巨蟲列島

私立鳳翔高等学園の2年生・織部睦美は、修学旅行で搭乗した旅客機の墜落事故で、謎の孤島に漂着してしまう。睦美同様、島に流れ着いた生存者と合流し、救助を待つことにするが、そこは巨大な昆虫の巣窟だった。この島の昆虫は、人間を見つけると容赦なく襲いかかる化け物である。アゲハチョウは、ストロー状の長い口で体液を吸い、人間をミイラにしてしまい、獰猛なヘビトンボは巨大なアゴで人を簡単に真っ二つにする。ほかに、人間に卵を産み付ける虫もおり、残酷でグロテスクな描写が本作の特徴である。また、女子高生同士の濡れ場や、男子生徒や虫絡みのエロティックシーンも多い。

主人公の睦美はサバイバル能力に長けた少女である。5円玉の穴に水滴で凸レンズを作って火を起こしたり、指をこすり合わせた感覚で湿度を推測したりする。また、昆虫についての専門知識も豊富で、ハチの生態を利用して巨大なジガバチを撃退したり、虫の走光性（光に集まる性質）に注目してみんなを救ったりする。原作者・藤見泰高は、昆虫漫画を多く手がけており、本作でも、昆虫の学名や分類、生態、特徴といったうんちくが語られる。ただし、本作はパニックホラーであるため、リアルスペック50パーセント、漫画的脚色50パーセントという割合で制作しているという。登場する巨大昆虫の設定や生態については、各単行本巻末のコラムで、藤見自身が解説している。

死が隣り合わせにある極限状態において、ある意味最も怖いのは人間である。さらわれた仲間の救出をめぐる対立、我が身かわいさから起こる裏切りなど、生存者たちは、さまざまな要因で複数のグループに分断されてしまう。その結果、団結すれば助かったかもしれない命が次々に失われていく。また、相手の弱みを利用して自分の欲望を満たそうとする者も現れ、大きなトラブルに発展してしまう。本作は、昆虫と人間の闘いを描いたサバイバルドラマだが、極限下における人間模様を描いた群像劇でもある。