ブラック企業と闘う法律事務所
本作は、従業員に過度な負担を強いる悪質な企業、いわゆる「ブラック企業」と、その環境に苦しむ労働者の救済をテーマにしている。舞台である「さくらぎ法律事務所」は、主に退職代行を専門とする弁護士事務所で、優れた交渉力と労働現場に関する豊富な知識を持つ不知火をはじめ、有能なスタッフが労働問題の解決に尽力している。また、単行本のおまけページには、赤坂山王法律事務所に所属する弁護士の竹内瑞穂によるコラムが収録されており、「懲戒解雇」や「ハラスメント」など、労働に関する用語が丁寧に解説されている。
疲れきった女性と弁護士の出会い
大手不動産の電話営業代理店「コールドリーマー」に勤務する水城は、社員の結束を強めるために掲げられた過剰な能力至上主義に疲弊していた。そんなある日、仕事でミスをした翌日、直属の上司である青島が夜逃げしてしまう。この出来事をきっかけに、精神的に追い詰められた水城は、電車の中で無意識に涙を流してしまう。偶然その場に居合わせた不知火に食事に誘われ、「人生の選択肢は無限にある」と励まされる。不知火の言葉に心を動かされた水城は、パワーハラスメントを繰り返す宮崎正也に毅然とした態度で立ち向かうが、その結果、契約を打ち切られてしまう。仕事を失った水城は、不知火が出会った際に置き忘れた物を彼女の勤務先である法律事務所に届けに行ったことで再会し、彼女の仕事ぶりを目の当たりにする。その経験から不知火にあこがれを抱き、やがて「さくらぎ法律事務所」で事務員として働くことになる。
さくらぎ法律事務所を訪れるワケあり依頼人たち
さくらぎ法律事務所には、上司からのパワーハラスメントをはじめとするさまざまな理不尽な扱いに悩む人々が相談に訪れる。例えば、かつて水城が勤務していた会社で、宮崎から次々と理不尽な要求をされていた尾見猛や、アパレルショップのオーナーのストレスのはけ口にされていた茂木優、さらには水城の学生時代の後輩で、洗脳に近い自己啓発セミナーを開催する会社「ZAZALAND」に勤める丸井七海などがいる。また、彼らに暴虐を働いた人々も、もともと悪人だったわけではなく、成功を目指す過程で心を病んだり、苦労の末に得た地位を守るために必死になった結果、労働問題をきっかけに悪に堕ちてしまったケースが多い。さくらぎ法律事務所のスタッフは、依頼人の心情に寄り添いながらブラック企業の不正を暴き、彼らが納得できる形で過酷な状況から抜け出せるよう全力でサポートしている。
登場人物・キャラクター
水城 リコ (みずき りこ)
さくらぎ法律事務所で事務職として働く女性。かつてはブラック企業「コールドリーマー」に勤めていたが、偶然出会った不知火に触発され、自らの意思で現在の職場へ転職した。そこで退職代行に関する法律や問題について学び、やがて彼女のような弁護士を目指すようになる。九州出身で、ふだんは標準語を話すが、感情が高ぶると九州弁が出ることもある。優しくまじめな性格で、周囲の人々に思いやりを持つ一方、勢いで物を言ってしまう癖があり、「デリカシーがない」と指摘されたり、依頼人の心証を損ねてしまうこともある。かつては土壇場で及び腰になる「逃げ癖」があったものの、さくらぎ法律事務所で働き始めてからは改善されている。
不知火 基子 (しらぬい もとこ)
さくらぎ法律事務所で弁護士を務める女性。柔軟な思考力と逆境に動じない度胸を兼ね備え、多くの案件を成功に導いてきた。事務所のスタッフから厚い信頼を寄せられており、特に水城からは恩人として深く慕われている。同僚の弁護士の縣とは意見が対立することも多いが、お互いの実力は認め合っている。ブラック企業に対しては憎しみに近い感情を抱いており、依頼を受けた際には被害者の救済だけでなく、問題を引き起こす企業そのものの排除も視野に入れている。その背景には、かつて不知火自身のミスが原因で大切な人を失った経験があり、そのトラウマが今も心に深く刻まれているという事情がある。
クレジット
- 監修
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小澤 亜季子
書誌情報
さよならブラック企業 働く人の最後の砦「退職代行」 全5巻 少年画報社〈YKコミックス〉
第1巻
(2020-10-12発行、978-4785967727)
第5巻
(2022-07-25発行、978-4785971922)







