陽だまりの樹

陽だまりの樹

漫画家・手塚治虫が自身の曽祖父を主人公とした歴史漫画を原作に、杉井ギザブローが監督を務めたTVシリーズ。激動の時代である幕末の日本を舞台に、侍の伊武谷万次郎と医師の手塚良庵の二人の若者の運命を描く、歴史ドラマ。

正式名称
陽だまりの樹
ふりがな
ひだまりのき
原作者
制作
マッドハウス
監督
杉井 ギサブロー
放送期間
2000年4月5日 〜 2000年9月20日
放送局
日本テレビ
話数
25話
ジャンル
時代劇
 
幕末
関連商品
Amazon 楽天

概要・あらすじ

開国を迫る諸外国が来航していた幕末の日本に、対照的な二人の若者がいた。関東のとある小藩の下級武士である侍の伊武谷万次郎、そして江戸の医師手塚良庵である。無骨者の伊武谷万次郎と放蕩者の手塚良庵は対照的な性格ながらも、不思議な縁で出会い、共に激動の時代を生きていく。

日本の開国、尊皇攘夷、そして倒幕へと、時代の大きなうねりの中で、二人は懸命に己が行く道を見据えようとする。

登場人物・キャラクター

伊武谷 万次郎 (いぶや まんじろう)

関東の小藩である府中藩松平家に仕える禄高十五表二人扶持の下級武士。直情決行型の性格で不器用者だが、剣の腕は立つ。藩の江戸屋敷に勤務し、江戸城への登城の際には、門前の三百坂で他藩の行列との間に起こる競争でも常に先頭を走る俊足の持ち主。 北辰一刀流の道場玄武館で剣術を学んでいる際に、偶然出会った医師の手塚良庵とは性格もその思想も異なるが、何故か友人となる。元麻生にある善福寺の娘おせきに、手塚良庵共々想いを寄せる。 時代の趨勢にも無関心な剣とお勤め一筋の無骨者だったが、私淑する水戸藩の学者藤田東湖から衰退する幕府と迫り来る諸外国の脅威について教えられ、自分の生きる道を模索する。 そんな時に発生した安政の大地震での被災者救援の功が認められ来日したアメリカ公使タウンゼント・ハリスの警護役に抜擢。この事で衰え行く幕府を支えようという思いが強くなり、開明的な幕臣勝麟太郎の薫陶を受けつつ、新式軍制の組織である歩兵隊の隊長として手腕を発揮してゆく。

手塚 良庵 (てづか りょうあん)

江戸市中の三百坂に住む、蘭方医手塚良仙の息子である医師。聡明で医師としての腕も確かだが放蕩が止まず、いつも色町に出入りしている。大坂の名門私塾適塾で当代随一の蘭方医緒方洪庵から蘭学を学び、痘瘡(天然痘)の予防接種である種痘の普及に尽力するが、江戸城の奥医師である多紀誠斉を初めとする伝統的な漢方医達の妨害を受け、苦慮する。 しかし、幕府内外の理解者達の協力も得て、蘭方医学の拠点である種痘所を開設。 激動の時代の中、あくまでも医学で世の中と関わろうと考えるノンポリであり、偶然出会った伊武谷万次郎とは性格も思想も異なるが、何故か友人となる。伊武谷万次郎は元麻生にある善福寺の娘おせきに、共に想いを寄せる恋敵でもあった。

山岡 鉄太郎 (やまおか てつたろう)

伊武谷万次郎が剣術を学ぶ道場玄武館の門弟。いざこざで他の門弟を斬ってしまい、周囲の敵意を買った伊武谷万次郎を守るために匿う。伊武谷万次郎とは友人となり、北辰一刀流を伝授し、私淑する水戸藩の学者藤田東湖を引き合わせた。

西郷 吉之助 (さいごう きちのすけ)

偶然出会った伊武谷万次郎の資質を見抜き、幕政改革の同志へと誘った薩摩藩士。後に西郷隆盛と名を変え、倒幕勢力の指導者として、伊武谷万次郎とは敵味方として再会する。

福沢 諭吉 (ふくざわ ゆきち)

幕末を代表する蘭方医緒方洪庵が主宰する大坂の私塾適塾に学ぶ、中津藩(現在の熊本県中津市)藩士。江戸から適塾へやってきた手塚良庵と出会い、友人になる。

丑久保 陶兵衛 (うしくぼ とうべい)

蘭方医や外国人を激しく憎悪する浪人。新田宮流居合術を使う、凄腕の剣客である。来日したアメリカ公使のタウンゼント・ハリスを妨害した伊武谷万次郎を敵として、つけ狙う。その復讐として、伊武谷万次郎に想いを寄せる商家の娘お品を犯す。

お綾 (おあや)

伊武谷万次郎を闇討ちした浪人楠音次郎の妹。兄の意を受けて、自分が属する浪人集団真忠組を討伐にやって来た幕府の陸軍部隊歩兵隊を探索している最中に捕えられる。

真忠組 (しんちゅうぐみ)

