おやすみカラスまた来てね。

おやすみカラスまた来てね。

25歳で無職の十川善十は、不思議な縁で知り合った九重敏夫の死後、彼からすすきのの一角にあるバー、一白玆のマスターを引き継ぐ事になった。善十と一白玆に出入りする人々の恋模様や、複雑な人間関係を描く日常系漫画。小学館「月刊!スピリッツ」2014年10月号から2022年6月号まで掲載の作品。

正式名称
おやすみカラスまた来てね。
ふりがな
おやすみからすまたきてね
作者
ジャンル
水商売
 
恋愛
レーベル
ビッグ コミックス(小学館)
巻数
既刊7巻
関連商品
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あらすじ

第1巻

あこがれのバーテンダーとなり、はつらつと仕事に精を出していた十川善十だが、連日のように過度な飲酒をしなければならない日常についていけなくなり、バーテンダーを辞する事にした。以来、職探しに積極的になれずにぶらぶらしていたところ、彼女である古賀紅央に愛想を尽かされ、ふられてしまう。紅央の気持ちを取り戻すために就職活動を始めた善十は、すすきのの一角に雰囲気のいいバー、一白玆を見つける。一白玆のマスターである九重敏夫のバーテンダーとしての腕に惚れ込んだ善十は、発作的に自身を雇ってくれるよう請い、敏夫はその申し出を快諾。だが翌日、一白玆を訪れた善十は、敏夫の娘の九重一葉に、敏夫は7日前に急死したと告げられる。一葉に敏夫の遺志を継いでほしいと依頼された善十は、死後敏夫が自分の前に現れたのもなにかの縁だと思い、一白玆のマスターになる事を決意。だが、名バーテンダーだった敏夫に会いに来る常連客の中には、善十の腕に満足せず去って行く者も多く、善十は敏夫の後釜として、店に立つ事の厳しさを嚙みしめる日々を送るのだった。そんな中、善十は一白玆に出入りする白木生花店白木美温が気になり始める。

第2巻

白木美温の女性らしい雰囲気に惹かれた十川善十は、意を決して美温をデートに誘う事にした。快諾してくれた美温と仲睦まじく過ごすようになった善十は、元彼女の古賀紅央を思い出して胸を痛めながらも、始終柔らかい姿勢を崩さない美温を天使のように感じ、どんどんのめり込んでいく。やがて美温がうっかり誤送信した、自分への愚痴を綴ったメールを見た善十は、美温の裏の顔を知る事となるが、それでも彼女との恋愛を継続する事を決意し、二人はより一層仲を深めていくのだった。ところがバレンタインデー当日、美温の予約したお洒落なレストランを訪れた善十は、会社員からバーテンダーに転身した美温のかつての彼氏と顔を合わせる事になる。インターネットで店情報を検索した善十は、美温が承知のうえで元彼氏のいるレストランを予約したのだと確信。そして美温は、再会したかつての彼氏とよりを戻し、善十に別れを告げたのだった。

第3巻

白木美温にふられた十川善十は、通りすがりの料理教室で古賀紅央を見かけて驚愕する。彼女は、妻子ある取引先の男性、堂島浩一と共にいたのである。紅央に片思いする安藤から、紅央が不倫しているのではないかと聞いていた善十は、紅央と浩一のあいだに割って入る。その後、紅央と二人になったところで、善十は不倫はいけないと説くが、紅央は自身が浩一に恋しているだけで、浩一は自分の事はただの女友達としか見ていないと説明するのだった。後日、一白玆九重敏夫のかつての仕事仲間の息子、鳥海信一が訪れる。大学卒業し、社会に出たばかりの彼は、子供の時にいっしょに遊んだ事のある九重一葉に関心を示す。一葉も信一に興味を持ち、二人はいい仲に発展するかと思われた。だが、信一は突然、自分は敏夫の息子だと暴露する。寡黙で誠実な父親と信じて来た敏夫が不倫して子供までもうけていた事実に一葉は動揺するが、悩んだ末に、憎み切れない異母弟である信一の存在を受け入れるのだった。

