バラッド×オペラ

主人公の遥人は、半年前に起こった放火事件で一人だけ生き延びるも、家族と記憶とを失って生きる意欲をなくしていた。一方、「死神」と呼ばれる存在になるべき人間を見定めるため、天界から人間界に降り立ったシロとクロは、余命わずかな人間がなかなか見つからずに苦労していた。そんな中、シロは自分たちを襲ってきたカラスに対し、黒猫に変身したクロを投げつけると、クロに激突した遥人を死に至らしめてしまう。そしてシロから強制的に魂と肉体をつながれた遥人は、肉体を捨てて浮遊霊としてさまようか、死神の役割を担いながら蘇（よみがえ）るかの選択をせまられる。生きることへの価値を見出せずにいた遥人は、死神になることに及び腰だったが、シロとクロが自分に対して真摯に向き合っていることを察し、思いを新たにする。さらに死神としての任務を全うすれば、火事が起こる前の時間に戻せるかもしれないとシロから告げられ、遥人は死神として生きることを決める。

死を迎えた人間は、本人と天使と悪魔の三人が同意したうえで契約を交わすことで、「死神」と呼ばれる存在に生まれ変わることができる。死神になった人間は、霊的な存在を目視できたり、背中に刻まれた翼の紋章の効果で空高く飛べるなど、人間をはるかに上回る身体能力を発揮する。死神の役目は、天界から逃げ出した罪人を死神の鎌で攻撃して無力化し、「罪人の魂」を回収すること。ただし、天界から逃げ出した罪人は死神すら上回る能力を持つことが多いため、死神になったばかりの遥人が任務を遂行するためには、天使のシロと悪魔のクロのサポートが不可欠となっている。また、遥人は死神として活動する際にフード付きの上着を自動的に着用させられるが、これは死神の能力にはまったく反映されることはなく、シロの趣味によるもの。

生前に罪を犯した人間の魂は、「罪人の魂」として天界の牢獄に入れられるが、なんらかの手違いや事故によって牢獄から抜け出してしまうことがある。天界に住む天使と悪魔は、罪人を捕えるために死を迎えた人間を死神に変え、死を回避させる代わりに罪人を天界に連れ戻す役割を与える。罪人の魂は、生前に強い恨みや未練を残して死んだ者ほど強大な力を持つ傾向にあり、作中でも石田三成や斎藤一など、歴史上の有名人物が罪人となるケースも多い。罪人の怨念は発火に近い現象を発生させ、強すぎる怨念は現実の世界で火事を引き起こすこともあり、現代の人間に憑依（ひょうい）し、その人間に成りすまして活動することもある。人間以外の生物も死神になれるが、罪人を狩ることができるのは人間が死神になった場合のみに限定される。