放課後さいころ倶楽部

放課後さいころ倶楽部

引っ込み思案な女子高校生の武笠美姫が、高屋敷綾や大野翠との出会いをきっかけにして、アナログゲームの世界に足を踏み入れていく。年頃の少女たちの、アナログゲームを通じた交流による心の成長を描いた青春物語。実在のボードゲームが登場するのが特徴で、コミックスにはアナログゲームショップ「すごろくや」店主、丸田康司によるゲームの解説が収録されている。「ゲッサン」2013年4月号より連載の作品。2019年10月にはTVアニメ化され、朝日放送テレビ、BS11、AT-Xほかで放映された。

正式名称
放課後さいころ倶楽部
ふりがな
ほうかごさいころくらぶ
作者
ジャンル
青春
 
ゲーム
レーベル
ゲッサン少年サンデーコミックス(小学館)
巻数
既刊17巻
関連商品
Amazon 楽天 小学館eコミックストア

作品が描かれた背景

当初、作者の中道裕大は「アナログゲーム」を題材にした作品を描こうとしたが、アナログゲームの知名度が低いことを理由に編集者に没にされる。その後、もっと広義な意味で「ホビー」をテーマに、女子高校生たちが色々なことに挑戦する漫画という方向性でネームを切る。これを基に作られたのが本作『放課後さいころ倶楽部』の第1話で、これらの経緯から第1話にはまったくアナログゲームが登場しない。その後、第2話でアナログゲームを登場させ、第3話以降は別のホビーの話を展開する予定だったが、第3話のネームがうまくできずに行き詰まってしまう。最終的に、「君はアナログゲームが好きなんだから、それ1本でいけばいいんじゃないか」という編集長の鶴の一声で、本作は中道裕大が当初から希望していたアナログゲームを主題とした方向に転換。この時点ではまだ作品の仮題すら付いていなかったが、当時の担当編集者により「さいころ倶楽部」という名称が盛り込まれることとなった。

あらすじ

キミの知らない世界(第1巻~第2巻)

引っ込み思案な武笠美姫は、加茂川北高校に進学してもクラスになじめず、一人寂しく退屈な日々を過ごしていた。そんなある日、美姫は引っ越してきたばかりの女子高校生の高屋敷綾と出会う。無邪気で明るい綾となかよくなった美姫は、自分のクラスに転校してきた綾と再会、学校でもいっしょに過ごすようになる。しかし綾はマイペースなため、クラス委員長の大野翠とは相性が最悪。綾はちょっとした仕返しのため、偶然、街で見かけた翠を美姫と共に尾行する。そして二人はアナログゲームの専門店「さいころ倶楽部」でアルバイトをしている翠を発見するのだった。翠の意外な一面を知った美姫と綾はボードゲームを遊ぶことで翠とも友人となる。三人は学校の友人や綾の姉の高屋敷花ともボードゲームをして、少しずつ交流の輪を広げていく。さいころ倶楽部の店長である金城タケルも同年代の友人がいなかった翠が、美姫や綾となかよく過ごしている姿を見て、感慨深い思いを抱く。

ミドリのゲーム(第3巻~第4巻)

ある日、武笠美姫高屋敷綾大野翠の夢がボードゲーム作家になることで、彼女がオリジナルゲームを作っていることを知る。しかし翠は、未完成な作品を他人に見せるのをためらい、金城タケルに相談する。その最中、タケルのもとにジョージ・ベレスフォードが訪れ、彼女のゲームに興味を示すのだった。そして翠はジョージから、自分のゲームと自身のゲーム作家としての姿勢に根本的な欠点があることを指摘される。その言葉に反感を覚えた翠は一念発起し、自分のオリジナルボードゲーム「ワンルーム」を完成させる。そして美姫と綾にテストプレイをしてもらうが、その評価は散々。彼女たちからワンルームの欠点を聞いた翠は、ベレスフォードの言葉の真意を理解し、ゲーム作りへの思いを新たにする。ベレスフォードはそんな翠の姿勢を認め、新たな才能あるゲーム作家の誕生をひそかに祝うのだった。

みんなの文化祭(第4巻~第5巻)

近所にボードゲームカフェがあると知った武笠美姫たち三人は、その店を訪れた。店員のエミーリアは年が近いドイツ人の少女で、ボードゲーム好きな彼女と美姫たちは意気投合し、すぐに友人となる。そしてエミーリアが加茂川北高校に転入してくると、美姫たちは学校でもなかよく過ごすようになる。エミーリアが学校に来るようになった頃、学校は学園祭の準備に大忙し。美姫たちも文化祭でボードゲームカフェの企画を立ち上げる。しかし美姫たちのボードゲームカフェに割り振られた場所は、旧校舎の三階という悪立地だった。閑古鳥が鳴く状況にとまどう美姫たちだったが、エミーリアが持ってきたメイド服とSNSを利用した宣伝で一気にカフェは盛り上がる。ボードゲームの説明に美姫たちはてんやわんやだったが、田上翔太吉岡龍二が応援に駆けつけたことでなんとか乗り切り、ボードゲームカフェを大成功へと導く。

みんなのこと、もっと教えて?(第6巻)

