章子のエチュード

章子のエチュード

何不自由なく暮らしてきた少女が、ある日突然事故で両親を失い、預けられた先で女中生活を送りながら、つらい現実や愛憎を目の当たりにしつつも幸せをつかむ物語。自分の境遇に負けずに強く生きていく主人公の少女のひたむきさが印象的に描かれている。「週刊マーガレット」昭和47年1号から18号にかけて連載された。

正式名称
章子のエチュード
ふりがな
しょうこのえちゅーど
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概要・あらすじ

いつも周囲を明るくする柚木章子は、裕福な家庭で何不自由なく暮らしていた。ある日、家族3人が乗った車が事故を起こしてしまい、章子の父と母親、そして事故の相手が死亡してしまう。親戚たちが章子を厄介者扱いしたため、章子は父親の取引先の社長である桐島に、女中として家に置いて欲しいと懇願する。そして桐島家にやって来た章子は、女中として章子を引き取ることに難色を示す桐島道子や、わがままな桐島麻由子らに迎えられることになる。

なかでも桐島薫は、ことさらに章子に辛く当たるのだった。学校でも小早川に嫌味を言われて苦しむ一方、自分と同じようにいつも疲れた様子を見せている野瀬百合子と親しくなる。そして章子は、薫の友人である小嶺進二と出会い、惹かれていく。

そんなある日、章子は差出人に「S・K」と書かれた手紙を受け取る。その手紙には愛の言葉がつづられており、章子は手紙の差出人が小嶺だと思って舞い上がる。しかし、小嶺には中原真弓という婚約者がいた。

登場人物・キャラクター

柚木 章子 (ゆずき しょうこ)

都内でも指折りの一流高校に通う1年生の少女。裕福な家庭に育ったが、両親を事故で亡くしてしまう。高校を辞めたくないという一心で、親戚にも頼らず桐島の家で女中として働くことを願い出る。桐島薫に冷たく当たられたり、学校で小早川に加害者としての自覚がないなどの嫌味を言われたりしても、笑顔でいようとする気丈な性格。 時に薫の理不尽な言動に対して体当たりで突っかかっていくなど、気の強い一面もある。桐島家で働きながら学業も両立させようとするが、その疲れが出て学校で居眠りすることもあり、自分と同じように疲れた様子を見せる野瀬百合子のことを気に掛けている。女中として生活する日々のなかで、優しく接してくれる小嶺進二に惹かれていく。

桐島 薫 (きりしま かおる)

桐島の息子で、大学の建築学科4年生。柚木章子が桐島家にやって来た初日から、章子に対して辛辣な言葉を浴びせる。その言葉に触発された章子は、早朝から起きている桐島薫の世話をしようとするが、薫は章子に対して自分だけが不幸な顔をするなと言い捨てる。昔は渡冴子と付き合っていたが、冴子から一方的に別れを告げられており、その未練を残している。

桐島 麻由子 (きりしま まゆこ)

桐島の娘で、私立の女子部に通う高校2年生。柚木章子が桐島家にやって来た時は、自分を姉のように頼ってほしいと優しげに振る舞うが、実際は章子が靴を磨いていないことに対して文句を言ったり、宿題をやらせたりと、自己中心的でわがままな性格。戸部敏也と付き合っている。

小嶺 進二 (こみね しんじ)

大学の建築学科4年生の男性で、桐島薫とは友人にしてクラスメイト。お茶を運んできた柚木章子に対して、粗相を咎めずに章子の心配をしたり、遅刻しそうになっている章子を車で送ったりと、優しい心遣いを見せる。長野出身ということもあって山が好きで、これが章子が山のことを勉強するきっかけとなった。中原真弓と婚約している。

野瀬 百合子 (のせ ゆりこ)

柚木章子のクラスメイトで、高校1年生の少女。どこか消え入りそうな雰囲気で、いつも何かに気兼ねしているようにクラスの隅にいる。章子と隣の席になり、早朝からの仕事で疲れている章子と一緒に居眠りしてしまうなどいつも疲れた様子を見せており、章子に自分も同じような境遇にあると告白している。実は中原真弓の妹であり、事情により同じ姓を名乗ることができずにいる。

