この女に賭けろ

この女に賭けろ

バブル崩壊から金融再編に向かう時代。大手都市銀行・よつば銀行の女性総合職一期生・原島浩美が、希有な才覚と信念で副主事からニューヨーク支店長にまで上り詰めるさまを描いた職業漫画。講談社「モーニング」1993年43号から1997年30号まで連載。

正式名称
この女に賭けろ
ふりがな
このひとにかけろ
原作者
周 良貨
漫画
ジャンル
経済・金融
関連商品
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概要・あらすじ

バブル崩壊と不良債権問題を経て、金融再編が囁かれ始めた1990年代。大手都市銀行・よつば銀行の女性総合職一期生・原島浩美は、副主事昇進と同時に本店から台東支店への異動を命じられる。台東支店は出張所への格下げもちらつく成績最下位支店。浩美の異動は女性総合職に否定的な役員による左遷とも囁かれていた。

だが常に冷静な笑みを絶やさない浩美は、渉外代理課長として次々に融資を実行。「企業は人」「銀行の業務は人への投資」というポリシーで台東支店の業績を改善、支店行員の意識改革も促した。ほどなく主事昇進とともに、本店・業務開発部へ異動。飄々とした高橋和美部長の下、調査役として超エリートの日比野聖子らと湾岸新都心開発などに取り組む。

同時に頭取の座を巡る派閥争いに巻き込まれ、バブル時代の不正融資などスキャンダルの収拾にも奔走することに。そんななか浩美は、島津雅彦副頭取と対立しつつ、よつば銀行改革の隠れたキーパーソンとして台頭。

島津が頭取となった後は、花形有都望常務の権力も利用して各支店への影響力を強める。いっぽう大蔵省は金融再編を構想してよつば銀行にも合併を勧めるが、島津は拒否。だが花形は島津を失脚させて後がまを狙うとともに、外資系との合併を進めようと画策する。合併に反対する浩美は島津に先手を打って辞任するよう働きかけ、後任として浩美の元上司・山田太平の頭取就任が実現。

浩美はニューヨーク支店長に大抜擢され、アメリカに向けて旅立った。

登場人物・キャラクター

原島 浩美 (はらしま ひろみ)

よつば銀行に1986年に入行した、女性総合職一期生。日本橋支店を経て本店へ。1993年、同期トップで副主事に昇進する。同時に成績最下位の台東支店で渉外課新規専管理を担当することに。金融機関がバブルの後始末に腐心するなか、一癖も二癖もある地元企業の経営者を融資先として獲得していく。 1995年、主事昇格とともに本店業務開発部調査役に。続いて常務補佐、支店統括部勤務を経て同副部長および特別広報室室長を兼任、さらに女性初の参事に任命された。173cmの長身で、常に落ち着き払った笑みを浮かべ、堂々とした風格を漂わせる。大物財界人や頭取の前でもたじろがず、揺るぎない信念で相手の心を動かす。 担当する業務を通じて鳩山頭取、島津雅彦副頭取、花形有都望常務ら経営陣それぞれに有利または不利な展開を作り出し、山田太平の頭取就任の原動力となった。のちにニューヨーク支店長に任命される。

島津 雅彦 (しまづ まさひこ)

よつば銀行副頭取、後に頭取を経て会長に。出世をエサに部下に汚れ役を押しつけ切り捨てるなど、手段を選ばない社内政治でのし上がった。八王子支店長時代、部下だった山田太平の同僚を1人残らず報復人事で左遷した過去がある。横浜支店長時代の不正融資も、当時の部下・春日井の責任にして自分は疑惑を逃れた。 不良債権処理から金融再編に向かう流れのなかで、金融による産業支配を目指すように。だが原島浩美の理想は島津のそれと相容れず、2人はしばしば敵対。やがてニューヨーク支店損失事件の責任を負う形で辞任し、山田太平を次の頭取に指名した。ウクレレによるハワイアンの弾き語りはプロ級の腕前。

山田 太平 (やまだ たいへい)