武笠美姫たちのいつもの集まりに、エミーリアも加わったことでボードゲームはますます苛烈に、かつにぎやかになる。そして季節は巡り、年の瀬も近づく頃、四人は周囲の友人を集めてクリスマスパーティーを開催。田上翔太吉岡龍二もパーティに参加し、それぞれ意中の相手とペアとなり、ボードゲームを楽しむ。翔太と龍二はゲームに負けたが、大野翠の計らいで意中の相手と二人っきりになり、かけがえのない思い出を作るのだった。そしてクリスマスも過ぎ、迎えた大晦日。美姫たちは新年を祝うべくエミーリアの家に集まる。そして四人は年明けまでボードゲームをしながら過ごしていたが、まだ知り合って日が浅いエミーリアは、ほかの三人に若干距離を感じてしまう。しかし高屋敷綾の励ましでエミーリアは前向きになり、これからお互いを知っていけばいいと気持ちを新たにするのだった。

私の大好きな場所(第7巻)

1年生最後の日、武笠美姫はこれまでの1年を振り返り、感慨に浸っていた。しかし、春休みを使って一度ドイツに帰郷するエミーリア、コンペで実力が認められてジョージ・ベレスフォードにアメリカに誘われた大野翠、希望と夢に満ちあふれた高屋敷綾の姿を見て、美姫は急に不安に駆られる。今が楽しいからこそ、変わることを恐れた美姫は落ち込み、自身の道を見失ってしまう。一人思い悩む美姫だったが、そんな美姫のもとに仲間が駆けつけ、彼女を孤独の闇から救い出すのだった。自分の思いを吐露した美姫は、仲間たちとの絆を再確認。四人は2年生になってクラスがバラバラになっても会えるようにと、ボードゲーム好きが集まる非公認のクラブを作ることを決める。そして美姫たちは金城タケルが営むアナログゲーム専門店「さいころ倶楽部」から名前を借り、アナログゲームを遊ぶクラブ「放課後さいころ倶楽部」を結成する。

合言葉は“ひとりぼっち”(第8巻~第9巻)

加茂川北高校に入学した黒崎奈央は、友人のいない退屈な日々を過ごしていた。近所の野良猫と遊ぶのだけが楽しみだった奈央は、ある日、同じアパートに住む金城タケルに出会う。タケルは野良猫が保健所に連れていかれないように、奈央に飼い主が見つかるまで自分の店で預かることを提案する。こうして奈央はタケルの店を訪れるようになり、タケルとボードゲームで遊び、心を開き始めるのだった。一方、奈央のクラスメートの時坂環菜は奈央がさいころ倶楽部に通う姿を見て、同じ趣味を持ちたいと奈央に話し掛ける。最初は奈央に邪険にされる環菜だったが、あきらめずに話し掛けることで二人は少しずつなかよくなっていく。そして奈央は、店を通じて武笠美姫たち2年生組とも知り合いとなる。友達に心を開くことができずにいた奈央だったが、環菜の懸命な思いと奈央に共感した美姫のフォローでついに心を開くのだった。美姫も奈央のために店で預かっていた猫の飼い主になることを決め、奈央を取りまく環境は少しずつ変化を見せ始める。

恋まっしぐら(第10巻~第11巻)

放課後さいころ倶楽部の面々とすっかり打ち解けた黒崎奈央は、今日も時坂環菜と共にさいころ倶楽部を訪れていた。しかしその日は武笠美姫高屋敷綾も顔を見せておらず、その代わりに田上翔太が訪れる。先輩の男子を前に緊張する環菜だったが、思いのほか面倒見のいい翔太とすぐに打ち解ける。学校でも気軽に話す仲となった環菜は次第に翔太に惹かれていくが、翔太が綾に思いを寄せていることを知り、大きく落ち込むのだった。一方、そんな環菜の様子を見守っていた奈央は、自分の気持ちに向き合い始める。奈央は自分にやさしくしてくれた金城タケルのことが気になって仕方がなかったが、ある日、タケルに好意を寄せる松浦メイの姿を見て心を激しくかき乱される。そして奈央はタケルに自分の思いの丈を告白するのだった。ふられたものの、あきらめずに前を向く奈央の姿を見て、環菜は一歩を踏み出す決意を固める。環菜は長い髪をばっさり切り、イメチェンをして翔太に会いに行くが、結局告白はできずに終わる。それでも環菜は恋に前向きな一歩を踏み出すのだった。

追憶(第12巻)

エミーリアは春休みを利用して、故郷のドイツに戻っていた。懐かしい友人たちの姿にほっと一息つくエミーリアだったが、そこにはかつての友人であるアンナの姿がないことに気づく。その後、アンナを捜し出して久しぶりに再会するが、アンナはエミーリアの話を聞かずに去ってしまう。アンナを追いかけたエミーリアは、ボードゲーム勝負で本音を語り合うことで和解し、エミーリアはアンナたちと自分の作ったボードゲームで遊ぶ。エミーリアは故郷に戻ったのと同時に、自分のゲームのアイデアをゲーム会社に持ち込むつもりだったのだ。友人たちにも太鼓判を押され、自信満々のエミーリアはゲーム会社を訪れる。そして改良こそ必要なものの、アイデアは秀逸と評価され、エミーリアのゲームが発売されることが決定する。これによって夢へと大きく近づいたエミーリアは、友人たちと別れて再び日本へ向かうのだった。

明日も(第13巻)

季節は巡り、夏。夏休みに入った武笠美姫たちは、遊びに行く計画を立てる。美姫たちは大野翠の実家が琵琶湖に別荘を持っていることを知り、彼女に誘われて滋賀県に旅行に赴く。エミーリア高屋敷綾だけではなく、黒崎奈央時坂環菜も加わり、放課後さいころ倶楽部の面々は去年以上ににぎやかな夏休みを過ごす。日常から切り離された時間をいっしょに過ごすことで、お互いの知らなかった一面を知り、一行はますます絆を深めていく。そして先輩である2年生と過ごすことに気後れしていた奈央と環菜も、次第に緊張を解きほぐし、楽しい夏の思い出を作るのだった。そんな旅行から帰ってしばらく経ったある日、美姫たちは夏祭りに出向く。田上翔太吉岡龍二も合流し、夏祭り巡りをしようとした矢先、翔太と翠の計らいで龍二は美姫と二人っきりとなる。美姫に対する気持ちを整理しきれず、悶々とした気持ちで過ごしていた龍二は、美姫といっしょの時間を過ごす中で、自分の思いを告白する。

