大阪ハムレット

大阪ハムレット

大阪を中心とした近畿地方を主な舞台に、様々な問題や悩みを抱えた人々が織りなす人間ドラマをオムニバス形式で描いた作品。登場人物たちはほぼ全員が関西弁を話す。

正式名称
大阪ハムレット
ふりがな
おおさかはむれっと
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
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概要・あらすじ

大阪の男子中学生・久保行雄は、国語教諭に「ハムレットのようだ」と言われ、その言葉の真意を知って憤慨する。実の父親が亡くなってから間をおかず、叔父が母と交際するようになり、家に居着いている状況になぞらえられたことに腹を立てたのだ。複雑な思いは抱えつつも、叔父とも良い関係を築こうと努める行雄だったが、ある日母の妊娠が発覚し、動揺を隠せなくなる。

登場人物・キャラクター

久保 行雄 (くぼ ゆきお)

目つきが悪く口も悪い、いわゆる不良タイプの男子中学生だが、大人びた性格。実の父親を亡くして1年と経たずに叔父が母と交際を始めるという複雑な家庭環境にあるが、母の幸せを優先し、叔父とも良好な関係を築こうと努めている。

松田 宏基 (まつだ ひろき)

小学校4年生の男子。親しかった叔母を亡くしてから「女の子になりたい」という願いを宣言するようになり、両親や教員、同級生の女子の理解のもと学校生活を送る。学校祭の演劇ではシンデレラの役を演じる。

岸本 アイコ (きしもと あいこ)

不妊治療を受けている30歳の既婚女性。治療に関する話に真剣に取り合おうとしない夫に苛立ちを感じている。同居している甥は、松田宏基と同じ学校に通う小学生。

浜口 まさし (はまぐち まさし)

15歳の中学3年生だが、長身で人相も老けている。自宅の近所で出会った柴田由加のことを好きになり、19歳の大学生であると偽って由香と交際を始める。顔がそっくりな姉が、由香の勤務先の高校に通っており、のちに自身も同じ高校に入学する。

柴田 由加 (しばた ゆか)

23歳の女性教員。子供の頃に、大好きだった血のつながらない父親に充分に甘えることを母親によって抑制された過去があり、そのために現在も年上の男性に赤子のように甘えたいという欲求を持っている。浜口まさしのことを大学生と勘違いし、交際するが、勤務先の高校に通うまさしの姉に話しかけたことがきっかけで、真実を知ってしまう。

東 直子 (あずま なおこ)

13歳の中学2年生。冷めた性格で、斜に構えた態度と空想に耽りがちなところを教員からは敬遠されている。国語の教員に勧められた石川啄木に感銘を受け、短歌に興味を持つようになる。派手な外見と軽はずみな言動の姉を軽蔑している。

三村 華子 (みむら はなこ)

34歳の独身女性。診療所だった実家をリフォームしてバレエ教室を開く。所属していた有名なバレエ団を才能の壁を感じて退団したが、踊ることから離れがたく講師となる道を選んだ。母親にはバレエを続けることをよく思われておらず、たびたび衝突する。

西谷 エリカ (にしたに えりか)

ハナコのバレエ教室の近所で八百屋を営んでいる家の孫娘。お菓子が大好きな肥満児である。ハナコの踊る姿に衝撃を受け、バレエを習い始める。

西谷 史子 (にしたに ふみこ)

西谷エリカの母親で、八百屋の嫁。ハナコが言い争いの末に自分の母親を花瓶で殴ってしまった場に居合わせ、ハナコをかばうために病院に嘘の証言をする。

坂本 のりこ (さかもと のりこ)

全く人と会話をせず、目も合わせようとしない少女。「置いてくれるだけでいい」と父親がハナコのバレエ教室に通わせる。教室でもずっと背を向けて座っているだけだったが、西谷エリカがハナコに披露するために密かに練習した曲を踊り通すのを見て、初めて笑顔を見せる。

大鳳 太一 (おおとり たいち)

久保行雄と同じ学校に通う男子中学生。大鳳ルミの兄。4年前に父親を亡くしている。美容院を営む母親と交際し、家に通うようになったゆずるとの接し方や、妹のゆずるに対する態度に悩む。基本的には母親に幸せになってほしいと考えているが、再婚に手放しに賛成できずにいる自分を持て余している。

ゆずる

大鳳太一の母と交際している男性。京都で修行をして腕を磨いた板前。自分の店を持っており、責任感の強さや面倒見の良さから、従業員からも尊敬されている。大鳳ルミからは目の敵にされる。

大鳳 ルミ (おおとり るみ)

大鳳太一の妹。気が強く、太一のことをデブ兄と呼ぶなど、やや口が悪い。母親とゆずるの交際に不快感をあらわにし、ゆずるに対してきつい態度を取る。

朝子 (あさこ)

26歳の女性。裕福だが仕事で留守がちな男性と結婚していたが、寂しさに耐えられなくなり、衝動的にトシヤについて大阪へ出てきたのち、夫婦経営の小さな喫茶店で働き始める。いつも困ったような表情をしている。

トシヤ

朝子の家の庭に出入りし、植木屋の仕事をしていた男性。海岸で友人が朝子をナンパしようとしていたのを止めたのがきっかけで朝子と親しくなった。のちに植木屋を辞めて大阪のパチンコ屋で働き始める。