登場人物・キャラクター

十川 善十 (そがわ ぜんじゅう)

25歳の男性。手に職をつけたくて工業高校に入学するが、大したスキルも身につかなかった。中小企業に就職し、毎日無言で機械に向き合う生活に耐えられず、求人募集の張り紙を見て、発作的にバーテンダーへと転職した。バーテンダーになって以降、客とのコミュニケーションを楽しむ生活に満足していたが、過度な飲酒を求められる職種のため、体調を崩して退職した。 当時、客として店にやって来た古賀紅央と恋仲になったが、バーテンダーを辞めてから積極的に仕事を探さなくなった事を理由に、愛想を尽かした紅央に別れを切り出された。紅央だけが心の支えだったため、以降は必死に職探しに励み、九重敏夫の遺志を継いで、バー、一白玆のマスターとして働くようになる。 一白玆で働き出してからは、紅央に未練を持ちながらも、白木生花店の白木美温に惹かれ始める。美温のブラックな一面を知っても大事にしようとする気持ちは変わらなかったが、美温がかつての彼氏とよりを戻し、ふられる事となった。山田荘という古いアパートに長年住んでいる。

ショージ

十川善十とほぼ同時期にバーテンダーとして働き出した男性。過度な飲酒を求められる職場で体調を崩し、トイレで吐血して倒れて、退職した。バーテンダーを辞めてからは、実家を手伝って玉ねぎを作る日々を送っている。

古賀 紅央 (こが べにお)

十川善十の彼女だった女性。29歳のOLだが、善十と付き合い始めた当初は22歳だと年齢を偽っていた。サバサバした性格で、口調も男っぽい。無職の善十のヒモ体質に呆れて別れを切り出したが、別れたあとも善十に多少の未練を残しており、それを隠さない。善十がバー、一白玆のマスターになって、白木美温に恋するようになってからは、嫉妬心にかられて、頻繁に善十の前に姿を見せるようになった。 食事の話で盛り上がった取引先の営業マンの堂島浩一に淡い恋心を抱くが、立場をわきまえ、既婚者である浩一とは清い関係のまま、共に料理教室に通うなど明るい交際を続ける。ちなみに、食の好みは激しく偏っている。

九重 敏夫 (ここのえ としお)

バー、一白玆のマスターを務めていた初老の男性。非常に紳士的な風貌をしており、白いタキシードを好んで着ていた。偶然店に立ち寄った十川善十が雇ってほしいと言い出したくなるほど、雰囲気のいい店づくりをしていた。非常に苦労人で、小さな酒場から店を始めて、自分の店を持つまでに20年以上かかった。やっと自分の店を持ち、商売が軌道に乗った頃に心不全で死去。 死去後は、白いカラスに姿を変えて、店を継いでくれた善十を見守っている。一人娘の九重一葉を大事に思っていたが、過去に不倫しており、鳥海信一を息子として認知している。善十にシグネットの美味しさを教えた人物。

九重 一葉 (ここのえ ひとは)

九重敏夫の一人娘。年齢は25歳。敏夫が苦労してバー、一白玆を持つまでの過程を見て来た事から、敏夫が死去したあとに店を廃業する事を惜しいと感じ、敏夫の出したシグネットの美味さに惹かれてやって来た十川善十に店を継いでくれるよう依頼した。善十が一白玆を継いでバーを再開してくれてからは、自身もバーテンダーとして店に立つようになった。 敏夫の手伝いをしてよく店に立っていたので、その手つきは慣れたものである。敏夫の遺志を継いでくれた善十にいたく感謝しており、同い年であるのに敬語を使って話す。母親を15歳の時に亡くしているため現在は天涯孤独の身で、敏夫と二人暮らししていた一軒家に一人で暮らしている。バレンタインデーには毎年、お酒に合うチョコレートを厳選して敏夫にプレゼントするのを楽しみにしていた。 敏夫を寡黙で誠実な人間だと信じていたが、異母弟の鳥海信一と出会ってから、敏夫を信じられなくなり、激しく動揺している。