迷宮!?(第14巻)

吉岡龍二に告白された武笠美姫はとまどいながらも、龍二の気持ちに向き合おうと決め、二人の関係はゆっくりとだが着実に一歩前進する。そして月日は過ぎ去り、美姫たちは二学期を迎える。放課後さいころ倶楽部の面々は今年も学園祭でボードゲームの出し物をしようとするが、今年は例年よりも盛り上げることを生徒会から要求される。人手が圧倒的に足りない状況では去年と同じボードゲームカフェはできないと断念し、美姫たちはエミーリアの提案で大掛かりな脱出ゲーム「迷宮(ラビリンス)」を制作することを決める。こうして全員が一丸となって文化祭に向けて動き出し、放課後さいころ倶楽部の面々は多忙ながらも充実した日々を過ごす。しかしそんな中、ハードワークが祟り、時坂環菜が倒れてしまう。自責の念に駆られる環菜だったが、仲間たちの応援に励まされ、脱出ゲームの成功を仲間たちに誓うのだった。そして一行は準備を完了させ、文化祭当日を迎える。

作風

本作『放課後さいころ倶楽部』には実在するアナログのボードゲームが登場する。登場するボードゲームは日本でおなじみの物もあるが、「ニムト」や「ごきぶりポーカー」などボードゲームが盛んなヨーロッパで作られた物も多い。コミックスには作中に登場したボードゲームを、アナログゲームショップ「すごろくや」店主の丸田康司が解説するコーナー「もっと知りたい !ゲームよもやま話」も収録されている。作者の中道裕大もボードゲームを趣味としており、作中には作者の経験を反映した描写も多い。ボードゲームが盛んなヨーロッパでは、ゲームの制作者を「作家」と呼ぶのに倣い、本作でもボードゲームの制作者はたびたび「作家」と表記される。また本作は、実在するボードゲーム作家が多数紹介されるのも特徴。作中では有名ゲームデザイナーであるヴォルフガング・クラマーの「ゲームは国境や世代をも越えて、人々をつなぐ橋である」という言葉が引用されており、この言葉どおり本作ではボードゲームを遊ぶことで人の交流が広がっていく。

モデルになった町

本作『放課後さいころ倶楽部』は京都府京都市が舞台となっており、作中でも鴨川や南禅寺の水路閣が登場している。また、武笠美姫たちが通う加茂川北高校も、作者の中道裕大の母校をモデルにしている。

メディアミックス

TVアニメーション

2019年10月より、朝日放送テレビ、BS11、AT-Xほかで、本作『放課後さいころ倶楽部』のTVアニメ版が放映された。制作はライデンフィルム。武笠美姫役を宮下早紀、高屋敷綾役を高野麻里佳、大野翠役を富田美憂、エミーリア役をM・A・Oがそれぞれ演じている。コミックスと同じくアニメでも実在のボードゲームが使われており、ボードゲームが登場した際には、そのゲームを提供した企業、団体名が「ボードゲーム協力」としてクレジットで記載されている。

登場人物・キャラクター

武笠 美姫 (たけかさ みき)

加茂川北高校に通う女子生徒。物語開始当初は1年生で、年齢は15歳。淡い水色の髪をショートカットにした少女で、内気でおとなしい性格をしている。子供の頃から人付き合いが苦手で一人でいることが多く、さらに小学生の頃に中学生にいじめられた経験から、気弱な性格となった。高校に入学してもクラスになじめず孤立していたが、高屋敷綾と大野翠に出会い、ボードゲームを通じてさまざまな人と交流することで少しずつ前向きで明るい性格へと成長していく。繊細なためにゲームにおける観察眼が鋭く、プレイヤー同士の駆け引きが重要なゲームでは驚異の強さを発揮する。また感受性豊かで語彙が豊富なため、物語を作る才能があり、ゲームで即興で物語を作った際には周囲が聞き入るほどの出来だった。自分と同じく人付き合いが苦手な黒崎奈央にはシンパシーを感じており、ボードゲームを通じて彼女と親しくなる。2年生の夏祭りで、吉岡龍二に告白され、お互いをよく知ってから返事をすると龍二に回答し、少しずつ関係を進展させていく。母方の祖父は金沢で旅館を経営しており、旅行の際には祖父の旅館に泊まった。両親も山奥で旅館を経営しており、家も古風な日本庭園のある豪華な屋敷となっている。

高屋敷 綾 (たかやしき あや)

加茂川北高校に転校してきた女子生徒。物語開始当初は1年生で、年齢は15歳。明るい茶色の髪をお下げにした少女で、天真爛漫で好奇心旺盛な性格をしている。明るく人当たりがいいため、老若男女問わず誰とでもなかよくなれる。加茂川北高校に転入し、武笠美姫たちともすぐ打ち解けたほか、ご近所の老人たちともすぐに親しくなった。度胸はあるが心理的な駆け引きが苦手なため、頭を使うタイプのゲームは苦手。また高屋敷綾自身は女のカンが鋭いと思っているが、田上翔太の好きな相手が大野翠だとカンちがいするなど、実際はカンも鈍い。父親の高屋敷健司は動物カメラマンで、彼の仕事の関係でアフリカで生まれ育った帰国子女。父親は現在、南米に行っているため、姉の高屋敷花と暮らしている。父親の仕事のために動物関係の知識が豊富で、動物の問題が出るゲームでは無類の強さを誇る。ただしケニアでコブラが水牛を殺すのを見て以降、蛇がトラウマとなっており、蛇関係だけは苦手。成績は理系科目が苦手で、ほぼすべての科目で追試を受けている。2年生になっても社交的な性格は健在で、お年寄りの悩みを解決して時坂環菜から尊敬されるようになる。

