ピカ☆イチ

主人公である二人、太郎と花子は、入学時に面識はなかったが、共通点が二つあった。一つは、二人とも影が薄すぎて、誰の目にも止まらないこと。もう一つは、暁厳次郎・松井マシャ子主演の任侠映画をバイブルとしていることである。そんな二人は、名門・愛種高校の「一、常に人のために　一、友を大切にする　一、正々堂々とする」という校訓が、愛する任侠映画の真髄に通じると感激し、同校への入学を決めた。しかし、いざ入学してみると、特進クラスの成績優秀者が幅を利かせ、模試で最下位をとった生徒をリンチするといういじめが行われていた。それを知った太郎と花子は、任侠映画の中の「自分の正義を貫け」という言葉に勇気をもらい、ヤンキーのような風体に大変身。特進クラスの根性を叩（たた）き直すために立ち上がった。本作は、地味だった高校生男女が、大変身を遂げて学校を改革するという、恋愛だけではない非日常の高校生活を描いた青春物語である。

クラスメートにも関わらず、太郎と花子は変身後にやっとお互いの存在を認識する。そして同じ考えを持つことに感動し、協力することになった。学校中の生徒を敵に回す中、太郎と花子にも仲間が増える。一人は、真中光輝。模試で最下位をとったため、いじめられていたところを太郎と花子に助けられた1年生である。「逃げてばかりでは自分が嫌になる」という理由から、ツンツン頭のヤンキースタイルに変身した。もう一人は、伊吹幾というアイドルの美少女。事務所の方針で「秀才キャラ」を演じることになり、愛種高校に編入するが、成績は下から2番目。成績最下位者がリンチされるというルールが失（な）くなるよう、太郎と花子に協力したいと仲間になった。四人は団結し、特進クラスに反撃を開始する。

愛種高校で横行するいじめの黒幕は、理事長の息子の道玄直治だった。それを知った太郎たちは、道玄に接触し、いじめを失くすよう抗議する。すると道玄はあっさり太郎たちの言葉を受け入れ、いじめの撤廃と登校拒否になった者や辞めた者を学校に戻すように手配した。道玄の真意は不明だが、とりあえず悪しきルールは撤廃された。そんな中、道玄は花子に興味を持ち、彼女に接触するようになる。また、花子の方も、道玄のねじ曲がった性格に活を入れようと、バイブルの任侠映画を観せるのだった。そんな二人の様子が面白くないのが太郎である。花子をめぐって、太郎は道玄にライバル心を燃やすことになる。