渡 冴子 (わたり さえこ)

桐島薫や小嶺進二のクラスメイトで、大学の建築学科4年生の女性。いつも気高く、自分が最高級でなければ気が済まない性格で、男子学生からも女王のようにかしずかれている。実は章子の父が起こした事故の被害遺族であり、この事故で父親を亡くしている。薫と付き合っていたが、事故を境に別れを告げている。

中原 真弓 (なかはら まゆみ)

野瀬百合子の姉であり、小嶺進二の婚約者。百合子の姉でありながら、事情により同じ姓を名乗っておらず、百合子を憎んで辛く当たっている。長野のスキー場で小嶺に一目惚れして以降、会社を営んでいる父親の財力を使って婚約へとこぎつけた。中原真弓は父親の会社の跡取り娘である。

戸部 敏也 (とべ としや)

桐島麻由子と付き合っている大学生の男性。麻由子と付き合っていることはしばらく桐島家に内緒にされていたが、その後正式に交際を認めてもらっている。一方で柚木章子をデートに誘うなど女癖が悪く、桐島薫に嫌われている。

小早川 (こばやかわ)

柚木章子のクラスメイトで、高校1年生の少女。気位が高く、いつも高価な時計や万年筆などを身に着けている。事故で両親を亡くした章子に対して、加害者のくせに同情を引いているなどと嫌味を口にし、章子を傷つける。掃除婦について嫌悪感を示しており、クラスの掃除にも手を貸さない。

五十嵐 (いがらし)

高校1年生の少女。柚木章子のクラスメイトで親友でもある。快活な性格で、いつも章子と2人で周囲を明るくしている。一方で、章子のことを思うあまり小早川とケンカをしたり、章子と親しくする野瀬百合子に対してやきもちを焼いたりするなど、子供っぽい一面がある。

室崎 (むろさき)

高校1年生の少年。柚木章子のクラスメイトで、クラス委員を務めている。授業中に居眠りをするせいで勉強が遅れている章子のためにノートを取ってあげたり、小早川にきつく当たられる章子をかばったりなど気遣いを見せる。室崎本人はあくまでクラス委員としての職務だとうそぶいているが、実は章子に想いを寄せている。

里江 (りえ)

桐島家の女中として働く女性。柚木章子が桐島家にやって来た時、お嬢様育ちの章子に対して、これまでと違って自分と同じ女中の身分になるのだとけん制する。桐島薫のことが好きで、薫の世話をすることに執着している。一方で、勉強をしたいという願望があり、章子の教科書を勝手に持ち出している。

桐島 道子 (きりしま みちこ)

桐島の妻で、桐島薫、桐島麻由子の母親。柚木章子を引き取る際には、女中の人手は足りているのにと章子を家に置くことに難色を示した。世間体を気にしており、章子に対して桐島家で女中をしていることは口外しないようにと釘を刺す。

桐島 (きりしま)

桐島薫と桐島麻由子の父親で、桐島道子の夫。建設会社の社長をしており、章子の父の会社とも取引があるため、柚木章子とも顔見知りであった。章子の両親が亡くなった際、自分を女中として家に置いて欲しいという章子の懇願を聞き入れ、桐島家に迎え入れる。

小早川の母 (こばやかわのはは)

小早川の母親。デパートの掃除婦として働いている。自分の稼ぎでは買うことができない高級品を娘が所有していることを案じ、偶然デパートで出会った柚木章子に、娘がどこで何をしているのかと尋ねる。自分が掃除婦である事実を娘が嫌っていることを知っている。

章子の父 (しょうこのちち)

柚木章子の父親。自らの会社と桐島の建設会社とは取引があったため、章子たち一家と桐島とは面識がある。家族3人を乗せた車を運転していた際、章子が車酔いしたことを気にして前方不注意による事故を起こし、章子の母親とともに命を落とした。同時に、事故の被害者である渡冴子の父親の命も奪ってしまった。

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