オーダーメイド

オーダーメイド

現実と虚構の境が曖昧になったり、潜在していた変態性が覚醒したりと精神に異常をきたす「500万円のアダルトビデオ」をオーダーする客、そしてさまざまな事情から整形をして出演するAV女優・男優の姿を描いたサスペンス作品。各ストーリーの前半が「500万円のアダルトビデオ」をオーダーする客側の視点、後半が出演する側の視点になっている。また、「500万円のアダルトビデオ」の闇を暴いて世間に公表するために動く山田律子と制作者の店長、アキラ、リンとの攻防も同時に描かれている。「週刊漫画TIMES」で連載された。

正式名称
オーダーメイド
ふりがな
おーだーめいど
作者
ジャンル
サスペンス
関連商品
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あらすじ

第1巻

春川清美から一方的に別れを告げられた葉山直樹は、噂で聞いた「500万円のアダルトビデオ」をオーダーするために、アダルトビデオショップ、ユートピアンを訪れていた。直樹は清美が淫らに服従するシーンが観たいと、店長にアダルトビデオの制作を依頼。後日葉山が受け取った映像には、清美本人としか思えない女性が激しく乱れた姿が映されており、葉山は金のためならば何でもやる汚い女だとののしり、同時に性的な興奮を覚える。(エピソード「Disk 1」。ほか、3エピソード収録)

第2巻

バレリーナの小野彩花は周囲からの人気を得ても、専門家からは今一つの評価を受けていた。完全にスランプに陥っている彩花が一人で自主練習を重ねていると、橘翔から色気が足りないのが致命的だと指摘されてしまう。幼少期からずっとバレエだけに打ち込んで来た彩花は、処女である自分に焦りを覚え、本当に不足しているのが色気ならば、なにか参考になるのではないかと、アダルトビデオショップ、ユートピアンを訪れる。そこで店長から500万円のアダルトビデオの話を聞いた彩花は、自分の内側にある欲望を知りたいとオーダーする。そして数週間後、彩花が出来上がった映像を観ると、気持ちよさそうに喘ぐ自分の姿があり、彩花は自分をここまで淫らにする相手は誰なのだろうと期待する。(エピソード「Disk 5」。ほか、3エピソード収録)

第3巻

裁判官として多忙な日々を過ごす水柿は、高校時代からの恋人で婚約者の小百合の知り合いが企画した飲み会に参加する。飲み会の途中、小百合の知人の美穂が怪しい魅力を漂わせながら水柿に接近。これまで浮気など考えた事もなかった水柿だが、美穂の魅力に心惹かれてしまう。そして水柿は小百合との婚約をあっさり破棄し、美穂に猛アプローチをかけていく。(エピソード「Disk 9」。ほか、3エピソード収録)

第4巻

幼い頃から知明の母の言いなりになって生きて来た知明は、自分が「意思がなく他人の欲望のままに生きる人形のような存在」だと思って生きて来た。ある日、知明は中古ショップでダッチワイフのアリサと出会い、自分と同じく、他人の欲望を受け入れるためだけに存在している姿に共鳴。以降、知明は本気でアリサを一人の女性として愛するようになり、周囲の目を気にする事なく街中で逢瀬を重ねていた。そんな中、勝手に知明の見合い話を進めていた知明の母は、見合いの相手からアリサを乗せた車いすを押して歩く知明の写真を見せられて激怒。知明の母は知明に何の断りもなく、勝手にアリサを処分してしまう。(エピソード「Disk 13」。ほか、3エピソード収録)

登場人物・キャラクター

店長 (てんちょう)

アダルトビデオショップ、ユートピアンを経営している男性。つねにパーカーのフードを深くかぶって、素顔を見せる事はない。唇に太いピアスをしており、首筋から鎖骨にかけて大きなドラゴンのタトゥを入れている。ユートピアンに「500万円のアダルトビデオ」を求めてやって来た客はもちろん、需要がありそうな相手には自ら声を掛けている。共に働いているアキラとリンにだけは、店長自身の素性の一部を明かしている。