『陽だまりの樹』に登場する集団。下総国(現在の千葉県)の片貝に出没し、尊皇攘夷を名目に略奪や暴行をはたらく浪人の集団。伊武谷万次郎 の父を闇討ちにした楠音次郎は中心人物の一人である。伊武谷万次郎は幕府の陸軍部隊を率いて歩兵隊で討伐に出動した。

楠 音次郎 (くすのき おとじろう)

蘭方医を敵視する奥医師の実力者多紀誠斉の意を受けて、手塚良庵の父手塚良仙を襲撃した際に居合わせた伊武谷万次郎の父を闇討ちした浪人。その後、下総国(現在の千葉県)の片貝で浪人の集団真忠組に入り、幕府の陸軍部隊歩兵組を率いて討伐にやってきた伊武谷万次郎と対決する。 右眼が盲している。

歩兵隊 (ほへいたい)

『陽だまりの樹』に登場する軍事組織。徳川幕府が西洋式軍制を採用して組織した陸軍部隊。旗本から成る機動力のある軽歩兵と、徴兵した農民から成る銃器を装備した重歩兵で編成された。伊武谷万次郎は農民を徴兵した重歩兵隊の訓練係として抜擢された。

適塾 (てきじゅく)

『陽だまりの樹』に登場する私塾。幕末を代表する蘭方医緒方洪庵が大坂で主宰する蘭学の学び舎。江戸から遊学してきた手塚良庵が蘭学を学んだ。自由闊達な雰囲気の中、各藩の俊才が集まっている。手塚良庵はここで中津(現在の大分県中津市)藩士福沢諭吉と出会う。

タウンゼント・ハリス (たうんぜんとはりす)

日本に赴任してきたアメリカ合衆国公使。下田に逗留中に外国人を憎む浪人丑久保陶兵衛に襲撃されるが、伊武谷万次郎によって助けられ、信頼するようになった。

おせき

江戸市中元麻布の善福寺の住職の娘。伊武谷万次郎と手塚良庵から想いを寄せられるが、殺生を嫌うために武士を敬遠する。やがて、無骨で純情な伊武谷万次郎に惹かれていく。しかし、争いの耐えない世情に心を痛め、父の死後出家する。

清河 八郎 (きよかわ はちろう)

伊武谷万次郎が剣術を学ぶ道場玄武館の門弟。北辰一刀流の達人で、入門間も無い伊武谷万次郎と対決し、その剣の腕を認めた。そのため、いざこざで他の門弟を斬ってしまい、周囲の敵意を買った伊武谷万次郎を表向き斬ったと偽り、助ける。

坂本 竜馬 (さかもと りょうま)

幕府の陸軍部隊歩兵隊の兵が狼藉をはたらいているところを取り押さえた土佐脱藩浪人。歩兵隊の隊長である伊武谷万次郎と知り合い、幕府や藩を超えた新しい日本国の構想を語る。

おつね

大坂での遊学から江戸へ帰る船の中で手塚良庵が出会った女性。紀州藩の武家の娘で、手塚良庵とは遠縁の間柄。後にお見合いの相手として再会し、妻となる。しっかり者で手塚良庵を尻に引く。

多紀 誠斉 (たき せいさい)

江戸城務めの奥医師。幕末における日本医学界の最高権威である医学館副督事。アバタ面でドジョウ髭を生やした容貌魁偉な人物。伝統医学である漢方医の実力者であり、痘瘡(天然痘)予防接種の種痘種痘所設立に奔走する蘭方医手塚良仙や息子手塚良庵を執拗に妨害する。

緒方 洪庵 (おがた こうあん)

幕末を代表する蘭方医。大坂で蘭学を教える私塾適塾を主宰し、日本での種痘の普及に尽力する。江戸から蘭方を学びに来た手塚良庵に大きな影響を与えた。後に、江戸城の奥医師として招かれる。

手塚 良仙 (てづか りょうせん)

医師手塚良庵の父である府中藩藩医。丸眼鏡と土壌髭が特徴的な蘭方医。飄々として性格で、息子同様色町を好むが、医師としての腕は確かで、開明的な思想を持つ。伝染病の痘瘡(天然痘)の予防接種である種痘を日本で推進すべく、その拠点である種痘所の設立に奔走する。

お紺 (おこん)

大坂の蘭学私塾適塾で学んでいた手塚良庵が出会った夜鷹(街娼)。男勝りで機転も利く、鉄火肌の女性。後に江戸品川に料理屋を開き、手塚良庵とは深い関係となっていく。

ヘンリー・ヒュースケン (へんりーひゅーすけん)

日本に赴任してきたアメリカ合衆国公使タウンゼント・ハリスの通訳を務める、オランダ系アメリカ人の青年。タウンゼント・ハリスの警護役を務めていた伊武谷万次郎に西洋の文明や世界の情勢を伝える。