長窪 (ながくぼ)

BAR汐のマスターを務める女性。まだ自身が店を持つ前に、あこがれのバーテンダーである九重敏夫にいっしょに店を持たないかと誘われた事があるが、あこがれの人の嫌な部分が見えたらどうしようかと躊躇し、申し出を断った過去がある。彼の死後にも一白玆が営業を続けている事に興味を持ち、来店したところで十川善十と知り合った。 その後は、善十の気持ちを汲み、よく話を聞いている。客に寄り添う接客を心がけており、飲みたい客がいるかもしれないからと、朝早くから夜遅くまで店を開けている。店は年中無休で、長窪自身が休みを取るのは月に1回のみである。かつて夫に不倫されて離婚した過去があるが、本当に愛情が芽生えてしまったのであれば、不倫してしまっても致し方がないと考えている。

小山田 (おやまだ)

十川善十がよく行くカフェ・グロリアのマスターを務めている男性。善十とは仲がよく、彼のくだらない愚痴を飽きもせず聞いている。弟が一人おり、彼もバーテンダーをしている。善十にきちんと名字を言ってもらえた事がなく、「オダヤマ」と名字を間違えられるのが通例になっている。

白木 美温 (しらき みはる)

白木生花店に勤務している女性。白木生花店は家族で運営しており、週に一度、月曜日に一白玆に生花を納品している。一白玆のマスターである十川善十には、納品に出向くたびに好意をあらわにされて話し掛けられ、誘われればデートに応じる事もある関係。のちに、会社員からバーテンダーに転身した元彼氏と再会し、寄りを戻す事を決意し、善十のもとから去っていった。 花を活けるのが得意。柔らかな印象の見た目と違い、言葉遣いは辛辣でサバサバしている。そういった態度を表に出さずに猫を被るのがうまいが、恋愛相手に対しては非常に嫉妬深く、疑り深い性格をしている。趣味はウインドウショッピングで、お店を何軒もはしごして好みの服を探すタイプ。九重敏夫が一白玆のマスターをしていた頃に2度ほど立ち寄り、それからは敏夫のファンとなる。 敏夫の訃報を聞いた時は、非常にショックを受け、自室で一人でウイスキーを飲んで過ごした。

安藤 (あんどう)

古賀紅央の職場の後輩の男性。十川善十がかつて紅央の彼氏であった事を知っている。紅央に好意を持っており、一白玆で仕事中の善十を捕まえては、紅央の恋愛事情などを探ろうとする。チャラチャラした見た目に反して清純でまっすぐな性格で、紅央が堂島浩一と不倫しているかもしれないと知った際、真っ先に善十に連絡して話を聞かせ、不倫をやめさせようとした。 紅央にまだ気持ちがある善十にとって鼻持ちならない存在のため、名前をわざと「安西」と間違えて呼ぶのが通例。

鳥ぽちの主人 (とりぽちのしゅじん)

北海道の琴似で美味しいと評判のやきとり屋、鳥ぽちを営んでいた男性。現在は息子夫婦に店を譲り、隠居生活を楽しんでいる。九重敏夫の古い友人で、琴似のやきとり屋を訪れた際、当時中学3年生だった九重一葉とも知り合いになった。殺しても死ななそうな頑丈な妻に病気が見つかり、3か月で死去したショックを誰にも語れずにいたが、一白玆に通い、敏夫の跡を継いだ十川善十と一葉に事の次第を話し、やっと涙を流す事ができた。 妻亡きあと、孫の成長を生きがいにしている。

堂島 浩一 (どうじま ひろかず)