アキラ

アダルトビデオショップ、ユートピアンの従業員の男性。依頼者のリサーチ兼男優を務める。元天才医師で、ユートピアンの専属女優達の整形手術はすべてアキラが行っている。セックスのテクニックに非常に長けており、一度アキラと身体の関係を持ってしまった女性の多くはその快感の虜になる。アキラ自身はプライベートでは、仕事関係の女性とは絶対にセックスをしないと決めているため、深沼しずのように整形を繰り返し、アダルトビデオに出演する事で欲望を満たすようになる。恋愛対象は男性ではあるが、撮影では女性とも身体の関係を持つ。ふだんは優しい性格で、大らかでさわやかなルックスの好青年だが、時折ドライで冷酷な一面を覗かせる。基本的に何でも器用にこなすが、与えられた役柄に没頭する沢井よう子が苦手。

リン

アダルトビデオショップ、ユートピアンの従業員の女性。出演するAV女優のスタイリングと美容、さらに動画編集を務める。動画編集では当時の場面を再現するためのCGデザインも行っている。しっかりとした女性ではあるものの、言いたい事は遠慮なく口にするなど、子供っぽい一面を持つ。ユートピアンでは唯一の女性スタッフでもあり、一部の専属AV女優に対しては同情的であったり、助言をしたりする事もある。一方でネネのような軽薄な人物には冷たく接する。幼い頃、暴力と貧困から守ってくれた唯一の家族、リンの兄は故人。

山田 律子 (やまだ りつこ)

大波出版に勤務するジャーナリストの女性。政治や経済など社会問題を取り上げる雑誌の部署で働きたいと入社したものの、配属先は都市伝説や芸能人のゴシップばかりを取り扱う編集部だった。それでもめげずに編集部長に対して、たまには骨太の社会派の記事を取り上げたいと訴えるが、無理だと一蹴されている。救命救急医の大輔と同棲していたが、「500万円のアダルトビデオ」を観た大輔の死体愛好の性癖が高まり、実際に殺害されそうになる。その事でこれまで一部でささやかれていた「500万円のアダルトビデオ」の存在を知り、世間にすべてを公表しようと動き出す。そのため、店長、アキラ、リンからは要注意人物だとマークされる。

藤井 (ふじい)

山田律子が勤務する大波出版の先輩で、正義感あふれる男性。後輩達からは絶大なる信頼を寄せられているものの、自己主張の強さから上司には煙たがられている。山田がかかわる仕事で大きなミスが発生し、すべての責任を取り、現在は退社して探偵業を営んでいる。山田がアダルトビデオショップ、ユートピアンと「500万円のアダルトビデオ」の秘密を探っていると聞き、情報提供をする。「500万円のアダルトビデオ」にかかわった多くの人間が異常をきたしている事も知っており、山田に深入りしないようにとくぎを刺す。

大輔 (だいすけ)

山田律子の恋人の男性。救命救急医を務めている。山田とは同棲しており、仕事に使命感を持つ優しく穏やかな人柄だと装っていた。しかし、死体に欲情する倒錯した一面を持ち、そのために救命救急医をしている。誰にも言わずに己の性欲を満たすために「500万円のアダルトビデオ」をオーダーした。そこに出演していた山田にそっくりな死体が犯される様を観て興奮。ついに現実と虚構の境目がわからなくなり、今すぐ山田を殺害して犯そうと襲い掛かった。その際に冷静さを失っていたために窓から転落し、そのまま死亡する。山田が「500万円のアダルトビデオ」に興味を抱くきっかけを作った人物。

葉山 直樹 (はやまなおき)

大手広告代理店に勤務するエリートの独身男性。年齢は25歳。非常にプライドが高く、自分よりも学歴や収入をはじめ社会的な地位が下だと判断した者に対しては、とことん見下す横柄な性格の持ち主。取引先の受付で働いていた春川清美にアプローチをして交際をスタートさせたが、清美から別れたいと切り出された事で激高。以降、清美にしつこくつきまとう。アダルトビデオショップ、ユートピアンにある「500万円のアダルトビデオ」の噂を聞き、清美が淫らに服従するシーンが観たいとビデオをオーダーする。

春川 清美 (はるかわ きよみ)

葉山直樹が勤務する会社の取引先の中小企業に勤務している独身女性。年齢は22歳。受付で働いており、来社した葉山と顔見知りになってアプローチを受けた事で交際をスタートさせた。恋人同士になった葉山と価値観の違いを感じて別れを切り出したものの、捨てられた事を認めたくない葉山から、以降しつこくつきまとわれる事になった。

深沼 しず (ふかぬま しず)

