純朴な男子大学生とバツイチ子持ちのトランスジェンダー女性
男子大学生の清田は、あまり他人とかかわることを好まず、同級生の桜井さえから好意を寄せられても戸惑ってしまう、純朴な性格の持ち主。そんな清田は、ある出来事をきっかけに「種田よう」という女性に恋をする。偶然の再会を機に連絡を取り合うようになり、ついに思い切って告白するが、ようから自分が元男性であることを打ち明けられる。
二人の関係を通じて考える社会認識
ある日、清田が受講している表象文化の講義で、ジェンダーアイデンティティに関するレポート課題が出される。ようからのカミングアウトを受け、ジェンダーに関心を抱いていた清田は、この課題をきっかけに社会の認識やあり方について深く考えるようになる。ようの生い立ちや生き方を理解しようと努める中で、自分がようとどのようにかかわっていきたいのかという本心と向き合うことになる。やがて、ようと性行為を持つことについても真剣に考えるようになる。
現代人のアイデンティティと選択
本作のテーマは恋愛であると同時に、「自分とはなんなのか」という根源的な問いをでもある。社会人としての日常を送る中で、現在の自分を形作るものが揺らぐのではないかと、いう不安が丁寧に描かれている。また、たとえ配偶者や子供にとって裏切りと受け取られかねない選択であっても、自分の理想とする生き方を貫くことが本当に正しいのか、という切実な疑問も提示されている。自分と他者の理想のあいだに存在する「見えない境界線」を模索しながら生きる姿が描かれており、その葛藤の中でキャラクターたちが何を考え、どのような道を選び取っていくのかが、本作の大きな見どころとなっている。
登場人物・キャラクター
清田 (きよた)
大学3年生の男子。黒髪を長く伸ばしている。年齢は21歳。内気な性格で、他人と積極的にかかわることをあまり好まない。趣味は登山で、時には自宅のベランダにテントを張って、一人の時間を過ごすこともある。現在は就職活動中だが、自分の生き方に迷いがあり、一般的な社会人としてやっていく自信を持てずにいる。ある日、同級生のさえがひったくりに遭った際、颯爽と犯人の確保に協力したように強いあこがれを抱く。しかし、ようが元男性であることを知ってからは、性別や性的欲求、恋愛感情について深く考えるようになる。さえから好意を寄せられているものの、彼女に恋人がいることも知っており、その複雑な距離感に悩んでいる。
種田 よう (たねだ よう)
プログラマーとして働くトランスジェンダーの女性。年齢は34歳。アッシュグレーのロングヘアにしている。離婚歴があり、元妻とは現在も良好な関係を築いている。しかし、幼稚園児の息子が「父親が女性になった」という事実に戸惑っていることに対しては、深い申し訳なさを感じている。職場では、元男性であったことやこれまでの経歴を隠さず、オープンに働いている。清田から好意を寄せられていることに気づきつつも、年上の女性として優しく大人の対応を心がけていた。しかし、彼から正式に告白された際には、その気持ちに真摯に向き合うため、自身がトランス女性であることを打ち明ける。性別適合手術前の本名は「種田洋平」である。







