ふかふかダンジョン攻略記～俺の異世界転生冒険譚～

本作の世界観はいわゆるファンタジーだが、人類が保有している技術に関しては徹底的に現実に即した描写がなされている。魔法をはじめとした特殊な異能力を使える人間は、特殊な血脈を持つ一部に限定されているうえ、その能力が戦いの結果を大きく左右することはない。異世界から転生を果たしたジャンも例外ではなく、かつて別の世界で暮らしていた知識が世界を変えるということもない。一方で、ゴブリンやオーク、ドラゴンといった人間以外の種族が、人間を圧倒する力や知識を持つことがたびたび示唆されている。また、現実世界で人間が培ってきた技術のみで異種族と戦う姿が描かれているほか、コミックスのおまけページには実在する武器の活用方法や歴史上における役割などが、事細かに解説されている。

異世界の人間は、死ぬくらいならモンスターの奴隷になって生きることを選んだり、奴隷に成り下がった人間を平然と見殺しにしたり、作業感覚で異種族を虐殺したりするなど、極端な思考を持つ者が多い。これは危険に満ちあふれる世界で、生き残るための独特な価値観に染まってしまったことが主な原因となっている。人間以外の種族も、人間を「思想という麻薬に侵された猿」と侮蔑し、残虐な手段で根絶やしにしようとする異常者も多い。一方で転生者のジャンや仲間のクロスは、良識があるゆえに貧乏くじを引かされやすく、作中では数少ない常識人として描かれている。

本作に登場するゴブリンやオークといったメジャーな人型の魔物は「亜人」の異名で呼ばれており、そのほとんどが人間に敵愾心を燃やしている。中でも、「白面金毛」と呼ばれるリーダー格のゴブリンは、丁寧な物腰と美しい外見に加え、冷静な判断力を持つことから、仲間内からは多大な信頼を寄せられている。しかし、彼らは人類を大地にはびこる寄生虫のように扱い、騙し討ちや夜襲など手段を選ばず滅ぼそうと画策している。人類も彼らの暴挙を見過ごすことができず、ギルドに所属している冒険者は「レイド」と呼ばれるグループを結成して、白面金毛の討伐に動き出す。ジャンが率いる冒険者グループも討伐に参加し、やがてジャンと白面金毛の直接対決へと発展。二人は一進一退の攻防を繰り広げるものの引き分けに終わり、互いに「次に会った時は必ず殺す」と高らかに宣言して敵対し合うことになる。