最上の命医

最上の命医

アメリカで医学を学んだ後、日本の大病院で小児外科を職場に選んだ天才外科医・西條命。患者軽視の病院経営、医局の派閥争いなどに立ち向かいながら、用意周到な行動力と医療への情熱で周囲の人々を変えていく。

正式名称
最上の命医
ふりがな
さいじょうのめいい
原作者
入江 謙三
作画
ジャンル
医療
関連商品
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概要・あらすじ

生後すぐに心臓の手術を受けて一命を取り留めた西條命。これを機に小児外科医を志した命はアメリカで医学を学び、腕利きの若手外科医として帰国する。その後、日本の大手私立病院・平聖中央病院を職場として選択。平聖中央病院は経営を掌握する副院長・桐生奠が儲からない小児医療を目の敵にしており、前年の事故を機に小児外科を廃止する。

だが命は副院長の弟で心臓血管外科医の桐生危、研修医・瀬名マリア、麻酔科医の高島雅といった仲間とともに実績を積み重ね、小児外科の復活を勝ち取った。医局の派閥争いから命の排除を狙う帝王大学総長・養老重利も奠とともに謀略を巡らせるが、身内の密告で自滅。

障害を乗り越えた命は57の病院を擁する平聖グループの後継者に選ばれるが、やがて自身が臓器移植でも治療できないガンに冒されていることを知る。最後の難手術を成功させた命は、危ら信頼する仲間に自分の治療を託した。

登場人物・キャラクター

西條 命 (さいじょうみ こと)

西條生の弟。父親は彫刻家で、海外での活動が多い。生後すぐ完全大血管転移症の心臓手術を受けた経験から、小児外科医を目指すように。小学生時代、自分の手術を執刀した神道護から大いに感化される。やがて父親の仕事の都合で渡米し、アメリカで外科医となり、ジョン・ホプキンス病院に勤務。 MSA(最優秀若手医師賞)を受賞する。帰国後は平聖中央病院の救急部で働くようになり、難病の治療など輝かしい成果を挙げて小児外科を復活させた。童顔で表面上はとぼけたように振る舞うが、あらゆる可能性を考慮する用意周到さと大胆な決断力を備える。やがて平聖盛理事長に見込まれ、平聖グループの後継者となるよう請われた。 だが胆のうのポリープが見つかって取り除いた後、肝臓にガンが多発転移して手術も困難なことが発覚。桐生危、真中有紀ら同僚に支えられて闘病生活に入った。

瀬名 マリア (せな まりあ)

平聖中央病院の研修医。小児外科医を目指していたが、西條命が帰国する1年前の事故に立ち会ったトラウマを抱える。だが命と出会って医療への情熱を深め、小児外科の復活に貢献した。同時に手術技術の向上に励み、1年先輩の不知火大輝をしのぐレベルに成長。いっぽうで早とちり、直情型、がさつな側面も。 命に淡い恋心を抱いていたが、後に桐生危を意識するように。だが危が真中有紀を好きなことを知り、気まずくなる。後に栗山秀人からラブレターを受け取り、まんざらでもなさそうにしていた。

桐生 危 (きりゅう あやめ)

平聖中央病院の心臓血管外科医で、桐生奠の弟で桐生棗の兄。西條命と同い年の若手だが、手術の技量は同等の天才で、不遜な自信家でもある。命と同じく海外勤務の経験があるが、その際に危険な手術を強行して患者を死なせた過去の持ち主。そのせいで偽悪的に振る舞うことが多かったが、命と意気投合して親友となった後は素直な性格に変わった。 兄・奠と対立し、小児外科の復活に力を貸す。以後も命とともに数々の困難に立ち向かうように。

桐生 奠 (きりゅう さだめ)

桐生奠と桐生棗の兄で、平聖中央病院副院長を務める。代々医師の桐生家で一番の切れ者。帝王大学出身で、かつて心臓専門の天才外科医として名を馳せた。だが妹・棗の技量に嫉妬して麻酔科医になる道を選択。手段を問わない野心家で、若くして副院長に上りつめた。儲からない小児科を廃止したがっており、小児外科の復活に動く西條命と対立。 また命を平聖グループの跡継ぎの座を奪う邪魔者と考え、あの手この手で追い落とそうとする。そのため帝王大学総長・養老重利の権力も利用するが、日本医学会会長・佐野徳亮に見咎められて挫折。以後は私立の巨大臨床研究所を建設するという当初の野望に立ち戻り、命の実力と人望を頼るようになる。