お品 (おしな)

江戸市中で発生した安政の大地震の最中に伊武谷万次郎に助けられ、想いを寄せるようになった商家の娘。伊武谷万次郎に恨みを持つ浪人丑久保陶兵衛によって、復讐のために犯される。しかし、伊武谷万次郎の身を守るために丑久保陶兵衛の妻となり、子も授かる。

勝 麟太郎 (かつ りんたろう)

勝海舟という名でも知られる。高熱を出しながらも江戸城に登城してきた伊武谷万次郎を助けた幕臣。飄々とした性格の幕府海軍の養成機関である海軍伝習所の教官だが、後に幕府の洋式陸軍部隊である歩兵隊の設立に伴い、伊武谷万次郎を訓練役に抜擢する。

藤田 東湖 (ふじた とうこ)

幕末の世を憂う、水戸藩の学者。天下泰平の世に安穏と衰退した幕府を「陽だまりの樹」と例え、来航する諸外国に対抗すべく若者達に行動を促すイデオローグ。剣術道場の玄武館の仲間である山岡鉄太郎の紹介で、伊武谷万次郎もその薫陶を受けたが、江戸市中で発生した安政の大地震で死亡する。

場所

三百坂 (さんびゃくざか)

『陽だまりの樹』に登場する坂。府中藩江戸詰の武士が江戸城へ登城する途中にある坂。藩ではこの坂で速駆を行っていたが、伊武谷万次郎 は毎回一番だった。この坂の界隈に手塚良庵も住んでいる。

種痘所 (しゅとうじょ)

『陽だまりの樹』に登場する診療所。手塚良庵の父である蘭方医手塚良仙が中心となって設立した痘瘡(天然痘)の予防接種である種痘を行う拠点としての診療所。奥医師多紀誠斉を中心とする漢方医達の妨害に合いながらも、江戸の蘭方医達の奔走で幕府の許可を得て設立された。 以後、江戸における蘭方の拠点となる。

玄武館 (げんぶかん)

『陽だまりの樹』に登場する道場。江戸市中神田於玉ヶ池にある千葉周作が主宰した北辰一刀流剣術の道場。伊武谷万次郎が剣術を学んでいたが、いざこざで他の門弟を斬ってしまい、周囲の敵意を買って身を隠さざるを得なくなった。 後に尊皇攘夷の浪士となった清河八郎や山岡鉄太郎も門弟として在籍する。

イベント・出来事

安政の大地震 (あんせいのだいじしん)

『陽だまりの樹』に登場する災害。安政二年(1855年)10月2日に発生した大地震。江戸市中はこの地震に伴って発生した大火に包まれた。伊武谷 万次郎は、この際に被災者の避難を行い、幕府に認められた。 しかし、伊武谷万次郎が私淑していた水戸藩の学者藤田東湖は倒壊した自宅の下敷きになって亡くなった。

その他キーワード

尊皇攘夷 (そんのうじょうい)

『陽だまりの樹』に登場する思想。幕末の日本で勃興した、天皇を崇拝し、外国人を攻撃する排外主義的思想であり、多くの武士が影響された。伊武谷万次郎もこの思想に傾倒していたが、来日したアメリカ公使タウンゼント・ハリスの通訳ヘンリー・ヒュースケンとの出会いによって変わってゆく。

コロリ

『陽だまりの樹』に登場する疾病。現在はコレラと呼ばれる伝染病。感染すると高熱を発症し、嘔吐と下痢が続く。幕末では死亡率も高かった。安政五年(1858年)夏、長崎に来航した外国船から伝染が始まり、瞬く間に江戸にも流行が始まる。 手塚良庵 と昵懇の料理屋の女将お紺も感染した。

種痘 (しゅとう)

『陽だまりの樹』に登場する治療法。江戸時代、致死率の高い伝説病として恐れられていた痘瘡(天然痘)への予防接種。18世紀末にイギリスの医師ジェンナーによって、痘瘡に感染した牛の膿を人間に移植する方法が考案された。 安全性が高く、簡便なために世界中に普及した。幕末の日本でも各地で行われているが、江戸では漢方医の抵抗が強く、普及が遅れていた。手塚良庵の父である蘭方医手塚良仙は、この治療法の江戸での普及に奔走する。

クレジット

原作

監督

シリーズ構成

総作画監督

江口摩吏介

音楽

松居慶子

アニメーション制作

マッドハウス

原作

陽だまりの樹 (ひだまりのき)

陽だまりの樹は、見た目はりっぱな大木でも、中身は虫に食い荒らされている。太平の世に安住していた徳川幕府が、朽ちた大木のように今まさに倒れようとする時代に、あくまでも武士の生き方を貫く不器用な若者・伊武... 関連ページ:陽だまりの樹

SHARE
EC
Amazon
logo