アイテルシー

本作は刑事が事件を解決していくミステリー作品ながら、主人公である女性刑事の相生りさは、犯罪者を愛するという特殊な性癖を持ち、犯人逮捕のためには違法捜査も辞さない性格異常者。その行動はまさにストーカーそのもので、ほかの刑事たちからはその捜査方法を「毒を以て毒を制す」と評されている。ちなみに、りさが捜査をするのは犯罪者を捕まえるためではなく、彼らが罪の十字架に押し潰れる前に恋人としていっしょに逃げるのが目的だが、犯罪者は自分に偏執的な愛情を向けるりさに例外なく恐怖心を抱くこととなる。そのため、犯罪者はりさから逃げるべく警察に自首し、事件が解決するのがお決まりのパターンとなっている。

女性刑事のりさは、5年前の「明珍市少女誘拐事件」の被害者で、その事件をきっかけに犯罪者を愛するようになった。彼女の愛情は、犯罪者が犯罪に手を染めなければならなくなった感情そのものに向けられており、罪そのものは憎むべきものであり、それに巻き込まれた被害者は救われてしかるべきだと考えている。そのため、犯罪者が罪に対して抱く感情はすべて肯定し、警察から「逃げる」という選択肢も、同時に自首して「償う」という選択肢も認めている。ちなみに、りさは犯罪者と駆け落ちすることを目的としているが、犯罪者が自首した場合はフラれたと考え、気持ちを切り替えて新たな事件に挑んでいる。

りさが被害者となった「明珍市少女誘拐事件」は、まだ犯人が捕まっていない謎多き未解決事件で、りさが刑事になった理由もこの事件が大きくかかわっている。そんな中、犯人の一人である鏡野日が現れたことで、再び運命の歯車が動き出す。本作はさまざまな事件をりさが解決しながら、明珍市少女誘拐事件と対峙することが本筋となり、謎が謎を呼ぶ展開となっている。同時にりさがなぜ犯罪者を愛するに至ったかも描かれており、本作における「罪」と「愛」という二つのテーマを深く掘り下げている。