概要・あらすじ
高校3年の少女市原一菜は、祖父の書いた小説「月と湖」に出てくる祖父の不倫相手・水原透子の世話をしに水原の家に出かける。実際の水原は健康的なおばあさんで、不倫相手には見えない。最初は気が進まなかったが、十日間水原と一緒に暮らすうちに、水原とも打ち解けていく。一菜は自分の彼氏との不安な関係を、祖父母と水原の関係に投影していたのだと気づき、決着をつけようと決意する。
登場人物・キャラクター
市原 一菜 (いちはら かずな)
祖父は小説家・市原有生だが、彼の書いた小説「月と湖」は読んでいない。小柄な高校3年生。テニス部で先輩だった松下航太と付き合っている。だが、松下航太が高校を卒業してからは、だんだん心が離れていくのを感じていた。
松下 航太 (まつした こうた)
大学1年生。小説家・市原有生の大ファン。市原一菜が市原有生の孫と知り、声をかけた。一菜とは高校時代からの付き合い。高校時代はテニス部に所属し、大学でもテニスサークルに入っている。
市原 有生 (いちはら ゆうせい)
市原一菜の祖父で小説家。すでに他界している。締切が迫ると、まわりの人に八つ当たりしたり、落ち込んだりするやっかいな性格の持ち主だった。愛妻家として知られていたが、死後、水原透子との恋愛を綴った私小説「月と湖」が発見される。出版された「月と湖」は、一時「純愛」ブームを巻き起こし、話題になった。
市原 絹子 (いちはら きぬこ)
市原一菜の祖母。落ち着いた性格の持ち主。小説家・市原有生の妻。彼の死後発見された私小説「月と湖」にかなりのショックを受けていた。水原透子が体調を崩していたことを知り、孫の一菜に水原透子の家へお手伝いに行くように頼んだ。
水原 透子 (みずはら とうこ)
小説家・市原有生の私小説「月と湖」で愛人として描かれた女性。今は市原有生の別荘の近所で農業を営むおばあさん。明るく前向きで、優しい性格の持ち主。無農薬の野菜を育てていて、近所のオーベルジュやレストランに出荷している。市原有生とは、彼の家に野菜を届けに行ったときに知り合った。独身で身寄りがない。 長期入院していたが、最近退院した。祖母に頼まれ、春休みの十日間だけ彼女の家にお手伝いしに来た市原一菜を優しく迎え入れる。
高田 芙美 (たかだ ふみ)
後輩思いの優しい性格の持ち主。松下航太と同じ大学に通う大学1年生。高校時代はテニス部に所属し、大学でもテニスサークルに入っている。高校1年生の時から松下航太のことが好きだったが、告白できずにいた。入学したばかりの市原一菜と仲良くなり、彼女をテニス部に誘った。
場所
月と湖 (つきとみずうみ)
『月と湖』に登場する私小説。市原一菜の祖父市原有生の作品。湖のほとりに立つ別荘で、結婚したばかりの男が、近所の女性と恋に落ちる物語。女性のモデルは水原透子。作者の死後、原稿が発見された。出版されると、一時「純愛」ブームを巻き起こし、話題になった。