アダルトビデオショップ、ユートピアン専属のAV女優。年齢は22歳。貧乏な家庭に育ったうえに醜い容姿をからかわれる事が多く、今の生活から抜け出したいと必死に勉強して来た。その甲斐あって念願の一流企業の内定をもらうものの直後に難病が見つかり、余命が幾ばくもない事が判明する。人生の最後にセックスを経験してみたいと「500万円のアダルトビデオ」に出演したいと応募する。

赤荻 恒星 (あかおぎ こうせい)

運送会社に勤務するギャンブル狂いの男性。年齢は42歳。ギャンブルが原因で元妻の真紀とは離婚し、現在はバツイチ。離婚には応じたものの、真紀と子供との楽しい生活が忘れられずにいる。競馬で万馬券を当て、帰り道にアダルトビデオショップ、ユートピアンに立ち寄った事で「500万円のアダルトビデオ」を知り、我慢できずにオーダーする。真紀にそっくりな女性が乱れている姿を観て懐かしさがあふれ、心を入れ替えて復縁しようと決意。ギャンブルを絶ち、仕事に打ち込むようになる。

真紀 (まき)

バツイチの女性。元夫の赤荻恒星とは赤荻のギャンブル癖で離婚している。子供が一人いるため、現在はシングルマザーとして懸命に子育てしている。素朴な顔立ちにぽっちゃりとした太めの体型で、おおらかで優しい雰囲気を漂わせている。

沢井 よう子 (さわい ようこ)

アダルトビデオショップ、ユートピアンの専属AV女優。元実力派女優で、より他人になり替わる快感を得たいと突如芸能界から引退し、「500万円のアダルトビデオ」に出演する事になる。ユートピアンでは「ヨーコ」の名前で活動中。取り憑かれたように与えられた役柄にのめりこむため、男優役のアキラからは演技に飲まれそうになると苦手意識を抱かれている。しかし、沢井よう子自身はアキラとのセックスを楽しみにしている。役柄のためであれば、醜い姿に整形されても構わないと考えている。

松本 貴好 (まつもと たかよし)

小学校教師を務める独身男性。年齢は24歳。アニメ鑑賞が趣味で、内向的な性格をしているが、生徒達からはそれなりに人気がある。2年生の担任で、頻繁に放課後苦情を言いにやって来る児童の母親、飯泉涼子のせいで精神的に追い込まれている。飯泉が自分に淫らにすがってくる様子を見れば溜飲が下がると考え、「500万円のアダルトビデオ」をオーダーする。

飯泉 涼子 (いいずみ りょうこ)

小学2年生の娘がいる母親。子供のクラスの担任は松本貴好が務めている。モンスターペアレンツで、放課後は毎日のように松本に苦情を言いに学校を訪れる。松本に対してはアニメ好きな気持ちの悪い頼りない男性だと見下している。高圧的な態度でネチネチと攻撃し、松本の精神状態を崩壊させる。

幸恵 (さちえ)

恋多きシングルマザーの母親を持つ、まじめな性格の少女。母親が恋人の高塩崇宏に飽きられて振られそうになった際、幸恵の身体を差し出せば交際を継続してもいいと持ち掛けられ、それに応じた事で高塩に無理矢理犯されてしまった。自分の容姿や顔を変えて生まれ変わりたい気持ちから、アダルトビデオショップ、ユートピアンの専属AV女優になる。小柄で華奢な非常にかわいらしい容姿で、アキラからは整形しない方がいいと言われた。

高塩 崇宏 (たかしお たかひろ)

幸恵の母親と交際している男性。別れたくないとすがる幸恵の母親に対して、幸恵の身体を差し出せば関係を継続させてもいいと条件を出す。欲望のままに幸恵を強姦し、幸恵がアダルトビデオショップ、ユートピアンの専属AV女優になるきっかけを作った人物。店長の策略により、高塩崇宏自身も「500万円のアダルトビデオ」に出演する事になる。

丸高 千代吉 (まるだか ちよきち)

一流商社、丸高ホールディングスの会長を務める男性。年齢は80歳。仕事一筋で家庭を持った事がない。学歴よりも人柄と能力を重んじており、アルバイトとして工場勤務していた大見卓に対して、もっと上を目指すようにと優しく声を掛けた。高齢のために男性として下半身が機能しないものの、もう一度性の喜びを体験したいと望んでいる。そのため、丸高千代吉自身に性的な興奮を与えてくれた者に死後、すべての財産を渡すと宣言。その事が原因で、役員のあいだでは大騒動が巻き起こる。

大見 卓 (おおみ たかし)

