予知視

予知視

数秒先だけの未来を見ることができる特殊能力「予知視」を持った葦原照彦は、欲望のままに暮らせるはずだったが、チカラの暴走がきっかけで、周囲では異常な死と悲劇が繰り返されるようになっていく。高校時代の元カノである天野奈美の存在と、彼女の呪い、特殊能力を有する一族のしがらみ、予知視に魅せられた人々が、予知視という能力に翻弄される姿を描くホラーミステリー。「ズズズキュン!」で配信の作品。

正式名称
予知視
ふりがな
よちし
作者
ジャンル
ホラー
 
ヒューマンドラマ
レーベル
電撃コミックスNEXT(KADOKAWA)
巻数
全2巻完結
関連商品
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あらすじ

第1巻

ちょっと冴えない男子大学生の葦原照彦には、誰にも言えない秘密の特殊能力があった。それは、数秒先の未来を見ることができる予知能力「予知視」で、この能力を駆使すれば、ちょっとしたお金や女性との交際もすべて欲望のままになるのだ。そんなある日、照彦はオフ会で出会った美人女子大学生のみつきに狙いを定め、チカラを駆使して彼女に近づき、無事ゲットして自宅へのお持ち帰りに成功し、念願のセックスになだれ込む。しかし、照彦はみつきの言動に終始イライラしっぱなしだった。美人でスタイルも申し分ないが、みつきは相手の気持ちを無視して、なんでも自分に都合よくとらえる癖があった。そんな彼女の身勝手な振る舞いに腹を立てつつも、そのたびにセックスのためと自分に言い聞かせ、受け流していた照彦だったが、とうとう事件が起こる。終電間際、みつきは駅まで送ってほしいとせがんできたが、彼女の強引なセックスに精根尽き果てた照彦は、なんとかしてこれを回避しようと、予知視を試みる。しかし、いつもは見えるはずの数秒後の未来が、なぜか見えず、そこに見えたのは吐き戻した汚物だけだった。不思議に思ったものの、とりあえず照彦はタクシーを呼ぼうと提案する。しかし、どうあっても自分の思うようにしたいみつきは、首を縦に振らず、二人は口論になってしまう。やたらとわがままを繰り返し、彼女きどりのみつきの手を苛立った照彦が振りほどいた瞬間、みつきは道路に飛び出す形となり、走ってきた大型トラックに轢かれ、照彦の目の前で死んでしまう。この事故で照彦は気が動転し、胴体が分断されて内臓が飛び出た彼女の横で激しく嘔吐する。その吐しゃ物は、照彦が予知視で見たあの汚物、そのものだった。

第2巻

自分自身に降りかかった連続する不幸と、予知能力「予知視」の暴走の原因を探るうち、葦原照彦は、代々チカラを受け継ぐ一族の存在を知ることになる。そして、今の自分を苦しめているのは、高校時代に付き合っていた元彼女の天野奈美だった。奈美は、類いまれなるチカラの保持者であり、彼女によってかけられた呪いが、すべての元凶であることが判明する。しかし、その呪いの影には、まだ照彦を助けたいという奈美の愛情が残されていた。当時、助けを求めて照彦にすがろうとする彼女を冷たく突き放し、すべてをシャットアウトするという非情な行いをした過去の自分自身を見つめ直し、奈美に対してあらためて償いたいという気持ちを持った照彦は、自身にかけられた呪いを解くため、すでに亡くなっている奈美との対話の方法を模索することになる。そんな中、協力を申し出てくれたのは、同じ高校出身の友人の崎山茂と、みつきの事故の際に担当だった警察官である影山だった。奈美の事故に関して詳しいという影山から呼び出され、話を聞いた照彦は、彼に言われるがまま、自分に宿っている能力を影山に委譲する方法を実行しようとする。しかし、そこには大きなウソが含まれていた。照彦の中にある能力を影山に委譲することで、照彦はあわや命を落としかねない事態に陥るところだったが、タイミングよく茂が姿を現し、照彦は無事に助け出された。あらためて、今後は茂と協力していこうと決めた矢先、茂から自分を予知視してほしいと頼まれる。暴走し、死に直結する未来を見続けてきた照彦は、それを全力で断ろうとするが、能力の本質を見極めたいという茂の言葉に、照彦は予知視を実行することにした。すると、見えてきたのはなぜか自分自身。通常、予知視は自分の目で見える範囲の予知しかできないため、自分自身の姿を見ることはない。それなのに、彼が目にしているのは、目がくぼみ、血まみれになった自分自身の姿だった。

