オットに恋しちゃダメですか?

同じ会社に勤務する鳥居あかねと高橋拓也は、どちらも性欲が非常に強く、一般的な性行為では満足できないという共通点を抱えていた。そんなある日、二人は酔った勢いで体の関係を持ってしまう。すると思いがけず体の相性はバッチリで、あかねと拓也は共に、これ以上自分を満足させてくれる相手は今後現れないだろうという、確信に近い思いを抱く。そして東京本社への異動が決まっていた拓也は、あかねとこれっきりの関係になりたくない思いから、結婚していっしょに東京にきてほしいと願い出る。拓也と同じ思いだったあかねは彼の申し出を受け入れ、こうして体の相性は抜群ながら、お互いのことをほとんど知らないという新婚カップルが誕生する。本作では、そんな二人が本当の夫婦になっていく姿が、下ネタを交えながらコミカルかつ時にハートフルに描かれる。

友人に恵まれ、家族に愛されて育ったあかねは、結婚を機に住み慣れた名古屋を離れ、東京に上京する。唯一の頼りである夫の拓也は仕事で忙しく、あかねは性行為に関しては満たされていたものの、それ以外は不安な日々を送ることとなる。そんな中、新婚夫婦のあかねと拓也には、有形無形のさまざまなトラブルが襲い掛かる。当初はぶつかることも多かった二人だが、それらのトラブルを協力して乗り越えるうちに、あかねと拓也は互いの本当の姿を知り、性行為を主目的とした契約結婚のような夫婦関係も少しずつ変化していく。

拓也は、母子家庭だったうえに母親からネグレクトを受けており、児童福祉施設で育ったという過去を持つ。拓也の完璧人間ぶりは、実は母親に認めてもらいたい一心からのものだった。だが、母親は拓也が8歳の時に失踪して以来、一度も彼の前に姿を現すことなく、連絡すら取ろうとしなかった。この経験から拓也はあかねの愛をうまく受け止められず、自分の愛情を彼女に伝えることもうまくない。そして何より、自分も子供に同じことをしてしまうのではないかと恐れている。そのため、夫婦として絆を深めていくが、拓也とあかねのあいだには、子供を持つかどうかという大きな問題が立ちふさがることとなる。そんな中、あかねのアルバイト先のデザイナー・大泉や、拓也と同じ児童福祉施設で過ごした社会福祉士・友喜など、さまざまな人物との交流を経て、そして何よりあかねの深い愛情により、拓也は自らのトラウマを乗り越えていく。こうして二人は本当の家族として幸せをつかむが、そこに拓也の高校時代の親友だったという、裏社会の匂いをまとう男・門所が現れ、あかねの周囲の人々にトラブルをまき散らし始める。