一流商社、丸高ホールディングスの本社に勤務する男性。年齢は32歳。天涯孤独の身で工場でアルバイト勤務をしていたところ、その才能を丸高千代吉に見い出され、以降側近として仕えた。丸高がもう一度性の喜びを知りたいと聞き、その願望を叶えたいとアダルトビデオショップ、ユートピアンの「500万円のアダルトビデオ」に興味を抱き、恩返しのためにオーダーする。

里美 (さとみ)

丸高千代吉が幼少期にいっしょに遊んだ少女。丸高よりも年上で、現在は80歳を超えている。まだまだ言葉も達者で、アキラ相手に下ネタを口にする元気なおばあちゃん。丸高の初恋の相手でもあり、性に目覚めるきっかけを作った女性でもある。当時は純朴な少女を演じていたが、丸高が自分を性的な目で見ていた事にも気づいており、わざと下着を露出するなどしてからかっていた。

ネネ

アダルトビデオショップ、ユートピアンの専属AV女優。恋愛依存症の若い女性で、現在交際している飽きっぽい性格の彼氏から頻繁に整形を勧められている。定期的に新しい顔を手に入れ、さらにアキラとの気持ちいいセックスができると喜んでいる。しかし、丸高千代吉の願望を叶える「500万円のアダルトビデオ」にAV女優として出演したあと、映像を気に入った丸高がリピートするようになった事で整形できなくなる。ほかのユートピアン所属のAV女優とは違って信念や複雑な事情もなく、ただ彼氏のために整形を重ねている軽薄さから、リンに嫌われている。

小野 彩花 (おの あやか)

美しく整った容姿と優れた才能を持つバレリーナの女性。幼少期から誰よりも努力を重ねており、そのためこれまでに男性と交際経験のない処女。最近スランプに陥っており、その理由を橘翔からは色気が足りないからだと指摘される。性的な魅力を高めるためにアダルトビデオショップ、ユートピアンを訪れ、「500万円のアダルトビデオ」の存在を知り、自分に秘めたる欲望を知るためにオーダーする。

橘 翔 (たちばな かける)

国内では人気実力共にNo.1と評されている男性バレリーノ(バレエダンサー)。スランプに陥っている小野彩花に対して色気がないからだと指摘し、自分と身体の関係を持ってみないかと持ち掛けた。しかし、彩花は好みのタイプではなく、からかい半分の冗談で本当に望んでいたわけではない。彩花が「500万円のアダルトビデオ」をオーダーするきっかけを作った人物。

ヒロキの友達 (ひろきのともだち)

シングルファザーの家庭に育ち、のちに父親が再婚をしたあとは義理母から性的虐待を受けて育った青年。年齢は20歳。母親は恋人を作り、家を出たまま行方不明になっている。街で偶然同じ年のヒロキと出会い、同じく複雑な家庭環境に育ったために意気投合した。学生時代はヒロキと共に野球部に所属していた。性的虐待を受けていた事もあり、女性不信に陥っている。どんな時でもいっしょにいてくれたヒロキに片思いをしている。ヒロキが悪い女性に貢がされている事をヒロキに指摘したところ、嫉妬しているんだろうと激高されたうえに、気持ちが悪いと恋心を全否定される。失恋のショックからアダルトビデオショップ、ユートピアンを訪れ、女性の容姿になっても構わないので、「500万円のアダルトビデオ」に出演させてほしいと志願する。

ヒロキ

働かずに酒びたりの両親のもとでDVを受けて育った青年。年齢は20歳。街で偶然同じ年のヒロキの友達と出会い、同じく複雑な家庭環境に育ったために意気投合した。学生時代は共に野球部に所属するなど、親友関係を築いている。最近彼女ができ、相手を喜ばせようと高額なプレゼントを贈っている。友達が自分に恋心を寄せている事は気づいているが、友情のために知らないふりをしている。しかし友達から、彼女は悪女だと指摘された事をきっかけに激怒し、彼の恋心を気持ち悪いと全否定する。好みのタイプは小野彩花。

木本 努 (きもと つとむ)

