ゲァーチマは単なる大怪獣か、それとも救世主か
10年前、海から突如現れた怪獣は大波を巻き起こし、匡波町の街並みや住民たちを押し流して甚大な被害をもたらした。しかし、その怪獣はやがて海に溶けて消え、黒く濁った海へと変わったが、その海では魚介類が大きく美味しく育つようになり、町は観光地として劇的な復興を遂げる。そのため、この怪獣は港町に伝わる豊穣(ほうじょう)の神にちなんで「ゲァーチマ」と呼ばれるようになった。家族を失った人々にとっては忌まわしい災厄でしかないが、ゲァーチマの出現によって救われた人々や恩恵を受けた者たちにとっては、まるで救世主のように崇(あが)められている。そんな複雑な感情が渦巻く町で、宮矢子が生み出した二代目ゲァーチマは、彼女との親子のような関係を築き、町を襲う新たな脅威に立ち向かっていく。
怪獣と人間の複雑な関係
怪獣と特別な関係を持つのは、宮矢子だけではない。クラスメイトからのいじめに立ち向かうため、山中で見つけた怪獣、インガロンを密かに育てる小学生の男の子、幸や、怪獣遣いの一族に双子の姉妹として生まれ、ゲァーチマを封印すべき怪獣と見なす少女、江刺ひばりなど、その関係性は多様である。怪獣と共存を強いられた人間たちが抱く、複雑で一筋縄ではいかない思想や感情の揺れ動きが、本作の重要なテーマの一つとなっている。
特撮怪獣の造形美と戦闘描写が魅力
特撮作品の怪獣を愛する者にとって、本作の怪獣たちの造形美や激しい戦闘は見逃せない魅力となっている。バトルシーンでは、大地や波の隆起がダイナミックに描かれ、まるで静止画とは思えない迫力を体感できる。また、磁性を帯びた外殻で金属弾丸を跳ね返す虫型怪獣のヘットルガや、ソニック・ブームを巻き起こしながら飛行する板鰓類型怪獣のツバグラ、さらには怪獣をあやつる双子の姉妹など、往年の名作へのオマージュが随所に散りばめられており、読者はそのルーツを探る楽しみも味わうことができる。
登場人物・キャラクター
杜野 宮矢子 (もりの みやこ)
匡波町に住む少女。黒髪を外ハネにしたショートボブにしている。年齢は18歳。10年前の災厄への恐怖と平和への祈りを込め、粘土でゲァーチマの人形を制作した。この人形を原型にしたソフビ人形が大ヒットし、人形作家として広く知られるようになる。しかし、その体内には10年前のゲァーチマから「托卵」された未知の臓器が宿っており、気管を通じて二代目ゲァーチマの球を吐き出す。それ以来、彼女は二代目ゲァーチマと共に、怪獣生物研究機構「FUNE」の観察対象となっている。当初、自分の体から生まれる異形に戸惑い苦悩していたが、やがて二代目ゲァーチマをかけがえのない家族として受け入れるようになる。
松島 竜國 (まつしま たつくに)
怪獣生物研究機構「FUNE」に所属する海洋学者の男性。匡波町の名門、松島財閥の一人息子だったが、10年前にゲァーチマが引き起こした大波によって家族や屋敷をすべて失った。しかし、その悲劇を家柄という束縛からの解放ととらえ、自由を手に入れたと語っている。ゲァーチマを救世主と見なし、研究対象であると同時に信仰の対象としても注目している。また、重度の怪獣ファンでもあり、新たな怪獣災害さえも心待ちにする危うさを持っている。いとこで同僚でもある塩竃ミチルからは「たっちゃん」と呼ばれている。
ゲァーチマ
10年前に匡波町に突如現れた巨大怪獣。漆黒の巨軀を持ち、直立して二足歩行し、大きな三白眼が特徴的。初代ゲァーチマは匡波町を大波で押し流したあと、海中に溶けるように姿を消した。その最期の瞬間、海に沈んだ宮矢子と目が合い、彼女の体内に托卵したと推測されている。二代目ゲァーチマは、宮矢子の体内に形成された新たな内臓から吐き出された球体が実体化した姿である。この球体はゲァーチマのソフビ人形の中に保管されており、ほかの怪獣が出現する際には海に投げ入れられ、大量の水分を吸収することで巨大化する。二代目ゲァーチマは火を吐く能力や、敵に応じて形態を変化させるなど、初代にはなかった多彩な特徴を持つ。また、宮矢子に危害が及ぶ可能性がある状況を夢を通じて知らせる能力も備えている。
書誌情報
大怪獣ゲァーチマ 7巻 講談社〈ヤンマガKCスペシャル〉
第1巻
(2023-11-20発行、978-4065330562)
第2巻
(2024-03-18発行、978-4065350003)
第3巻
(2024-07-19発行、978-4065362921)
第4巻
(2024-11-20発行、978-4065375983)
第5巻
(2025-03-18発行、978-4065389300)
第6巻
(2025-07-18発行、978-4065404690)
第7巻
(2025-11-20発行、978-4065414583)