登場人物・キャラクター

主人公

東京にある大学に通う1年生の男子で、年齢は18歳。少し先の未来を見ることができる予知能力「予知視」を持っている。強いイメージで予想しようとすると、ほんの数秒だがその結果までの流れを、視界におさまる範囲... 関連ページ:葦原 照彦

天野 奈美 (あまの なみ)

葦原照彦、崎山茂と同じ平陽高校のクラスメートだった女子。照彦が転校して2か月ほどたった頃、アパートの前で事故に遭い、帰らぬ人となった。実は、予知能力「予知視」を持つ一族の血を引いている。天野の母から引き継がれたチカラを有し、天野の父に従順な能力者として重宝されていた。13歳の時、母親からさらに能力委譲の術を受けたことにより、類いまれなるパワーを持つことになった。しかしその直後、両親ともに帰らぬ人となったため、莫大な遺産をゆずり受け、後見人となった伯父に管理を任せることになり、その後はもともといた私立中学から公立の中学に転校させられ、生まれ育った家からアパートでの一人暮らしを余儀なくされる。突然手に入れた自由だったが、寄り添ってくれる者もなく、ずっと心を閉ざしており、チカラを使うこともなかった。その後、平陽高校に入学して目立たないようにおとなしくしており、クラスでも孤立していたが、照彦との出会いによって自我が芽生え、明るさや自主性を取り戻し、再び自分の意思でチカラを使うようになった。照彦とはその後交際に発展し、高校2年生の時に体の関係を持った。しかしその後、照彦が地方に転校しなくてはならなくなり、精神的に不安定になっていく。ちょうどその頃、照彦に天野奈美自身のチカラを委譲。それにより、自分で未来を予知することができなくなる。そのためか、離れた照彦への連絡回数も増えていき、気を引くためにウソを繰り返したりと、次第にヒステリックになっていく。そんな中、妊娠が発覚。後見人の伯父が遺産を持ち逃げし、八方ふさがりとなったため、照彦に打ち明けて出産したいと助けを求めた。しかし、照彦には信じてもらえず、冷たく突き放されたうえ、連絡を絶たれた。彼女が生まれ育った生家は、5年ほど前に売りに出されたが、いわくつきのために現在も売れないままとなっている。

崎山 茂 (さきやま しげる)

葦原照彦と同じ東京の大学に通う1年生の男子。照彦や天野奈美とは、もともと同じ平陽高校に通っていたことがあり、仲がよかった。その後、照彦が地方の高校へと転校したことで、一度疎遠になるが、大学入学時に再会して再び付き合いが始まった。実は照彦と同様に予知能力「予知視」を持つ一族の血を引く者。崎山茂自身をはじめ、親族は一族の中ではチカラも立場もパッとしない家系で、その中途半端さが原因なのか、親族には妙にプライドが高い者ばかりで、そんな彼らの功名心のために今までさまざまな教育を施されてきた。さらに、奈美のチカラが一族内で注目されるようになってからは、同じ年の子に負けるなと、親族からの視線はより厳しいものとなった。そんな中、両親を失ったあと、一族から命じられて奈美の監視役をすることになるが、奈美を近くで見るうちに、チカラと周囲の大人に翻弄される彼女に同情するようになり、その感情は次第に愛に変わっていった。そのため、照彦と奈美の交際に関しては、複雑な思いを胸に秘めている。現在は一族の中でもまだわからないことの多い能力について、解析や勉強を行っている。チカラについては照彦にはずっと秘密にしていたが、しおりの事故死がきっかけで、照彦が予知に関して口にする様子を目撃したため、チカラのことについて打ち明けた。予知に依存している様子の照彦には、未来の可能性を狭めるとアドバイスをした。同じく能力者である奈美と照彦が、高校時代に交際していたことに触れ、予知が誤作動を起こしていることについて、奈美がかかわっている可能性を示した。その後、照彦に影山のチカラを借りるように勧めたが、影山から能力委譲をされ、死にかけた照彦を救出。あらためて田島を紹介し、奈美の呪いについて協力することを照彦に約束した。

影山 (かげやま)

