地上最強の戦士、ピーターの受難
ヤケッパチ戦士ギルドに所属するピーターは、10年に一度開催される絢爛(けんらん)武闘祭で優勝し、「地上最強の男」の称号を手に入れた。ピーターはこの優勝により、恋人のルヴェリアの父親から結婚の許しを得られると喜んでいた。しかし、政治に疎かったピーターは、絢爛武闘祭が国家間の代理戦争の側面を持つことを知らず、各国から注目を浴びることになる。次の戦いに備え、各国は強者の育成を進めており、異種族の女性や国家の重鎮たちが優秀な子孫を残すためにピーターの子種を狙い始める。こうしてピーターは、オーガの姉妹リサ・アルパカスとミミ・アルパカスをはじめ、エルフやオークなど多種多様な種族の女性たちから猛烈なアプローチを受けることになる。武力では地上最強でありながら、女性の誘惑にはめっぽう弱いピーターは、愛する婚約者に隠れて浮気を重ね、激しい自己嫌悪と「賢者タイム」に苛(さいな)まれることになる。
異種族女性たちの思惑とピーターを巡る愛憎劇
本作では、オーガやエルフ、オークといった異なる文化や価値観を持つ女性たちが、それぞれの思惑からピーターの子を授かろうとせまってくる。強さを重んじるオーガにとっては、強者の子を産むことが女性の義務とされている。夫婦という形態にこだわらず、優れた子種を得ることが何よりも重要であり、その性倫理はヒューマンとは大きく異なっている。一方、魔術に長(た)けるエルフは武術に乏しく、絢爛武闘祭での不振が外交問題に発展し、国家存亡の危機に立たされていた。そこでエルフは、強者の血を受け入れることでこの難局を打開しようとしていた。このように、異種族ならではの価値観や事情が存在し、さらに一夫多妻制の種族もいるため、彼女たちは必ずしも「妻」という立場を求めているわけではない。愛情ではなく種族の利害や本能に基づいてせまってくる構図が、物語をより複雑にし、時には国家間の政治問題にまで発展してピーターを追い詰める。ピーター自身は婚約者のルヴェリア一筋で貞操を守ろうとするものの、強引な誘惑や策略に屈してしまう。地上最強の戦士が戦闘ではなく女性関係に翻弄され、行為が終わったあとに冷静に後悔するというサイクルを繰り返しながら、異種族との騒動をハイテンションに描いている。
ピーターとルヴェリアの試練
ピーターは異種族の女性たちとの関係に悩みながらも、婚約者であるルヴェリアとの関係は純粋な愛として描かれている。ルヴェリアは優秀で強靭(きょうじん)な騎士でありながら、父親でありギルド長でもあるアルバトロスの過保護な教育の影響で、性に関する知識が乏しく、子供はコウノトリが運んでくると本気で信じている。そのため、ピーターの浮気にまったく気づかず、一途(いちず)に彼を愛し続けている。ピーターもまた彼女を心から大切に思い、甘酸っぱい交際を楽しむ一方で、浮気のことが頭をよぎり、罪悪感を募らせていく。さらに、二人の婚約を認めていたはずのルヴェリアの父親、アルバトロスは結婚を阻止しようと権力を振りかざし、ピーターを排除しようと奔走している。相思相愛でありながら、ルヴェリアの無垢(むく)さと父親の妨害によって関係は一向に進展せず、その間にもピーターは新たな女性から関係をせまられてしまう。ルヴェリアやアルバトロスに浮気を勘づかれそうになるたび、ピーターが頭をフル回転させてその場を切り抜ける姿が、本作の特徴となっている。
登場人物・キャラクター
ピーター・グリル
ヤケッパチ戦士ギルドに所属するヒューマンの男性。金髪を短く整え、鎧を身にまとい剣を武器とする精悍な戦士。第213回絢爛武闘祭で優勝を果たし、「地上最強の男」の称号を手に入れた。身体能力に優れた亜人種をも凌駕(りょうが)する怪力と機敏さを誇り、並の戦士が束になっても敵わない魔物を単独で討伐するなど、ギルド内では絶対的なエースとして扱われている。純粋なヒューマンとして絢爛武闘祭で優勝したのは、実に150年ぶりの快挙であった。戦士ギルドの先輩であり、ギルド長の娘であるルヴェリアと将来を誓い合い、彼女との結婚を認めてもらうために優勝を目指していた。しかし、地上最強の称号を得たことで、優秀な遺伝子を狙う異種族の女性たちから子種を狙われるようになる。肉体的には最強でありながら、女性の強引なアプローチや狡猾(こうかつ)な罠(わな)には弱く、何度も過ちを犯しては激しく後悔している。それでもルヴェリアへの愛は本物であり、浮気がバレないようあらゆる手段で修羅場を切り抜けようと奔走している。
ルヴェリア・サンクトゥス
ヤケッパチ戦士ギルドに所属するヒューマンの女性で、ピーターの婚約者。流れるような黒髪のロングヘアに白い鎧をまとった凛(りん)とした剣士。美貌と実力を兼ね備え、ギルド内ではあこがれの的となっている。ギルド長のアルバトロスを父親に持ち、文武両道で正義感が強く、他者を思いやる優しい性格の持ち主。ピーターとは深く愛し合い、将来を誓い合っている。しかし、父親の過保護な愛情のもとで育ったため、性に関する知識は皆無。「ねじれたままピュアに育った」とピーターに評されるほど世間知らずで、子供は神に祈ればコウノトリがキャベツ畑まで運んでくると本気で信じている。そのため、ピーターが裏で異種族の美女たちと過ちを重ねていることにも気づかず、一途に彼を信じ愛し続けている。一方、父親のアルバトロスは、娘に近づくピーターに強い敵意を抱いている。「武闘祭で優勝した相手なら結婚を許す」と約束したため、渋々婚約を認めたものの、1年後の結婚式までにピーターを排除しようと手段を選ばず暗躍している。そのあまりに公私混同した行動に周囲も呆(あき)れ返り、ルヴェリアも次第に父親に愛想を尽かしつつある。
書誌情報
ピーター・グリルと賢者の時間 14巻 双葉社〈アクションコミックス〉
第1巻
(2018-01-12発行、978-4575850949)
第11巻
(2022-09-12発行、978-4575857580)
第12巻
(2023-03-09発行、978-4575858204)
第13巻
(2023-11-09発行、978-4575859089)
第14巻
(2024-04-11発行、978-4575859591)








