さよならなんていえない

さよならなんていえない

説教臭く物事をはっきり言ってしまう惣領麻実と、冷めた性格の矢野隆生。2人の高校生が出会い、少しずつ2人が恋に落ちていく姿を繊細な心情を交えつつ丁寧に描いたラブストーリー。「りぼん」1982年9月号から1983年10月号にかけて連載された。

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さよならなんていえない
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さよならなんていえない
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あらすじ

惣領麻実と矢野隆生の出会い(第1巻)

美術部に所属する惣領麻実は、熱心に部活動に取り組んでいた。そんな麻実が1人、部室で作品を仕上げていたところ、幽霊部員の広重を訪ねて矢野隆生が現れる。そして突然、隆生は麻実の長いウェービーヘアに触れてくる。隆生が部室を出た後に髪を触ってみるとガムがつけられており、麻実は隆生に憤りを感じるが、同時に隆生の美しさに興味を抱くようになる。その後、麻実は名門美術大学に現役合格した美術部のOB、沢村に誘われてデートをするが、デート後の麻実の感想は、「良い人なんだけど好きな気持ちがわいてこない」というものだった。そのデートの帰り道、麻実は不良にナンパされて困っていたところを、偶然通りかかった隆生に助けられる。そして、隆生が行こうとしていた広重のバンドのライブに、成り行きで同行することになる。その帰り道、隆生は体調が悪く高熱のために倒れてしまうが、車で通りがかった彼のいとこ、叶エリ子により、家へと搬送されるのだった。そんな麻実と隆生の姿を、同じ学校の女子、安井に目撃されており、後日、安井は2人の関係について学校内に無責任な噂を流す。しかし麻実にとってはそんな噂よりも、いつも自分に違う態度をとる隆生の人物像の方が、より気になるのだった。

矢野隆生への恋心(第1巻~第2巻)

先日のライブの帰り道に熱を出して倒れた矢野隆生は、4日ぶりに登校して来る。その頃には惣領麻実の抗議によって、安井が流した噂は沈静化していたが、その事実を知った隆生は「相手が麻実なのは不愉快」と発言。この発言により麻実は大きなショックを受け、隆生の協調性のなさを責め立てるのだった。隆生に対する複雑な気持ちをうまく消化しきれずにいる中、麻実は沢村から再びデートに誘われる。そんな彼の誘いを断り、その場を走り去った麻実だったが、途中で足首をひねって動けなくなってしまう。そこに現われたのはまたしても隆生だった。優しく介抱をしてくれた隆生に対して、苛立ちと同時に胸のときめきのようなものを感じ、麻実はますます混乱してしまう。一方の隆生は、ずっと広重から勧誘を受けていたバンドに、ボーカルとして加入することを決意。隆生自身はあくまで気まぐれによるものだと語ってはいたものの、実際は麻実が口にした「協調性のない隆生にはバンド活動などできない」という言葉への反発心からのバンド加入であった。

初ステージに立つ矢野隆生と恋心を自覚する惣領麻実(第2巻)

広重のバンドにボーカルとして加入することとなった矢野隆生。自分の発言がバンド加入の発端になったので、惣領麻実は隆生の行動が増々気になっていた。一方の隆生は、バンド内においても問題行動ばかりを起こしていた。そんなある日の下校中、麻実は待ち伏せしていた叶エリ子につかまり、無理矢理ドライブに連れて行かれる。隆生に想いを寄せるエリ子は、彼の周辺で見かける麻実をライバル視しており、隆生を渡さないと、麻実に宣言するのだった。 それから数日後、隆生と広重のバンドのライブが開催された。広重に誘われて会場にやって来た麻実は、バンド好きの少女、ジーと知り合う。ステージ上で隆生が見せた表情に胸をときめかせる麻実だったが、帰り道に隆生に告白をするジーの姿を目撃し、素直に気持ちを伝えられない自分を省みて落ち込むのだった。 ライブ後、広重は脱退すると言い出した隆生の引き留めに必死であった。説得を断り続ける隆生に対して、麻実は「一度関わったのに、無責任な人は嫌いだ」と告げる。それに対して隆生は「嫌いなら関わるな」と返答。こうして2人は、気まずい関係のまま3年生に進級することとなった。

矢野隆生の気持ちの変化(第2巻~第3巻)