高島 雅 (こうしま みやび)

平聖中央病院の麻酔科医で、突出した実力を買われ、別の病院からスカウトされてきた。院内の煩わしい人間関係を嫌い、ほかの医師との関わりを避けている。だが型破りな西條命を気に入り、小児外科の復活に助力。その後も命の手術で麻酔を担当し、数々の危機を助けた。長身だが長髪で女性のような容貌をしている。

真中 有紀 (まなか ゆき)

平聖中央病院の若手移植外科医で、小児外科復活に際して転属を志願した3人の1人。帝王大学総長・養老重利は母方の祖父だが、ただし母親と養老は犬猿の仲である。父親の真中孝典は補助人工心臓をつけ、心臓移植のドナーを待っている状態。養老は帝王大附属病院に入院させてやる代わりに、有紀に西條命の足を引っ張るよう指示していた。 有紀も最初は命を疎ましく思って悪事に手を貸したが、中内美也子の手術と養老の失脚後に改心。小児外科に移って命を支えているうち、愛情を抱くようになる。

桐生 棗 (きりゅう なつめ)

桐生奠と桐生危の妹で、外科医。日本で医師免許を取った後、クウェートに留学して経験を積む。奠が西條命の足を引っ張る目的で平聖中央病院に連れてきた。天才的な技術を持つあまり、外科手術の巧拙について「下手くそなヤツみるとムカついて殺したくなる」というほどマニアックな執着を示す。 だが命、危らに一目置くようになって性格も徐々に素直になり、奠の意に反して小児外科のメンバーとして溶け込んだ。

西條 生 (さいじょう うい)

西條命の兄で、自身も医師をしている。高島雅以上に女性的な容貌で、ファッションも中性的。バイセクシャルで誰とでもキスしたがるキス魔、さらにブラザーコンプレックスであり弟の命を溺愛する。豊富な海外経験を持ち、特にアフリカに長く滞在していた。自分のガンを知った命によって、平聖中央病院を支えるために日本へ呼び戻される。 途上国での長い医療経験から狭い専門分野に特化せず、全身を診察して病気の場所を特定する能力に突出。各専門医との人間関係作りに熱心で、病院内の人間関係に新風を吹き込んだ。ただし真中有紀だけは生の独特なノリになじめず、その言動に右往左往させられる。

坂本 流馬 (さかもと りゅうま)

平聖中央病院の呼吸器外科医で、元小児外科副部長だった。革新的で技術力のある名医だったが、小児外科の廃止、さらに自分の息子・坂本一馬が難病で入院したことなどで偏屈に。西條命が復活させた小児外科をつぶすべく、桐生奠の指示でその部長となる。だが命の医師としての資質に感服して信頼を寄せるようになり、一馬の執刀を任せた。 その後は奠に造反し、小児外科部長として命をサポートする。

平 聖盛 (たいら まさもり)

平聖中央病院の理事長を務める。大地主で元内科医、平聖グループのオーナー。日本医学会会長・佐野徳亮とは親友同士である。高齢だが子供はいない。57の系列病院のなかで最上の名医を跡継ぎにすると公言。桐生奠らがその座を狙っていた。だが平は、自身と佐野がさじを投げた元婚約者の孫の治療法を見出した西條命を跡継ぎに選ぶ。 仙人然とした風貌で作務衣を愛用。

養老 重利 (ようろう しげとし)

帝王大学総長を務める。最浜医大附属病院の神道護の紹介で平聖中央病院にやってきた命を、帝王大学の医局が派閥を広げる上での障害と考えて排除しようとした。命の追い落としを諦めた桐生奠が養老の悪事を週刊誌に暴露するが、辛うじて辞任は免れる。その後は盗聴、書類改ざんなどにも手を染めて奠と命への復讐を企てた。 だが中内美也子の手術を巡る陰謀を、かつて恨みを買った身内の者に密告され、総長の座を追われる。

中内 美也子 (なかうち みやこ)

9歳の女児で充実性嚢胞腫瘍を患う。父親は警視監の中内武雄。父親のような立派な大人になりたいと願っている。いっぽう養老重利は真中有紀を使って西條命が美也子を誤診するように仕向け、手術の失敗を企図した。だが命はあらかじめ正しい診断を下しており、手術は成功。同時に養老の計画は全て武雄の知るところとなった。