大野 翠 (おおの みどり)

加茂川北高校に通う女子生徒。物語開始当初は1年生で、年齢は15歳。黒い髪をミディアムヘアにした少女で、眼鏡をかけている。規律を遵守する自他共に厳しい性格なためにみんなのまとめ役を担っているが、融通がきかないところがあり、煙たがられることもしばしば。実は兄の大野涼平の影響でボードゲーム好きで、兄に教えてもらったのをきっかけに「さいころ倶楽部」に通うようになる。高校に入ってからは学校に許可を取り、さいころ倶楽部でアルバイトをしている。将来の夢はボードゲーム作家で、「ワンルーム」というボードゲームを考案し、作り続けている。当初は合理的過ぎるあまり、人の感情の機微に疎い考え方をしていたが、武笠美姫、高屋敷綾となかよくなるにつれ、従来の面倒見のよさを発揮するようになり、考え方も柔軟なものになっていく。さいころ倶楽部で働いているため、ボードゲームでは店長の金城タケルに負けず劣らずの博識ぶりを発揮する。ゲームもジャンル問わず強い。父親の大野泰三は高級輸入家具販売会社の取締役で、実家はかなり裕福。家もかなり大きいが、父親が趣味で入り組んだ間取りにしたため、初めて家に訪れた人間は家の中で迷子になることが多い。幼い頃は兄と仲がよかったが、現在は確執があり、一方的に兄を嫌っている。

エミーリア

加茂川北高校に転校してきた女子生徒。登場時点は1年生。ボードゲームカフェ「ゲシェンク」を営む店長の娘で、ドイツ人と日本人のハーフ。金髪碧眼の美少女で、髪をストレートロングに伸ばしている。9月に加茂川北高校の1年1組に転入し、武笠美姫たちのクラスメートとなる。美姫たちとはゲシェンクに遊びに来た際に出会い、友人となった。友人からは「エミー」の愛称で呼ばれる。その美少女っぷりから学内人気は高く、特に男子たちから注目されている。かわいいもの好きで、文化祭ではメイド服のコスプレも率先して行った。明るくマイペースな性格をしているが、ゲームに関しては並々ならぬ情熱を燃やしており、大野翠と同じくゲーム作家になるのが夢。ゲームの腕前も翠に匹敵するほどジャンルを問わず強い。故郷の友人のアンナとゲーム作家コンビになる約束を交わしている。子供の頃からの筋金入りの方向音痴だが、ゲームでは高い集中力を発揮し、探索するゲームでも迷子にならないと周囲からからかわれている。日本の「だるまさんがころんだ」を基にしたボードゲームを作っており、ドイツに帰郷した際にそのアイデアをドイツのゲーム会社「クラウヴェル」に持ち込む。ゲームの評価は改良は必要なもののアイデアが秀逸と評価され、採用された。

黒崎 奈央 (くろさき なお)

加茂川北高校に通う女子生徒。武笠美姫が2年生になって入学してきた新入生で、登場時点では1年生。金色の髪をショートカットにした目つきの鋭い少女で、人付き合いが悪い。語尾に「っス」と付ける特徴的な話し方をする。性格とその見た目から周囲からは素行の悪い不良と思われている。シングルマザーの家庭で育ち、自分を引き取った母親はかなり自分勝手な性格をしているため、悲惨な幼少期を過ごしてきた。母親が原因で友達に裏切られた経験があるため、周囲に心を閉ざし、高校でも友達のいない孤独な毎日を送っている。住んでいるアパート近くにいる野良猫に「トラ」と名づけてかわいがっていたが、同じアパートに住んでいる金城タケルの助言で、彼の店で一時的に預かってもらうこととなった。この出来事をきっかけにボードゲームに触れている。タケルに親切にされてもらって以降、少しずつ彼に好意を抱き、のちに告白。タケルには子供扱いされて断られるが思いをあきらめきれず、学校を卒業したら再びアタックすると宣言する。トラウマから同年代の人に心を開ききれずにいたが、勇気を出して関係に踏み込んできた時坂環菜や、人付き合いが苦手な部分にシンパシーを抱いた美姫との交流を経て少しずつ成長していく。ゲームの腕前は複雑なルールのものは苦手だが、視野が広く、記憶力が抜群にいいためにそれらが要求されるゲームでは強い。

時坂 環菜 (ときさか かんな)

加茂川北高校に通う女子生徒。武笠美姫が2年生になって入学してきた新入生で、登場時点では1年生。年齢は15歳。黒縁眼鏡をかけ、黒い髪を三つ編みお下げにした少女で、まじめで内気な性格をしている。いとこの三兄弟とボードゲームをして遊んだため、ゲーム好きに育ったが、親の転勤で友達と離れ離れとなって心細い日々を送っていた。黒崎奈央が「さいころ倶楽部」にいたのを目撃したことをきっかけに、彼女と交流を始める。奈央と共にさいころ倶楽部に通ううちに、先輩である美姫や田上翔太ともなかよくなる。もともと人付き合いが下手で、特に男子が苦手。しかし、翔太とボードゲームで遊ぶうちに彼を意識するようになり、自分の恋心を自覚して以降は自分の殻を打ち破って成長する。翔太に意中の相手がほかにいるのを承知で、彼を振り向かせるべくイメチェンする。イメチェン後は眼鏡を外し、髪もセミロングに整えた美少女となる。時坂環菜自身は気づいていないが、容姿の変化はクラス内の男子のあいだで話題となっており、人気が急上昇している。

