今日、駅で見た可愛い女の子。

37歳の編集者・亀山正太郎は、見た目に似合わずかわいい系女子やそのファッションが大好きで、自分もそんな女の子に生まれたかったというひそかな願望を抱いていた。そのため、女の子のあいだで流行しているファッションやメイク、アイテムに非常に詳しい。そんな亀山は、駅で理想の女の子を見かけ、ファッションやアクセサリーなどの持ち物から、使っているメイク道具まで細かく観察している。だが、基本的にジロジロ見るのではなく視界に入っているだけという体を貫いており、二人のあいだに直接的な接触はほとんどない。本来なら引かれてもおかしくない中年男性の趣味嗜好だが、ギラつくことなくちょっとくたびれた容姿とぶれない思いのせいか、読者に嫌悪感を抱かせることなく、かわいらしさすら感じさせる。

高校生の七海ひかるは、髪はサラサラで肌はツヤツヤ、胸元のリボンとチェック柄のミニスカートにスクールバッグという王道の女子高校生スタイルで登校しているが、実は男子校に通う正真正銘の男子。かわいいものが大好きで、メイクやおしゃれに余念がない。特に昔流行したファンシー雑貨を好み、当時流行の渦中にいた亀山にとっては、懐かしさに胸がときめくドンピシャな存在だった。ひかるはマイペースながらしっかりと自分の生き方を貫いており、彼が女子ではないことなど疑いもしない亀山にとって、昔流行したものを現代の女子高校生が使用している様子は、アラフォーサラリーマンの乙女心をわしづかみにしている。

高校生のひかるが興味を持っているのが、今大流行中のメイクやファッションとともに、アラフォー世代には懐かしい乙女アイテム。一周回ってダサイものが新しいトレンドになっているのか、セボンスターやたまごっち、サン宝石、365日のバースデーテディ、プロフィール帳やシール帳など、当時の女子高校生なら誰もが夢中になった覚えのある乙女アイテムが数多く登場し、特にアラフォー世代には共感必至のラインナップとなっている。