ありす、宇宙までも

ありす、宇宙までも

『MAMA』『インターネット・ラヴ!』ほかで知られる売野機子の代表作。元JAXA職員で、小山宙哉の漫画『宇宙兄弟』に登場するキャラクター・星加正のモデルとしても知られる上垣内茂樹が協力としてクレジットされている。舞台は「アルテミス世代」が芽生え始めた令和の日本。セミリンガルの少女・朝日田ありすが、神童・犬星類との出会いをきっかけに宇宙飛行士となり、宇宙船の船長(コマンダー)を目指すサクセスストーリー。物語は、ありすが将来的に日本人女性宇宙飛行士として初めて船長に選ばれることが明かされた状態から始まる。小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」2024年27号から連載の作品。「このマンガがすごい!2025」オトコ編第16位、「マンガ大賞2025」大賞を受賞。

正式名称
ありす、宇宙までも
ふりがな
ありす どこまでも
作者
ジャンル
宇宙開発
レーベル
ビッグ コミックス(小学館)
巻数
既刊3巻
関連商品
Amazon 楽天 小学館eコミックストア

セミリンガルという生きづらさを抱えた少女の物語

朝日田ありすは、幼少期に受けたバイリンガル教育がうまくいかなかったため、セミリンガル(ダブル・リミテッド)という状態にある。ありすは日本語と英語の両方を学んだものの、どちらの言語も未熟で、授業や日常会話についていけない深刻な状況に陥っていた。そんなセミリンガルのありすが、神童と称される犬星類との出会いをきっかけに、多言語に習熟することが不可欠な宇宙飛行士、それも船長(コマンダー)を目指すというのが本作の大きな流れである。作者の売野機子は、セミリンガルの主人公が目指す職業として困難なものを考えて、宇宙飛行士に決めたと語っている。

神童・犬星類による放課後の勉強会

朝日田ありすがセミリンガルであることに気づき、教師役を買って出た犬星類は、本作のもう一人の主人公とも言える重要なキャラクター。犬星がありすの置かれている状況を冷静に分析し、克服すべき課題を提示することで、彼女の成長をうながしていく様子が本作の大きな見どころとなっている。犬星の勉強会は、主にありすの父親の遺品が保管されている朝日田家の納屋で行われる。その内容は、授業の遅れを取り戻すための基礎的な学習に加え、哲学対話や屋外でのバードリスニングなど、多岐にわたる。勉強会を通じてありすとの交流を深める中で、申し分のない学力を持つ犬星自身もまた、人間的な成長を遂げることになる。

計画的に宇宙飛行士を目指すことができるアルテミス世代

犬星類は、朝日田ありすが「アルテミス世代」に該当することに着目し、2037年の宇宙飛行士募集に向けた学習計画を策定する。アルテミス世代とは、2019年に発表されたNASA主導の有人月面探査プロジェクト「アルテミス計画」に参加することが期待される若い世代を指す。これまで、日本人が宇宙飛行士を志しても、JAXAの募集は不定期であり、10年以上待たされることも珍しくなかった。しかし、アルテミス計画の開始を受けて、JAXAは5年に一度を目安に宇宙飛行士の募集を行うことを発表。これにより、志望者は次回の募集に向けて計画的に宇宙飛行士に必要な能力を習得することが可能になった。なお、犬星の計画が順調に進めば、ありすは26歳で宇宙飛行士の選抜試験に挑むことになる。

登場人物・キャラクター

朝日田 ありす (あさひだ ありす)

宇宙飛行士を夢見る小学6年生の女子。黒髪のロングヘアで容姿端麗、運動神経も抜群。鳥の鳴き声を聞き分けることができるほど、聴覚も優れている。両親の意向でバイリンガル教育を受けた時期もあったが、両親を亡くし、現在は祖母といっしょに暮らしている。クラスの人気者ながら、勉強は苦手で、学級委員などの重要な役職を任されたことはない。そのため、いつしか容姿を褒める「かわいい」「美しい」といった言葉を「バカ」「何もできない」という意味で受け取るようになり、生まれ変わってやり直したいと悩んでいた。しかし、卒業の日に犬星類からセミリンガルであることを指摘され、それが学習の妨げになっていることを知る。進学後は心機一転、幼い頃からの夢であった宇宙飛行士を目指すことを決意し、犬星から勉強を教わり始める。中学生を対象とした宇宙飛行士選抜試験ワークショップに参加したことをきっかけに、船長(コマンダー)という役職に強いあこがれを抱くようになる。やがて宇宙飛行士となり、三度目の飛行で念願の船長に選ばれる。

犬星 類 (いぬぼし るい)

神童と称される小学6年生の男子。理屈っぽい性格で、眼鏡をかけている。里親に引き取られるまで、施設で暮らしていた。「子供は自分の力で未来を変えられる」という信念を持ち、「親ガチャ」という言葉を嫌悪している。授業の合間の5分間も勉強に費やすほどの努力家で、勉強をゲーム感覚で楽しんでいる。算数オリンピックや科学コンテストなど、数々の大会でグランプリを独占しており、国内外の大学から飛び級入学のオファーが届いていると噂されている。他者にも勉強を勧める癖があり、同級生に「サッカー選手になれない100の理由」という自作のリストを渡し、反感を買ったこともある。似たような行動を繰り返すうちに、「ドリーム・クラッシャー」と呼ばれて恐れられるようになった。卒業の日、朝日田ありすがセミリンガルであることを指摘し、ありすとは進路が異なることを承知の上で、放課後の勉強会を提案して彼女の教師役を買って出る。

クレジット

協力

上垣内 茂樹

書誌情報

ありす、宇宙までも 3巻 小学館〈ビッグ コミックス〉

第1巻

(2024-08-30発行、 978-4098630158)

第2巻

(2024-12-26発行、 978-4098631025)

第3巻

(2025-03-28発行、 978-4098632169)

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