サイコ×パスト 猟奇殺人潜入捜査

本作は、暴力的な熱血刑事の五代一哲を主人公にしたサスペンスだが、普通じゃないのが、五代のバディ・飛高紫苑の存在である。飛高は本物の超能力捜査官で、五代の意識を過去の連続殺人事件の被害者と入れかえることができるのだ。過去に戻った五代の目的は被害者を救うことだが、ときには隠されていた真実が明らかになり、謎解きモノのような展開を迎えることもある。また特筆すべきは、猟奇殺人の異常さ。「兵庫・乳房切除連続殺人事件」の犯人は、六人の女性の乳房を切除し、マスクや衣服に加工して着ている。また「彩門病院ベクロニウム中毒死事件」で目鼻口から大量の血を噴出して死んでいく被害者の姿は壮絶である。

過去の被害者と意識を交換するという、とんでもない飛高の超能力だが万能ではない。「事件の犯人と五代の意識を入れ替えることはできない」「飛高自身が過去に飛ぶことはできない」「五代の意識と入れ替える被害者を選ぶことはできない」といった制約がある。したがって五代は、監禁された女子高生や病気の小学生といった不利な立場で、凶悪犯と向き合うケースも多くなる。そんなときの五代の武器は「データ」である。家族四人を猟奇的な事件で失った五代は、犯人を見つけるためあらゆる猟奇殺人事件のデータを頭にインプットしている。五代は腕力の代わりに知識を駆使して犯人を追い詰めていく。

カリスマ的な人気がある海外の猟奇殺人鬼に比べ、日本の猟奇殺人鬼は嫌われ者で不遇だと飛高は言う。そしてわざわざ日本人版の「シリアルキラーカード」を自作し、隠し部屋に殺人鬼たちが所持していた凶器や衣服をコレクションしている。飛高の目的は、被害者を減らすことにより、猟奇殺人鬼の量刑を減らすこと。生きた彼らの生の声を聞き、なぜ人を殺すのかを知りたいという。純粋に人を助けたいという五代と異なり、飛高の興味は猟奇殺人鬼にある。また、五代が知らない事件の真実を知っていたり、被害者の父親と現代で通じていたりもする。飛高とは何者なのかというのが、本作の大きな謎である。