を切り裂く腕は、妹のアリサのうさぎのかぶりものと一緒に、悪魔と契約して入手したもの。

キカイ田

女刑事オリガとともに、連続殺人を追っている新人刑事。軍の開発部から警察にとばされたアンドロイド。IQ106で4馬力と、半端なスペック。わざわざ人間臭くなるための装備(指紋など)を搭載し、指からニベアや調味料が出るなど珍妙な仕組みになっている。戦闘力がないどころか、無駄な人間らしさのせいで捜査の足を引っ張ることの方が多い。

ディモナ

常に目隠しヘルムをかぶった、角が二本ある女悪魔。ヘルムの下は単眼。2つ星の階級。スナークと契約し、三つの願いをかなえた。仲間に、一つ角で三ツ星のアシュケロン、二本角一つ星で、勝手に超高層ホテルを作ったりと気まぐれなホロンなどがいる。その後は悪魔三人は「ホテルヴォイニッチ」に宿泊している。

クロサワ

「ホテルヴォイニッチ」の804号室に宿泊している日本人。世界殺し屋ランキング4位の凄腕。長距離ライフルによる狙撃での暗殺が得意。非常に洞察力の高い人間で、危険察知能力も優れている。ホモ。日本へ帰る前に、スナークに殺害されてしまう。

間宮姉妹

姉妹とも目が真っ黒で、白目がない。世界殺し屋ランク11位。「ホテルヴォイニッチ」最上階のスイートルームに宿泊していた。妹は大きなツインテールをしており幼女体型だが21歳。甘党で、デザートが好き。一度スナークと戦闘になり、両腕と胴体を切断され、瀕死状態になる。ベルナがそれを見つけて縫合、命を取り留める。 ただし、左右の腕が間違ってつながってしまう。姉は長身巨乳の拳銃使い。クロサワには告白するも、ホモだったため、ふられてしまったことがある。エレナと対峙した時、右腕の肉が全部吹き飛ばされ、首はねじ切られてホテルの屋上に、見せしめとして飾られた。

二人組の幽霊

遊園地の観覧車の中でヤクを取引していたところ、二人共射殺され、「ホテルヴォイニッチ」をさまよう幽霊になる。スキンヘッドの幽霊は取引をする相手の経験談を一つ聞くのが趣味。同じ「ホテルヴォイニッチ」にいた幽霊のメルチェロと出会う。

集団・組織

探偵団

『ヴォイニッチホテル』に登場するグループ。島の警察本部長の孫で地雷の傷を負っているリーダー、リーダーのことが好きなツインテール少女オイロケ、車いすにのったメガネの少年でテネブラルムと付き合うことになるハカセ、リーダーと探偵団を立ち上げた早食いが得意なフトッチョ、うさぎのかぶりものをした自閉症少女アリサで構成され、リーダーの気まぐれで他にメンバーが増える。 彼らの行動がこの島の様々な事件の謎を解くヒントになる。

その他キーワード

三人の母

『ヴォイニッチホテル』の用語。「ホテルヴォイニッチ」が建っているブレフスキュ島で、大昔崇められていた3人の魔女。本来はロシア出身で、ロシアには師匠がいる。テネブラルム、サスピリオルム、ラクリマルムの三人で、獣の頭蓋骨の仮面で顔を隠していた。スペイン軍が襲ってきた時に、テネブラルムは魔女を殺す毒で死亡、サスピリオルムは処刑されて首を落とされ、ラクリマルムは右目に矢を受け逃げ出した。 その呪いが島に残り、死んだ人間が幽霊となって残ることがある。今ではテネブラルムは記憶を失ったゾンビになり、サスピリオルムは心臓のみを取り出して他の身体に移植してベルナに、ラクリマルムは片目を失ったエレナとして生き残っている。

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