天上恋歌 ~金の皇女と火の薬師~

天上恋歌 ~金の皇女と火の薬師~

青木朋の代表作の一つ。12世紀初頭の中国、宋の時代を舞台にしている。金国から親善大使として宋を訪れた皇女アイラと、宋の花火職人である白凛之との身分を超えた恋愛を描いた歴史ロマンス。二人の恋愛を軸に、宋・金・遼の三国を巡る政争や戦乱が巧みに織り交ぜられている。秋田書店「月刊ミステリーボニータ」2020年3月号から2026年2月号にかけて連載された作品。

正式名称
天上恋歌 ~金の皇女と火の薬師~
ふりがな
てんじょうれんかきんのおうじょとひのくすし
作者
ジャンル
東洋史
 
恋愛
レーベル
ボニータ・コミックス(秋田書店)
巻数
全13巻完結
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宋、金、遼が争う北宋末期

物語の舞台は北宋末期に、宋・金・遼の三国がそれぞれの思惑を抱いて争いを繰り広げていた時代。大国「遼」の支配から独立を果たした新興国「金」と、強大な「宋」は、遼を挟む地理的な関係から互いを重要な同盟相手と認識していた。そんな中、金の皇女、アイラは皇族を代表する親善大使として宋の都を訪れる。政治的には宋と金は友好関係を築いているが、宋国内には金を辺境の蛮族の国として差別的に見る者も少なくなかった。華やかな宋の都にあこがれていたアイラだったが、実際には蛮族の皇女として差別に直面し、さらに宋国人同士の身分差にも戸惑いを覚える。新興国出身であるため格式や身分に疎いアイラは、宋での文化的なギャップに葛藤しつつ、遼の思惑も絡んだ複雑な権謀術数に翻弄されていく。

花火が織りなす運命の出会い

宋に到着する10日前、初めて国外へ旅立ったアイラは、道中の街で目にするあらゆるものに強い興味を抱いていた。しかし旅の途中で、敵対する遼の襲撃を受けて川に落ちてしまう。そんな彼女を救ったのは、花火の試射に訪れていた凛之だった。最初は警戒していたアイラだったが、紳士的に接する凛之に次第に心を開いていく。やがて凛之は仲間たちと合流するために花火を打ち上げ、アイラは無事に仲間と再会を果たす。初めて見る花火と凛之の優しさに心を奪われたアイラは、宋に到着するまでどこか心ここにあらずの様子だった。宋に到着後、アイラは宋の皇帝と第九皇子に歓迎されるが、その式典で花火を打ち上げていた職人の中に凛之の姿を見つける。思わず凛之に抱きついてしまったアイラだったが、それが皇帝と第九皇子の目前での出来事だったため問題視され、二人の恋路には早くも暗雲が立ち込めることとなる。

花火職人の凛之と花火を巡る陰謀

凛之は宋の火薬作に仕える花火職人で、その卓越した技術は天才的と称賛されている。火薬作とは、北宋の朝廷に実在した火薬製造の官営工房であり、凛之は皇帝のために花火を製作し、式典で打ち上げる重要な役割を担っていた。当時、火薬は国家の機密として厳重に管理され、製造から保管に至るまで厳格な監督下にあった。本作の設定では、火薬は軍事技術としての側面を持ちながらも、その存在を秘密にするために平和的な用途で運用されている。そのため、宋以外の国々では火薬が武器として使われていることは知られていない。凛之は火薬を花火として平和に楽しみたいと願う一方で、遼をはじめとする軍事利用を望む勢力の存在により、火薬を巡るさまざまな事件に巻き込まれていく。こうした史実に基づく火薬の背景を織り交ぜながら物語は展開し、花火職人である凛之と金国の皇女が、それぞれの立場から多くの陰謀に立ち向かう姿が描かれている。

登場人物・キャラクター

アイラ

金国の皇女であり、初代皇帝、アグダの娘。皇族を代表する親善大使として兄たちと共に宋を訪れる。建国からわずか8年の若い国の皇女で、もともとは族長の娘として育ったため、皇族としての自覚は薄い。明るく率直で行動力に富み、乗馬や武芸にも優れている。宋へ向かう途中、刺客に襲われ川に流されるが、凛之に助けられたことで彼に一目惚(ぼ)れする。宋の都に到着すると、皇帝や王族が出席する歓迎の場でも身分にとらわれず、真っ先に凛之のもとへ駆け寄るなど、自分の感情を素直に表現する。一方で、宋の第九皇子である康王との縁談が進められているが、条件面で折り合いがつかず、アイラ自身はそのことを知らされていない。仲間が毒に倒れた際には、自ら救う方法を探し出すなど、周囲の人々を守るために積極的に行動している。凛之への思いを抱き続け、宋・金・遼の関係が変化していく中で、皇女として自分に何ができるのかを真剣に考えるようになる。

白 凛之 (はく りんし)

宋の火薬作に仕える男性。花火職人として働きながら、さまざまな研究を行っている。火を扱う仕事のため、目を保護する独自のサングラス「靉靆(あいたい)」を開発し、つねに着用している。長く伸ばした髪をふだんは結い上げ、靉靆をかけていることから、周囲からは変わり者と思われている。「本草学」の学者でもある。本草学とは薬用植物や動物、鉱物の性質や効能を研究する中国の伝統的な学問で、凛之は薬学や鉱物に関する幅広い知識を持ち、さらに火薬の専門知識を活かして花火の製造に取り組んでいる。好奇心旺盛で地層にも関心を示し、豚小屋で希少な断層を発見した際には、汚れを気にせず嬉々として調査に没頭した。宋へ向かう途中、刺客に襲われ川に流されたアイラを助けたことから、彼女に思いを寄せられるようになる。当初は身分や立場の違いから距離を置いていたが、アイラが仲間を救うために行動する姿を目の当たりにし、次第に彼女を意識するようになる。花火職人としての仕事に加え、火薬や兵器の知識を活かして宋の政治や軍事にもかかわり、宮廷内の陰謀や宋・金・遼を巡る争いに巻き込まれていく。

書誌情報

天上恋歌 ~金の皇女と火の薬師~ 全13巻 秋田書店〈ボニータ・コミックス〉

第6巻

(2022-10-14発行、978-4253264709)

第7巻

(2023-03-16発行、978-4253264792)

第8巻

(2023-11-16発行、978-4253264808)

第9巻

(2024-04-16発行、978-4253264839)

第10巻

(2024-09-13発行、978-4253264846)

第11巻

(2025-03-17発行、978-4253264853)

第12巻

(2025-09-16発行、978-4253003926)

第13巻

(2026-03-16発行、978-4253012324)

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