召喚生物と人間が共存する世界
本作の舞台となる現代日本は、召喚士と呼ばれる人間が存在し、異世界の「召喚生物」や任意の物質を召喚する能力を持っている。しかし、多くの召喚生物は監視対象として非現実(ファンタジー)区に隔離されており、現実都市、東京の街に召喚された場合は、どんな理由があっても人間に危害を加えた時点で駆除される運命にある。
主人公は召喚生物たちに育てられた少年
常世は赤ん坊の頃に非現実区に捨てられ、召喚生物たちによって育てられたため、彼の思考は召喚生物に近く、潜在的に人間とのあいだに壁を感じていた。幼少期から召喚生物たちに、異世界の食べ物や思い出の品を教えられていた常世は、召喚生物たちのために召喚士を志し、召喚学園高校に入学する。しかし、常世は召喚生物と同じ異質な存在として学園では危険視され、実戦を重視する「特戦クラス」に在籍させられてしまう。そこで常世は召喚生物の存在価値が、人間にとっての価値で決まることを目の当たりにして、強い衝撃を受ける。
常世に接触する危険組織「非現実召会」
秘密結社「非現実召会」は、世間では召喚を通じて破壊と変革を掲げる危険組織として認識されている。アマチュア召喚士たちが法を無視して自分勝手に召喚生物を呼び出すなどの迷惑行為で知られており、あけるのボディガードたちが発見した非現実召会の祭壇には、「常世を解放せよ」とのメッセージが記されていた。通常、召喚を行うためには人生観が一変するほどの異世界との遭遇体験を必要とするが、召喚生物たちとの生活が日常だった常世にとっては、人間たちとの体験が召喚のきっかけとなると考えていた。そんな中、非現実召会のメンバーが常世に接触し、彼が人間を嫌うように導くため、召喚生物たちに残酷な行為を見せつけ始める。
登場人物・キャラクター
常世 (とこよ)
東京都立召喚学園高校に通う1年生の男子。生まれた時から「人間が住める場所ではない」とされる非現実(ファンタジー)区で、召喚生物に囲まれて育った。そのため召喚生物に思考や行動が似ており、人馴れしていない。非現実区の仲間たちに故郷の食べ物や思い出の品々をプレゼントするため、物質召喚コースの生活専攻を希望していた。しかし、入学式で特別戦術(特戦)クラスを前提に、入学許可が下りたことを告げられる。そして常世は学校を辞めるか、特戦クラスに通うかの選択肢しかないことを知る。人間とのコミュニケーション不足からクラスメイトには異質な存在として敵意を向けられ、教師からも「まるで召喚生物が人の皮をかぶって歩いているような存在」と認識されており、学園全体から危険視されている。
白篠 あける (しらしの あける)
東京都立召喚学園高校に通う1年生の女子。常世のクラスメイトで、白篠グループの財閥令嬢でもある。佐伯と真壁という、二人のボディガードを従えている。特戦クラスにあこがれており、経済専攻に入学するとウソをついて召喚学園高校に入学した。お嬢様扱いを嫌い、寮もふつうの女子寮を希望していたが、過保護なボディガードたちによって日常生活を管理されている。入学後の選別審査で常世が異質な存在であることを実感して距離を置こうとするが、あける自身も「お嬢様の道楽」と蔑視され、クラスメイトから敬遠されていることから、常世のパートナーとなった。常世の浮世離れした言動に困惑することも多いが、その天然さを利用しようとするしたたかさも併せ持つ。
書誌情報
召喚する世界 3巻 講談社〈KCデラックス〉
第1巻
(2022-06-09発行、 978-4065278260)
第2巻
(2023-01-06発行、 978-4065298619)
第3巻
(2023-07-07発行、 978-4065321669)