ルーヴル美術館とのコラボ企画
『モナ・リザ』や『ミロのヴィーナス』をはじめ、様々な美術品が3万5000点近く展示されている世界最大級のルーヴル美術館。2003年からは、「バンド・デシネ(=漫画)」を優れた芸術として迎え入れ「ルーヴル美術館BDプロジェクト」を発足。フランスだけではなく日本の漫画家をはじめ国外の作家たちとのコラボを実現してきた。2016年~2017年に日本で開催された、ルーヴル美術館特別展「ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~」展は、その集大成ともいえる企画。フランス語圏のBD作家九人に加え、日本人作家七人が参加し、ルーヴル美術館を題材にした漫画を描いた。本作もその一環であり、作者の松本大洋はルーヴル美術館の全面協力を得て、2週間のルーヴル取材を行い、猫と美術館の物語を描きあげた。従って、館内の様子は詳細かつリアルに描かれ、実際の美術品が数多く登場する。なお、2018年4月には、フランス人カラーリストのイザベル・メルレが彩色した、松本大洋初のオールカラー単行本『ルーヴルの猫 豪華版』が刊行されている。
屋根裏に住む猫たちのドラマ
ルーヴル美術館でガイドとして働くセシル・グリーンは、ある日人混みの向こうに小さな白猫を見かける。それは、ルーヴルの屋根裏に隠れ住む、「ゆきのこ」という名の猫だった。屋根裏には、「アオヒゲ」というリーダー格の猫をはじめ、細身で毛がない「棒っきれ」、丸々と太った「フトッチョ」など7匹の猫がおり、夜警の人間だけがその存在を知っている。猫たちの掟(おきて)は人間に見つからないこと。しかし、ゆきのこはその掟を破り、しばしば美術館に降りていく。ゆきのこは、絵画から聞こえる声に導かれ、絵の世界に入る力を持っており、いつまでたっても子猫のような姿の不思議な猫だった。目付きの鋭い「ノコギリ」という黒猫は、そんなゆきのこを危険視し命を狙う。なお本作に登場する猫たちは、人間視点ではリアルな描写だが、猫の視点に変わると擬人化され、言葉を話す猫人間の姿で描かれる。
50年以上前にルーヴルで消えた少女
曽祖父の代からルーヴルで働く夜警の老人、マルセルには三つ違いの姉、アリエッタがいたが、50年以上前にルーヴルで忽然(こつぜん)と姿を消した。アリエッタは絵と話をすることができ、時々絵の中に隠れていたとマルセルに話していた。また、アリエッタは幼いうちに成長が止まり、他人からはマルセルが兄のように思われていたという。アリエッタが行方不明になったとき、マルセルは「絵の中にいる」と主張したが、当然相手にされなかった。ルーヴルの絵の中で姉は生きている、というマルセルの話を聞いたセシルは、一緒にその絵を探すことを提案する。マルセルの記憶を頼りに、アリエッタが一番好きだった絵を探していたセシルは、愛の神アモル(キューピッド)の葬式を描いた『アモルの葬列』にたどり着く。本作は「絵の中に入る」という不思議な現象を共通点に、猫と人間のドラマを描いた幻想的な物語である。
登場人物・キャラクター
ゆきのこ
ルーヴル美術館の屋根裏に住む、オッドアイの白い猫。いつも眠そうで、実際寝ていることが多い。年齢は7歳だが子猫のように小さいままで、擬人化描写でも子どもの姿で描かれる。しばしば美術館に降りては絵の中に入っていく。「人間に見つかってはいけない」という掟を破るので、黒猫の「ノコギリ」に殺されそうになる。
セシル・グリーン
ルーヴル美術館のガイドとして働く中年女性。金髪とメガネが特徴。「ルーヴルは好きだが自分には人が多すぎる」と考えており、もっと混雑しない美術館でのガイドを希望している。老いた夜警のマルセルから、50年前に消えた姉の話を聞き、彼に協力する。
書誌情報
ルーヴルの猫 小学館〈ビッグ コミックス〉
上
(2017-10-30発行、978-4091897480)
下
(2017-10-30発行、978-4091897497)
ルーヴルの猫 オールカラー豪華版 小学館〈書籍扱いコミックス単行本〉
上
(2018-04-25発行、978-4091792488)
下
(2018-04-25発行、978-4091792495)








