社会不適合者とエリート警察官の入れ替わり
主人公の唯一は、やることなすことすべてがうまくいかず、一部の人間から「社会不適合者のダメ男」と見下され、自らもそう思い込むようになっていた。さらに、悪い流れを断ち切ることができずに所持金も尽き、人生に絶望して自殺を決意する。そして自殺のために訪れた廃ホテルで、光宗と銃撃戦になって意識を失い、ベッドで目覚めると光宗と身体が入れ替わっていることに気づく。二人はすべてが正反対で光宗は地位も富も手に入れているため、唯一は光宗の身体を得たことで幸運が舞い込んだと有頂天になる。しかし、唯一は光宗の家の地下室におびただしい数の死体が冷凍保存されているのを発見する。実は光宗はエリート刑事の肩書を持ちながら、超ド級の連続殺人鬼だったのである。
さらなる不運が待ち受ける
光宗の地下室で多数の死体を発見した唯一は、本物の光宗から警察に犯罪を疑われたら殺害すると脅迫される。さらに、光宗の家で倒れていたアンから、唯一が光宗でないことを暴かれたうえに協力を求められる。そんな中、警察が光宗に殺害された人たちの所在捜査を開始するなど、唯一は一気に追い詰められていく。その後、入れ替わった光宗と直接対峙した唯一は、彼が常人ではありえない肉体と精神の持ち主であることを知り、光宗を放っておくと唯一の身体で殺戮(さつりく)を繰り返すのではないかと危惧し、阻止するために動き出す。
唯一に協力する人物たち
唯一と行動を共にすることになったアンは、光宗に両親を殺害された壮絶な過去を持つ。アンは両親の仇を取りたいと願う一方で、両親から疎ましく思われていたことを唯一に語るなど、彼とは別のコンプレックスを抱いている。また、幼い頃からヤクザ専門の殺し屋として利用され続けてきた刻郎は、光宗の身体に唯一の精神が宿っていることを知りながら、利害が一致したことで唯一に協力を申し出る。アンと刻郎は壮絶な人生を生き抜いてきたにもかかわらず明るく、長らく孤独だった唯一が絶望的な状況でも前向きになれる拠り所となっている。
登場人物・キャラクター
斎藤 唯一 (さいとう ゆいち)
千葉県市川市出身のフリーターの青年。年齢は23歳。卑屈な性格で、自分の名前や境遇にコンプレックスを抱いている。幼い頃からコミュニケーション能力に欠けており、自分自身を表現することが苦手で、家族との折り合いも悪かった。高校卒業後は逃げるように実家から飛び出して一人暮らしを始めた。その後、コンビニの店員やファミレスのスタッフ、スーパーマーケットのレジ打ちなど、さまざまな職種を経験するものの、人間関係がうまく築けずにいずれも短期で辞めている。さらに、空き巣の被害に遭って全財産を失った挙句に住んでいたアパートを追い出され、ネットカフェ難民となった。人生に絶望して自殺を決意し、人気のない廃ホテルに向かうが、そこで銃撃戦に巻き込まれてエリート警察官の光宗と身体が入れ替わってしまう。自らの境遇が一気に改善されることを期待するものの、光宗が連続殺人犯という裏の顔を持つことを知る。その後、光宗本人から脅迫を受けたり、警察からも疑いをかけられるなど、入れ替わったあとも質の異なる不運に見舞われる。その影響からつねに命の危険にさらされるが、生き抜くために必死に足掻く中で、アンや刻郎といった仲間に恵まれ、危うげながらも充実した日々を過ごしている。
光宗 朔太郎 (みつむね さくたろう)
警視庁の捜査一課に所属している青年。階級は警部。天才的な頭脳と驚異的な身体能力を誇り、警視庁きってのエリートとして知られている。署内の人間関係も良好で、上司や部下からも信頼されており、女性にも非常にモテる。しかし、光宗は猟奇殺人犯としての裏の顔を持ち、自宅の地下室に死体を冷凍保存している。そんな中、廃ホテルで唯一と銃撃戦になって身体が入れ替わり、唯一の身体での生活を余儀なくされる。だが、取り乱すことはいっさいなく、唯一に殺人の事実を隠蔽(いんぺい)するように脅迫したり、唯一として生活しながら情報収集に徹している。当初は唯一の経歴を見下していたが、彼の身体能力の高さに評価を改め、自らの真の目的を果たすために唯一を利用しようとする。また面倒を避けるため、唯一と入れ替わってからは殺人に手を染めていない。
書誌情報
チェンジザワールド-今日から殺人鬼- 全5巻 新潮社〈バンチコミックス〉
第1巻
(2018-10-09発行、 978-4107721181)
第5巻
(2020-09-09発行、 978-4107723161)