じゃあ、あんたが作ってみろよ

昭和の価値観に縛られたイケメンエリートの海老原勝男は、大学時代から6年間交際していた山岸鮎美にプロポーズするが、あっさりとふられてしまう。この一件をきっかけに、二人の人生は大きく動き出す。勝男は自らの価値観を見つめ直し、鮎美は勝男の呪縛から解放され、自分らしい生き方を模索する。二人がそれぞれの目標に向かって成長していく姿を通じて、男女の価値観の変化を問いかけるラブストーリーが、平和な日常シーンを織り交ぜながら、柔らかなタッチで描かれる。また、家庭料理のレシピや調理シーンといったグルメ要素も盛り込まれ、物語にさらなる彩りを添えている。

交際6年目を迎えた社会人カップル、勝男と鮎美。鮎美は毎日のように食事を作るのが当たり前になっていた。そんな中、結婚を意識し始めた勝男は、思い出のレストランで鮎美にプロポーズする。しかし、鮎美の返事は「無理、別れたい」という残酷なものだった。完璧な未来を描いていた勝男の自信は、一瞬で崩れ去ってしまう。一人になった勝男は、これまで「女性なら作れて当たり前」と主張していた筑前煮作りに挑戦するが、結果は失敗に終わり、料理を一人でこなしてきた鮎美の素晴らしさとそのありがたみを、身をもって実感する。さらに、同僚との会話や周囲の女性の態度から、「食事は女性が作るのが当たり前」という常識が大きく変わりつつあることに気づく。

当初、勝男の視点で物語が進行するが、次第に鮎美の視点を交えたエピソードが増えていき、交互に切り替わる二人の視点から恋の行方を追うことができる。勝男との記念日を間近に控えたある日、鮎美は美容室で派手なファッションの渚と出会い、自分の人生が勝男の基準で回っていたことに気づく。さらに、渚の夫である太平と出会い、三人での共同生活を始めることで、鮎美の価値観や人生は大きく変わり始める。勝男と離れた鮎美は、さまざまな人々と出会い、誰にも縛られない自由を謳歌していた。一方、鮎美に別れを告げられた勝男は、自身の言動を振り返って反省する。鮎美を恋しく思いながらも、これまで避けてきた料理に挑戦し、自立への道を歩み始める。それぞれの中で今までの当たり前が覆り、葛藤しながらも変わろうと奮闘する姿が見どころとなっている。そして、出会いや努力を重ねながら新しい道を歩み始めた二人が、思わぬ形で再会を果たす。