太めの体型をしているニートの男性。年齢は29歳。アイドルオタクで、オタク仲間からは「キモやん」と呼ばれている。会社を突然リストラされて落ち込んでいた際、近所の公園で泣きながら一人で練習をする綿貫なゆの姿を目撃して以来、なゆの大ファンになった。なゆが出演するコンサートの帰りに、偶然見かけたアダルトビデオショップ、ユートピアンに立ち寄り、「500万円のアダルトビデオ」の存在を知る。なゆの乱れた姿を観たいという欲望から、500万円の資金を稼ぐために肉体労働を開始した。最初は慣れない労働に戸惑いつつも少しずつ仲間とも打ち解け、最終的には以前より引き締まった身体と強い精神を手に入れた。のちに同じ職場の犬塚と交際をスタートさせる。「500万円のアダルトビデオ」を観た者の中では、人生が好転した稀な人物。

綿貫 なゆ (わたぬき なゆ)

アイドルを生業とする少女。ファンからの愛称は「なゆゆ」。デビューした頃はなかなか芽が出なかったものの、のちに清純派アイドルキャラクターとして才能が開花する。それと同時に作られたアイドルでいる自分と本来の自分とのギャップにストレスを感じ、これまで支えて来たなゆの母を罵倒し、裏切る。激怒したなゆの母によって自宅に監禁された。

なゆの母 (なゆのはは)

綿貫なゆの母親。アイドルになりたいと努力を重ねて来た娘を誰よりも応援していた。しかし、突如なゆの裏切りに遭い、抑えきれない怒りからなゆを自宅に監禁する。そのあいだにアダルトビデオショップ、ユートピアンと接触し、なゆそっくりな顔に整形した。その後、木本努がオーダーした「500万円のアダルトビデオ」に出演する。のちにそのままの容姿で、一般流通するAVになゆ本人として出演して世間を騒がせる。

矢場 絵梨佳 (やば えりか)

醜い容姿にコンプレックスを抱えており、整形して美しく生まれ変わった女性。過去を知らない男性から頻繁に声を掛けられ、順風満帆な日々を送っていたが、病に倒れてしまう。病床で店長に「500万円のアダルトビデオ」をオーダーし、そのまま死亡する。徹とは幼なじみ。

(とおる)

矢場絵梨佳の幼なじみの男性。絵梨佳と同様に醜い容姿にコンプレックスを抱えている。絵梨佳が入院してからも毎日お見舞いに訪れていた。

水柿 (みずがき)

裁判官を務めるエリートの男性。高校時代から交際している小百合と婚約中に、怪しい魅力を持つ美穂に誘惑され、心を奪われてしまう。美穂と交際するために小百合とあっさり婚約を解消。しかし、美穂からは今一つ相手にされていない現状に苛立ちを覚え始める。小百合からは「きよちゃん」と呼ばれている。美穂と出会うまでは正義感が強く、浮気など考えられない、まじめで誠実な性格だった。

小百合 (さゆり)

水柿と高校時代から交際している女性。現在は婚約している。清純でおとなしい性格の持ち主で、これまで水柿だけに一途な恋心を捧げて来た。しかし、知り合いの美穂の介入によって破局する。

美穂 (みほ)

小百合の知り合いで、怪しいミステリアスな魅力を持つ女性。裁判官という社会的なステータスを持った水柿に接近し、小百合から略奪する。しかし水柿とは今すぐ交際するつもりはなく、思わせぶりな態度を繰り返す。

留奈 (るな)

過去に2回中絶を経験した若い女性。長年にわたって実父から性的虐待を受けており、父親は死去したものの、未だに父親の恐怖の呪縛から抜け出せずにいる。その過去を含めて自分を受け入れてくれる男性と交際中だが、セックスをしようとするとトラウマがよみがえるため、一度もセックスしていない。カウンセリングなどのさまざまな手段を尽くすものの治らず、「500万円のアダルトビデオ」に出演すればなにかが変わるかもしれないと、アダルトビデオショップ、ユートピアンを訪ねた。

(はな)

花の彼氏と同棲中の若い女性。ヒョウ柄のスウェットを着用している。花の彼氏との交際をお互いの両親に反対され、かけおち同然で大塚の住むアパートの隣室へ引っ越して来た。以降、大塚とはおかずのやりとりをするなど、良好な関係を築いている。花の彼氏とのあいだに子供ができたものの、中絶するように言われてしまう。昼間は妊娠して幸せそうな大塚の姿を目撃し、夜には毎晩夫との激しいセックスの声を聞かされ、次第に大塚への嫉妬と恨みが募っていく。

大塚 (おおつか)

