封神しない演義

封神しない演義

女子高校生の大和さきが異世界に飛ばされ、怠け者の道士、姜子牙と出会い、彼と共に「太公望」として活躍する様子を描く、異世界ファンタジー要素を含んだラブコメディ。中国の怪奇小説『封神演義』をモチーフにしており、道士や仙人が多く登場する。「ASUKA」2015年10月号から連載の作品。

正式名称
封神しない演義
ふりがな
ほうしんしないえんぎ
作者
ジャンル
ラブコメ
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

第1巻

怪力と貧乳がコンプレックスの女子高校生、大和さきはある日、『封神演義』マニアの母親のコレクションの巻物で、異世界にワープしてしまう。飛ばされた先は中国の殷王朝。そこは人間の住む人界と、仙人や道士の住まう仙人界に分かれた世界だった。さきはそこで、姜子牙という道士の青年と出会う。元の世界に帰ろうとするさきだったが、「太公望」を狙う易者達に勘違いされ、子牙といっしょに捕まってしまう。さきの怪力によって何とか敵を退けるが、そこに申公豹が現れ、宝貝でさきを拘束。申公豹は騎獣に連れられてその場を去るが、さきは子牙から自分に代わって、太公望になってほしいと頼まれる。こうしてさきは封神演義の世界の事情に巻き込まれながら、さまざまな出会いを重ね、子牙と共にドタバタな日々を過ごす事になる。

第2巻

姜子牙太公望になって封神するという使命を嫌がるのには、れっきとした理由があった。それを知った大和さきは、一人ではなく子牙と二人で「封神をしない太公望」になろうと決意する。新たな仲間として哪吒太乙真人と出会ったさきは、太公望として何をすべきかを考える中、宝貝で悪さをする者達を止める事で、天命によって誰かが死ぬ事を防ごうとする。そしてさき達は、まず殷王朝が傾く原因となる絶世の美女、蘇妲己の捜索を始める。そんな中、太乙真人の宝貝で運ばれ、西岐から冀州にやって来たさき達は、宿屋で束の間の休息を取っていた。その後さきと哪吒は、買い物に出かけた先でスリが得意な青年の黄天化に遭遇し、金銭のもとになる宝貝「金木簡」を紛失してしまう。

第3巻

蘇妲己の兄、蘇全忠と出会った大和さき達は、全忠の協力により、妲己と謁見できる事となった。しかし、妲己に会えるのは女性のみという条件を出されたさきは、女装した姜子牙と共に謁見を試みる。妲己と対面したさきは、彼女と王の婚姻を邪魔せずに、妲己に取り憑こうとする妖怪の千年狐から彼女を守る事を決意する。後日の協議の結果、さきは妲己の側仕えとして仕え、彼女に試される事になる。妲己の婚礼の日まで屋敷の家事をする事になったさきだったが、怪力体質のせいで仕事がうまくいかず、失敗を繰り返してしまう。そして、それらの失敗を知った妲己からスパルタ教育を受けるはめになってしまう。何とかして妲己に認められたいと奮闘するさきは、あらゆる力を抑える宝貝「梱仙縄」を使って怪力を抑えようとする。

第4巻

蘇妲己と対面した大和さきは、その側仕えとなった。だがそこで、さきがいっしょにいた女性は妲己ではなく、蘇全忠こそが本当の妲己であった事が判明する。しかし、偽妲己の正体はわからずじまいで、さきはその女性が何者であるかを探るようになる。今まで全忠のふりをして男装していた妲己の話を聞いても、謎は深まるばかりだったが、母親から得た『封神演義』の知識をヒントに、さきは偽妲己の正体をつき止める。これにより、妲己のふりをしていた楊戩から認められたさきは、改めて本物の妲己を千年狐から守るため、彼女を護衛する事になる。その夜、さき達は遠くからやって来る妖気に気づくが、仮面の男の罠によって、千年狐に侵入を許してしまう。

第5巻

千年狐と手を組み、殷王朝の転覆を狙う仮面の男を捕まえるための作戦を思案する姜子牙大和さき達は、彼らに命を狙われていた伯邑考の救出に成功。これにより伯邑考の天命を変えた事に安堵し、自信を付けるさきだったが、賈氏が何者かにつき落とされ、転落死したという報せが入る。賈氏を慕っていたさきは絶望し、自信をなくして落ち込んでしまう。さらに母親を亡くし悲しんでいる天化に遭遇したさきは、彼が犯人への強い復讐心に燃えている事を悟る。復讐のため、命をも捨てようとする天化を何とか止めるべく、さきは子牙と共に犯人探しを開始。その夜さきは、賈氏の死亡現場で、丸いガラスの破片を発見する。そしてさきは、ガラスの破片が聞仲のメガネである事に気づくのだった。

