多様なセクシュアリティをめぐる内日の葛藤
本作には、ゲイやレズビアン、バイセクシャル、パンセクシャルなど、多様なセクシュアリティを持つ人物が登場する。主人公の一人である内日は、かつて実母とその同性の恋人、リエと三人で暮らしていた。物語の中で内日は、男性同士のカップルや、あらゆる性別に恋愛感情を抱く人々など、さまざまな恋愛観を持つ人たちと出会っていく。また、本作では「恋愛伴侶規範」も重要なテーマの一つとして扱われている。内日はさまざまなカップルに対して一貫して理解を示す一方で、自身は恋愛に情熱を注げないことに息苦しさを感じるという、内面的な葛藤が丁寧に描かれている。
多聞と謎めいた「ともだち」
本作のもう一人の主人公である多聞は、幽霊や妖怪、妖精、魔女といった人間とは異なる存在を「ともだち」と呼び、日常的に彼らと会話を交わしている。「ともだち」は基本的に多聞以外の人間には見えないが、多聞には心を許しており、時には自分たちの住処(すみか)に彼女を招くこともある。一方、高校生時代の内日は、多聞の「ともだち」をほかの人間と同様に見ることはできなかった。しかし、10年後に大阪へ戻ったことをきっかけに、多聞と同じように彼らの姿を視認できるようになる。
10年ぶりの大阪で始まる不思議な共同生活
高校卒業から10年が経ち、東京で暮らしていた内日は、転職を機に一時的に大阪へ帰郷することになった。旅行中の母親が残したメモから、多聞の新しい連絡先を知った内日は、早速多聞に連絡を取ろうと試みる。しかしその矢先、内日の目にも「ともだち」の姿がはっきりと見えるようになり、彼らと一時的に共同生活を送ることになる。内日は「ともだち」に対して、高校時代に同級生の女子から告白された過去や、東京で出会った晶と結婚を前提に交際していることなどを打ち明ける。「ともだち」との交流を通じて、内日は自身の複雑な感情と向き合い、心の折り合いをつけるきっかけを得ていく。
登場人物・キャラクター
内日 (うつい)
大阪出身の女性。年齢は29歳。父親はすでに他界しており、学生時代は実母とその同性の恋人、リエの三人で暮らしていた。母親とリエの両方から深い愛情を受けて育ったため、多様なセクシュアリティに対して偏見や違和感を持つことはなく、その価値観は10年経った今も変わっていない。現在は「晶」という男性と交際しているが、彼を心から愛しているという自信が持てずに負い目を感じているため、母親たちには交際を打ち明けていない。多聞とは学生時代からの知人で、彼女の不思議な言動に惹かれていた。かつては多聞の「ともだち」を見ることができなかったが、転職を機に大阪へ戻った際に彼らが見えるようになり、交流を深めていくようになる。
多聞 (たもん)
内日の母親の知人であり、神秘的な雰囲気を漂わせる女性。人当たりがよく、他人の気持ちを尊重する優しい性格で、内日からも深く慕われている。つねに内日を気にかけ、親しく接してきた。自分にしか見えない「ともだち」の存在を主張し、内日の前で彼らと会話する様子を見せたり、「人間同士の恋愛はさっぱりわからない」と語るなど、どこか人間離れした言動をとることもある。内日の上京を機に一度疎遠になったものの、内日が大阪に戻ったことで再び連絡を取り合うようになる。現在は大阪を離れ、「ともだち」の一人である「カヴンの魔女」に招かれ、異世界「エディンバラ」に滞在している。
書誌情報
多聞さんのおかしなともだち 上 1巻 KADOKAWA〈ビームコミックス〉
第1巻
(2025-06-12発行、978-4047384255)
多聞さんのおかしなともだち 下 全2巻 KADOKAWA〈ビームコミックス〉
第2巻
(2025-06-12発行、978-4047384262)







