バケモノの娘の結婚相手は呪われた軍人
長寿を司る神、イワナガヒメの力を宿して生まれた岩子は、生まれつき体の一部が岩のように硬く覆われていた。一方、双子の姉の咲子は、花のように美しいコノハナサクヤヒメの力を授かって生まれた。岩子は華やかな姉と比較され、醜いと罵られ、家族からもバケモノとして扱われて虐げられてきた。そんなある日、岩子のもとに縁談が舞い込む。相手は「呪われた帝国軍少佐」「死神」と恐れられる白蘭だった。死を覚悟して嫁いだ岩子だったが、実際の彼は噂とは異なり、紳士的で優しい人物だった。しかし、実は白蘭も神の呪いを受けており、余命わずか3か月であることを告げられる。神の力によって人並みの幸せを許されなかった二人は、互いの孤独と痛みを理解し合い、次第に心を通わせていく。
呪われた運命を背負ってきた二人
岩子は、家族からまるで家政婦のように扱われ、理不尽な暴力に耐え続ける日々を送ってきた。その過酷な環境のせいで自己肯定感は極めて低く、自分の感情を押し殺し、ただ流されるままに生きていた。一方、白蘭は帝国軍で並外れた驚異的な能力を発揮し活躍しているが、それは神に呪われた代償であり、20歳までしか生きられない過酷な運命を背負っていた。これまで自分の死で誰も悲しまないようにと、人を遠ざけて生きてきた白蘭。しかし、尽くし労(いた)わってくれる岩子にだけは心を許し、まるで残された命を燃やすかのように彼女を溺愛している。
触れ合う肌と溶け合う心
過ごした時間は短かったものの、岩子と白蘭は強く惹かれ合い、夫婦としての絆を深めていった。しかし、岩子の肌の一部は分厚い岩に覆われており、肌と肌で触れ合うことができなかった。そんなある日、白蘭と愛を確かめ合う中で、岩子の肌の岩が剝がれ落ち、美しい素肌が現れる。岩子はもし白蘭との触れ合いによって岩が剝がれていくのなら、「私をバケモノから人間に戻してくれるかもしれない」と淡い期待を抱く。やがて、白蘭の愛情と黒峰家での穏やかな日々の中で、岩子は肌だけでなく、凍りついていた心も取り戻していく。一方、白蘭は岩子の笑顔を見るたびに幸福を感じる一方で、自分に残された時間がわずかであることを痛感し、彼女を残して逝くことに胸を痛めていた。運命に翻弄される二人の切ない恋模様が、本作の大きな見どころとなっている。
登場人物・キャラクター
神代 岩子 (かみしろ いわこ)
代々「神の乙女」と呼ばれる神の力を宿す家系、神代家の次女。長寿を司る神、イワナガヒメの力を授かっているが、その力の使い方は本人も理解していない。幼い頃から両親や双子の姉の咲子に虐げられ、家族としてではなく使用人のように扱われて育った。身体の一部が岩に覆われているため、つねに粗末な包帯で隠しているが、その素顔は非常に整った清楚な美人。白蘭と共に暮らし始めてからは、身体の岩が徐々に剝がれ落ち、本来の美しさを取り戻していく。黒峰家の家政婦で同年代のキネとは気が合い、白蘭との関係を深める方法について相談するなど、少しずつ周囲に心を開き始めている。
黒峰 白蘭 (くろみね びゃくらん)
黒峰家の長男。帝国軍の少佐を務めている。年齢は19歳。黒峰家に生まれた男子は、生まれながらにして驚異的な神の力を宿している。しかし、かつて一族はその力を過信し、神に戦いを挑んだ結果、逆に返り討ちに遭い、「20歳を迎えると命を落とす」という呪いをかけられてしまう。伝承によれば、この呪いは神の力を持つ女性と結ばれることで解けるとされており、岩子と結婚することになった。しかし、白蘭自身はその伝承を信じておらず、岩子を巻き込んでしまったことに深い申し訳なさを感じている。清楚で一途(いちず)な岩子に強く惹かれており、自分の死後も彼女には自信を持って生きてほしいと願っている。