優しく穏やかな性格の女性。となりの部屋に引っ越して来た花に対しても親切に対応する。現在妊娠中ではあるが、毎晩夫と激しいセックスを繰り返している。その際の声が花と花の彼氏に聞こえている事にはまったく気づいていない。

花の彼氏 (はなのかれし)

花と同棲中の若い男性。花との交際をお互いの両親に反対され、かけおち同然で大塚の住むアパートの隣室へ引っ越して来た。大塚が夫とセックスをしている気配を感じると壁に耳を当てるなど、下品な言動が多い。同棲がスタートした当初は花のためにまじめに働こうとしていたが、あっさり無職になる。避妊をする事もなく、花が妊娠した時には多少は身体を気遣う言動を見せたものの、迷う事なく中絶してほしいと言い放つ。

青木 一郎 (あおき いちろう)

これまでに女性と交際した事がない無職の男性。童貞で、年齢は39歳。好きな女の子の笛を手にしているところをクラスメイトに目撃され、それ以降不登校になってしまう。その後は進学も就職もせずに引きこもりになったため、女性とのかかわりがまったくなく、妄想ばかりが膨らんでいた。やっとの思いで初めての風俗に行くが、女性の裸を前に怖気づいてしまい、性行為せずに終わる。このまま童貞で過ごすのは嫌だと思っていたところ、アダルトビデオショップ、ユートピアンで「500万円のアダルトビデオ」の出演者募集を知り、人生を変えるつもりで応募する。

中井 ひな (なかい ひな)

漫画家志望の女性。年齢は34歳。努力を重ねているが、なかなかデビューのチャンスに恵まれていない。現在は長年あこがれだった四季つかさのもとでアシスタントをしている。現状を変えたいと思っていたところ、アダルトビデオショップ、ユートピアンで「500万円のアダルトビデオ」の出演者を募集していると聞き、プロの漫画家になるきっかけになればと応募した。その刺激的な体験をネームに起こしてつかさに報告したところ、アイディアを盗作されてしまう。

四季 つかさ (しき つかさ)

プロの人気漫画家の女性。連載を多数持っている。年齢は42歳。人気は維持しているものの、編集部の鬼野達からは毎回ストーリーがマンネリ気味だと指摘されていた。自分を慕うアシスタントの中井ひなに親切に接していたが、ひなが「500万円のアダルトビデオ」に出演した際の体験を聞き、そのアイディアを盗作した。過去にも明るみになっていないが、アシスタントのネームを盗んだ経験がある。

鬼野 (おにの)

漫画雑誌の編集を務める男性。中井ひなの担当者。ひなには対して、「万年アシスタント」と陰口を叩くなど心無い言動が目立つ。その一方で、四季つかさがひなのネームを盗んで自身の作品として編集部に提出した際には、ひなのアイデアだとすぐに気づくなど、洞察力に優れる。

犬塚 (いぬづか)

木本努が勤務する会社で、事務職として働く既婚の女性。美人ながらややヤンキーっぽく、入社当時の木本には、どうせすぐに退職するだろうと、冷やかな視線を送っていた。しかし、木本の懸命に働く姿を見て見直し、親切な態度を見せるようになり、次第に木本が異性として気になる存在へと変わっていく。夫はヤクザで、精神的なDVを受けている。のちに夫と離婚し、木本と交際をスタートさせる。

伊崎 公平 (いさき こうへい)

俳優業を生業する中年の男性。抜群の知名度を誇る。以前ドラマで共演した年下の美人女優と結婚し、娘の伊崎愛花を授かる。しかしその後、次第に人気に陰りが見え始めて収入が減り、これまでの裕福な家庭を維持するために借金を重ねる。そんな中、妻が突然認知症になってしまう。この状況から脱するために愛花から個人事務所の設立を促され、同時に「認知症の妻を愛し続ける理想的な愛妻家キャラクター」として再度ブレイクする。芸能界に返り咲く事に成功するが、愛妻家キャラクターが邪魔をして、女遊びもできず息苦しさを感じている。

伊崎 愛花 (いさき まなか)

伊崎公平の娘。現在は公平の個人事務所の代表を務めている。伊崎家が借金で首が回らなくなったうえに、母親が認知症を患ったタイミングで、公平に個人事務所の設立を促し、「認知症の妻を愛し続ける理想的な愛妻家キャラクター」として売り出す。そのイメージが壊される事を恐れ、職場だけでなくプライベートでも公平の言動を厳しくチェックしている。

知明 (ともあき)

