ポチクロ

恐ろしい魔物たちが住む魔界には、誰もが欲しがる伝説の食材があった。それは「人間」である。人間は魔王や貴族が血眼で探しても見つからないほど超レア物であり、食べると魔界を統べる力が得られるといわれている。そんな稀少な人間の少女、ポチを、ゴロツキ魔族のクロとレオが釣り上げてしまったことから物語は始まる。はじめはポチを食べようとしていたクロだったが、言葉も通じない彼女と接するうちに心を奪われ、彼女をかくまうことにする。しかし、やがてポチの存在が魔王に知られてしまい、クロと王族たちの戦いが始まった。本作の特徴は、テンポのよいギャグとともに描かれる、ほのぼのした恋と熱いバトルアクションである。

恋するクロは、人間界に帰りたがるポチを引き止めようとするが、何しろ言葉が通じない。そこでクロは、150年前に人間の女性と暮らしていたという魔族の家を訪ねた。そして、「未完の以心伝心（コミュニオン）」という魔法を託される。魔法は未完成であり、伝えられるのは魔族側の言葉のみの一方通行だったが、クロはポチを説得しようとする。しかし、故郷の写真を握りしめ、泣きながら眠る姿を見て心変わりをする。クロはポチに「俺が人間界に帰してやるから、一人で帰ろうとするな」と言葉をかけた。こうしてクロは、人間界への門を開く秘宝が眠るという「サンクスト」を目指すことになる。しかしそこは、魔界唯一の未開の地であり、あらゆる魔物を滅ぼす死の魔法に覆われた拒絶の地であった。

魔王の息子、イシズ ノフェルタルは、父を殺して魔王になる野望を持つ。強大な力を得るためポチを狙うが、ポチに奥義の魔法をあっさり破られたうえに、ビンタを食らって放心してしまう。魔法は魔族を対象にしたもので、人間には通じないのだ。人間の存在を知った魔王は、イシズら四人の子供を招集し、「人間を生け捕りにした者を、王位継承者とする」と宣言する。こうしてポチとクロは、魔王一族の四人に追われることになる。