独身作詞家とレジ打ち高校生のラブストーリー
フリーランスの作詞家、花田和巳は、かつて婚約していた恋人に裏切られた経験から恋愛に臆病になり、生涯独身を誓っていた。しかしある日、偶然立ち寄ったスーパーマーケットでレジを担当していた純に一目惚れしてしまう。当初は芽生えた恋心を必死に否定していた花田だったが、何かと理由をつけてスーパーへ通ううちに、次第に自分の本当の気持ちを受け入れていく。本作は、過去の傷を抱えた独身男性と美しい女子高校生が、不器用ながらも少しずつ距離を縮めていくピュアなラブストーリーとなっている。
高校生アルバイトがレジのスターに挑戦
スーパーマーケットの制服を着ると大人びて見えるは、実は現役の高校生。母子家庭で育った彼女は、高校卒業後の就職を見据え、その準備としてスーパーでアルバイトを始めた。志乃崎純は一日も早く立派な大人になることを目標に、ひたむきにレジ打ちに取り組んでいる。その真剣な姿は周囲を元気づけるが、実際の現場では理不尽なクレームや迷惑客などのトラブルが日常茶飯事だ。まじめな純は真正面から立ち向かおうとするものの、社会経験の浅さからやる気が空回りしてしまうことも多い。本作は、接客業の難しさを純の視点で描くと共に、彼女が客との触れ合いを通じて「レジのスター」へと成長していく姿を描いている。
音楽と日常が交錯する世界
純のクラスメイトである奥野千代子は、「チョコレートクラウン」名義で音楽活動を行っていた。彼女の独特な作風が評価され、音楽レーベルから正式デビューが決まると、花田のもとに作詞の依頼が舞い込む。過去の恋愛トラウマからラブソングを書くことができなかった花田だったが、純との交流を通じて創作意欲を取り戻し、ついに歌詞を完成させる。一方、千代子も純をモデルに曲を制作しており、知らず知らずのうちに花田と千代子は同じ人物を題材にした楽曲を作り上げていた。最終的に花田の作詞した歌詞は採用されなかったものの、この出来事をきっかけに二人は親交を深め、花田は音楽を通じて過去のトラウマを乗り越えていく。本作は、レジ業務と音楽活動という異なる世界が交錯し、多層的な人間関係が紡がれていく点も大きな見どころとなっている。
登場人物・キャラクター
花田 和巳 (はなだ かずみ)
フリーランスの作詞家の男性。年齢は36歳。無精ひげに黒縁眼鏡という地味な風貌をしている。8年前、仕事に追われる日々の中で、婚約していた恋人に浮気されて破局した経験がある。それ以来、恋愛に興味を失い、ラブソングの作詞にも支障をきたしていた。生涯独身でも構わないと考えていたがある日、立ち寄ったスーパーマーケットでレジをしていた純に一目惚れし、何かと理由をつけて彼女に会いに行くことを繰り返す自分を嫌悪しつつも、その感情と折り合いをつけていく。なお、学生は恋愛対象外と公言しているが、純の大人びた容姿から彼女を20代前半と誤解しており、高校生であることは知らない。純のクラスメイトの千代子には創作者として共感を抱き、彼女の意図を的確に汲み取った歌詞を完成させるが、千代子からその歌詞を拒否されてしまう。しかし、その理由も察し、以降は同じ音楽業界の先輩として彼女に助言を与え、影響を与え続けている。
志乃崎 純 (しのざき じゅん)
高校3年生の女子。スーパーマーケットのレジ打ちのアルバイトをしている。黒髪のロングヘアに、左頬の下にはほくろがある。容姿端麗でスタイルも抜群、とりわけ豊かな胸元が目を引く美少女。その美貌から学校内でも人気が高く、日常的に男子から告白されている。シングルマザーの家庭で育ったが、母親の愛情を一身に受けており、家庭環境も良好。まじめでバイタリティにあふれ、高校卒業後はすぐに働くつもりでいる。スーパーでのアルバイトも社会勉強の一環である。勤務中は髪をまとめて制服を着用しているため、実年齢よりも大人びて見られることが多い。曲がったことが許せない実直な性格だが、若さゆえに空回りしてしまうことも多い。アルバイト先ではナンパされることも多いが、相手に好意がなければ交際を断っている。そんな純はナンパされているところを花田に助けられ、顔見知りとなる。その後、さまざまな出来事を経て徐々に距離を縮めていく。
奥野 千代子 (おくの ちよこ)
高校3年生の女子。「チョコレートクラウン」というハンドルネームで音楽配信を行っている。整った顔立ちだが、髪はボサボサのセミロングで地味に振る舞っている。クラスメイトの純とは仲が良い。年齢の割に達観したマイペースな性格の一方で、物事の本質を突く鋭い言動も多い。存在しない言語で流麗なメロディーを紡ぐ独特なスタイルから、一部の界隈では「アンワードシンガー」として熱狂的な支持を集め、音楽レーベルからのスカウトでメジャーデビューが決定する。しかし本人は「売れる」ことに無頓着で、周囲の高評価も過剰だと感じていた。「チョコレートクラウン」という名前は「無くても生きていけるモノ」という意味で、心の奥底には卑屈さが根付いている。大衆受けを狙うレーベル側が花田に作詞を依頼した際も、花田の歌詞に深く共感はしたものの、「自分にはもったいない」と拒否してしまった。しかし、宇佐美と花田との交流を通し、自らも前に踏み出す決意を固めた。デビューに向けてトレードマークだった髪をショートに切り、垢抜けた姿へと劇的なイメージチェンジを遂げる。