登場人物・キャラクター

大和 さき (やまと さき)

現代日本に住む平凡な女子高校生。年齢は17歳。女子とは思えない怪力と、母親譲りの貧乳がコンプレックスになっている。周りの女子からは怪力を頼りにされるが、男子からは「怪力女」や「破壊神」呼ばわりされていた。また貧乳である事から、少年に間違えられる事が多い。『封神演義』オタクで、天然な性格の母親と二人暮らしで、母親が何かと抜けている分、しっかり者。 母親のコレクションの巻物で異世界に飛ばされ、姜子牙に出会う。怠け者の子牙に代わって3代目太公望の役目を押し付けられるが、一人ではなく二人で太公望になり、誰も封神せずに殷王朝を安泰させる事で世界を救おうとを提案する。その後は子牙を中心にさまざまな仲間と旅をしながら、人々を天命から救済したうえで、元の世界に戻る事を目指している。 持ち主に触れる事で、宝貝の副作用を無効化する力を持つ。当初は太公望を押し付けて来る子牙を厄介者のように思っていたが、共に旅をする中で徐々に彼を男性として意識するようになる。忙しい母親に代わって幼い頃から家事をする事が多かったが、怪力なため繊細な作業は苦手。 腕っ節には自信があるが、物理攻撃が効かないお化けや幽霊などは苦手。

姜 子牙 (きょう しが)

3代目太公望としての使命を授かった、道士の青年。殷王朝に代わる新たな王朝の誕生を助けるべく、元始天尊から封神榜に書かれている者を倒して封神するように命令されたが、これらの役目を継ぐ事を嫌がっている。川で溺れていた大和さきと出会い、太公望としての役目を押し付けながら、彼女と行動を共にするようになる。 見た目は美青年だがやる気がなく、誰かのヒモになりたいと考えるほどの怠け者。普段は修行をサボっている事が多く、庵で昼寝をしたり、川で釣りをして過ごしている。実は太公望を継ぐのを嫌がっているのは、封神榜に書かれている人の命を奪うのに抵抗があるため。それを知ったさきの提案で、二人で「封神しない太公望」となる事を決意する。 修行をサボるなどやる気はないが、冷静かつ聡明な面があり、占いも得意。またさきの事は大切に思っており、彼女をさまざまな危険から守ろうとしている。宝貝「打神鞭」の副作用により、女性に触れたり触れられると、巨大なパンダの姿に変身してしまう。このため女性に直接触れるのを避けていたが、副作用を無効化できるさきにだけは触れる事ができる。

四不象 (すーぷーしゃん)

姜子牙が乗っている騎獣。体が小さく口は悪いが、実は面倒見がよく、しっかり者な面があり、ツンデレな性格。頭には3本の角が生えており、触り心地がぷにぷにしている。子牙や大和さきをはじめとした周りの者へツッコミをする事が多い。

申公豹 (しんこうひょう)

姜子牙と同じく元始天尊のもとで修行した、道士の青年。兄弟子にあたる子牙の事は「師兄(スーション)」と呼ぶ。すぐ女性をナンパする軽い性格で、大和さきの事も気に入っている。強力な鎖の宝貝「咬竜金鞭」をあやつる。宝貝の副作用で、五感のうち触覚や嗅覚を失っており、首を刎ねても痛みを感じない。刺激に飢えており、他人を思い通りに動かす事でヒマ潰しをしているサディスト。 さきの事も「傀儡人形(おもちゃ)」扱いしていた。しかし、さきが副作用を無効化して痛みを感じて以来、痛みや蔑みに対する快感に目覚めてしまう。以来さきの事を「ハニー」と呼んで追い回すようになる。2頭を持つ虎の騎獣「黒額虎」と「白額虎」を連れている。

元始天尊 (げんしてんそん)

崑崙山に住む仙人の老人。姜子牙と申公豹の師匠。子牙に太公望として、悪い仙人を倒すように命じる。やる気がなく自由奔放な子牙には苦労させられる事が多い。

黄 飛虎 (こう ひこ)

殷王朝の武官をしている男性。通称「黄将軍」。各地の諸侯達をまとめる将軍である「武成王」の称号を持つ。黄天化や黄天祥をはじめとした四人の息子がいる。大らかで楽天的な性格で、大和さきと姜子牙を歓迎して味方となる。冀州の蘇護の家系とは交流が深い。

賈氏 (かし)

黄飛虎の妻。長い黒髪で、お淑やかな雰囲気の女性。才色兼備で、料理も得意。異世界に来たばかりの大和さきを心配し、心から励ます。

黄 天祥 (こう てんしょう)