3年生に進級した惣領麻実矢野隆生は同じクラスになる。しかし、隆生は初日から遅刻したうえに私服で学校に姿を現す。不思議に感じつつも祖父、惣領十三の家に遊びに行った麻実は、祖父の家にいる隆生と偶然顔をあわせる。隆生は春休み中に行った沖縄で偶然に十三と知り合って意気投合し、遊びに来ていたのだった。そこで麻実は初めて素直に「もう一度、ステージで隆生の歌が聴きたい」と伝える。そんな麻実の想いを素直に受け入れた隆生は、広重らバンドメンバーに謝罪をし、バンドへの復帰を果たすのだった。一方、叶エリ子は隆生が旅に出ていたため連絡がとれず、さらに自身に冷たくなったと隆生に詰め寄る。そしてずっと好きだった気持ちを伝えるが、隆生はそんなエリ子に対し、自身が麻実に恋心を抱いていることを打ち明ける。 その後、バンドはコンテストに参加し、無事2次審査に合格する。そんな隆生たちのライバルとなったバンドには、態度の悪いメンバーがおり、実は彼こそがジーの片想い相手であった。ジーは麻実と隆生につのる自分の気持ちを打ち明けるが、隆生はライバルの話など聞きたくないとそっけない態度を取り、そんな彼に対し、麻実は思わず「好き嫌いをすぐに態度に出すのは良くない」と苦言を呈する。この一件により、隆生と麻実は再び気まずい関係になってしまう。 後日、隆生が十三の家に遊びに行った際に、十三が倒れるという事態が発生。隆生はすぐに麻実に連絡を取り、駆けつけて来て不安におびえる麻実を優しく抱きしめるのだった。その夜、麻実と隆生は不安を打ち消すように、子どもの時の話など他愛もない内容を語り合う。朝には落ち着いた十三の容態に安堵しつつ、麻実は「ずっとこんな話を隆生としたかった」と考えつつ、彼に告白をしたらどうなるのだろうと、意識し始めるようになる。

2人のこれから(第3巻)

ある日、矢野隆生は、父親と隆生の母が離婚することになったことを知らされる。2人の関係が悪いことは知っていたものの、離婚が現実的なものとなったことで隆生は激しく動揺する。そしてつい麻実に逃げ場を求めてしまい、感情のまま麻実にキスしようとする。しかし、麻実は「好きだけれど寂しさの穴埋めにはされたくない」と突っぱねる。すれ違いの関係のまま高校の文化祭を迎え、麻実はずっと前から密かに描いていた、隆生をモデルにした絵を展示する。一方の隆生は母親と暮らすことを決めて麻実に報告し、「一緒にいたいのは誰でもいいというわけではない」と彼女を抱きしめるのだった。

登場人物・キャラクター

惣領 麻実 (そうりょう あさみ)

高校2年生の女子。イギリス人の血が入ったクォーター。現役の画家である祖父、惣領十三の影響で絵画を好み、学校でも美術部に所属している。サボりがちな部員が多い美術部の中では、珍しく真面目に部活動に取り組んでいる。長いウェービーヘアが特徴で年齢よりも大人びて見える。そのため、同級生の女子からは「雰囲気のある美人」と評され、悪気はないものの一線を引かれがち。 口数は多くないものの気が強く、自分の考えをしっかりと持っているが、説教くさいことが玉に瑕。矢野隆生と同様に、物事に対して冷めた一面を持っている。初対面で髪の毛にガムをつけられた隆生に憤りを感じていたものの、不良にナンパされていたところを助けてくれたことで見直し、次第に心惹かれるようになっていく。

矢野 隆生 (やの たかお)

高校2年生の男子。叶エリ子のいとこにあたる。常にマイペースで、他人には興味のないクールな性格をしている。美しく整った容姿のため目立つ存在で、学校内で「矢野隆生」の名を知らない者はいないほど。複数の女子たちから好意を抱かれているが、告白されても無碍もなく断っている。そのため振った相手から恨まれることも多いが、隆生本人はまったく気にしていない。 広重とは小学校時代からの付き合いで、広重によれば「昔はよく笑う奴だった」らしい。歌が上手く、広重からバンドのボーカルとして誘われているが、他人と合わせないといけないのは嫌だと、断り続けてきた。しかし、惣領麻実から「協調性がない隆生はバンド活動などできない」と言われたことに反発し、広重のバンドに加入。 当初は1回ライブをしたら活動を終えるつもりだったが、麻実から説得されたこともあり、その後も活動を続けることとなった。

沢村 (さわむら)

大学1年生の青年。名門美術大学、M美に現役合格した。惣領麻実が所属する美術部のOBで「あのM美に進学した先輩」として、現役の美術部メンバーたちから尊敬されている。高校時代は真面目で地味な男子だったが、大学進学後は垢抜けて大人びた雰囲気に変わった。高校在籍中は麻実とほとんど関わりはなかったが、印象的な絵を描く女性として存在は知っていた。 卒業後に麻実と会話をして好感を抱き、麻実をデートに誘う。麻実からは「良い人なんだけど好きな気持ちがわいてこない」と一方的に振られるが、それを素直に受け入れた。

広重 (ひろしげ)