みつきが亡くなった際の事故を担当し、葦原照彦と面識を持った警察官の男性。みつきの死や、その翌日に起きたしおりの事故死に関して、照彦のかかわりを疑っている。後日、みつきの死について、みつきの両親から照彦の過失が疑われていることを理由に照彦のもとを訪れた際、1年半前の天野奈美の死についても触れ、照彦が住んでいる部屋に奈美も住んでいたことを話した。それを聞いて動揺する照彦の様子を見て、事故に関して知りたいことがあればと個人的に連絡先を渡した。実は予知能力「予知視」を持つ一族の血を引いており、一族の命を受け、チカラを持つ者を探している。影山自身は能力が開花せず、能力者の目が光るのが見える程度で、一族の中でも能力を持たないことでカス同然の扱いを受けてきた。その後、奈美のことを疑問に思った照彦から連絡をもらったため、照彦を奈美の実家に呼び出して詳しい説明を始める。しかし、詳細を語る彼の真の目的は、照彦の持つ能力を、自らに委譲することにあった。

みつき

蒼学に通う大学2年の女子。友人のしおりと共にパズル&モンスターズというゲームのオフ会に参加し、葦原照彦と知り合った。ゲーム好きにしては珍しくセレブ感を漂わせている。美人でスタイル抜群ながら、性格は少々勝ち気で思い込みが激しく、自己中心的なところがある。相手の気持ちを無視して、なんでも自分に都合よくとらえる癖がある。そのため、自分の思いどおりに事が運ばないと不機嫌になりがち。もともと体だけが目的で近づいてきた照彦に対して、何もしないうちから彼女きどりとなり、照彦からはすでにうっとうしがられている。セックスも自分主導で進めたがり、嫉妬心が強いこともあり、一線を越えると途端に束縛が激しくなる傾向にある。オフ会後、そのまま照彦の住むアパートで体の関係を持つと、帰り際に駅まで送るかどうかで照彦と口論になった。疲れ切った照彦がタクシーを呼ぼうと提案するも、初エッチ記念日ということを理由に、もっと堂々と彼女である自分をエスコートしてほしいと言い出す。この時、苛立った照彦から手を振り払われた拍子に、道路へと飛び出す形となり、走ってきた大型トラックに轢かれ、帰らぬ人となった。現場は上半身と下半身が分断され、内臓が飛び出すほどの惨状となった。彼女を轢いたトラックの運転手は捕まっていない。

しおり

蒼学に通う大学2年の女子。友人のみつきと共にパズル&モンスターズというゲームのオフ会に参加した。その後、みつきが事故死したことを知り、みつきの両親から説明を求められたため、オフ会後にみつきといっしょに帰った葦原照彦のもとへ事情を聞きに訪れた。あらかた話を聞くと、照彦と二人きりになりたがり、みつきの両親にどう説明するかを打ち合わせしようと話を持ち掛ける。実は友人を心配しているように見せかけ、うまく照彦からたかろうと考えていた。オフ会当時のみつきと照彦の様子を妙に詳しく分析し、みつきの性格も正確に理解したうえで、照彦はウソをついており、彼女の死にかかわっていると決めつけた。うかつなことを言ったら大変だからと照彦に寄り添うふりをして、口裏を合わせる代わりに、お金を要求した。しかし照彦にはうまくかわされ、その話し合いの最中に大型トラックが突然突っ込んできて、あやうく轢かれそうになるが、照彦のとっさの判断でかわすことができた。そこで照彦が予知について口走ったのを耳にし、やはりみつきの死に照彦が何か関係しているのではないかと詰め寄る。その際、トラックが突っ込んだことが原因で、工事現場の足場が崩れて頭上に置いてあった資材の鉄の棒が落下し、何本かが彼女の体を貫通して帰らぬ人となった。

雄太 (ゆうた)

立明大学に通う3年生の男性。ゲーム好きで、パズル&モンスターズ同好会では部長を務めている。ある日、ゲームつながりでオフ会という名の合コンを開催。葦原照彦、みつき、しおりを含む八人で酒を飲んだ。その後、みつきが事故死したことを知り、遺族から説明を求められたことがきっかけで、しおりと共に事情を聞きに照彦のもとを訪れた。当時の状況を詳しく聞き出そうとしたが、彼が心配しているのはサークルのことだけ。この事件がきっかけで、サークル活動ができなくなることを懸念しており、照彦がサークルのことについて警察には何も言っていないことを確認すると、安堵してその場を去った。

天野の父 (あまののちち)

