独自通貨「学円」で成り立つ私立学円園学園
本作の舞台となる私立学円園学園は、日本の離島全体を学校施設とした治外法権の学園である。この学園の大きな特徴は、生徒の出自や育ちに関係なく、学園内で自ら稼いだ独自通貨「学円」によって生活や学業が成り立っている点にある。進級や授業の受講にも学円が必要であり、これも評価基準となるため、島外からの資産の持ち込みは禁止されている。「成果に値する対価を」という校則のもと、生徒会を中心とした各種委員会が学園の運営を担っている。商業活動から公共サービスに至るまで、すべて学生自身の手で行われており、約30万人の生徒と1万以上の部活動が存在する。基本的に大人は介入せず、未成年者による小国家のような独自の社会が形成されている。
稼げなければ退学の学園マネーゲーム
本作は、財閥の御曹司であるクロガネが「私立学円園学園」に入学するところから物語が始まる。実家の力に頼らず、自らの才能だけで何かを成し遂げることを夢見ていたクロガネだったが、事前の調査不足から1億学円もの借金を背負い、返済できなければ退学という危機に直面する。そこでクロガネは、他人の才能を見抜く特技を活かし、第一人材派遣部「神の左目」を創部。人材仲介業を通じて借金返済を目指し、学内の過酷なマネーゲームに挑んでいく。月々300万円の返済を目標とする中、生徒会長であり出資者でもある朝政ハガネから「生徒会役員候補の捜索」を依頼されたクロガネは、敏腕記者のエリザ・ステュアートや「投資の妖精」と称されるイアラ・ミタルなど、類まれなる能力を持つ人物たちと出会う。こうして築かれた友情や協力関係を背景に、さまざまな職種を通じて「どうやって稼ぐのか」という課題に挑む姿こそ、本作のマネーゲームとしての最大の魅力となっている。
経済格差と才能発掘をめぐる学園の挑戦
本作のテーマの一つに、経済政策における格差解消がある。治外法権となっている島にある私立学円園学園は、島外では埋もれがちな才能を発掘し、平等に再出発の機会を提供している点で優れている。しかし、突出した才能を持たず、自ら目標を設定することが苦手な人々にとっては、何者にもなれず埋もれてしまい、日々の生活に苦労するという側面も抱えている。こうした学園内の格差を背景に、学園の統治者を決める「生徒会選挙」では、すべての生徒に一定額を支給する社会保障制度「ベーシックインカム」の是非が議論される。活発な経済活動が繰り広げられる物語の中で、才能や成果によって生じる格差をどのように是正し、学園全体の経済をどのように運営していくべきかという問題も、本作の重要なテーマとなっている。
登場人物・キャラクター
市場 クロガネ (いちば くろがね)
私立学円園学園高等部に在籍する1年生の男子。年齢は15歳で、身長は175センチ。左目は祖父譲りの金色の瞳を持つオッドアイで、日本有数の財閥「市場財閥」の御曹司でもある。幼い頃から英才教育を受けて育ち、ほとんどのことをそつなくこなすが、決して理解力に優れているわけではなく、習得には人一倍の努力を重ねている。一方で、幼少期から一流のプロたちと接してきた経験から、他人の才能や現状を見抜く並外れた洞察力を持つ。特に、ふだんは前髪で隠している左目も含めた両眼で相手を見つめると、異能とも言えるほどの眼力を発揮する。しかし、鏡越しに自分自身の才能を読み取ることはできない。自分には御曹司という肩書き以外に何もないのではないかと悩んでいた。己の実力だけで稼げる学園の環境にあこがれて入学後、第一人材派遣部「神の左目」を創部し、適切な業種に人材を紹介する仲介業を始めて頭角を現していく。端正な顔立ちと心優しい性格の持ち主で、人の才能や努力する姿勢を心から愛している。天性のカリスマ性で人を惹(ひ)きつける一方、突然の高笑いなど奇矯な一面もあり、周囲からは変人の一種と見なされている。
朝政 ハガネ (あさまつり はがね)
私立学円園学園高等部に在籍する2年生の女子。年齢は16歳で、身長は170センチ。わずか14歳で第47代生徒会長に就任して以来、学園の改革を推進してきた女傑である。「学円園の冬」と呼ばれた大不況を乗り越えたことで、生徒たちから絶大な信頼を集めている。その功績から、流通する紙幣には彼女の顔が印刷されている。入学当初から非凡な才能を発揮し、9歳の時には年収1000万円を稼いでいたとも言われており、多くの部活動でも活躍した数々の逸話を持つ。学園の校訓である「成果に値する対価を」を実現するため、腐敗していた上層部を排除した結果、生徒会役員の席はすべて空席となってしまう。そのため、実質的に一人で生徒会を運営し、過労で倒れかけるほど多忙な日々を送っていた。しかし、新たにクロガネが創部した人材派遣部「神の左目」に出資し、彼が仲介したエリザをはじめとする人材を登用することで、仕事環境を改善。以降は他者と協力しながら生徒会運営を行うようになった。自他共に厳しく、何事にも動じない無表情さから「鋼の女傑」と評される一方、そのワンマンぶりを快く思わない者もいる。しかし実際には、冷たい飲み物を飲もうとして誤って温かいものをつかんだ際には驚いて手を上げて硬直するなど、コミカルな一面も持ち合わせている。
書誌情報
市場クロガネは稼ぎたい 全13巻 小学館〈少年サンデーコミックス〉
第1巻
(2012-09-18発行、978-4091238658)
第13巻
(2016-11-18発行、978-4091274427)