高校2年生の男子。惣領麻実と同じ美術部に所属しているが、自身がギターを担当するバンド活動に夢中で、部には籍を置いているだけの状態になっている。「このままサボり続けたらデッサン会には参加できない」と、麻実に忠告を受けた際には焦っているが、これも、デッサン会がヌードモデルを描くものであったため参加したかっただけ。矢野隆生とは小学校時代からの友人であり、広重を探しに美術部にやって来た隆生と麻実が、初めて顔を合わせるきっかけを間接的に作った。 隆生を自身のバンドのボーカルとして迎え入れたいと望んでおり、何度断られても粘り強く説得し、隆生をバンドに加入させることに成功する。

田中 (たなか)

広重が所属するバンドメンバーの青年。ベースを担当している。目立ちたがり屋で、ボーカルに矢野隆生を迎え入れることについては当初は歓迎していたが、何もしなくても目を引く存在である隆生とは早々に関係が悪化。隆生がボーカルをやるならバンドは続けないと脱退騒動に発展したが、最終的には戻って来ている。

ジー

音楽好きの女子高校生。広重と矢野隆生が喫茶店で会話をしていたところに、「広重のバンドを観たことがある」と声をかけ、面識を持つようになった。惣領麻実とは、彼女が隆生と広重のバンドを観に来た際に知り合う。左目の下に「ジュリー」と同じほくろがあるということで、自身を「ジー」と名乗っている。どこか不思議な雰囲気の持ち主で、独特のペースで一方的にしゃべるため、広重には「ヤバい奴」と警戒心を抱かれている。 一方で自由気ままで人懐っこい性格は、麻実にも憧がれを持たれるほど。ステージ上に立つ隆生を気に入り、いきなり告白をして振られているが、実は別に本命の好きな男性がいる。

ユミ

高校2年生の女子。惣領麻実と同じ美術部に所属している。麻実とはクラスも同じで仲が良く、一緒に行動する場面が多い。明るく社交的な性格で、広重とも仲が良い。矢野隆生に対してはかっこいいと思っているが、特に恋心を抱いているわけではなく、あくまでミーハー心である。

安井 (やすい)

高校2年生の女子。惣領麻実とは学校は同じだが、特別に親しいわけでもなく、お互いに名前を知っている程度の関係だった。街で麻実と矢野隆生が2人でいるところを目撃し、学校内に「麻実と隆生が付き合っている」と無責任な噂を流した。その理由は、密かに隆生に憧れていたことと、美人で大人びた雰囲気のある麻実への僻(ひが)みからである。 麻実に噂の出所として問い詰められた際には、噂を流した理由も含めて素直に白状しており、根は悪い人物ではない。

叶 エリ子 (かのう えりこ)

矢野隆生のいとこの女子大学生。隆生からは「エリ」と呼ばれている。金持ちのお嬢様で、気に入った物件があるとすぐに引っ越すなど、何不自由なく自由奔放に暮らしている。いとこの隆生に対して好意を抱いており、隆生の部屋に頻繁に出入りするなど、大胆な行動で積極的にアプローチをしている。

惣領 十三 (そうりょう じゅうぞう)

惣領麻実の祖父。妻はイギリス人のタニヤで、麻実の母をもうけた。画家として大成しており、現在も現役で絵を描いている。故人となった妻のタニヤを今でも愛しており、肖像画を多数残している。年齢の割に気が若いため、小学生のゲーム友達がいるなどかなりの自由人。麻実の父や麻実の母からは同居を提案されているが、縛られたくないといった理由で断っている。

タニヤ

惣領麻実の祖母で、イギリス人。麻実の母の実母で、惣領十三の妻だった。麻実が10歳の頃に亡くなっているが、麻実には「おばあちゃま」と呼ばれて慕われており、彼女の記憶に強く残っている。非常に気が強く、芯のしっかりした人物で、気弱な麻実の母親とは正反対であった。その容姿や気質は、麻実に強く受け継がれている。

麻実の父 (あさみのちち)

惣領麻実の父親。妻である麻実の母を溺愛しており、自宅に出た虫が怖くて泣いてしまう気弱なところも含めて愛している。年を追うごとに麻実の容姿や気質が、彼女の祖母・タニヤに似ていくことに驚いている。

麻実の母 (あさみのはは)

惣領麻実の母親。日本人の惣領十三、イギリス人のタニヤの間に生まれたハーフの女性。金色に近い髪色をしているが、日常的に着物を身に着けるなど日本文化を好んでいる。おとなしく内向的な性格で、さらに自宅室内に虫が出ただけで怖くて泣き出すなど気弱ではあるが、心優しい人物。

隆生の母 (たかおのはは)

矢野隆生の母親。著名なインテリアデザイナーとして活躍している。高校生の子供がいるとはとても思えないほど若々しい美人。いつも仕事で家を空けており、隆生からは「つくづく専業主婦に向いていない女」と評されている。基本的に隆生のことは放置しており、学校に行っているのであれば問題ないと、積極的に関わろうとはしていない。夫との関係はすれ違いばかりで良好とはいえない。

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