夢を追い続ける六人のヒューマンドラマ
シェアハウス「せんたく船」に暮らす六人の登場人物は、それぞれ個性豊かで夢を抱いている。しかし、彼らの誰もが、夢を打ち明けた相手から嘲笑されたり呆れられたりして、夢をあきらめるように諭された経験を持っていた。輝かしい未来をつかみたいと願いながらも、厳しい現実に何度も挫折しそうになる。それでも決して夢をあきらめきれない彼らの姿は、読者の胸に深い共感と感動を呼び起こす。
「夢の有効期限」との葛藤
プロゲーマーを目指すラスボスの前に立ちはだかるのは、弱冠16歳のトッププレイヤー。ミュージシャンを志すミリオンは、かつて同じライブハウスで切磋琢磨(せっさたくま)した売れっ子ミュージシャンから大きな影響を受けている。そして、お笑い芸人のこぎりは、若手から「劇場の空気を冷ます迷惑な先輩」として引退をせまられている。若くして夢をつかんだ人々の姿を目の当たりにし、厳しい現実に直面した彼らは、自らの夢の終わりと向き合わざるを得なくなる。誰もが避けて通れない「夢の有効期限」という残酷な現実と、それを乗り越えてでも夢を追い続けようとする渇望が、本作の魅力を一層際立たせている。
ラスボスとあいあいの熱き戦い
オンライン対戦ゲームの世界大会予選で、ラスボスは人気動画配信者のあいあいと対戦する。予選を勝ち抜かなければ、シェアハウス「せんたく船」を去る覚悟を決め、自殺すら考えているラスボス。一方、配信者を辞めてプロゲーマーを目指すあいあいは、予選を突破して事務所に自らの実力を証明しなければならない。両者共に一敗を喫し、背水の陣で臨むこの対戦は、互いの夢への執着や熱意が魅力的に描かれており、本作最大の見どころとなっている。
登場人物・キャラクター
ラスボス
シェアハウス「せんたく船」で暮らす30歳の元サラリーマンの男性。うねりのある黒髪に眼鏡をかけ、三白眼と口元のヒゲが特徴。高校時代には地元のゲーム大会で優勝し、プロゲーマーを目指していたが、周囲の嘲笑により一度は夢をあきらめた過去がある。年齢やブランクに対する焦りと後悔はメンバーの中で最も強く、現実を見据えたうえで夢を叶えるために努力することの大切さを仲間たちに説いている。
ミリオン
シェアハウス「せんたく船」で暮らす30歳の女性。ミュージシャンを目指している。白髪を前下がりのボブヘアにしている。自分のために、本当に作りたい曲を作るという強い信念を持ち、理論に頼らず感覚を重視した作曲を続けている。ライブハウスの店長からも「感覚派」と評されている。しかし、年齢を重ねるにつれて感覚だけの曲作りには限界があると指摘されるようになり、ミュージシャンとしての生き方を改めて見つめ直すようになった。過去にはレーベルから声がかかったこともあるが、打ち合わせのたびに客受けを意識した曲作りを求められたことに反発し、自ら連絡を絶った経験がある。
おかん
シェアハウス「せんたく船」で暮らす30歳の女性。料理店の開業を目指している。黒髪のワンレンミディアムボブにしている。得意な料理でシェアハウスの炊事を担当し、みんなから慕われている。職場の同僚から「結婚して子供を持つことが女性の幸せだ」と夢を一方的に否定され、深く傷ついた苦い経験がある。大好きなコーラを我慢してダイエットコーラを選んだり、体型を気にして散歩を日課にするなど、健康管理にも気を配っている。昔の同僚からは「アイちゃん」と呼ばれている。
こぎり
シェアハウス「せんたく船」で暮らす30歳の男性。お笑い芸人を目指している。お笑いの道を志したきっかけは、片思いしていたチュンが「お笑い芸人のように面白い人が好き」と話していたのを聞いたことだった。しかし、芸人に求められる瞬発力やトーク力に乏しく、先輩芸人からは「才能がないから、これ以上人生を棒に振るな」とはっきり言われてしまう。それでも、チュンの好みが「面白い人」である限り、決してあきらめずに夢を追い続けようと決意している。
チュン
シェアハウス「せんたく船」で暮らす30歳の女性。「一人でいることをやめる」ことを目標にしている。黒髪をロングヘアにしている。頻繁に合コンに参加しているものの、理想の男性にはなかなか出会えず、既婚者から言い寄られたりと、理想の相手には恵まれていない。感情に素直な性格のため、ラスボスやミリオンに対しても思ったことをはっきり口にするため、場の雰囲気を悪くしてしまうこともある。仕事では優秀で何でも一人でこなしてしまうため、人に頼るのが苦手だが、「せんたく船」での生活を通じて、周囲に頼ることを学ぼうとしている。
ムッシュ
シェアハウス「せんたく船」で暮らす30歳の男性。小太りの体型で、黒髪のロングヘアに口元にはヒゲをたくわえている。人生を無理して頑張る気はなく、定職には就かず、ギャンブルや高額なアルバイトを繰り返している。友人たちにはつねにフラットな態度で接し、焦らせたり無理に背中を押すことはない。そのあまりに自堕落な生活ぶりがラスボスたちを苛立たせることもあるが、一方でムードメーカーとしての役割も果たしている。
書誌情報
三十路病の唄 全7巻 芳文社〈芳文社コミックス〉
第1巻
(2021-10-14発行、978-4832238664)
第2巻
(2022-01-15発行、978-4832238862)
第3巻
(2022-05-16発行、978-4832239173)
第4巻
(2022-09-14発行、978-4832239432)
第5巻
(2023-02-16発行、978-4832239708)
第6巻
(2023-06-15発行、978-4832203044)
第7巻
(2023-08-16発行、978-4832203204)