田上 翔太 (たのうえ しょうた)

加茂川北高校に通う男子生徒。登場時点では武笠美姫と同学年の1年生。金髪のぼさぼさ頭をした少年で、やんちゃだが面倒見のいい性格をしている。大野翠とは幼なじみ。転校してきた高屋敷綾に一目惚れし、彼女を意識した行動を取るが、当の綾には翠が好きだと誤解されている。ゲームではあきらめが悪く、最後まで戦い抜く粘り強さを見せる。ただし調子に乗ると、詰めの甘さから負けることも多い。面倒見のよさから友人の吉岡龍二の恋の機微に気づき、その恋を応援している。またのちに、時坂環菜と出会い、内気な彼女に対しても分け隔てなく接する。綾がゲームでよく遊んでいるため、綾に合わせてゲームで遊ぶことが多く、それによって環菜からゲーム好きと誤解されてなかよくなる。面倒見のよさを環菜にも発揮した結果、彼女の性格が前向きになるきっかけを与えるとともに、彼女に好意を抱かれる。実家は神社で、最近はネットのブログで縁結びの神社と取り上げられ、話題沸騰中。ただし田上翔太自身は実家の稼業には興味がなく、家の仕事から逃げ回っている。

吉岡 龍二 (よしおか りゅうじ)

加茂川北高校に通う男子生徒。登場時点では武笠美姫と同学年の1年生。顔つきが凛々しい黒髪の少年で、まじめな性格をした努力家。田上翔太とは小学3年生からの幼なじみ。小学生の頃から剣道に打ち込んでおり、子供の頃から全国でも指折りの成績をおさめ続ける猛者。そのため女子からの人気がすさまじく、何度か告白されているが、恋愛に興味がないからと断っている。幼少期から礼儀に厳しい剣道社会で生まれ育ったため、自他共に認める厳しい性格だが、そんな自分の失敗をやさしくフォローしてくれた美姫に強い好意を抱くようになる。翔太が美姫たちとボードゲームで遊んでいるのを知り、翔太に頼み、美姫たちとボードゲームで遊ぶようになる。冷静沈着な分析力と逆境でも折れない勝負強さを持つため、頭を使うゲームには強い。ゲームを通じて美姫と少しずつ距離を縮めていくが、2年生に入った頃、美姫が大野涼平といるのを見て彼氏とカンちがいし、激しく動揺する。この出来事がきっかけとなり、夏祭りで美姫に告白する。

渋沢 連 (しぶさわ れん)

加茂川北高校に通う女子生徒。登場時点では2年生で、年齢は17歳。武笠美姫の一つ上の先輩にあたる。桃色の髪をツインテールにした勝気な少女で、加茂川北高校の生徒会の副会長を務める。まじめな性格で優秀ながら自分本位な考え方をしており、自分の価値観を人に押し付ける気質を持つ。大野翠とは中学時代からの先輩後輩の間柄で、彼女の優秀さを認めている。生徒会長の青島悠人がケガで入院したため、文化祭を取り仕切ることとなる。責任感から文化祭を盛り上げるべく、翠に助力を頼むが断られた。その後、翠のことがあきらめ切れずに説得に向かう。彼女がボードゲームに注力しているのを快く思っておらず、ゲームをバカにした言動をしたため、彼女たちと「ニムト」で対戦することとなる。ニムトでの敗北後は渋々引き下がったが、負けず嫌いなことから若干、根に持っている。歯に衣着せぬ厳しい言動が多いが、周囲の人には意外と慕われており、翠曰く「何故か人気だけはある」とのこと。実は悠人に恋心を抱いており、悠人に認められたい一心でがんばっている。悠人が卒業し、3年生となったあとは生徒会長に就任する。

南澤 ヒロユキ (みなみさわ ひろゆき)

加茂川北高校に通う男子生徒。武笠美姫が2年生になって入学してきた新入生で、登場時点では1年生。黒縁眼鏡をかけたまじめそうな青年で、黒崎奈央のクラスメート。となりの席の時坂環菜にひそかに好意を抱いている。クラスメートの瀬戸ユウヤはいとこで、幼い頃から付き合いがある。まじめな性格だが妄想癖が激しく、影が薄い。環菜となかよくなることを妄想してばかりいて、関係進展の一歩を踏み出せずにいる。環菜がイメチェンしたのも自分のためと都合よく妄想するが、環菜と話した際、環菜が名前すら覚えていなかったことを知って激しく落ち込んだ。その後、ユウヤの助言に従い、ボードゲームを通じて環菜と関係を進展させることをもくろむ。文化祭の際も、環菜たちの企画に協力。その際には企画に使う絵をサクサク描き、絵が得意という一面を見せた。日記を書くことが趣味で、印象的な出来事を日記に書き連ねている。ユウヤからは妄想癖が激しく気味が悪いと思われているが、同時に頭の回転が速く「読み」が抜群にうまいため、ゲームの腕前は一級品と評されている。

瀬戸 ユウヤ (せと ゆうや)

