あなたは私におとされたい

証券会社勤務の相澤直也（ナオ）と夏菜（カナ）は、2年の交際を経て結婚した夫婦。おしどり夫婦として有名だが、結婚10年目を迎える2人の関係は冷えていた。4歳年下ながらナオと同時期に課長になったカナは、仕事に邁進するあまり常にピリピリしており、夫婦の平日の会話はほぼ消滅。さらに、2年間セックスレスでもあった。そんな時、ナオの部署に配属された若く妖艶な美女・立花ノアは、なぜかナオを誘惑してくる。本作は、少しの誤解で関係性が崩れていく夫婦を軸に、夫婦のあり方や愛情を描いた人間ドラマであり、執拗かつ狡猾に罠を仕掛けてくるノアの怖さや恋愛の駆け引きを描いた不倫サスペンスでもある。

ナオは会社でも評判の真面目なカタブツ男。テレビで芸能人の不倫報道を見るたびに「不倫するやつの心理が理解できない」とつぶやいている。一方ノアは、学生時代に有名インフルエンサーとしてSNSや雑誌でも活躍していた超絶美人で、性格もいいことから社内で人気の新人である。しかしノアには裏の顔があり、小悪魔的な振る舞いで数々の男性をおとしてきた過去を持つ。そんな魔性の女ノアは、ほかの男性社員と異なり、自分になびかないナオに興味を持ち、あの手この手でナオを誘惑し始める。セックスレスに悩むナオの、心の隙につけ入るように迫ってくるノアの巧妙な罠が、本作の見どころの一つである。

ナオの妻・カナは、入社以来メキメキと頭角を現し、異例の早さで課長に昇進したキャリアウーマンである。活躍する女性のリーダーとして一目置かれる存在となったカナは、売上を伸ばすことに躍起になっており、ピリピリした毎日を過ごしていた。そんなある日、久しぶりのナオからのセックスの誘いを、疲れていたこともあって拒否してしまう。この一件でナオは心を閉ざし、夫婦関係は日々悪化していく。また、カナのイライラは、家庭だけではなく会社でも同様だった。仕事もせずにお喋りをする若い女性社員に怒りをぶつけ、成績が上がらない部下たちを集めて叱責する。そんなカナの行為は、やがてパワハラ、セクハラとして支店長に報告されることになる。本作は、セックスレス、ハラスメントといったリアルな社会問題を描きながら、現代の夫婦のあり方を模索していく。