野口 英敏 (のぐち ひでとし)

平聖中央病院院長で、温和で人あたりのいい性格をしている。名外科医と称されるが、実は25年前に心臓手術の失敗で患者を死なせた過去の持ち主。だが当時麻酔科医だった宗像彰造が中心となって事故をもみ消した。そのため宗像に頭が上がらず、言いなりに利用される。しかし力也・ルッケーゼという患者の手術後、25年前のもみ消しを週刊誌に告白。 同時に宗像の悪事を暴露した。

佐野 徳亮 (さの のりあき)

日本医学会会長で佐野めぐみの父親。どんな病気も一瞬で見破る名内科医と称された。時事医大病院のトップでもある。正体を隠して西條命の手術を見学し、その実力と医師としての資質を確かめていた。めぐみと桐生奠が日本医学会会長の力を使って命を追い出すため利用しようとするが、逆に2人の企みを見抜いて一喝する。

不知火 大輝 (しらぬい だいき)

平聖中央病院の医師で、帝王大学の消化器外科の医局に属している。小児外科復活に際して転属を志願した3人の1人。西條命に憧れて小児外科に興味を持ったが、医局のしがらみで後に躊躇していた。平聖盛理事長の遠い親戚にあたる。平の指示で命が最上の名医にふさわしいかどうか密かに調査していた。 平は命が天才である点がかえってリーダーに不向きではと懸念したが、不知火は心配ないと報告する。

アルフレッド・ハートライン

世界最高の心臓外科の権威で、最新の心臓手術の術式の半分はアルフレッドまたはその弟子が考案した。西條命のアメリカ時代の恩師。ベトナム戦争で軍医を務めた経験がある。体罰として研修医の肩をメスで刺すなど、狂気じみた指導の厳しさでも有名。だが80近い高齢のため一線を退き、くすぶった日々を過ごしていた。 来日時に折場佳克の二尖弁の心臓手術でノーベル賞級の画期的な手術法を提案し、桐生奠、桐生棗に執刀させる。その後、平聖中央病院の心臓外科の特別顧問に就任。

宗像 彰造 (むなかた しょうぞう)

平聖第二病院院長で、地位のために患者や同僚を死なせることもいとわない病的な野心家である。平聖盛理事長が西條命を後継者とすることを恐れ、理事会で平を解任しようと計画。命が執刀する力也・ルッケーゼの手術を失敗させようと手を尽くした。だが自分の言いなりに利用していた平聖中央病院院長・野口英敏に悪事を暴露され、失脚する。

佐野 めぐみ (さの めぐみ)

平聖中央病院の小児内科のトップで、日本医学会会長・佐野徳亮の娘である。父親の権威を笠に着て傲慢に振るまい、メデューサのようだとしてメデュー佐野の仇名をつけられた。小児内科の若手が西條命に相談を仰ぐようになったことに腹を立て、越権行為として桐生奠に処罰を要求。 だが徳亮が命の資質を評価したため、逆に父親を失望させる結果となった。

アシュトン・ケネビィ

若手の外科医で、ジョン・ホプキンス病院で西條命の同僚だった。ケネビィ元大統領につながる名門エリートの出。何でも自分が一番でなければ気が済まず、命のMSA(最優秀若手医師賞)受賞を不満に思っていた。だが欲のない命の人柄に感化され、己の過ちに気づく。

戸磁 麻由美 (とじ まゆみ)

平聖中央病院の新人看護師で、人員交代で小児外科に配属された。慌てやすい性格でミスが多く、病院一のドジといわれる。西條命の計らいで平聖中央病院のスポンサー・大森製薬社長の息子・大森純一を担当。数々の失敗で母親を激怒させるが、が純一の体に脊髄脂肪腫の兆候を発見し、後に感謝される。

折場 佳克 (おりば よしかつ)

サッカーU15全日本代表GKだったが、心臓の二尖弁で倒れて平聖中央病院に運ばれる。アルフレッド・ハートラインが提案した心臓手術を受けて快復。当初は戸磁麻由美が担当していた。

佐和 なすか (さわ なすか)

ジュニアアイドルの少女だが、卵巣囊腫を患い平聖第二病院で診察を受けていた。体に傷が残る開腹手術を嫌がっており、桐生奠が西條命の足を引っ張る材料にしようと平聖中央病院へ来院させる。だが命は奠らの知らない画期的な手法の内視鏡手術に成功。快復後、命につき合ってほしいと告白した。