加茂川北高校に通う男子生徒。武笠美姫が2年生になって入学してきた新入生で、登場時点では1年生。茶色の髪をミディアムヘアに伸ばした少年で、女の子が大好きなミーハーな性格をしている。クラスメートの南澤ヒロユキとはいとこ同士で、ヒロユキの妄想癖を気味悪いと思いつつ、なんだかんだ付き合っている。ヒロユキが時坂環菜に好意を抱いているのを指摘し、ヒロユキに恋の助言をした。基本的にお調子者で、女の子目当てで書道部と美術部と歴史研究会を掛け持ちしているが、適当な言動が仇になって逆にどこからもあてにされない状態となっている。文化祭ではエミーリアのメイド服姿に釣られて、ヒロユキと共に美姫たちの企画に協力する。

青島 悠人 (あおしま ゆうと)

加茂川北高校に通う男子生徒。登場時点では3年生で、武笠美姫の二つ上の先輩にあたる。体格のいい黒髪の青年で、明るく朗らかな性格をしている。若干、いい加減なところがあるが、ムードメーカー的な存在で男女問わずに人気がある。生徒会長を務めており、個人の適正に合わせて適切に仕事を割り振ったり、悩んでいる人に適切なアドバイスを送ったりと、優秀なリーダーシップを発揮している。夏休み前にケガで入院し、長らく生徒会を留守にしていたが、文化祭前に復帰。大野翠の作ったボードゲームの企画書を見て、ボードゲームに興味を持ち「さいころ倶楽部」を訪れる。その際、「アイランド」を翠たちと遊んだことでボードゲームの魅力に取りつかれ、翠の企画書に許可を出す。その後もさいころ倶楽部をたびたび訪れては、ボードゲームを買っている。

金城 タケル (きんじょう たける)

アナログゲームの専門店「さいころ倶楽部」を営む男性。筋骨隆々とした大男で、つねにサングラスをかけている。スキンヘッドで強面なため、その厳つい見た目から初対面で怯えられることが多い。ゲーム好きで面倒見のいい性格で、店長だけあってゲームにも詳しく、その腕前もかなりのもの。武笠美姫たちによくオススメのゲームを紹介している。実はアメリカ人と日本人のハーフ。元アメリカ軍兵士で、ジョージ・ベレスフォードは兵士時代からの友人。また若い頃にはエリーという恋人がいたが、現在は別れている。別れたのは、エリーが事故の時に知り合った男性と結ばれたのが理由だが、今でもエリーの写真を部屋に飾っていること、そして事故についての思わせぶりな発言から、周囲からは事故で恋人を亡くしたと盛大にカンちがいされている。女性受けする容姿ではないが、その性格と包容力から意外と女性にもてる方で、黒崎奈央や松浦メイから好意を寄せられている。

ジョージ・ベレスフォード

アメリカのゲームレーベル「バッドドワーフ」の社長を務める男性。金色の髪を長く伸ばし、ヒゲを生やしており、金城タケルとは兵士時代からの友人同士。理知的な性格をしているが、神経質なところがあり、初対面の人間には嫌味な人物と誤解されがち。しかし見所のある相手には発破をかけるため、わざと挑発して成長をうながすなど、根はいい人。来日した際、ボードゲーム作家を目指す大野翠の「ワンルーム」を見て彼女に期待し、あえて翠のゲーム作家としての姿勢を批判し、遠回しにワンルームの完成度を上げる助言をした。のちにゲームのコンペに翠が「ワンルーム」を応募してきた際には、改良点を認めつつも、成長をうながすためにあえて落選にした。同時に翠がより成長できるように、アメリカに来ることを勧める。

高屋敷 花 (たかやしき はな)

高屋敷綾の姉。愛嬌のある顔立ちをしたゆるふわ系の美女で、のんびりとした雰囲気を漂わせている。牧京子とは友人関係で、酔っ払いの男に絡まれていたところを京子に助けられて知り合った。同性から見ても思わず見とれるほどの美人なため、京子曰く、一人でいると男が次から次へと寄ってくるとのこと。おっとりしているが、度胸が据わっているのは妹と同じで、怖がられることの多い京子とも初対面でなかよくなった。猫好きで「さくら」という名の猫を飼って溺愛している。車の運転ができるが、実はハンドルをにぎると性格が変わるタイプで、彼女の運転は初めての人にはかなり刺激が強い。幼い頃、フランスの空港で迷子になった際、やさしいCAに助けられたことで、強いあこがれを抱くようになり、高屋敷花自身もCAになるべく努力をしている。

高屋敷 健司 (たかやしき けんじ)

高屋敷綾と高屋敷花の父親。無精ひげを生やし、髪を伸ばし放題にした中年の男性で、「天才」「鬼才」と謳われるほどのすご腕動物カメラマン。彼の撮影した写真は雑誌などに使われることも多く、業界内では引っ張りだこの売れっ子。動物の写真を撮るために世界中を飛び回っており、娘たちを海外に連れて行くことも多い。基本的には家族思いのいい父親だが、マイペースな性格のうえに動物への興味が強すぎるあまり、家族そっちのけで動物の撮影を始めたりするため、妻にも呆れられて逃げられた。綾には懐かれているが、何につけても動物本位なところだけは嫌われており、久々に会った際にも動物に熱中したため、大ゲンカすることとなった。しかし、ボードゲーム「ブロックス」を綾といっしょにプレイし、本音で語り合ったことで仲直りした。ただしそれからは度が過ぎた親バカになり、構いすぎだと綾から疎ましく思われるようになる。いい加減に見えて、広い視野を持ち、小さい頃に臆病だった綾に美しい夕焼けを見せ、彼女に世界には楽しいことがたくさんあると教えたことがある。この出来事は、現在の天真爛漫な綾の性格を形づくる大きなきっかけとなった。