よしの

5歳の女の子。餃子職人の父が仕事で行き詰まったため、宇都宮から父の故郷の大阪へ戻ってきた。両親は離婚しており、現在はリサイクルショップを営む祖父と父と3人で暮らしている。西谷エリカとは遊び友達。

服部 ミキ (はっとり みき)

伊賀の忍者屋敷でアルバイトをしている女性で、服部一也の妹。アルバイト代をいつも一也に持っていってしまい、他人への施しにその金を使っていることを忌々しく思っている。コスプレマニアの中年男性と交際している。

服部 一也 (はっとり かずや)

服部ミキの兄。困っている人のことを助け、施しをすることに生きがいを感じており、自身の財産のみならずミキの給料さえも赤の他人のために使ってしまう。妻には逃げられたが、素直な性格の一人娘がいる。

石田 ユウ (いしだ ゆう)

松田宏樹と同じ学校に通う小学6年生で、男子全体のボスのような立場にある。巨体で髪を茶色く染め、ピアスをしている。派手で迫力のある風貌からいじめっ子のように思われがちだが、実際は一本気で人情味のある性格で、弱い者いじめはしない。思慮深く聡明で、石田充治の孫で、充治が親類縁者との関係を改善させるのに一役買った。

石田 充治 (いしだ みつはる)

石田ユウの祖父。麩の製造工場の社長を務めるが、脳の疾患で倒れてからは、一命はとりとめたものの全く口をきくことができなくなり、ほとんど動くこともできなくなった。非情な性格で、意地が悪く、子供の頃から現在まで、周囲の自分より弱い立場の人間をいじめ抜いてきたため、実の子や従業員からも好かれていない。

あいの探偵 (あいのたんてい)

京都で個人探偵事務所を営む中年男性。「あいの」は、電話帳の最初に掲載されるために付けた営業用の名前。キャバクラ通いが好きで、行きつけの店で働くアリサのことをかわいがっている。

三輪 アリサ (みわ ありさ)

あいの探偵の行きつけのキャバクラで働く19歳のキャバ嬢。両親に育児放棄されて3歳で児童養護施設に入り、中学卒業時に母親のもとに戻るものの、母親の借金返済のために大阪の風俗店で働かされていた過去を持つ。家族の愛情に非常に強い憧れを抱いており、普通の家庭で愛されて育った野村あつしとの結婚を望む。

野村 あつし (のむら あつし)

工務店で働く27歳の男性。京都府左京区の実家で両親と妹と暮らしている。職場の先輩に連れられ、客として店を訪れた際に三輪アリサと出会う。アリサからの熱烈なアプローチを受け、自身もアリサを愛し、結婚を約束するに至る。

梶田 福子 (かじた ふくこ)

奈良県大和郡山市出身の40歳の女性で、鍼灸師として東京で働いている。中学生の頃に、同じバレーボール部に所属していた松井京香からいじめられていた。中学生当時の将来の夢は小説家になることだった。同じアイドルのファンであることがきっかけで里見理代と親しくなったが、理代が父親とともに夜逃げしてからは連絡が途絶えたきりに。 現在は、妻と死別した同じ勤務先の鍼灸師の男性と交際中。

松井 京香 (まつい きょうか)

奈良県大和郡山市出身の40歳の女性で、梶田福子の中学時代の同級生。夫の転勤で東京に出てきて、偶然訪れた鍼灸院で福子と再会する。中学時代は福子のことをいじめていたが、そのことはすっかり忘れている。小学校に通う一人娘がクラスでいじめを受けており、そのため自身も母親たちの間で浮いてしまっている。

里見 理代 (さとみ りよ)

奈良県大和郡山市出身の女性。梶田福子、松井京香の中学時代の同級生で、母親を事故で亡くしてからはギャンブル狂いの父親と二人で暮らしていたが、ある日突然消息を絶ってしまう。長身の美少女で、将来はアメリカで働くことを夢見ていた。現在は生駒で家族と暮らしているが、夫に暴力を振るわれている様子である。 40歳にして、すでに2人の孫がいる。

ミチル

阿倍野のイタリアンレストランで働く、ボーイッシュな雰囲気の22歳の女性。レズビアンである。客として来店した大谷詩織のことを好きになり、友人づきあいの末に恋を成就させるに至る。自身がレズビアンであることは、家族と勤務先の自分に好意を寄せる男性、詩織にだけ告白している。

ノゾミ

25歳の女性で、ミチルの姉。病気で子宮の全摘出手術を受け、妊娠できない身体となった。学生時代に非常に女子からの人気が高かった男性と結婚し、深く愛し合っている。

大谷 詩織 (おおたに しおり)

25歳の女性。ミチルが働いているイタリアンレストランを訪れたことがきっかけでミチルと出会い、のちに交際するに至る。彫りの深い顔立ちにグラマーな体型で、筋の通っていないことが嫌いな性格。

サビィ

南国の島出身の女性で、西谷史子の夫の弟の妻。夫の母が終末期を在宅で過ごすことになった際に、自宅での介護を献身的にこなす。愛する人と結婚できないことを苦にした姉を自殺で亡くしており、その日から絶望の中で生きてきた。

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