原島浩美が台東支店勤務だった頃の支店長で、島津雅彦副頭取が八王子支店長だった頃の部下。台東支店長から支店業務部部長に昇格した際、島津から人員整理の人切り役を押しつけられる。リスクを取らない堅実路線で着実に出世するタイプ。だが味方にも容赦ない島津の性格を熟知しており、派閥争いではあえて反島津の頭取派に回った。 原島が台東支店に着任した当初は疎ましがったが、すぐにその手腕を認めて信頼を置くようになる。頭取の座を狙う野心はなかったが、原島の意図を汲む形で島津の後継者指名を受け入れた。

花形 有都望 (はながた ありとも)

よつば銀行・ニューヨーク支店長。島津雅彦副頭取の台頭に対抗するため、鳩山頭取が日本に呼び戻した。常務を経て、山田太平頭取の誕生と同時に副頭取となる。よつば銀行中興の祖とされる人物の孫にあたり、よつばのプリンスと呼ばれる。頭取の座を巡って対立する島津を失脚させるべく、解任動議を画策。 原島浩美は外資との合併を進める花形に反対し、島津の解任動議を妨害する立場に回った。頭取の座を逃した花形は嫌気がさしてよつば銀行を離れようとするが、原島の慰留で副頭取に就任。

橋爪 浩一 (はしづめ こういち)

よつば銀行の若手出世頭。後輩の原島浩美に早くから注目しており、いずれ自分のライバルになると見込んでいた。情報提供などのアドバイスで、何かと原島を手助けする。島津雅彦副頭取の右腕として立ち回った後、山田太平頭取の誕生とともに支店統括部部長に昇格した。 台東支店の一般職だった松田葉子と結婚、一子をもうける。

高橋 和美 (たかはし かずみ)

よつば銀行・本店業務開発部部長。後に取締役広報部部長に。のべ10年のアジア回りを経て帰国。原島浩美が配属された本店業務開発部の部長に任命された。離婚歴3回、慰謝料と5人の子供の養育費の支払いに追われている。泰然とした物腰で浮世離れしたところがあるが、原島、日比野聖子ら本店業務開発部の面々が社内政治の犠牲として切り捨てられないよう尽力。

日比野 聖子 (ひびの せいこ)

よつば銀行の女性総合職として1988年に入行した。1989年、女性総合職初の社費留学により、ハーバード大ビジネススクールMBAを取得する。ニューヨーク支店、本店・市場企画部を経て、1994年に副主事昇格と同時に業務開発部へ異動。翌年、原島浩美が業務開発部に配属され、ともに湾岸新都心開発、マンモス安全信用組合の不良債権処理などに携わる。 父親は大蔵官僚を経てのアメリカ公使で、政財界のコネクションも豊富。強烈なエリート意識を持ち、原島にもライバル心を燃やす。後に支店統括部副部長の辞令を受けるが、退社してイギリス系銀行に移り、香港を拠点に中国ビジネスに乗り出した。

鳥海 晶 (とりうみ あきら)

鳥海空間工房を運営する建築家。湾岸新都心開発で低層住宅の街を作る構想を提案し、住民の暮らしを重視する原島浩美に注目される。やがて原島とプライベートで会うようになり、恋人関係に発展。建築コンペに入賞してニューヨーク行きを持ちかけられるが、原島との関係を優先して日本に残った。

松田 葉子 (まつだ ようこ)

よつば銀行の女性一般職。かつて総合職として本店国際部に勤務したが、女性の力に限界があると悟って一般職に替わった。頭取夫人になる野心を持ち、橋爪浩一と結婚。一子をもうける。原島浩美に、絶対に負けないと啖呵を切る。

集団・組織

よつば銀行台東支店 (よつばぎんこうたいとうしてん)

『この女に賭けろ』に登場する銀行。よつば銀行の支店。原島浩美が着任した時点でCグループ25店舗中最下位、預金780億円、貸出金530億円だった。支店長は山田太平。不良債権に対する利払い凍結、追い貸しなどの不祥事も抱えている。渡辺興産、日本マイクロテクノロジー、城北総合開発などの地元企業を巡る融資や不良債権処理で原島が貢献し、業績を回復した。

クレジット

原作

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