牧 京子 (まき きょうこ)

美容師を務める若い女性。金色の髪をポニーテールにし、サングラスやピアスといったヤンキー風ファッションを身にまとっているため、初対面の相手にはよく怖がられる。実際は気風のいい姉御肌な性格をしており、非常に面倒見がいい。高屋敷花とは友人関係で、美人でよく男に絡まれる花を助けている。武笠美姫とは実は中学生の頃に出会っており、当時中学生にいじめられていた小学生の美姫を助けて励ました。当初は美姫も牧京子自身もお互いが出会っていたことを忘れていたが、のちにお互いに思い出し、あらためて交友を育むようになる。中学当時は名の知れた不良で「凶犬のキョーコ」の異名で呼ばれていたが、京子自身はこの異名を気に入っていないため、「キョーコ」と呼ばれるのを嫌い、友人には自分の事を苗字の「マキ」と呼ばせている。幼少期は横暴な父親に虐げられていたため、弱い者を理不尽に虐げる人物を見ると父親を思い出し、怒りを覚えるようになった。中学時代はそのような経験から誰彼かまわずケンカをしていた。当時の経験から度胸試しや悪口を言われるゲームには非常に強いが、反面、頭を使うゲームは苦手。また悪口には強いが実は照れ屋で、褒められるのに恐ろしく弱い。牧コースケという名の弟がいる。

牧 コースケ (まき こーすけ)

牧京子の弟。登場時点での年齢は16歳。京子とよく似た風貌で目つきも鋭いが、姉思いの優しい性格をしている。幼い頃から京子がケンカで傷ついている姿を見てきたため、彼女が傷つかないように強くなることを決意する。しかし京子に対して過保護になるあまり、周囲の友人まで威圧しているため、姉からはよく怒られている。武笠美姫にも絡んでいたが、のちに誤解だとわかって和解。彼女にボードゲーム「カルカソンヌ」を勧められ、姉とプレイすることとなった。ボードゲームを通じて京子と交流したことで、空回り気味だった姉との関係が少しずつ改善していく。

大野 涼平 (おおの りょうへい)

大野翠の兄。黒いボサボサ頭をバンダナでまとめた青年で、人懐っこく陽気な性格をしている。ボードゲームが大好きで、翠が幼い頃はよくいっしょに遊び、彼女を「さいころ倶楽部」に連れて行ったりした。一時期、九条マリと付き合っていたが、彼女の本性に恐怖を感じて別れる。別れた直後、女性から連絡があったため、翠からは兄の浮気が原因で別れたと誤解され、翠から嫌われている。実際はマリを理想の女性と慕っている翠が、マリの本性を知って傷つくのを恐れて、あえて誤解させたのが真実だった。翠からは距離を空けられているものの、最近は翠が友人となかよく過ごしているのを嬉しく思っている。

大野 泰三 (おおの たいぞう)

大野翠の父親。登場時点で年齢は55歳。白髪交じりの黒い髪をオールバックにして眼鏡をかけ、スーツを身にまとい、上品な雰囲気を漂わせている。高級輸入家具販売を専門とする株式会社「OFD」の取締役を務める。厳格な見た目に反してかなり愉快な男性で、自分の会社の採用最終試験に高難易度のボードゲームを持ち込んで社員候補に遊ばせたりしている。ボードゲームをさせるのは、熱中すれば人間性がよくわかるからと建前上は言っているが、最終試験の社員候補はほぼ採用が決まっており、翠からはほとんど趣味だと指摘されている。

坂本 (さかもと)

株式会社「OFD」に務める男性。上品な身なりをした老紳士で、大野泰三の部下。一流のインテリアコーディネーターで、家具を自由にレイアウトできる今の仕事に生きがいを感じている。幼い頃の大野翠の世話をしていた時期があり、たびたび会社に遊びに来ていた彼女の遊び相手になっていた。彼の家具に対する思いは翠に大きな影響を与えており、翠がワンルームを作る際には、かつて彼が送った言葉がワンルームを改良する大きなヒントとなった。

武笠 巴 (たけかさ ともえ)

武笠美姫の母親。娘と同じ水色の髪をセミロングに整え、穏やかな性格をしている。三人姉妹で実家は金沢で旅館を営んでおり、今は姉妹全員が別々の旅館で女将として働いている。そのためふだんから和服を身にまとい、夫と共に山奥の旅館で働いている。茶道にも詳しく、家には茶室を完備している。美姫が2年生の時に恋愛相談を受け、きちんと恋の問題に向き合うように助言した。落ち着いた物腰ながら意外とおちゃめなところがあり、美姫が告白の返事をするために吉岡龍二を家に招いた時は、二人の会話をこっそり盗み聞きして娘の恋を応援していた。

九条 マリ (くじょう まり)

大野涼平の元彼女。黒い髪をポニーテールにした美しい令嬢で、その美しさは周囲の評判になるほど。涼平の父親が主催したパーティーに参加して涼平と知り合い、付き合うこととなる。上品な立ち振る舞いで、男性だけではなく女性からも人気が高く、大野翠も懐いていた。しかし、それらはすべて表向きの顔で、本性はかなり傲慢で自分勝手な女性。生まれてからずっと恵まれた環境で育ったため、人間には明確な階級(クラス)があると考え、悪意なく周囲の人間を見下している。涼平と付き合ったのも彼が生まれがよく成績が優秀で、九条マリ自身のステータスにつながると思ったから。悪びれもせず涼平の目の前でほかの男性と付き合ったり、後輩からの贈り物をゴミ箱に捨てたり、自分勝手な行動が目立ったために涼平から別れを切り出された。