天野奈美の父親。もともと能力者ではない一般人。非凡な才と野心はあったが運に恵まれていないことを自覚し、せめてチャンスを逃さないようにとさまざまな情報網を持ち、予知視の能力を有する一族の情報を探っていた。最初は信じていなかったが、大物や成功者の近辺を調べると、一部で一族の情報の断片が出てきたため、そこに興味を持つようになった。本腰を入れて調べるうちに、自分の身近にその血を引く者である天野の母を発見する。仕事の同僚だった彼女とはすでに信頼関係を築いていたため、口説き落として結婚した。彼女の強い能力を利用して財を成し、地位を築き上げた。しかし、これからさらに上へという時に、妻が奈美を妊娠。これが原因でチカラが不安定になり、その後生まれてきた娘の奈美へと母親のチカラが引き継がれることになった。奈美は能力者として父親に逆らうことがないように教育を施され、自分に従順な能力者として貢献させた。しかし、奈美が13歳の時、奈美が母親から能力委譲の術を受けた2日後に、天野の父自身が乗っていた車に大型トラックが突っ込んできて、この世を去った。

天野の母 (あまののはは)

天野奈美の母親。予知能力「予知視」を有する一族の血を引いており、強いチカラを持っていた。予知の範囲は広く、精度も高いうえ、水晶体以外の媒体を補助的に使い、発したチカラを高められる「ブースト」を使うことができた。しかし、何より能力の強さが評価される一族の考え方に息苦しさや嫌気を感じていたため、ふつうの暮らしを求めて会社に勤め、一般人と変わらない生活を送っていた。そんな中、天野の父と知り合って結婚した。彼への盲目的な愛情から、そのチカラを最大限彼に使った。だが、これからさらに上へという時に、奈美を妊娠。チカラは不安定になり、生まれてきた娘へと引き継がれることになった。その後、能力者として夫に逆らうことがないように教育を施した。奈美が13歳の時、天野の母自身に残ったチカラを奈美に移すことで、奈美のチカラを強化し、夫の役に立てようと考えた。そして能力委譲の術を実行したものの、うまく制御できず、自分の中のチカラをすべて移しきってしまった。そのため、当時37歳にもかかわらず、老衰でこの世を去る結果となった。

田島 (たじま)

予知能力「予知視」を有する一族の研究者の男性。田島自身の能力は低く、非常に弱い。優れた能力者のチカラの性質や術の反応を解析して、それを再現する器具を研究開発している。弱い者が強い者と対等にチカラを使えるようになるテクノロジーの開発を目的としており、誰でも安全にチカラを使えるようにしたいと考えている。崎山茂からの相談を受け、葦原照彦に宿った天野奈美の能力について、解決に向けて協力者となる約束をした。まずは能力委譲の秘具を応用し、照彦の中にあるチカラを一時的に外に出すことを試みる。しかし、チカラそのものが出ることを拒み、眼球ごと飛び出してきてしまったために急きょ中止。秘具を破壊すると、ほぼ飛び出してしまった照彦の眼球が元に戻り、傷も消えてしまった。そのため、このチカラに治癒能力があると判断。失明クラスの傷を負っても治してしまったこのチカラは、一族の歴史をぬり替えるものだと絶賛。興奮気味に照彦を田島自身の研究室に呼び、自分が協力する目的について語り始める。その後、もともと一族のチカラの源は血であり、眼球は術を発現するための媒体でしかないはずなのに、照彦のチカラはすべて眼球と同化していることが判明。それがわかったとたん、ここで犠牲になって眼球を取り出させてほしいと言い始め、照彦に研究のために身をささげることを要求する。

その他キーワード

予知視 (よちし)

とある血筋の者に先天的に備わっている能力。未来を予知することができるほか、相手に幻覚を見せたり、五感すべてを惑わせることもでき、このチカラを使うと瞳孔が光る。占い師が水晶玉を使うように、目の水晶体を媒介して能力を使うのが通常となっている。何百年も昔からまじないや占いを生業にしている一族がおり、過去や未来を見たり、強い能力を持つ者は攻撃的な呪いをかけたりと、さまざまな権力者のもとで裏の仕事をしてきた。しかし紆余曲折あって、この一族の人間が劇的に減少し、現在はこの血筋を守るために一族はひっそりと暮らしている。また、このチカラを有する女性は、妊娠すると同時に自身の能力がおなかの子へと移されていくために不安定になり、能力は弱まっていく。通常、予知のイメージを見るには段階的な鍛錬が必要となり、その能力を突然使えるようになることはない。一族におけるチカラの強弱は各々の立場において非常に重要なものであり、一族のしがらみは強い。そのため、すべてを無視してふつうの生活を送ることはできない。天野奈美や崎山茂、影山、田島などがこの一族の血を引いており、予知能力「予知視」のことを「チカラ」と表現している。

書誌情報

予知視 全2巻 KADOKAWA〈電撃コミックスNEXT〉

第1巻

(2020-01-27発行、 978-4049127737)

第2巻

(2020-02-27発行、 978-4049127744)

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