黄飛虎の息子で、四人兄弟の末っ子。大らかな性格の父親とは異なり、生まじめで慎重な性格の少年。当初は異世界からやって来たという大和さきを警戒していた。

哪吒 (なた)

太乙真人の弟子の少年。宝貝の副作用で、宝貝を使用するたびに強い空腹状態になり、時には我を忘れて飢えた獣のようになる。出生が特殊で、母親の中から肉の珠として生まれ、生まれた時から複数の宝貝をまとっていた。その後、川の竜王の逆鱗に触れた責任を取って自害するが、太乙真人の力で蓮の化身として生まれ変わる。また、いずれ来る戦争において太公望を補佐しながら無差別に人を殺めるという、「千人殺し」の天命を持っている。 のちに副作用を無効化できる大和さきへの恩返しも兼ねて、彼女と姜子牙の旅に同行するようになる。中華饅頭が大好き。

李靖 (りせい)

哪吒の父親の道士。宝貝の副作用により精神状態が不安定で、震えている事が多い。「千人殺し」で無差別に人を殺す天命を持つ息子の哪吒を、捕らえて殺そうとしていたが、本心では息子を大切に思っている。太乙真人の助言により、哪吒の副作用を無効化して天命から解放できる大和さきに、息子を託す。

太乙真人 (たいいつしんじん)

崑崙十二大仙の一人で、哪吒の師匠。糸目の青年の姿をした仙人で、姜子牙とも知り合い。宝貝の副作用で貧弱な体質になっており、よく吐血する。蓮の花の宝貝によって人や物を運搬する事ができるが、副作用があるためすぐに疲労してしまう。自害した哪吒を蓮の化身として生き返らせ、自らの弟子としている。

蘇 妲己 (そ だっき)

大和さき達が探している、冀州に住む女性。冀州侯、蘇護の娘で、蘇全忠の妹でもある。兄の全忠と瓜二つで、「絶世の美女」といわれている。妖怪「千年狐」に取り憑かれて殷王朝を傾倒させる原因となるため、さき達に守られる事になる。蘇家を守るために王との婚姻を成功させようとしており、家族思いで意志の強い女性。さきを試すために、一時的に自分の側仕えとする。 お嬢様とは思えぬほどに家事や料理まで何でもこなし、仕事を失敗したさきに対し、一から家事を仕込もうとするなどスパルタな面もある。さきの事をもともと知っていたかのようなそぶりを見せるなど、謎が多い。

黄 天化 (こう てんか)

大和さきが偶然冀州で出会った青年。黄飛虎の息子。賭博やスリを得意としている。道士でもあり、幼い頃より清虚道徳真君のもとで修行していた。黒髪に三白眼で、周囲からは「天化兄貴」と呼ばれている。手癖は悪いが、悪人以外から盗んだ物品はむやみに使ったり、賭けに出さないようにしている。子分と共に、イカサマなどをしている悪い賭場から宝物を盗む、義賊のような仕事をしている。 「やらない悪よりやる偽悪」をポリシーとしている。父親の飛虎の事は毛嫌いしており、顔を合わせるたびによくケンカしているが、根は素直。また体の弱い兄を心配して自らが嫡男になろうとするなど、強い行動力を持ち家族思いな性格。

蘇 全忠 (そ ぜんちゅう)

黄天化の友人で、憲兵をしている青年。冀州侯、蘇護の嫡男で、蘇妲己の兄でもある。美しさに強いこだわりを持ったナルシストな性格で、よく髪をかき上げる癖がある。大和さきいわく「いちいち動きがうるさい」。変わり者だが、自他共に認める美青年で、「妖艶の貴公子」の異名を持ち、女性からの人気が高い。憲兵としても優れた実力を持ち、悪党からは恐れられている。

楊戩 (ようせん)

高い実力を持った道士の青年。宝貝だけでなく高度な変化の術をあやつり、さらに文武両道をこなす天才。オネエ口調で話す。コウの主人。利害が一致した蘇妲己と協力し、彼女に化ける事で大和さきを試していた。額には「天眼」という、未来が見える第3の目がある。目的は宝貝の収集で、妲己の姿で紂王に近づく事で、宝貝を持つ者と接触しようとしていた。 さきの事を認めてからは、変化を活かして彼女達に協力するようになる。

コウ

蘇妲己の側仕えをしている少女。妲己の側仕えとなった大和さきと姜子牙の監視兼指導役となる。当初はさきに嫌がらせをしていたが、さきに助けられたのをきっかけになかよくなる。正体は楊戩の袖で飼われている犬の「哮天犬」。丸いぬいぐるみのような姿をしている。楊戩を「ご主人様」と呼び、慕っている。

紂王 (ちゅうおう)