松浦 メイ (まつうら めい)

学童クラブの教師を務める女性。黒い髪をポニーテールにした、明るく社交的な性格をしている。元保育士で、子供たちが遊ぶゲームを探しているうちに「さいころ倶楽部」を訪れるようになり、金城タケルと懇意となる。一度目標を定めたら一直線にそれを目指すひたむきさを持ち、ゲームでもそれを発揮する。早さを競うゲームでは思いきりのよさで強いが、集中するあまり脇が甘くなりがちで、思わぬことで逆転されてしまう。情熱的な恋愛観を持ち、タケルに好意を抱いてからすぐに告白している。ただしタケルからはその性急過ぎる恋愛観についていけないとふられた。

神谷 新一 (かみや しんいち)

スーツを身にまとった上品な身なりの青年。「さいころ倶楽部」の元アルバイト。冷静沈着な性格で優秀ながら、いちいち嫌味な言動をするため、金城タケルからはよくそのことをからかわれている。渡米して投資ファンドで働いており、数百万ドルのお金を動かす仕事に生きがいとプライドを感じていた。しかし、取り扱っていた金融商品が暴落したせいで、責任を取らされて解雇。さらに負債まで背負わされて、投資ファンドで稼いだお金もすべて返済で失ってしまう。失意の中、自殺するつもりでさまよっていたところ、さいころ倶楽部でタケルと武笠美姫たちに出会う。金融系のボードゲーム「アクワイア」を美姫たちと遊ぶうちに、心情を吐露し、彼女たちに説得されるかたちで自殺を止めた。その後は長野の実家に戻り、家業の蕎麦屋を手伝う決意を固める。

アンナ

ドイツ人の少女で、エミーリアがドイツにいた頃の友人。少しカールのかかった赤毛の髪をセミロングに伸ばし、そばかすがある。エミーリアとコンビのボードゲーム作家になることを約束していた。子供の頃は優等生だったが、エミーリアとの別離によって寂しさが募り、それが限界に達してハンスやヨハンと距離を取り、疎遠となっていた。ハンスたちからは夜な夜な歓楽街に入り浸る不良となったと誤解されていたが、実際はボードゲーム好きであることは変わらず、歓楽街にあるボードゲームサークルに通っていただけだった。エミーリアがドイツに帰郷した際に再会し、お互いの本音を交し合ったことで和解する。

ハンス

ドイツ人の金髪碧眼な青年で、垢抜けた容貌をしている。エミーリアがドイツにいた頃の友人で、エミーリアに思いを寄せている。エミーリアが5年ぶりにドイツに帰郷した時点での年齢は18歳。大人であることを意識するあまり、ボードゲームや漫画は「子供のするもの」と考え、意図的に距離を取ろうとしていた。エミーリアにボードゲームに誘われた際にはなんだかんだ言いつつ付き合い、ゲームを楽しんでいる。エミーリアが日本に戻る際に告白しようとしたが、彼女が夢を追いかける姿を見て、その邪魔にならないように断念。エミーリアに相応しい男になって告白すると決意を新たにした。

ヨハン

ドイツ人の金髪碧眼な少年で、眼鏡をかけたまじめそうな雰囲気を漂わせている。エミーリアがドイツにいた頃の友人で、冷静沈着な性格なことからハンスのフォロー役に回ることが多い。ハンスがエミーリアに思いを寄せていることにも気づいており、ハンスとエミーリアが二人っきりになれるようにしたりと、ハンスの恋を応援している。

その他キーワード

ワンルーム

大野翠が考案したボードゲーム。アルバイトをしてお金を稼ぎ、家具を買って自分好みの「ワンルーム」を作るゲームで、ゲームに使う道具はほぼすべて翠のハンドメイド。しかし当初は、専用のカードを作る時間がなかったため、トランプで代用していた。12枚の家具カードを買いそろえ、得点の最も高い人が勝利となる。よくできたゲームながら、テストプレイをした武笠美姫と高屋敷綾からは手堅くまとまりすぎて単調と酷評された。のちにシステムを改良した「ワンルームバージョン2」を作り出したが、よくも悪くもまとまりすぎていると、こちらも低評価だった。その後、ワンルームバージョン2を基に仲間たちのアドバイスを詰め込んだ改良版を作成し、コンペに出展。この新たなワンルームは好評で、審査したジョージ・ベレスフォードもコンペでは落としたものの、高評価を下した。

書誌情報

放課後さいころ倶楽部 17巻 小学館〈ゲッサン少年サンデーコミックス〉

第1巻

(2013-09-12発行、 978-4091244079)

第2巻

(2014-02-12発行、 978-4091246011)

第3巻

(2014-07-11発行、 978-4091247681)

第4巻

(2014-12-12発行、 978-4091255167)

第5巻

(2015-05-12発行、 978-4091260673)

第6巻

(2015-12-11発行、 978-4091263377)

第7巻

(2016-05-12発行、 978-4091272386)

第8巻

(2016-10-12発行、 978-4091274366)

第9巻

(2017-03-10発行、 978-4091275431)

第10巻

(2017-09-12発行、 978-4091277381)

第11巻

(2018-03-12発行、 978-4091281968)

第12巻

(2018-08-09発行、 978-4091284686)

第13巻

(2018-12-12発行、 978-4091287236)

第14巻

(2019-05-10発行、 978-4091292193)

第15巻

(2019-10-11発行、 978-4091294586)

第16巻

(2020-04-10発行、 978-4098500864)

第17巻

(2020-10-12発行、 978-4098502622)

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