カルロス・ルッケーゼ

世界で3本の指に入るシシリアンマフィアのボスで、妻は日本人。貿易商を営む宗像彰造の父親の紹介で、息子の力也・ルッケーゼを平聖第二病院へ入院させた。力也はそこで心臓の腫瘍で手術を受けるが再発。宗像は助かる見込みの少ない力也の手術を西條命に任せ、失敗してルッケーゼに始末されるよう仕組んだ。 ルッケーゼは力也が助からなければ執刀した命らを暗殺するつもりだったが、手術は成功。以後、ルッケーゼは命の恩に報いるため命を賭けることを誓う。

波賀 純一 (はが じゅんいち)

平聖中央病院の心臓血管外科医長で、桐生危の上司。実力も経験もないくせにとんでもない見栄っ張りで自慢話ばかりしている、と危に評される。西條命に張り合って自分の手術の技量を自慢するため、院長らの反対を押し切って専門外の赤ん坊の心臓手術を強行。命のスピードに勝とうとして判断を誤まり、切ってはいけない動脈を切ってしまう。 だが正体を隠して手術を見学していた命に患者を助けられた。後に桐生奠から命を陥れる手術の報告書を書くよう指示されるが、拒否。地方の実家で循環器内科を開業すべく退職した。

松中 直治 (まつなか なおはる)

西條命が平聖中央病院で最初に配属された救急部の医師。昔は情熱的で患者に親身な医師だったが、いつの間にか「セクハラ親父」と噂される怠惰な中年になり果てている。命が不在で瀬名マリアと2人で夜勤をしている際、腹痛で運び込まれた子供の虫垂炎を見逃してしまう。だが命の影響で情熱的に診療にあたるマリアの姿に感化され、かつての自分を取り戻した。

瑞貴 楓 (みずき かえで)

平聖中央病院の若手小児内科医。影響を受けやすいお調子者タイプで、西條命に憧れている。冠動脈のバイパス手術を終えて療養中している命の病室へ、小児内科の仲間を連れて医療の相談に通った。それが元で小児内科トップの佐野めぐみに睨まれることに。

栗山 秀人 (くりやま ひでと)

平聖中央病院の脳神経外科医で、実直で純粋な正確をしている。西條生と最初に親しくなった医師の1人。西條命を素直に尊敬している。古風なところがあり、瀬名マリアにラブレターを送った。

真中 孝典 (まなか たかのり)

真中有紀の父親で養老重利の義息にあたる。高校教師をしていた。帝王大附属病院に入院して補助人工心臓を使用しながら、心臓移植のドナーを待っている。さらに潰瘍性大腸炎を発症して人工肛門の装着が不可避と診断。しかし桐生危の執刀で人工肛門の装着を免れ、その後は移植を待たず補助人工心臓での生活に適応しようと努めた。 執刀前にわざと軽薄な口調で安心させようとする危を見て、正真正銘の名医だと信頼を抱く。

神道 護 (しんどう まもる)

最浜医療センターで0歳児だった西條命の心臓手術を執刀した小児心臓血管外科医。冠動脈移植手術で医療メディアから「日本最速の男」と称される。命が小学生時代から憧れていた。後に教授として最浜医大附属病院に勤務。小児心臓外科の世界的な権威と呼ばれる。小児外科医を目指した理由として、1人を救うとその仲間や子孫など大勢の人を救うことになるとの考え方を無限の樹形図という言葉で命に伝えた。

場所

平聖中央病院 (へいせいちゅうおうびょういん)

『最上の命医』に登場する病院。私立の大病院で、全国に57の病院を擁する平聖グループの一角。救急車が渋滞すると言われるほど忙しい病院として知られ、あちこちの医局から研修医や若手医師が修行に派遣される。西條命が帰国する前年、小児外科の手術中に患者が人工心肺装置のトラブルで死亡する凄惨な事故が発生。 これを機に小児系の外科が全て廃止された。

クレジット

原作

医療監修

岩中 督

続編

最上の明医~ザ・キング・オブ・ニート~ (さいじょうのめいい ざ きんぐ おぶ にーと)

『最上の命医』の第二部にあたる作品。医師の息子だが引きこもりになっていた最上義明が医師を目指し、同じく医師を目指す仲間たちと共に国内外の医療現場で奮闘する様子を描く。小学館「週刊少年サンデー」2010... 関連ページ:最上の明医~ザ・キング・オブ・ニート~

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