現在の殷王朝を王として統治する男性。無類の女好きだが、王としての実力は高く、聡明であると同時に臣下からの信頼も厚い。大和さきや姜子牙と出会った事で国や自らの危機を知り、千年狐を捕らえたうえでさき達に協力するようになる。

千年狐 (せんねんこ)

黒い狐の姿をした妖怪。1000年ものあいださまざまな修行を重ね、人間の体を乗っ取る術をあやつる。蘇妲己に取り憑いて紂王に近づき、殷王朝を傾倒させようと目論んでいる。一度人間に取り憑くと、大きな衝撃を与えられるまでは離れる事ができない。憑依が解けると、小さな子狐の姿になる。もともとは妲己に憑依する予定だったが、失敗して大和さきに取り憑いてしまい、そのまま殷王朝に潜入するものの、さきの救出に来た姜子牙の策略によって紂王に捕らえられる。 仮面の男と内通していたが、彼の正体が誰なのかは知らずにいた。

聞仲 (ぶんちゅう)

殷王朝の太師をしている男性。厳しい性格の持ち主。高圧的な目つきをしてメガネをかけている。紂王いわく「雷を落とすばかりの堅物」。道士でもあり、強力な雷撃を放つ宝貝をあやつる。

商容 (しょうよう)

紂王の臣下の一人で、殷王朝の宰相を務める老人。落ち着いた物腰で、白ひげを生やしている。長年殷王朝に仕えて来た老臣で、紂王からの信頼も厚い。

黄 貴妃 (こう きひ)

紂王の妃の一人で、同時に懐刀のような女性。黄飛虎の妹で、道士でもある。冷静でミステリアスな雰囲気をまとっている。捕獲用の宝貝「花籠」の副作用により、相手の目を見つめる事で思考を読み取る事ができる。花籠で千年狐を捕獲し、紂王と共に大和さき達に協力するようになる。

仮面の男 (かめんのおとこ)

黒い服をまとい、仮面で顔を隠した謎の男。殷王朝の破滅を狙っており、千年狐とも手を組んでいた。また黄天化をそそのかして大和さき達を退けようとするなど、ほかの者を陰であやつりながら暗躍している。殷王朝を滅ぼしてすべてを創り直そうとしている事から、太公望の封神計画を利用しようとしている。このため、封神榜に書かれた者の命を狙っている。

伯邑考 (はくゆうこう)

琴の名手の美青年。封神榜にその名が記されていた。もともとは蘇妲己に取り憑いた千年狐に殺害される天命にあったが、大和さき達によって命を救われた。

清虚道徳真君 (せいきょどうとくしんくん)

崑崙十二大仙の一人。黄天化の師匠。賭博と酒が好きな男性で、弟子の天化からは「飲んだくれ仙人」と呼ばれている。見た目は冴えないが薬作りが得意で、調薬に関して右に出る者はいないと言われるほど。

場所

殷王朝 (いんおうちょう)

紂王によって統治されている古代中国の王朝。千年狐が取り憑いた絶世の美女、蘇妲己に王が誘惑されて国が滅びる未来が予言されていた。しかし、大和さき達の奮闘により千年狐が捕らえられ、滅亡は回避される。だが千年狐以外にも、内外問わず国を狙う者が存在する。

その他キーワード

宝貝 (ぱおぺえ)

仙人や道士が使う、特殊な力を持った道具や武器の総称。使用すると使用者に副作用が起こる。例えば姜子牙の場合は別の姿に変身したり、哪吒の場合は空腹になったりする。大和さきは使用者に触れる事で、これらの副作用を無効化できる。ある程度の力があれば簡単に使用する事が可能なので、宝貝を悪用する者もいる。

天命 (てんめい)

天より授かった運命や使命であり、すべての人間や動植物に定められた道。それぞれの天命が記された物は、仙人界に封じられている。大まかには占いで天命がわかるようになっており、この世界の住人とは切っても切れない関係とされる。ただし、もともと別世界の住人である大和さきには、この天命は存在しない。

太公望(用語) (たいこうぼう)

姜子牙が3代目を継ぐ事になっている称号。主に封神榜に書かれた者を倒して封神し、新たな王朝を建てる事で人界を助けるという役目を持っている。官吏をはじめ、己の目的や私腹を肥やすために、太公望を利用しようと目論む者もいる。

封神榜 (ほうしんぼう)

現在の殷王朝を滅ぼし、新しい王朝を建てるための大きな戦やその計画において、死亡する予定の者が記されている巻物。太公望にとって重要な書物であり、これに記されている者達を殺して、その魂を神に封じる(封神する)のが、太公望の役目となっている。記されている人数は365名。仙人でありながら修行不足の者や、人間なのに強力な力を持った者など、中途半端な力によって仙人と人間の境界を曖昧にする者が多い。

SHARE
EC
Amazon
logo