幼い頃から知明の母の言う通りに抑圧されて生きて来た会社員の男性。自分は母親の意思と欲望で動く人形のようだと感じていたところ、中古ショップでダッチワイフのアリサと出会う。自分と同じく他人の欲望にさらされているアリサに好意を抱き、以降まるで彼女のようにして交際を開始する。デートの際にはアリサを車いすに乗せ、周囲からの奇異な視線も気にする事なく堂々と振る舞っている。独自の愛を貫く姿をリンに共感され、無償でアリサが出演する「500万円のアダルトビデオ」をプレゼントされた。

アリサ

中古のダッチワイフの人形。現在の所持者は知明。知明から愛されており、週末には車いすに乗せられて、さまざまな場所へとデートに連れ出されている。ふだんは知明の会社近くのレンタル倉庫に保管され、いつでもインターネットで現在の様子が見られるように設定されている。

知明の母 (ともあきのはは)

知明の母親。これまで知明をまるで自分の道具のように扱って来た。そのため、知明は自分の意志を持たない人間に育っているが、まったく気にしていない。知明に一方的に見合いを勧めたものの、先方からアリサの存在を聞かされて激怒し、勝手にアリサを処分しようとした。

整形中毒の女 (せいけいちゅうどくのおんな)

これまで何度も整形を重ねて来た女性。アキラ曰く「元の原型がない人間」。これ以上整形はできないと担当医に告げられるが、どうしてもまだ整形したい気持ちから、アダルトビデオショップ、ユートピアンで「500万円のアダルトビデオ」の出演者募集に応募した。その際、ダッチワイフのアリサの顔に整形した。この時、事前告知されていた手術のリスクから表情を失ったが、整形中毒の女本人は満足している。出会った頃のリンからは、見た目の事しか考えていない軽薄な人間だと見下されていたが、両親が火災で死去した過去を含む複雑な生い立ちを聞き、心を寄せられるようになる。

小林 勇 (こばやし いさむ)

某グラビアタレント事務所の専属スタイリストを務める男性。「500万円のアダルトビデオ」を一番最初にオーダーした人物。職場では「コリン」と呼ばれている。派手なメイクをして奇抜なファッションに身を包み、オネエ口調でしゃべる。周囲にはゲイだと公言しているものの、実際は女性が大好き。ゲイだと噓をついている理由は、女性に警戒心を与える事なく近づけるから。実際にグラビアアイドルの胸を鷲摑みにしたり、着替えシーンを盗撮したりと、やりたい放題している。また盗撮シーンはインターネット上で販売するなど、悪質な行為を繰り返している。事務所でNo.1の人気を誇る黒谷美羽に目をつけているが、心を開かない事に苛立ちを覚え、性欲を発散するために「500万円のアダルトビデオ」をオーダーする。

黒谷 美羽 (くろたに みう)

某グラビアタレント事務所に所属するアイドルの女性。スタイル抜群で整った顔立ち、さらにクールな雰囲気から高い人気を誇る。しかし他人とはかかわろうとせず、周囲のグラビアアイドルから信頼を寄せられている小林勇に対しても冷たく突き放す。

リンの兄 (りんのあに)

リンの兄で故人。貧乏な家庭に育ち、幼い頃から暴力や貧困から懸命にリンを守って来た。しかし突然病に倒れ、そのまま長期入院後に命を落とす。最先端の治療を受けさせたいと、リンの兄に隠れてリンが懸命に働いている事も知っていた。

場所

ユートピアン

繁華街から一本裏路地に入った雑居ビルにあるアダルトビデオショップ。一見一般的なアダルトビデオが並ぶ店だが、奥に店長が接客対応をする特別な窓口がある。そこにいる店長と交渉する事で、「500万円のアダルトビデオ」のオーダーおよび購入が可能になる。

その他キーワード

500万円のアダルトビデオ (ごひゃくまんえんのあだるとびでお)

アダルトビデオショップ、ユートピアンで販売されているアダルトビデオ。完全オーダーメイドで制作し、依頼者の欲望をすべて実現した映像が収録されている。あまりにもリアルで過激なため、現実と虚構の境が曖昧になったり、潜在していた変態性が覚醒したりと、精神に異常をきたす者が多い。映像を制作するためにメインの出演者は全員アキラの手で整形され、最終的にリンがメイクと映像の編集をして完成となる。1本あたり500万円の値段で販売されており、支払いは基本的に一括払いのみ。

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