オオカミは月に恋をする

生徒会長の狼川琉奈は、能力も容姿も申し分ないが、その完璧さゆえに周囲からは少し近寄りがたい存在として見られている。そんな彼女を「オオカミ先輩」と呼ぶ副会長の月山雄牙は、学校では軽口を叩き、チャラチャラとした不真面目な男を装っていた。しかし、雄牙にはもう一つの顔があった。両親がいない中で三人の妹たちを支える優しい兄であり、成績も優秀。進学を有利にするために生徒会活動に励み、高校1年生ながら家庭教師のアルバイトで家計を支えていたのだ。ある日、雄牙は一人暮らしをしている琉奈のマンションを訪れる。そこで彼が目にしたのは、完璧な生徒会長とは大きく異なり、要領が悪く、すべてを努力で補おうと必死に頑張る琉奈の素顔だった。さらに琉奈は、雄牙を家庭教師の「霧山」だとカンちがいしてしまう。雄牙はあえてその誤解を解かず、その立場を利用して彼女のサポートを始める。本当の琉奈を知るうちに、次第に雄牙は彼女に惹かれていくが、一方の琉奈は自分を助けてくれる雄牙に「霧山」として恋心を抱くようになる。

生徒会長の狼川琉奈は、外見は完璧でクールな美少女として振る舞っているものの、実際には不器用で人間味あふれる一面を持っている。彼女の部屋は散らかっており、人付き合いも得意ではない。優秀な成績や生徒会での完璧な仕事ぶりは、すべて人一倍の努力の賜物だった。しかし最近では、その無理がたたり、「やり遂げなければ」というプレッシャーから涙をこぼすこともある。そんな琉奈に救いの手を差し伸べたのが、大学生の家庭教師「霧山」として現れた月山雄牙だった。恋愛経験が豊富そうな雄牙には素直になれない一方で、彼に霧山との恋愛相談をしたり、霧山に好かれようと身だしなみに気を遣ったりと、健気な姿を見せるようになる。さらに、苦手だったはずの雄牙本人から告白されて以来、彼を必要以上に意識して空回りしてしまうなど、これまで見せなかったかわいらしい一面を覗かせるようになる。孤高の存在だった琉奈が、雄牙とかかわることで戸惑いながらも変わっていく様子が、本作の大きな見どころとなっている。

本作には、狼川琉奈や月山雄牙をはじめ、個性豊かなキャラクター多数登場する。たとえば、生徒会に所属する烏丸彩香は、学園生活では漫画に熱狂するオタクだが、プライベートではボーイッシュな服装を好み、魅力的なイケメンボイスを持つという大きなギャップがある。彼女は琉奈と雄牙が惹かれ合っていることにいち早く気づき、時にはちょっかいを出しつつも二人を温かく見守っている。また、月山雄牙の同級生・瀬戸朝陽は、見た目は軽いノリのギャルだが、中学時代までは垢抜けない地味な女子だったという過去を持つ。さらに、彼女は周囲に「雄牙とは従兄妹であること」や「実は彼に片思いしていること」を隠している。そのほかにも、ふだんはそっけない態度をとりながらも、実は烏丸に恋心を抱いている池野など、多くのキャラクターが知られざる「裏の顔」を秘めている。