夢なし先生の進路指導

本作では、元キャリアコンサルタントで数学教師を務める高梨が、夢を応援する前にその危険性について警告する進路指導行う。高梨は、自身が担当する生徒たちに対して「夢は無慈悲で残酷です」「夢は人を殺しかねない」と、教師らしからぬ厳しい言葉を投げかけ、夢のリスクを丁寧に伝える。彼の指導は的確でありながらも冷徹であり、生徒たちはしばしば高梨に反感を抱いている。しかし、将来夢をあきらめざるを得なくなった時、生徒たちは彼の指導を思い出し、実際に高梨と再会して相談することで新たな希望を見出していく。

高梨の教え子たちには、声優を目指す三田梢や、列車の運転士を志望する伏見考弘、メンズアイドルとして活動する夏野など、さまざまな夢を抱く生徒がいる。彼らはそれぞれの夢を実現するために懸命に努力しているが、厳しい現実に直面し、挫折を味わうことも少なくない。高梨は、夢を失った時に感じる絶望や苦しみを非常に懸念しており、生徒たちの反発を覚悟の上で夢の危険性を指摘するのは、夢に破れた彼らがその苦悩に打ちひしがれ、人生をあきらめてしまうことを防ぐためである。

栄進学園高校では、生徒の自主性と自律性を重視し、夢に向かって努力する生徒を全力で支援している。そのため、夢がもたらすリスクを懸念する高梨の考えは異端視されており、生徒だけでなく、多くの教師からも批判を受けている。特に、栄進学園高校の教頭、桐ケ谷は、「夢を持ちにくい現代社会において、勇気を持って夢を抱き、それを家族や教師に打ち明けることは非常に価値のあることだ」と主張し、高梨の姿勢を全否定しようとしている。一方で、先輩の田尻をはじめ、高梨の新人時代を知る教師たちからは、一定の理解を得ている。