古賀紅央の取引先の男性。55歳の営業マン。既婚者で子供は二人おり、既に成人して独立している。紳士的な柔らかい物腰をしている。食べ物の好みの話で意気投合し、紅央と急接近した。子供が独立したら夫婦水入らずで楽しい時間を過ごせると思っていたが、妻は自分の趣味にかかりきりになってしまい、これではいっしょにいる意味がないと嘆いている。 妻と二人暮らしになってから、妻が風邪で寝込んだ時に初めて、これまで家庭がうまく回っていたのは、妻が日々家事をしてくれていたからだという事に改めて気づく。その際、寝込んだ妻に初めてお粥を作って食べさせたが、酷評されたため、料理の腕を磨こうと料理教室に入会。花嫁修業をするという名目で入会した紅央と共に、休日は料理教室で二人で料理するようになった。 紅央とは共通の習い事も含めて仲がいいが、恋愛感情は抱いていない。

鳥海 信一 (とりうみ しんいち)

九重敏夫が昔経営していたバーでアルバイトをしていた女性と敏夫のあいだに生まれた男性。敏夫に認知されたが、母親が養育費を払わなかったため、ひどく貧しい生活を送っていたが、母親の事は大好き。社会人になって初めてもらった給料で、母親に高級宿の温泉旅行をプレゼントした。幼児だった頃に一度だけ遊んだ事のある九重一葉と再会後、積極的にアプローチして仲を深めていく。 一葉が異母姉である事を知りながらも、一葉の事を嫌いになれず、苦しんでいる。体質的にお酒は弱いが、バーの雰囲気は大好き。大人になってからバーでウイスキーを飲んでみたい、という夢を一白玆で叶えた。髪型がキノコに似ているため、みんなに「キノコ」と呼ばれている。

場所

一白玆 (いっぱくげん)

十川善十が九重敏夫から受け継いだバー。北海道のすすきのの一角にあり、お洒落な店内はいつも客で賑わっている。敏夫が急死したあと、1か月ほどかけて営業を再開した。客層は老齢の紳士が多く、敏夫の時代からひいきにしてくれている常連客が多い。毎週月曜日に白木生花店が花瓶ごと取り換える花が、一白玆の何ともいえない雰囲気を演出している。 バーテンダーが善十と九重一葉に代わってからは若い客も多くなり、リーズナブルな値段設定にシフトしていく事を余儀なくされている。お通し以外のフードはいっさい出さない。

BAR汐 (ばーうしお)

北海道のすすきのに店を構えているバー。マスターは長窪が務めている。朝早くから夜遅くまで開店しており、年中無休で営業している。

白木生花店 (しらきせいかてん)

北海道のすすきのにある花屋。白木美温の両親が経営している。幅広い店舗と取り引きをしており、顧客先に花瓶ごと生花を届ける出張サービスも展開している。ちなみに美温の両親は花が大好きだが、人間はあまり好きではない。

鳥ぽち (とりぽち)

九重敏夫の友人が店主を務めていたやきとり屋。北海道の琴似にあり、夫婦で経営していた。レバーすらふわふわに仕上げる店主の腕には、敏夫と共に訪れた九重一葉も驚きを隠さなかった。現在は息子夫婦に店を譲り、老夫婦は隠居している。

その他キーワード

シグネット

スコッチの一種。グレンモーレンジィの責任者であるビル・ラムズデンとマスターブレンダーのレイチェル・バリーの二人が、誰にも詳細を明かさずに作り上げたシングルモルト。製造の全容を知る者が彼らのみという事で、「二人だけの秘密」と通称されている。十川善十が初めて一白玆を訪れた際、当時のマスターの九重敏夫が出した一品。

書誌情報

おやすみカラスまた来てね。 7巻 小学館〈ビッグ コミックス〉

第1巻

(2016-06-10発行、 978-4091876287)

第2巻

(2017-11-10発行、 978-4091896858)

第3巻

(2018-12-12発行、 978-4098601479)

第4巻

(2019-12-12発行、 978-4098604609)

第5巻

(2020-10-12発行、 978-4098607259)

第6巻

(2021-08-11発行、 978-4098611225)

第7巻

(2022-06-23発行、 978-4098613564)

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