五十嵐夫妻は偽装他人

優秀で人当たりのよい真尋は、同じ職場で出会った直人と結婚するも、新婚生活は暗礁に乗り上げてしまう。大喧嘩の末に家を飛び出した真尋は、直人と離れて一人暮らしを始める。しかし1か月後、偶然にも直人が真尋の会社に転職してくる。思わぬ再会を果たした二人は戸惑いながらも、周囲には夫婦関係を隠して同僚として振る舞うことを決意する。仕事では抜群のコンビネーションを見せる二人だが、プライベートでは素直になれない不器用さが顔をのぞかせ、すれ違いの日々が続く。本作は、いわゆる「偽装夫婦もの」の逆パターンであり、元は夫婦であった若い男女が他人同士のふりを強いられる、というユニークな「偽装他人」の設定が特徴となっている。

真尋はしっかり者ながら、プライベートでは少しズボラな一面を持つ。夫の直人とは、家事の進め方や子供を持つことに対する考え方の違いから、すれ違いが生じていた。一方、やや神経質でせっかちな直人にとっても、真尋との生活スタイルの違いはストレスとなり、セックスレス問題や喧嘩が増えていた。こうした事情から、二人は別居することになるが、同僚たちに余計な気を遣わせたくないという思いから、二人は別居中の夫婦であることを周囲に隠すことにする。そんな中、歓迎会で恋人について尋ねられた真尋は、既婚者であることを同僚たちに伝える。一方の直人は結婚自体を隠し、独身であると公言するが、直属の上司である部長には、真尋との夫婦関係とその事情を打ち明けるのだった。

直人の事情を知る上司の配慮により、直人別居中の妻、真尋と二人きりで出張に出かけることになった。出張先での水族館デートや帰宅後の出来事を通じて、二人は互いのよさや変わらぬ愛情を再確認する。しかし、そんな矢先、以前から直人に思いを寄せていた後輩の林美羽が二人の関係に気づき、真尋への嫉妬からあらゆる手段で揺さぶりをかけてくる。再び距離を縮めようと奮闘する真尋と直人だったが、美羽の策略によって、二人は新たな波乱に見舞われる。他人を装いながらも、試行錯誤を重ねて互いに惹かれ合う二人は、果たして元の関係に戻ることができるのか、それとも離婚という結末を迎えるのかという緊張感あふれる展開が見どころとなっている。また、素直になれずに悩み続ける二人のじれったい恋愛模様も楽しめる。